「金利ある世界×貸し出し」。借入金利、住宅ローン金利、企業倒産への影響を探る!【東京商工リサーチ 坂田 芳博氏 解説】
「金利ある世界」に移行するなかで銀行の貸し出しや貸出金利にどのような影響が生じるのか。東京商工リサーチ 情報本部 坂田 芳博 課長に寄稿して頂きました!(金融ジャーナル 2024年9月号「金利×銀行ビジネス 実務への影響を探る」掲載。肩書き・数字等は掲載時点)
倒産は増加中。金利上昇が押し上げも
日本が「金利のある世界」に戻りつつある。銀行の低金利が終焉を迎え、企業もビジネスモデルを見直さなければ生き残りが難しくなってきた。2024年上半期(1~6月)の企業倒産(負債1,000万円以上)は4,931件(前年同期比21.9%増)で、上半期では3年連続で前年同期を上回った。このまま推移すると、11年ぶりの年間1万件超も現実味を帯びる。
コロナ禍の企業倒産は、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)などの資金繰り支援の劇的な効果で歴史的な低水準をたどった。だが、コロナ禍が落ち着いたタイミングで今度は円安、ロシアのウクライナ侵攻による物価高に見舞われた。さらに、経済活動の再開が深刻な人手不足を招き、人件費のコストアップは企業収益の足かせになっている。
2024年4月に返済開始が始まったゼロゼロ融資は、平時であれば資金調達が難しかった企業でも調達を可能にした。倒産は抑えたが、その一方で売り上げが落ち込むなかの借入増で過剰債務に陥った企業も少なくない。
こうしたなか、最近、銀行は独自の基準金利から市場金利(全銀協TIBOR)に連動した貸し出しを多く取り入れ始めている。つまり、貸出金利が上昇への転換期を迎えている。今後、過剰債務に陥った企業を中心に、借り換えのタイミングでの金利上昇は避けられないだろう。金利上昇が企業収益を圧迫し、倒産を押し上げる事態も想定される。
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