【田中慎一さん(財務戦略アドバイザー)解説】 PBRとは何か。そして、高める方法は。重要なのは「デジタル化」と「成長市場を取り込む」こと!
上場企業の2024年3月期決算がひと段落つきました。決算会見においても、PBRという言葉が頻繁に出るようになりました。東京証券取引所が2023年3月に出した要請で、PBRの注目度が急激に高まりましたが、PBRはどうすれば高めていくことができるのでしょうか。
財務戦略アドバイザーの田中慎一さんに「PBRとは何か」から、初歩的に解説して頂きました。また、1倍以下に低迷する多くの銀行がどう対応すべきかも聞きました。(金融ジャーナル編集部。2023年11月号掲載分から一部内容を編集、肩書き、数字等は掲載時点)
企業価値が、純資産の何倍なのか。
PBRとは、Price Book-value Ratio の略であり、株価純資産倍率と呼ばれる。
簡単に説明すると、「企業の価値が、純資産の何倍で評価されているのか」を示す指標だ。「株価÷1株あたりの純資産」もしくは、「時価総額÷純資産」という数式で計算できる。
PBRが2~3倍あるということは、その企業の現在の価値が、純資産の2~3倍に増えているということだ。
例えば、株主が100人いて、1人1億円ずつ出資した純資産100億円の企業があったとする。もしPBRが2倍であれば、時価総額は200億円に達しており、企業を解散した時に、株主は2億円ずつもらえることになる。
一方で、PBRが1倍以下の場合は、企業の価値が純資産を下回っているということになる。つまり、会社を解散しても株主は当初出資した1億円を回収できないということだ。
「1倍以上に上昇して欲しい」のは当たり前。
東京証券取引所は、2023年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請したが、機関投資家や投資する側から考えると、「自分が投資した企業の価値が1倍以上に上昇することが望ましい」と思うのはごく当たり前の話だ。
レストランのメニューと同じで、東京証券取引所に投資してみたいと思える有望な銘柄がどれ位あるかは、世界的な取引所間競争という観点でも大切な視点だろう。
残念ながら、東証プライム市場に上場する企業のうち、PBR1倍割れの銘柄は半数近くに達している。
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