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南アフリカのオットセイ:みんなで力を合わせてサメから自分たちを守る

イギリス、恐らく世界中でもよく知られていると思われる、動植物学者で、ドキュメンタリー制作を行っているSir David Attenborough (デイヴィッド・アッテンバラー)さんの、新たな自然界シリーズが、イギリスの国営放送BBCで始まりました。

「 Planet Earth III - Series 1: 1. Coasts 」(地球という惑星ーシリーズ1:1. 海岸)から。

デイヴィッドさん、ちょっと老けたな、と思っていたのですが、今は既に96歳です。自然や動物を語るとき、情熱が自然に出て生き生きとした表情と声なので忘れそうになるのですが、デイヴィッドさんが30歳ぐらいのときに同じ島を訪れた際のクリップ(60年以上前)をみると、見かけや声は違います。
でも、情熱は変わっていないように見えます。
それに比べて、気候変動の影響で、どんどん浸食されている島の海岸は60年前の姿とは大きく違います。
若いリサーチャーたちや祖先が原住民で今もこの島を守っている人々は、自分たちがどんなに頑張っても、数十年後には、この島は海にのまれて存在しないかもしれない、と悲しげに話していました。
でも、彼らも全力を尽くして島を守ろうとする努力は諦めません。

デイヴィッドさんは、自然界・動物界には驚異的な回復力や適応力があるものの、私たち人間が起こしている変化はとても大きいもので、自然界・動物界がもっている驚異的な力でさえ、適応し生き残っていくのは難しいといった内容のことを明言していました。

だからといって、デイヴィッドさんは完全に悲観的なわけでなく、彼のもてる力をつかって、私たち人間と自然や動物がハーモニアスに共存できる世界をつくるため、ドキュメンタリーをつくったり、世界気候変動でスピーチを行ったりと希望をあきらめることはしません。

今回の海岸編で、心に残ったのは、南アフリカ沖のCape Fur Seal(オットセイ)のお話です。

ここには、信じられないくらいのオットセイが集まり、子供たちもここで育ちます。以前は、捕食者も多くはいなかったそうなのですが、近年、Great White Shark(ホホジロザメ)が大群でくるようになり、特にオットセイの子供たちの多くの命が危険にさらされ、ここにいるオットセイたちの存在が危うくなってきました。

ホホジロザメにくらべると、ずっと小さく力のないオットセイたちに何かできるのでしょうか?

あっという間に、オットセイたちは行動パターンを変え、自分たちを防御することを始めました。

オットセイたちは一人一人は小さくても、ホホジロザメの数に比べると驚異的に多くの数が岬に住んでいます。そこで起こったのは、ホホジロザメがやってくると、みんなでホホジロザメを囲み、誰か一人を狙うことが不可能な状態にして、岬から遠い海へと力を合わせて追いやります。

オットセイたちに比べると、とても大きくて強いホホジロザメが、オットセイの大群に囲まれ追い込まれ、すごすごと深い海へ帰っていく姿には、なんだか笑ってしまいました。

もちろん、ホホジロザメも自分たちの生死がかかっているので、新たな手段を編み出してくるでしょう。

でも、それに対しても、オットセイたちは力を合わせて何らかの対応を見つけることでしょう。

一人一人は小さくても、力を合わせれば、強くて大きい捕食者にも対抗できます。
これは、ひとの世界にもいえることなのでは、と思います。

もし、弱い立場のひとが強い立場のひとから不当な扱いを受けていれば、ただ見ないふりをする傍観者ではなく、弱い立場のひとと一緒に不当な扱いに対して抵抗・対抗しましょう。
その勇気は、周りのひとびとにも影響を与え、そのうち、社会全体がよい場所になるでしょう。

オットセイだって、「自然界は弱者強肉」という思い込みによって、「何も変わらない」と何もしていなけば、多くのオットセイの子供たちの命は既に消えていたことでしょう。

動物たちよりも、ひとのほうが、自分たちで変えられることはたくさんあります。
たまに、「(人間の世界も)弱者強肉」というひともいますが、実際にはそうではありません。人間には、大きな脳も備わっており、お互いの自由や権利を守って、誰もが対等で平和を保てる知性やCivility(シヴィリティー)を発達させることができます。

自分たちの勇気や力を信じて行動を起こしましょう。
勇気や共感は、使えば使うほど増えていき、強くなっていきます。
たとえ、どんなに小さな行動でも、そこから世界は変わっていきます。

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