ジャーナルクラブのこだわりの話

ほかの領域のことはよく知らないけれど、生物系のラボではだいたい週1程度の頻度で論文紹介、いわゆるジャーナルクラブを持ち回りでやる。新しいめの論文を1本選んで、背景も紹介したりしつつみんなで論文について議論する。基本的には全員が主論文を読んでいる前提で進む。

どういう論文を選ぶかというところに個人の特性が出る。話題重視のひと、自分の関連分野だけを紹介しつづけるひと、果ては自分の仕事の関連で読んだ論文を紹介してくるひと。日本でもアメリカでも、安全策を取って自分の仕事に密接に関連する論文を紹介してくる学生さんをたくさん見てきた。気持ちはわからなくもないが、そういうジャーナルクラブに参加するとなんとも退屈なのである。タスクの消化に付き合わされている気分になる。気分もなにも、実際にタスクの消化に付き合わされている。

僕は勉強が嫌いなので放っておくと全然論文を読まなくなってしまう。なので、自分を叱咤激励すべくジャーナルクラブの自分ルールを設けている。

  1. 自分の仕事に”直接”関係しない分野であること。

  2. 自分が読む時にある程度のストレスがかかること。知らない背景や手法が含まれていること。

  3. 議論の余地があること。ツッコミどころがあること。

  4. 発表から半年以内であること。

1はけっこうバランスが難しい。遺伝学をやっていて化石発掘の論文を紹介する訳にはいかない。自分の担当から少し外れたところにある面白い内容。3も大事だと思う。せっかく人が集まって議論するからにはツッコミどころがある方が盛り上がる。別に紹介するからといってその論文の守護者になる必要はないのである。むしろ粗探しをしながら読む方が結果的にはいいジャーナルクラブになる。

基本的には日々論文をサーチして貯めておかないと枯渇する。学生の頃は担当の直前になってひたすらバックナンバーを漁る日々があった。最近は良い感じにPaperpile内にストックが貯まるようになってきた気がする。いまのラボでは次週のジャーナルクラブを突然振られたりすることがしばしばあるのだけれど、シニアポスドクとしてなんとか対応して尊厳を保っている。たとえば今。年末にはすでに予想できていたはずの空きスロットを埋めるべく、僕はいま追加の背景論文をせっせと読んでいる。


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