基本的な情報元の解析 ー より正確な情報を見分けるために
先日、国営放送のBBC Radio4の「More or Less」という数値や統計のミスインフォメーションやミスリーディングであることを追いかける番組で、基本的な情報元の解析方法が提案されていました。
ここから視聴可能です。
International Institute of Strategic StudiesのリサーチャーHenry Boyd (ヘンリー・ボイド)さんが、ロシアのウクライナ侵攻に関しての数値(ロシア軍の兵士の数やタンクの数等)についての分析を元に語っていたのですが、基本的な数値やデータへのアプローチとして役にたちます。
全てのデータが100パーセント正しいというのはあり得ないのですが、より正しいデータは存在します。
それぞれの情報元が数字を公表する目的は何でしょう?
例/ロシア側もウクライナ側も、自分たちが勝利していることを示したい → ロシア側は自分たちが失った兵士の数を少なく見積もり、ウクライナ側はロシア兵士の死傷者の数を多めに見積もる可能性がある
実際の情報の情報元が誰かを確認できますか?
以下の条件によって、情報の信頼度は変わります。
- その情報元となる人がアクセスできる情報はどのぐらいの規模でしょう?
- それは、どのぐらい完全な全体図なのでしょうか?
- それともとても部分的な図なのでしょうか?
例/情報元となっている人自身が、現場で現地語で数百人の人々を取材・証拠もある(→信頼度は高く、全体像だと思われる)、情報元となる人は、他の信頼できるジャーナリストの現地情報に頼っている・ただしそのジャーナリストがアクセスできる地域は、市の中心部の半径3KMぐらいで、他にはアクセスできない(→ 限られた部分的な情報)
どのようなインセンティブを情報源はもっているか(情報源は、数値を事実を曲げて述べる、都合の良い物語を奨励するというインセンティブをもっていないか)
例/原子力発電所の建設で大きな利益を得られる企業やロビイストー 原子力発電のポジティブな部分を極大化し、ネガティブな部分(安全性への懸念、危険な廃棄物の処理が決まっていないこと、建設に膨大な時間とコストがかかる、電気代はとても高い)を隠し、原子力発電は絶対に事故が起こらない、安全性の高いネットゼロに貢献できる最高のものであり、原子力発電所以外に解決はない、というストーリーを宣伝する可能性があります。
ロシア政府のプロパガンダを行っていたロシアの番組(英語でイギリスで数年放映されていた)はイギリスでの放映は禁止されましたが、Twitterは今でも公開されていて、そのHeadlineには「どんな情報も、まず疑ってかかって。簡単に信用しないで」とあるそうです。ロシア専門家は、それは「あまりにもいろいろな情報が飛び交っていて何を信じればいいのか分からない→考える→頭が割れそうに疲れて、考えること自体を諦める→プロパガンダの言うことを疑問もなく信じるように仕向ける」ということが目的だそうです。
日本の報道を見ていて懸念に思うのは、海外のことを扱うときに、情報源が示されていないことがよくあることです。海外の大学の教授の誰がこういっている、というセンセーショナルなことを書いていても、その教授のオリジナルの記事へのリンクはなく、そういった記事も見当たらないこともよくあります。また、英語での内容を、自分たちの都合の良いように曲げて示しているものを見かけることもあります。英語だと、英語が分かる人々の数は非常に多いので、さまざまな機関、人々から正誤性についてのチェックが始終入りますが、日本語のようにマイナーな言語だとチェックが入らないことに注意しておく必要があります。ミャンマーで起こったロヒンギャの人々への迫害についても、マイナーな言語だったために、Facebookでのチェックが行き届かなかったという反省があるそうです。
センセーショナルな情報であればあるほど、情報元が誰なのか、意図は何か、情報元へのリンク(オリジナルの情報)も確認して、正確性を判断する必要があります。
私自身は、オリジナルの情報へのリンクが示されていないものについては、ほぼ怪しいと判断します。
最初は大変かもしれませんが、続けていれば、習慣となります。
私たちがミスインフォメーションに負けて、人間性を失う社会になることを避けるためにも、これは、とても大切なスキルです。