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THEDDO.イベントレポート①


概要

「空き家から、地域課題を解決する」を掲げて始まったTHEDDO./スッド。初めてのイベントとして2024 年1月13日(土)〜14日(日)の2日間にわたり、セルフビルド専門家の岩下大悟さん(山村テラス/長野県)と、THEDDO.のクリエイティブを担当したクリエイティブ・ディレクターの田中淳一さん(株式会社POPS/東京都)をお招きして、講演会と実際の空き家改修に着手するクラフトワークショップを行いました。

やわらかく迎えてくれる薩摩富士(開門岳)
対角には桜島が望める

空き家から地域課題を解決する

スッドよりご挨拶

冒頭では、今回の発足に至った経緯や現状の空き家継承や維持・改修を目指す上での当事者から見た課題、また空き家を地域資源と捉え直した際の可能性などについて、THEDDO.を企画運営する福留千晴、鍋田成宏、天野雄一郎からお話しました。

継承者から見ると、現状では空き家の用途が決まっていないと「相談・サポートにたどり着けない」こと、また図面から立ち上げる通常の家づくりと違い、すでにそこにあり「設計することができない」そして変化・老朽し続ける空き家の難しさもありながらも、一方で空き家には地域資源として無限の可能性があること。

地域の人口減少・担い手不足のなかでは、継承者の孤立を防ぎながらセルフビルド手法*を取り入れた新しいあり方が求められていること。
これまでそれぞれの領域で地域課題に取り組み、誰ひとりとして「空き家の専門家」ではないスッドが目指すのは「空き家を起点とした地域課題の解決」であり、また実際の空き家改修も進めていくことなどをお話しました。
(*=施主・設計・大工が一体となり、自分で建築・改築を進める手法)

町長や事業者、移住者などさまざまな立場から空き家に興味がある方が参加
会場となったのも、古民家を改修した「ゲストハウスよろっで」(錦江町)

空き家に必要なのは、クリエイティブの力

第一部講演として、クリエイティブ・ディレクターの田中淳一さんより「地域のよさを"ものがたり"にする」というテーマで講演をいただきました。

田中淳一(株式会社POPS)
クリエイティブ・ディレクター、コピー&シナリオライター
宮崎県延岡市出身。広告会社にてほぼ全ての業種の企業広告、商品広告を担当し、2014年に「Creativity for local, Social, Global」をコンセプトに株式会社POPSを設立。現在、40都道府県以上で地方自治体のブランドづくり、観光PRやまちづくり、地域企業のブランディング&プロモーションを手掛ける。著書に「地域の課題を解決するクリエイティブディレクション術」

空き家課題だけではなく日本全体に、現在「ものづくり」だけではなく「ものがたりづくり」が不足していること、だからこそ地域のあらゆる資源にはまだまだ国内外へ展開・発信できる余地と可能性があることについて、田中さんが手がけた日本各地のブランディング&プロモーション事例や映像とともにお話いただきました。

また地域から事業等を発信する際に必要不可欠な思考プロセスやTHEDDO.のコンセプト&ステイトメントからクリエイティブ制作における考え方について、またここから新たに始まる今後の連携や変化への希望を込めて、参加者の皆さまに共有いただきました。

セルフビルドが目指す価値観の多様性

第二部は、岩下大悟さんより「セルフビルドが目指す価値観の多様性」というテーマで講演いただきました。
岩下さんは長野県佐久穂地域でセルフビルドの一棟宿を4軒運営しています。その定義から、なぜいまセルフビルドが必要なのか。またセルフビルドの持つ可能性についてお話いただきました。

岩下大悟(山村テラス)
長野県旧浅科出身。現在、長野県佐久穂地域で一棟貸しの宿「山村テラス」をセルフビルドにて建築・改修し、4軒運営しているセルフビルド専門家。大学時代にバイクで日本一周した際の日本各地の美しさに感銘を受け、卒業後、企業で3年働いたのち退職。地域での暮らしのあり方を模索して単身フィンランドへ。そこで出会った人や暮らしのあり方に感銘を受け、帰国してからセルフビルド建築・改修に取り組む。

セルフビルドとは、通常分業化されている施主・設計・大工が一体となり、自分たちの手で時間をかけてつくっていくこと。またその結果として、ユニークで多様な場づくりが可能となるため、山村テラスに訪れる方々の滞在のあり方が多様化しているとのこと。
岩下さんがセルフビルド手法に感じているのは、純粋な機能としての場づくりだけではなく「ひとつの生き方やひとつの暮らし方の提案」であり、「自分の人生や地域をより良くするためのヒント」を得られることだといいます。

岩下さんが初めてセルフビルドで建築した「山村テラス」

山村テラスができてからまもなく、海外からのゲストが訪れるようになり、とあるお客さんがこのように言っていたといいます。

私たちは良い暮らしを楽しみに来ているの。
良い暮らしとは、居心地の良い空間で、何かに追われていない時間を過ごして、体に良い美味しいものを料理し、家族と食事をしながら会話をして、ぐっすりと眠り、良い朝をむかえること。

現在、私たちの価値観や暮らし方は急速に多様化している。
けれど、家づくりや暮らし方はどうだろう。もっと自分たちの手で、暮らしや風景をかたちづくっていくことができるし、地域の空き家にはその可能性が満ちているのではないか、改めてスッドもそんなことを思いながら岩下さんのお話を聞いていました。

1°の変革を目指す

またそのなかで、とても心動かされたお話。
岩下さんがバイクで日本を一周していた頃、たまたま出会ったヒデさんというバックパッカーの方がいました。一緒に旅をしながら岩下さんは「社会を大きく変えたい!」と熱く語っていたところ、ヒデさんはこのように言ったといいます。

社会を大きく変えるなんて考えなくて良い。
ただ、いま目の前のことを1°変えるだけで良い。
そうすると、いまはたった1°でも、時間をかけていけばそれが大きな変革になっていく。

そのお話を聞いて、スッドは去年の空き家片付けを思い返していました。
1年間かけて空き家の片付けと草払い・竹払いをしていたとき、時には目の前のやるべきことの多さに気が遠くなり。でも少し片付けると少し景色が変わり、もう少し草や竹を払うと風景が変わってきた。そして今日、こうやって空き家を考え思う皆さまと集まることができた。私たちにとっても、これでいいんだと思える瞬間でした。

自分たちにとって心地の良い暮らしとは?

その後は、参加者の皆さんと「自分たちにとって居心地の良い暮らしとは?」をテーマに「自分・住まい・まち」、3つのレイヤーで考え、シェアする簡単なワークショップを行いました。

集まった方々も、自治体の首長から地域企業の代表の方、地域の風土を伝える方、アーティスト、出身者・移住者、またこれから山林や空き家を起点に新しい事業やチャレンジをしようとしている方などさまざま。
まさに多様な視点から「自分・住まい・まち」のレイヤーで、今後の大隅半島の課題や目指すべき方向性が垣間見える内容となりました。

懇親会ではかわいい宴会部長が乾杯の音頭

翌日のクラフトワークショップの内容は、イベントレポート②へ続きます。

(写真 深澤慎平)

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