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セルフビルダーズスクール開催に向けて:THEDDO.メンバー座談会

こんにちは!THEDDO.メンバーの山田みなみです。
今年度から新たに始まる、セルフビルダーズスクールがスタートします!
このスクールは「セルフビルド手法を用いた地域と空き家の保全」をテーマに、空き家の改修プロセスやセルフビルドを学ぶスクールです。3日間を通じて、ただ技術を学ぶだけでなく、みんなで手を動かすことで見える新しい風景や価値を一緒に見つけていく時間をつくりたいと思っています。
「このスクールで何を目指し、どんな体験を共有したいのか」、スクールの準備を進めるTHEDDO.メンバーに、山田がお話を聞いてみました。

左上から時計回りに:福留、鍋田、天野、山田

ーーースクールについてお聞きする前に、THEDDO.は「空き家を通して地域課題を解決する」と謳っていますよね。それぞれみなさんどういうイメージで取り組んでいるのかを伺ってもいいですか?

天野
「正直、『地域課題を解決する』っていう言葉にはピンときてなくて。何をもって解決できるのか、自分のなかではうまく言葉になっていないんだよね」

鍋田
「地域課題がなんなのかっていうのは確かにそうなんですが、今回のケースでいえば、まず空き家の家主でもある福留さんたち家族にとってどうしたら良い場所になるのか、そこからどう地域の空き家課題を解決していけるかということだと思っていますね」

福留
「 私はあの場所で楽しくみんなで遊びたいなっていう感覚の方が大きいかも。一方で、地域課題を解決することについては私は割と本気で考えているところがあって。去年、空き家の近所に住んでいるおばあちゃんが、『毎日散歩してて、(空き家になった)ここを通るのが毎日悲しかった。でもみんなが通っているのを見てまた元気が出た』って言ってくれて。それは空き家1軒にまた人が通い出したぐらいのことかもしれないけど、そこからまた地域の人たちの心持ちが変わっていって。そんなことなのかもしれないなと」

天野「そうだね。地域の小さな幸せをつくるっていうほうがしっくりくるね」

ーーーそういう意味では、今回セルフビルダーズスクールもセルフビルドを一緒に学んで、空き家課題を解決できる人を増やそうという目的がある一方で、誰かの小さな幸せをつくるというところもあるかもしれませんね。
セルフビルドの技術は動画を見れば学べるコンテンツが増えているなかで、THEDDO.として、スクールを通じて何を伝えるべきなんだろうということはとても大切に考えてきたことだと思っていますが、いかがでしょうか?

福留
「ひとつあるのは、これから『ひとり1空き家時代』を迎えるにあたって、私みたいな本当の素人が空き家(継承)課題に直面せざるを得なくなるような状況がこれからも増えると思うんだよね。だから、私がいま空き家のいろんな問題と対峙している軌跡を記録して発信していくことは、誰かのためにもなるのかなっていうことは思ったりしてます。実際、空き家に家族や親戚だけではなく、THEDDO.のみんなや関係者が再び通うことによって、空き家をプライベートな場所からパブリックにしていくと、明らかに手を動かすたびに景色が変わっていって。小山先生もおっしゃっていたけど、片付けると確実に風景が変わって、自分たちの心構えが変わっていくのかなと」

鍋田
「僕の専門がいま建築なんですけど、すごく範囲が狭いなって思うんですよね。確かに家が綺麗になったり補修はできるけど、その後をどう捉えるかは扱いきれない。セルフビルダーって大工さんじゃなくて、自分たちの暮らしとか人生を自分たちでつくる人のことだと思っていて。今回家だけじゃなくて、畑とか風景とかそういう全てを含むので、(範囲が)とても広いなと」

福留
「確かに、家のどこを手放して、何を残すかって、人生の価値観や優先順位によって変わるから、生き方や価値観に左右されるもんね。それは私たちもこの数年の過程で一番悩んだところだった」

天野
「自分の専門で例えると、農福連携って農業だけでも福祉だけでもないって思ってるからこそ成り立っていて。でも正解がわからない中で手を動かし続けていると見えてくる景色があるんだよね。そこには多様なバックグラウンドのプレイヤーが関わっているから、器が大きくあるべきだと思っていて。だからこそ空き家もいろんなプレイヤーが必要なんだなって思ったね」

鹿児島大学の教授や学生さんからも多様な知見を教えていただき、新たな視点をいただきました。

ーーー色んな人たちと一緒に手を動かして、自分に大切なものは何かを問いながら進めていくことは、スキル以上にそれぞれのライフスタイルを表現したり、それに価値を見出していけるのかもしれないですね。

ここで講師の岩下さんも加わっていただきました!

岩下大悟さん
長野県佐久市(浅科)出身。建築設計の経験がないなか、 憧れの北欧の暮らしや生き方を学び取り入れ、 佐久穂地域でセルフビルド型のリノベーション・建築を実施。 現在は一棟貸しの宿泊施設「山村テラス」を4軒経営する セルフビルドの専門家・経営者。 また宿泊の運営は地域の方々とともに運営しており、 地域に新たな雇用を生み出している。 地域独自の風土と環境を生かし、 豊かな滞在ができる山村テラスの在り方が評価され、 現在予約が取れない宿となっている。

ーーー改めて、今回スクールの参加者に持ち帰っていただきたいことや期待していることなどをそれぞれ伺えたらと思います。鍋田さんからいかがですか?

鍋田
「僕は建築が仕事だけど、 家のことって暮らしの一部なので、実際手を動かして作るところを暮らしの一部として、身近に感じてもらえたら嬉しいなと。初めてやる人もいるかもしれないけど、意外とできるんだなみたいなこととか、自分で作る楽しさなどを感じてもらえればいいなと思います」

天野
「僕は、参加者として楽しみたいなと思っています。岩下さんがせっかく来てくれるんだから、参加者の人はそれぞれの思ういいものを持って帰ってくれるだろうっていう、確信が自分の中ではあるので。参加者の人たちに感じてもらいたいのは、ワークショップとか、スクールに来る人たちとのコミュニケーションの中で、空き家って実は関わりしろがあるなとか、地域課題を解決するってもしかしたらこういうことかもしれないっていうのが少しでも汲み取ってもらえれば嬉しいかな。集まって楽しいことが起こるだろうなっていうワクワク感しか自分の中ではなくて、運営側だけど楽しませてもらおうと思ってます」

福留
「空き家に入る体験って普通にないよね。ましてやそこで体動かして、みんなで掃除じゃなくて一緒に家を作るってめっちゃ楽しいだろうなって思ってて。去年みんなで埃まみれになりながらとても大変な作業にも関わらず、『みんなで一緒に体を動かして、掃除するのが楽しい』ってみなみちゃんが呟いたのが忘れられなくて。空き家ってすごく自由だし、楽しいと思ってもらえたら一番嬉しいかな。そうしたら今度は、自分が空き家の当事者や、家族や友達がそうなって途方に暮れている時に、 じゃあ自分も片付け行こうかなと思える土壌をつくっておけるのかなと思いますね」

岩下
空き家をセルフビルドするってすごく夢があるじゃないですか。一方で、実際に現実的にやるとなった時の、夢と現実の差をなんとなく感覚的に埋めるっていう、その感覚を1つでも掴んでもらえたらありがたいなっていう感じですね。それと同じように楽しさと大変さの両方があるので、どちらも感じて持ち帰ってもらいたいなと思います。あと福留さんみたいに空き家を所有してしまって、過去の経緯を辿ることもすごく意味があると思っていて。床下から便器が4つも出てきたこととか(笑)、生身の想像できる歴史みたいなものを感じて、自分の時間軸が変わる感覚を感じてみてほしいなと思いますね」

福留
「本当にそう!(笑) ひとりだったら床下から4つも便器が出てくるなんて、怒りと悲しみでしかないのに(笑)、こうやってみんなで共有して笑えることが本当に嬉しいですね」

空き家をいろんな人たちと共有する経験を踏むと、一緒に新しい風景を見れる仲間ができたり、それから自分たちはどんな価値をこの土地や建物に残していこうかという視点で考えることができたりします。

空き家に関わり、手を動かすことで見えてくる景色が変わってくる。そんな喜びを一緒に分かち合い、全国に広げられることができると、それが未来の地域づくりの一歩になるのかもしれないなと思いました。

スクールをご一緒させていただく皆さん、よろしくお願いいたします!

(編集・執筆 山田みなみ)

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