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銀行窓販の『一時払い終身保険』。“外貨建て”販売比率が70%割れ。「金利ある世界」では、“円建て”が新たな潮流になる!【「Dataは語る」2025年1月号】

2025年を迎えるなかで、地域金融機関の保険窓販でこれまで主流だった「終身・一時払い・外貨建て」のトレンドに変化が生じている。

“外貨建て保険”の販売は、手数料や目標値設定機能(ターゲット型)の見直しで向かい風が強くなる一方で、“円建て保険”の販売は日本銀行のマイナス金利解除による利回り改善が追い風となりつつある。『ニッキンレポート』の独自調査からその潮流を追った。(ニッキンデータ商品開発部。金融ジャーナル2025年1月号掲載)


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『ニッキンレポート』では半期ごとに、地方銀行61、第二地方銀行37、大手信用金庫85(2024年9月時点)を対象に「終身保険の販売実績」の独自調査を実施している。

一般的に終身保険は、契約者が死亡・高度障害状態時などに一生涯保障を受けられるのに加えて、①解約時には払込保険料の総額を上回る解約返戻金を受け取れる可能性がある ②「一時払い」だと解約返戻金が払込保険料総額を上回るようになるまでの期間が、月払いなどよりも短くなる——点がメリットになる。

販売する金融機関にとっても一括で大きな金額が動くことで、手数料が増える。そして、「外貨建て」は利回りが高く、解約返戻金の方が多くなるまでの期間が短い商品もあり、長らく人気を集めている。

そこで今回は、終身保険の販売実績(2020年度上期~2024年度上期)から、「一時払い終身保険」と「一時払い終身保険(うち外貨建て)」の販売件数を抽出し、外貨建ての比率を算出した。

上記図表を見ると、どちらも2022年度下期に23万5,475件・83.36%で最高値となっているのが分かる。ここ数年は外貨建てが販売件数を牽引(けんいん)しているのも見て取れる。

この状況を変えたのが、2023年6月に金融庁が公表した「リスク性金融商品の販売会社による顧客本位のモニタリング結果」だ。外貨建てのターゲット型保険では、目標金額に到達すると自動で円建てに切り替わる。金融機関がそのタイミングで初年度の比重が高い手数料目的の乗り換え販売(回転売買)をしていることが課題視された。

その結果、外貨建て比率が減少に転じた一方、2024年には保険各社が「金利ある世界」移行に伴い、円建ての予定利率を引き上げた。それを受けて、最近は円建てが販売を牽引する新たな潮流が生じている。

長期間で見ると、外貨建ての比率が70%を下回ったのは2015年度下期(61%)ぶりとなる。業態別では地方銀行では外貨建て比率が高く、信金は低い傾向にあったが、2024年度上期には地方銀行でも69.05%まで低下した。

円建ては為替リスクがなく比較的安全な金融商品として提案強化を打ち出す地域銀行もあり、2025年は「終身・一時払い・円建て」が主流になるかもしれない。

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