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「暗示の効果」をうまく利用する


プライミング」は暗示の一種。暗示が脳に与える力はけっこう侮れません。物事がうまくいったとき、たとえばスポーツで最高のパフォーマンスが出せたときの、起床時間、食事内容、気候、気分などを記録。おなじ条件を整えると、パフォーマンスが安定的によくなるという効果があります。日本的に言うと「ゲン担ぎ」でしょうか?

清掃業務のスタッフを2グループにわけ、ひとつは普段通り、もうひとつは、それぞれの業務の消費カロリーを伝えたうえで仕事に取り組んでもらう実験で、勤務後の体重が大きく変化したのは後者でした。モップ掛けで何カロリー、窓ふきで何カロリー、トイレ掃除で何カロリーと、いちいち意識することで暗示がかかり、体によい影響を及ぼします。

健康的な若者に、高齢者の映像を見せたグループと、何も見せないグループの、それぞれの歩行速度を測ったところ、前者はかなりゆっくりだったという結果もあります。高齢者という概念がプライミングされたわけですが、暗示はかつて「」の役割も担っていました。「プラセボ」は「喜ばせる」というラテン語ですが、患部に手をかざすだけで傷が癒えたという話は、伝説ではなく事実。

比較実験として、偽のクスリを処方した人と、正規の処置を施した人のその後を調査したところ、いずれの患者も同じように痛みが和らいだと報告しました。間違いないと「信じる」だけでエンドルフィンなどの脳内麻薬をはじめとするホルモンや神経伝達物質が放出され、はげしい痛みを遮断するだけでなく、高揚感をもたらすそうです。「プラセボ効果」として今では、うつ病の治療などに使われているそうです。

暗示はかように、うまく使う利点はたくさんあります。今日、一緒にランチした同僚は、「体を引き締めたい」と決意を語っていましたが、ジムに行くとか、ダイエットをするとか、むずかしいことばかり考えているみたいだったので「日常生活すべての行動を運動と考えてみては?」とアドバイスしてみました。

毎日ジムのマシンで30分のランニングをする人と、「コンビニまで3分走る」「駅の階段を30秒で駆け上がる」「徒歩10分先のお店でランチ」といった細かい活動をトータル30分積み重ねた人では、えられる健康効果はほぼ同じと言われています。

「見た目を過度に気にする」ことも厳禁。容姿ばかり意識する人は、そうでない人より2.5倍も太る傾向があったり、摂食障害に陥ったりといった危険性も指摘されています。逆に容姿をさほど気にしない人は、人生の困難に強くて、楽観的に過ごせる傾向があったそう。

見た目ばかり気にして、「機能」のことを考えなさすぎると、心身ともに不健康なってしまうという怖い結果に陥ります。そうならないよう、「自分の体は、自分にとってどんな意味を持つのか?」に意識を向ける習慣を持つといいかもしれません。

ポジティブシンキングも暗示のひとつ。現状をありのままに見つめ、将来に起こりうる問題を冷静に分析して、その解決法を自分なりに準備すればあとは楽観的に、いまを全力で生きるクセをつけるべきでしょう。ネガティブに思考することは悪いことばかりではありませんが、いつまでも悲観的なプライミングが自らの行動範囲を狭めることになりそうです。

久保大輔




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