ロラパルーザ・ブラジル2022を振り返る (3)
どうも。
では、ロラパルーザ・ブラジル、3日前のレポート、行きましょう。
3日目は実はそんなに語ることないんですよね。実際問題、この日、当初よてだったところから、フィービー・ブリッジャーズ、ジェーンズ・アディクション、そしてフー・ファイターズがキャンセルになってたわけですから。
さすがにこれだけ無くなってたら、見るものは多くありません。なので、その分、他のことを書こうかと思います。
反大統領抗議行動
今回、すごかったのがブラジルのクソ大統領こそ、ジャイール・ボウソナロへの抗議です。一国の大統領がここまで批判されるフェス、世界でもないと思います。
まあ、それに値するやつですけどね。だって、公然と人種差別、性差別を口にし、反ワクチンを率先するようなヤツですからね。しかも、自分の家族の汚職とか、ワクチンで贈収賄、福音派絡みの汚職も絶えないし。
今回のロラではもう、こいつに対する批判のキャッチフレーズ、「フォーラ(やめろ)、ボウソナロ」、「ヴァイ・トマール・ノ・ク(クソでも喰らえ)」がもう、ライブでのコール&レスポンス、移動の間のかけ声、ライブで一瞬間が空いた後の叫び声。もう、どんなタイミングでも耳にできました(笑)。
アーティスト、特にブラジル国内の人たちからもステージ上でアオリが相次ぎましてね。ブラジルの場合、エンタメ界の人は9割は左なのでなおさらです。これに対し、ボウソナロが裁判所に訴え起こして止めさせようとしたんですけど、その情報が入ると「検閲だ!」とますます不評でさらに激化してました(笑)。
こういうとこに関しては、日本より好きですね。日本で自民党や首相の批判がフェス中叫ばれるなんてこと、ないでしょ?これはいい見本んいなるんじゃないかとも思ってます。
観客のマスクなし
そして、まだコロナ禍の最中ではありましたが、観客でマスクしてる人、ほとんどいませんでした(苦笑)。
オミクロンはそれなりに流行ってたんですけど、2月に入ってストンと落ちた後に、「マスク着用とワクチン照明で開催」と発表されたんですね。で、開催数日前になって「ワクチン照明だけで良い」になった途端、会場、10人に一人もマスクいませんでした(笑)。
これはさすがに僕も怖くてですね。僕は真面目なので、ずっとマスクしてましたね。でも、そういう人、1日平均10万人集まって、10人に一人は間違いなくいなかった。100人に一人は言い過ぎなのでそれよりはいたことは確かなんですけど、それでもせいぜい、30人の1人くらいだった実感です。
もう、「密の中の密」の状態でのライブの連続でしたけどね。でも、それでも、同じ状況で1週間前にやったロラのアルゼンチンとチリ、別に感染増えてないんですよ。サンパウロでも終了して4日経ってますけど、今のところ、それで感染が上がった話はないですね。グラフは今週に入ってもずっと下降線のままです。
僕、医療の専門家でもなんでもないんですけど、コロナの場合、ウイルスのその時の強度、関係あるんじゃないかと思い始めています。
では、3つしかありませんが、ライブの方、行きましょう。
アイドルズ (第1ステージ 16:00)
この日は会場には14時に着いたのですが、1時間ほどゲートで足止め食らいました。というのは雨が降っててですね、入場止められたから。なんでも、「ライブ会場に雷落ちるかもしれない」とかって言われて。それで、小雨振る中待たされたんですけど、15時になんとか入れました。
開いてすぐに駆けつけたのは、この日最大の僕の目玉のアイドルズでした。現在のUKロック再興の火をつけたバンドこそ、このアイドルズ。もう、ずっと見たくてたまりませんでした!彼らに関しては中止になった2020年の時のロラからずっとラインナップに名前があって、それを2年経っても実行してくれました。そのことに本当に感謝しています。
ただ、ブラジルでの事前知名度が低く、第1ステージ前は閑散としていました。この日、フー・ファイターズの客もだいぶきてなかったので、尚更でした。しかし、そんなことはいざライブが始まってみたら、全く関係ありませんでした!
「顔はブサイクだけど、かっこいい」。それがアイドルズだと思っていました。実際見てみて、容姿は間違いなくそうではあったのですが(笑)、いやあ、この5人、鉄壁ですよ!単にギャグでああいう顔が集まってるわけじゃない。全員に存在する強烈な意味があります。
彼らの場合、「プロデュースされない荒い音と、社会に噛み付く社会的な貧しさと差別大き世界に怒る歌詞」で”パンク”と呼ばれる傾向があると思うんですけど、この人たち、それだけじゃない。ロックンロール・バンドとしての基礎値がものすごく高い!ここ発見でしたね。つまり、ギターのリフが鋭くグルーヴィーで、それを最高のリズム隊が支えるフォーメーション。もう、ザ・フーやAC/DC、ミッシェル・ガン・エレファントを思わせるようなロックンロール職人バンドのそれ。それがあるんですよ!これ、見つけただけでも大収穫でしたね。
メンバーにも一人一人に意味があります。ロン毛その1のリー・キアナンはシャープなリフの名手。スキンヘッドのアダム・デヴォンシャイアも抜群のランニング・ベースと無骨なワーワー・コーラスを絶妙なタイミングで決めます。一人だけヤング・サラリーマン風の普通のルックスのドラムのジョン・ビーヴィスはタイトなドラムでバンドを支える。この3人の鉄壁なリズム・アンサンブルを残り2人が好き放題です。M字生え際にヒゲのフロントマン、ジョー・タルボットはコッテコッテのブリティッシュ・アクセントをダミ声で咆哮しグイグイとオーディエンスを煽るんですけど、その左横でリード・ギタリストのマーク・ボーウェンが、なんとひげ面で女装ですよ!
これですね。
このバンド、ヴォーカルのジョーの1曲ごとのMCでの煽りも、ノセノセでうまいんですよ。彼らもテイラー・ホーキンスの追悼はやってた、というか、一番やってたんですけど、ジョー、「テイラー!」というフレーズをコール&リスポンスにして、この日、ずっと煽り続けてました。
で、その横で、マーク・ボーウェンがもう一方で暴走しまくりなんです(笑)。この人、ジョニー・グリーンウッドみたいに、譜面に乗らないノイズ・サウンド担当でもあるんですけど、それだけじゃなく、AC/DCのアンガス並みにステージ狭しと駆け巡り、自ら何度もステージ・ダイブに繰り出してはそこで客を煽るんですよね。こういうとこもすごくAC/DC的です。
で、AC/DCと決定的に違うのは、彼らが熱心なLGBT擁護者ということです。この日もローディが誕生日でそれを祝ってたんですけど、どうやらその彼がゲイのようでして、ジョーがキスして祝福してました。
「ロックの将来が心配」という人、世の中に少なからずいると思うんですけど、そう思うなら、まずは一番に応援すべきはアイドルズでしょう。こういう、「ロックンロール職人」的なバンドがフェスの目立つ位置で存在感を示し続ける限り、ロックはまだ大丈夫です。彼らの年齢からすれば、少なくともあと20年はいけるでしょう。こういうバンドを絶やさないことです。それだけで、ロックンロールの醍醐味は消えないものですよ。
ブラック・プーマス (第2ステージ 17:00)
続いて見たのはブラック・プーマス。黒人のヴォーカリストに白人のギタリスト兼プロデューサー。なんか編成的には日本のあの2人組みたいですけど、サウンドは全然違ってブルース・ロックです。この人たち、毎年のようにグラミー賞にノミネートされてそれで注目あげてるんですけど、そこに加えてフェス露出が増えてきてます。次作で一気にブレイク狙ってるんでしょう。
そう思って僕も気になって駆け付けたわけなんですけど、ごめんなさい。僕はこれ、ダメです。
なんかですね、ブルース、ソウル、ジャズを「心地よい大人のBGM」としてしか消費しない人たちにとってのチルアウト・ミュージックにしか僕には聞こえなくて。だからこそ、オーバー還暦のグラミーの審査員にはウケるんだとは思うんですけど、ロックの観点でこれ聴いちゃうと軟弱にしか聞こえないんですよね。
あと、落ち着けるだけで工夫がない。これ聴くくらいなら今ならジャック・ホワイトとかマイケル・キワヌーカ、昔のだったらトラフィックとかスティーヴィー・レイ・ヴォーンとかの名作聴いてた方がマシです。よっぽどプログレッシヴなので。
ウケも良かったし、人気出ちゃうとは思うんですけど、こういうものにロックの救いはないし、サウンドの方向性変えない限り(仮に変えられたら喜んで発言撤回します)は老害的なものにさえなりかねないとも思いますね。
ザ・リバティーンズ (第1ステージ 18:00)
そして、この日、僕が最後に見たのはザ・リバティーンズです。「ピーター、入国できるのかよ」と思っていらっしゃる方もいるとは思うのですが、少なくともブラジルに来るのは2016年と今回の2回目です。大丈夫なはずです。
彼らは今回は代打です。コロナ感染のメンバーが出たジェーンズ・アディクションの代理です。「直前にキャンセルしたのになぜこんな大物を」と思っている方もいるようですが、彼らは、それこそフー・ファイターズが出演予定だったコロンビアのフェス「エステレオ・ピクニック」に出演できてたんですね。それ1回で帰る予定だったところを「ブラジルまで寄ってくれ」と頼まれてやってきたのです。
ブラジルで僕、彼ら見るの2回目ですけど、歌は変わってないんですけど、変に安定感出てきちゃってるんですよね。昔はねえ、ピーターの危うさがあって常に不安定で、そこがスリリングで面白かったんですけど、まあ、あれ続けてたらピーター、とっくにこの世からは去ってたと思うので、生きていま、こうして見られるのも幸せなんですよね。
あのやんちゃな文学青年、ピーター・ドハーティも43歳になりました。もう既に報道されてますが、顎はちょっと二重になってます。モニターに大写しになった姿で、僕もそれは残念ながら否定できませんでした。だが、ジュリー・ファンの僕にとっては、そんなことはどうでもいいのです(笑)。なんか似た歳の取り方になっていて、それはそれでいいかなと思ってます。カール・バラーは遠目には全然変わってません。
最近の曲は復活アルバム1枚だけなのでわかりませんが、昔の曲聞くに、やっぱセンスはかなりいいですよ。今聞くと、オリジナル・パンクっぽくもあるんですけど、60sのキンクス味も濃厚で、荒削りさとリリシズムの両方が光っててね。2000年代前半の青春ソングなら、今、リバイバルきてるポップパンク〜エモではなく、断然こっちなんですけどねえ。
でも、こういう時に「大国のノスタルジー」の方が効果あるんですよねえ。マシンガン・ケリーがこういうノスタルジーを煽ると、他の国の当時のキッズもついていくんですけど、イギリスのそれだと、本当にマニアしか反応しない。それがこのブラジルのフェス見て思いましたね。「What Became Of The Likely Lads」「Death On The Stair」「Don't Look Up Into The Sun」みたいな「えっ、そこ、盛り上げタイミングなんですけど!」って曲で局部的にしか反応がない(泣)。「これなら日本で見たかったなあ」と正直思いましたね。やっぱりイギリス勢だと、こういうノスタルジー歓喜の瞬間ではどうしても負けちゃいますね。
でも、それでも僕は十分楽しかったです。望むらくはこれがピーターとカールたちにとっての「余生」ではなく「何か新しいことの始まり」になればもっといいんですけどねえ。
・・といった感じでしょうか。
これで僕はオスカー見るために帰宅しましたが、この後、会場ではブラジルのヒップホップDjがフー・ファイターズをトリビュートする企画が行われていました。
これで今年のロラは終わりです。動員は史上最多の30万人超え!すごいですよね。
ブラジルのフェスは、僕は地理的にいけませんが8月にロック・イン・リオ。僕はついでにサンパウロにやってくるマネスキンの単独を狙ってます。そして10月にプリマベーラ・サウンド・サンパウロ初開催!これを待ってます。発表は4月27日。楽しみです!