ギターはアンプで歪ませるんじゃない、エフェクターで歪ませるんだ
90年代後半にバンドでギターを始めたぼくにとって、テクニカル=敵でした。なかなか挑戦的なことばですが、グランジ/オルタナの誕生はそれくらい極端に世界を変えたと思っています。ぼくは単純に練習もせずに上手くならなかっただけなのですが、ギターやバンド活動に対してストイックではないほうが「かっこいい」みたいな風潮が、あの時一部の界隈にあったことは間違いありません。「作り出したかっこよさ」ではなくて「滲み出るかっこよさ」に魅力を感じていたわけです。今思えば後者も努力と研鑽があって初めて生まれるものとわかりますが。
それはテクニックだけでなく、機材に対する知識においても(少なくともぼくには)同じことが言えて、ぶっきらぼうに「ギター?アンプ?なんでもいいじゃん」なんて嘯きながら、そのくせ「いい音出したいな」なんて思っていたわけで,どうにもタチが悪い若者でした。
機材に対して知識がないものですから、大好きなnirvanaやthe smashing pumpkinsみたいな音がどうやって生み出されているか見当もつきません。調べることもせずに行き着いた答えが「エフェクター」だったわけです。アンプで歪ませることができるなんて想像もしなかったなあ。というか、「歪みの仕組み」について理解したのはほんと最近のことです。そもそもnirvanaみたいな音が「歪み」「ディストーション」と呼ばれることも知りませんでしたから。
とにかくギターをアンプに繋いで初めて出した音がビリーコーガンとはかけ離れた「チャリーン」という音でしたから、バンドをすぐにも始めたいぼくは、貰ったばかりの仕送りを握りしめて楽器屋へ走ったわけです。
「グランジっぽい音を出すには何を買えばいいですか」
この幼き質問に対し店員さんが優しく紹介してくれたのがまさしくエフェクターだったわけです。そして初めてぼくが手に入れたエフェクターがこれ。
「これ一つでいろんな音が出るよ」というお得感しかないこのことばであっさりと購入を決めました。確かにいろんな音は出るのですが、まずスイッチを踏んだ時に一瞬の無音があり、曲中の音色変えには向きません。そして何より、なんだか思ってるのと違う。この人によって異なる「なんだか違う」ために数多のエフェクターが存在することに気づくのに時間はかかりませんでした。特に歪みはどうにも薄っぺらく感じました。
「そうか、高いのを買えばいいのか」と翌月の仕送りを握りしめて購入したのがこれ。
その名も「GRUNGE」!これしかないと思いました。とんでもないゲインで、弦を押さえていても「ムピー!」、ギターのボリュームをゼロにしても「スコー!」となり続ける、すごいエフェクターでした。クリーントーンからの音圧の増強がすごくて、まるで壁のような重厚な音を作ってくれました。3ピースバンドだった当時のぼくにとって、この厚みは実にありがたかった。
ぼくのその後のサウンドメイクは、この子中心に成り立っていると言えます。それくらい大好きだったのですが、フットスイッチが貧弱だったのか反応しなくなりお別れしました。
次に手にれたのが、これまたとんでもなく歪むコレ。
このエフェクターもかなり気に入っていて、特に学生時代に最もバンドを頑張っていた時に使っていたもの。愛着もひとしおで、Mogwaiもこれを使っているのを見て痛く感動したことを覚えています。
前述のdod GURUNGEよりも音に輪郭があって使いやすかったです。またスピード感というのか、この歪みにはそれが有りました。踏むと曲がパワフルになるだけでなく、前にどんどん進んでいくような感覚がありました。こちらもやはりすごいゲインで、ギターのボリュームコントロールなんて役に立ちません。踏むか踏まないか、これで曲調が決まっていました。
fab toneもやっぱりスイッチが壊れてしまって、代わりに手に入れたのがこちら。
すっごい高くてすっごい重かった!試奏して買ったはずだったんですが、結局好きにならなかったエフェクター。「高かったんだからいい音のはず」と自分をいい聞かせましたが、残念ながらそれほど使うこともなくお別れしました。
「アンプで歪ませる」ことはしませんでしたが、「プリアンプで歪ませる」ことに挑戦したのがこちら。
一時期よく見た、真空管入りのペダル型プリアンプ。金額の割に贅沢な仕様で、パワーもすごかった。Masterボリュームなんか一ミリ程度しか上げてはならんほど大きな音が出ました。それでもやっぱり歪みはそこまで好きになれなかったなあ。
今メインで使っているディストーションがこれ。
HumangearのANIMATO。初期モノで今ではちょっとレアらしい。もう同じものが作れないらしくて、本家がモディファイ品を販売しているという逸品です。使う頻度はともかく、使用期間が1番長いのがこのディストーションになりました。「シルクのよう」なんて形容される歪みですが、確かに粒がきめ細かく、ぼくの好きなスピード感があります。クセのない使いやすさは有りながら、やはりゲインはすごくて特に中域の色気がすてきです。
今回はディストーション編ということでここまで。
次回はオーバドライブとファズについて書きます。