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新規開業クリニックが掲げる理念について

皆様、こんにちは。けやき脳神経リハビリクリニック院長の林でございます。現在11月開業予定に向けて目下準備作業を進めているところです。

このNoteは開業準備にまつわる所感や準備の様子について色々と書いていきたいと思っております。
(前回のNote投稿から間があいてしまいました。毎週水曜日投稿を目指して引き続き頑張って記載していきたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!)

前回、「クリニックは大きな旗印を掲げるべきか?その1」というタイトルで以下の記事を投稿いたしました。

記事では、一般企業と同様、いやそれ以上に「理念」を明確にし、その理念もスタッフ一同が突き進んでいけるような大きな旗印とした方がよいのではないかということを、カンボジアで日本式医療を提供する「サンライズジャパン病院」を立ち上げた経験から記載させていただきました。

サンライズジャパン病院の理念

今回は新しく立ち上げる「けやき脳神経リハビリクリニック」の理念についてお話したいと思います。

その前に、私が大好きな活動を行っている団体をご紹介したいと思います。

それカンボジアのシェムリアップにあるサーカス団体「Phare Circus(ファー サーカス)」です。

このサーカス団体はそのクオリティーの高さからギネス記録にも認定されていて、観光名所となっているのですが、ただ高品質なサーカスを提供しているだけではありません。カンボジアではご存じの方も多いと思いますが、クメール・ルージュの後、多くの住民が殺されてしまい、孤児・難民が多く出ておりました。難民キャンプの子どもたちは教育を受けることもできず、仕事につくこともできない状況がありました。Phare Circusの母体となっているNGO法人Phare Ponleu Selpak’sは、彼ら難民キャンプの子どもたちへの教育や就労支援を行っている団体であり、そしてPhare Circusはその子どもたち及び卒業生たちで結成したサーカス集団なのです。サーカス会場では、ショーの他レストランやお土産物屋も併設しており、その全てがこの難民キャンプ出身者で運営されています。(しかもとんでもないクオリティ!)その収益はまた、孤児・難民の支援活動に使われるというサステイナビリティーが維持されています。

2019年に訪れた際のPhare Circusの様子。大迫力!


是非カンボジアに訪れた際はPhare Circusをご覧になってください

(もっとショーについて詳しく書いてあるリンクを貼っておきます。)

彼らは大きな理念として「戦争孤児・難民キャンプへの支援」というものがあります。そのために提供すべきサービスとして「サーカス」を選び、世界に誇るサーカス集団にまで成長していったのです。

私も今回独立して開業するにあたり、自分がこの先の人生を捧げても良いテーマは何があるのか、真剣に悩みました。医療者として、Phareに負けないぐらいの社会的使命は何があるのだろうかと。クリニックを開業したいという気持ちは以前のNoteのようにゆらぎないものの、それをどう理念に昇華させ、スタッフと共に向かうべき旗印として掲げればよいのか?

https://note.com/thejoshuatree/n/ne0bb77b74599

検討した結果、以下の3つの理念をもったクリニックにすることにいたしました。


1つ目は「共生社会を実現する」ということです。脳神経外科領域で勤務していると、多くの患者さんはある日突然脳卒中や頭部外傷などで脳に障害を受け、今までできていたことができなくなった患者さんをたくさん見てきました。片麻痺がでたり、失語症がでたり、記憶力が低下したり・・・また認知症のようにじわじわと脳の機能が低下してくる患者さんもいらっしゃいます。彼らは、もともとは健康に生きてきていたのですが、ある時から仕事ができなくなったり、不自由な生活を強いられます。我々医療者はそういった病気の方たちをサポートする役割を担っていますが、世間はまだまだ病気の人達が生きやすい世の中にはなっておりません。社会の側が工夫すればまだまだ仕事ができ、生きがいをもって生活できる人たちがいます。また足腰が弱くなっても自分らしく生活できる街づくりも、もっと進められるでしょう。

そしてそれは、後天的な病気の人達のみならず、先天的な病気の人達にとっても同じです。人ごとだと思って見ないふりをしていませんか。

更にいうと、介護者にとっても同じです。介護が必要になったら仕事を辞めなければいけない、ヤングケアラーとして社会に出られないという部分も、間接的には病気に対する寛容性が足りない社会にとって解決すべき課題です。

健康な人達も、いつかは病気になるかもしれないということをもっと自覚して、偏見を持たずに病気の人とともに社会をつくっていけたらよいのではないかと思っています。パラリンピックも良いですが、彼らだけを切り出したコンテストより、いかに「当たり前のように」病気の人も健康な人も共生した社会を作っていけるかに私は興味がありますし、クリニックとして取り組むべき使命だと感じています。

2つ目は「科学と心で患者と接する」です。こちらは開業理由のNoteに記載した内容と重なりますが、患者さんは一人ひとり、物語の「主人公」として生きております。それに対して、まずは医学的な正しさを十分に理解して接することが必要です。我々医療者は医療におけるその分野のスペシャリストとしてクリニックに来院された患者様の期待に答え、日々進歩する医療の最新情報を勉強し、技術を習得する必要があります。
その上で、科学的エビデンスはあくまで一般論に過ぎないことを理解し、一人ひとり患者さんの価値観や生き方において、最も適切な介入方法を一緒に探していく伴走者として振る舞っていきたいと考えています。

1つ目の「社会における実現したい使命」だけだと、日々の行動と少し離れてしまうので、眼の前の患者さんに対してどう対応すべきかという指針として、この項目を理念の一つに入れることにしました。

さらに最後に3つ目として「働きやすく働きがいのある職場環境にする」を入れることにしました。これは一見内部的な価値観で、外部にも公表するような「理念」とは相容れないように思えるかもしれません。しかしながら、昨今の「働き方改革」の議論でご承知の通り、現在の日本での高品質な医療は多くの医療者の自己研鑽・自己努力、そして犠牲で成り立っている部分があります。高品質なサービスを持続的に提供するためには、我々働き手の心身ともに健康な状態が必要不可欠なはずです。

心理的安全性が担保された職場で働きやすい環境をつくり、また努力が十分報われるような人事考課制度を導入して働きがいがあるようにしていきたい、そして良い職場環境を提供するクリニックのロールモデルになりたいという思いを込めて、あえて理念に加えました。

けやき脳神経リハビリクリニックではこれら3つの理念を実現するために、日々研鑽していきたいと思います!



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