テレビ東京#100文字ドラマサウナ編

キャスト

湯田 浴 1990年生まれ。29歳。お風呂好きというよりお風呂オタク。
渋谷区笹塚出身。渋谷区立笹塚小、中学から都立富士高校(偏差値66)、立教大学理学部物理学科卒。みずは銀行入行。現在、笹塚支店勤務。実は既婚。渋谷区笹塚の夫の実家で義父母と同居。子供はいない。結局、住居は笹塚から出たことがない人生。
高山 美奈子 1985年生まれ。34歳。群馬県太田市出身。太田高校(偏差値68)から早稲田大学商学部卒。大手損害保険会社おいおい損保営業企画部企画グループ勤務。東横線学芸大学駅から徒歩5分の碑文谷にあるそこそこのマンションで一人暮らし。かなりのマウンティング女子。彼氏あり。

サウナのスタッフA

サウナのスタッフB

浴の夫

プロット
ほぼ住宅地で埋め尽くされていた東京都渋谷区西原、代々木上原周辺の土地が地主3代目、4代目の二次相続により加速度的に売買が進んだ結果、予想外の再開発が施され、ここに巨大なアミューズメントパークが、いや、一言で言うと温泉が姿を見せた。今まで車で、あるいは電車や飛行機に乗って鬼のような遠くの温泉地に行き、せっかくお湯に浸かって癒された翌日、長距離の移動、渋滞にまた疲れ果てて帰宅していたことを考えると、くだんの温泉好きたちは少々料金が高かろうが、地下鉄に乗って毎日のように集まってくる。ここは以前に流行ったスーパー温泉のような薄っぺらさ感はなく、井の頭通りを入ったところに鄙びた本格的な温泉旅館がいきなり出現する。熱め、ぬるめ、炭酸温泉、電気風呂など様々な温泉が堪能できる。もちろんサウナも充実していて、ここのサウナに通っているコアなファンも多くいる。今日は100度の乾式サウナでの一幕。
美奈子は、時間が早かったせいか他に珍しくお客さんが居なかったのでたまに見かける浴に話しかけた。浴にマウンティングを仕掛ける美奈子。
浴はまったく臆せず、お風呂、サウナの効果について語る。
特に良かった温泉、湯布院、四万、雲仙について語る。美奈子はふと自分の彼氏が温泉好きなことに気づく。浴に彼氏がいるか聞くが、浴は真面目に、「彼氏などいません!」と答える。話の途中で、浴が行った温泉と美奈子が彼氏と行った温泉が同じことに気づく。美奈子は浴にもう一度彼氏がいないかを聞く。
「私は結婚しているので彼氏なんかいません」この言葉に美奈子の山が崩れ始める。
突然、サウナのスタッフが入ってくる。ロウリュ、アウフグースが始まる!ロウリュはフィンランド式で、サウナストーブの上の石にスタッフがハーブを混ぜた
水をかけ蒸気を発生させることで体感温度を上げ、発汗を促進する。またアウフグースはドイツ式。発生させた蒸気をうちわで仰ぐ。
浴はそのままサウナを出る。残された美奈子。温泉旅行の日程がGoogleカレンダーに載っている。その日程はさっき浴が話していたものと同じだった。駐車場で浴の夫が迎えに来ていた。浴の夫は美奈子にLINEを送る。
「今度、湯布院に行こう。」

シナリオ

サウナの中。お客さんは、美奈子と浴の2人しかいない。2人は時々見かける程度。今日は他にお客さんがいないこともあって、どちらからともなく話し始めた。会話の音声が徐々にフェードインしていく。

浴  「温泉は3つの効果があるんです。」
美奈子「はあ・・・(まったく興味なさげに)」
浴  「温熱効果、浮力効果、静水圧効果です。」
美奈子「ふーん」
浴  「温熱効果、つまり身体が温まるのは身体に良いってわかりますよね。
人間の身体には37兆2000億個の細胞があって、それらに酸素や栄養を送って身体から
出た老廃物を持ってくるのは血液の役目ですが、身体が温まると全身の血管が広がり
流れがスムーズになるわけですよ。身体の隅々にまで血液が十分入り込んでいくわけ。
だから気持ちがいいんですよね。浮力効果、静水圧効果については」
美奈子「あーー。わかった。そういうのはもういいわ。」
浴  「あ・・・はい。ま、でもサウナは温熱効果だけですから。
効果の仕組みを知って実感しながら入ると身体への反応が全然違うんですよ。」
美奈子「色々、温泉あちこち行ったんでしょう?」
浴  「行きました!そういうのは言っても良いんですか?」
美奈子「あははは。どうぞ。」
浴  「まず、湯布院ですね。これは今年の1月に行きました。お湯が白湯スープ
みたいに白くてトロトロなんです。遠目に見ると少し青みがかっていて
幻想的ですよ。ここは、とにかく美肌効果が一番です。そして大きな旅館がなくて
こじんまりとしたお客さんを数組しか取らない宿が多くて、あと、お部屋に温泉があって。
そういうのも静かで良いんです。」
美奈子「湯布院かあ。いいね。」
美奈子M(この子、1人であちこち行って楽しいのか?まあ、好き好きだからね)
浴  「美奈子さんは温泉とか行かないんですか?」
美奈子「旅行はするけど。いつも彼氏が計画してくれるんで。」
浴  「おーーー。どこに行きました?」(彼氏にはまったく興味を示さない)
美奈子「箱根。富士屋ホテルにいったよ。」
浴  「宮ノ下ですね。でも、あそこは旅館じゃなくてホテルですよね。
しかも、ジョンとヨーコの常宿!メインレストランのフレンチ、最高ですよね。」
美奈子「え?温泉じゃないのに行ったの?」
浴  「はい。」
美奈子「あ、あのさ。浴ちゃん、彼氏いるの?」
浴  「いるわけないじゃないですか!!」
浴の薬指の結婚指輪は浴が美奈子の左側に座っているので、美奈子には見えない。
美奈子「あははは。そうなんだ。そうか。ごめんね。うちの彼氏、旅行好きで、
温泉も好きなんだよね。でも、前に行ってみたかったらしいの。富士屋ホテル。」
浴  「宮ノ下、といえば、やっぱり寿司屋の“みやふじ”ですかね。」
美奈子「あ、行ったよ。そこ、彼氏が行きたいって言ってたから。」
浴  「彼氏さん、さすがですね。宮ノ下に行ったら、みやふじはマストですよね。
あそこの中トロ食べないと帰れないです。」
美奈子「浴ちゃんは、いつ行ったの?」
浴  「去年の11月です。紅葉がとても綺麗でした。新宿からロマンスカーの
ボックス席を貸し切るわけです。そこで、泰明軒のヒレカツサンドとビール!最高です。
贅沢ですけどね。隣に嫌なお客さんとかいると台無しじゃないですか。
酒飲むの嫌いな人もいるし。」
美奈子M(1人でボックス席貸切!!痛い、痛すぎる!!)
美奈子「あ、あたしもやったよ!ボックス席貸切!!あたしはあしがら弁当に
ビールかな。彼氏のリクエストで。泰明軒は食べたことがあるって。」
浴  「で、箱根湯本に着きますよね。箱根登山鉄道、ちょっと待ちますよね。」
美奈子「わかる!蕎麦屋で一杯でしょう!」
浴  「行きましたか。行かれたのは“山蕎麦”あたりかな。古民家風の。
締めの蕎麦だったら、やっぱり日本酒ですよね。」
美奈子「かな。確かそんな感じ。熱燗飲んじゃった。もう、富士屋ホテルに着いたら、
ベロベロ。」
浴  「けっこう、似たようなところに行ってますねえ。いつ行かれたんですか。」
美奈子「あ・・・もう寒かったし、今年の1月かなあ。」
浴  「じゃあ、紅葉はなかったんだ。残念でしたね。」
美奈子「そうなの。秋頃は彼が忙しいって言ってたから行けなかったんだよね。」
浴  「美奈子さん、群馬県出身でしたよね?私、四万温泉行ったことがあります。」
美奈子「え?ていうか、知ってたの?けっこう遠いよ。高速から。」
浴  「はい。でも、“千と千尋”のモデルだって調べて行きました!」
美奈子「私は地元っていっても、太田だから群馬の東、東毛って言って、西の上毛とは
あんまり縁がないんだよ。でも、けっこう前に行ったよ。去年、の5月連休かな。
やっぱり彼氏が千と千尋のモデル旅館を見たいって言ってさ。」
浴  「私は初夏だったから、去年の7月です。もう、感動しました。
あの旅館の作り、映画のまんまで!お風呂は銭湯みたいで。普通に何ヶ月も湯治で
泊まっているおじいちゃんとかおばあちゃんとかいて、私も仕事やめたら、
3ヶ月くらいここにいたいって思いました。」
美奈子M(あ・・・・なんで、この子とおんなじ温泉ばっかりいってんだろう。)
美奈子「あのさ。浴ちゃん、本当に彼氏いないの?」
浴  「いるわけないじゃないですか。結婚してますし。」

浴の左手薬指の結婚指輪(4°Cの指輪)のカットが入る。
美奈子「え?」
サウナのスタッフ(女性)A,B2人が、サウナ内に入ってくる。
サウナのスタッフ(女性)A「はいーーー!!本日は当舘にお越しいただきまして
誠にありがとうございます!皆さまお待ちかね、ロウリュのお時間がやって参りました!
今日はお客さまはお2人のみ、貸し切り状態でございます!!」
美奈子「え?何何これ。」
浴  「ロウリュですよ。あそこの熱くなった石にハーブがたっぷり入った水をかけて
うちわで仰いでくれるんです。気持ちいいんですよーー!!」
サウナのスタッフBが美奈子に向かって話しかけた。
サウナのスタッフB「まず最初のお客さま、何回行きますか?」
美奈子「え?え?何回って?何、何?」
浴  「仰いでくれる回数です!!お好きなだけ言ってください!」
美奈子「え?えーーーっと、じゃあ、10回。」
サウナのスタッフB「はーーい!10回、いただきました!」
サウナのスタッフAが石にハーブ水をかける。サウナ内に甘い香りが充満する。
音声、フェードアウト。画面はサウナからゆっくりと脱衣場へスイッチ。
美奈子の回想。
浴  「美奈子さん、お疲れさまでした。私、お先に失礼しますね。」
美奈子「あ、うん。あ、じゃ、気をつけて。」

脱衣場。回りにはそこそこお客さんが入ってきて、服を脱いでいる。
バスタオルを首からかけて、携帯を見ている美奈子。

美奈子「あいつのGoogle カレンダー、じゃらんとか楽天で予約したホテルとか旅館とか
みんなカレンダーに入ってるし。ほんと、バカ。」
美奈子の彼氏のカレンダーには、2018年7月四万温泉、11月富士屋ホテル、寿司みやふじ、2019年1月湯布院と書かれていた。
美奈子M(あたしが行ったのは、2018年5月四万温泉、2019年1月富士屋ホテル。
何これ、みんなあの子が行った後?四万温泉だけはあたしの情報を得て行った?
ってこと?)
美奈子「ていうか、えーー、あの人、け、結婚してたの?」

車の中。
浴  「お迎えありがとう。暑ーーい!!」
浴の夫「お疲れさんでした。ずいぶん長湯だったね。」
浴  「うん。よく見かける人と話しこんじゃった。」
浴の夫「お前と話したの?かわいそうに。また温泉談義だろう(笑)」
と、車を出す前に、LINEを送る。
浴  「晩ご飯どうする?」
浴の夫「親父たち、達郎のコンサート行ってるし、どっかで食っていくか。」
浴  「わーい!お、す、し!お、す、し!」
浴の夫「了解!」

脱衣場。美奈子の携帯がなる。LINEが来ている。
LINEの内容(今度、湯布院に行きたいんだけど、いつにする?)


#テレ東ドラマシナリオ

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