THEDDO.セルフビルダーズスクールを開催🏡🔨
こんにちは。スッドです🧑🏻🔧🧑🏻🌾👩🏻⚕️👩🏻💻
来たる2025年1月20日(月)〜22日(水)の3日間にて、長らく準備を進めてきたセルフビルダーズスクールを開催しました!
今回なぜスクールを開催するに至ったか、そして3日間のスクールでどんな方々が参加くださり、またどのような変化や学びがあったのかを書き残しておきたいと思います。
「ひとり1空き家時代」に
なぜスクールを開催することになったか?
こちらについては、noteマガジンでもたびたび触れてきたところではありますが、スッドが活動する鹿児島県は昨年の国の調査で、「放置空き家率ワースト1位」になってしまいました。また、スッドが活動拠点とする空き家周辺の独自調査でも、空き家率はなんと50%。
このように、東京など都市圏の社会課題の20〜30年先を行っているとも言われる"課題先進地域"である大隅半島では、人口減少・担い手不足に伴い、空き家の増加に伴う保全と継承、そして空き家を取り巻く地域課題が山積みの状況です。
そんななか、スッドのメンバーが空き家を県外で遠隔継承。もはや廃屋一択の選択肢しかないように思えましたが、地域の空き家にはその地域の先人たちの生きる知恵や、現代では再現できないような建築資材・建築技法が詰まっている。また、都市圏で生活する人たちにとっては、焚き火ができる庭や自由に遊べる森、自分でDIYできる家屋などは都会の暮らしと比べとても自由度が高く、憧れの存在であるのも事実です。これから人口減少とそれに伴う「ひとり1空き家時代」を迎える私たちにとって、家族単位での空き家継承・保全は難しくても、少しずつみんなが関わりあったり、通い合ったり。多様な人たちの視点をかき混ぜることで、空き家を起点とした新たな空き家保全の形とコミュニティ形成ができるのではないか。そんな仮説がありました。
また、担い手が減少する空き家保全においては、従来のように個人で巨額を投資する方法では空き家の保全が難しい。そのため少しでも多くの人が、少しの補修であれば自分で対応できるような状況づくり(=セルフビルド)が必須になります。そうすることで、解体一択ではなく、少しずつ繕いながらできる限り保全する。それは結果的に、解体一択よりも中長期的に地域の工務店や大工さんの仕事、そして地域の暮らしや建築資源、文化を守ることにもつながるのではないかと考えました。
さて、そんな仮説とたくさんの課題を胸に取り組み始めたスッド。
しかし実現までは遠い遠い道のりで、築120年の空き家を前に、建築法や都市計画法など、あまりにも長寿な空き家に手を入れるには、あまりにも多くのハードルが存在しました。(このあたりはまた別の機会に)
空き家から地域課題を解決する
当初から「空き家から地域課題を解決する」というコンセプトを掲げていましたが、地域課題が山積する大隅半島において、このコンセプトはあまりにも壮大で、メンバーの中でも「本当に謳えるのだろうか」という議論が長く続いています。しかし一方で、半分は本気で考えていたりもします。
昨年実施したクラフトワークショップや空き家フィールドワークを通じて、空き家に再び人が通い始めることで、地域の人たちがとても喜んでくれ、表情が明るくなっていきました。空き家近隣に住んでいるおばあちゃんは、
「毎朝、散歩の時にここの前を通るたび、空き家になってしまい悲しい気持ちだった。けれど今日、また皆さんが通い始めてくれて元気が出た」と言ってくれました。
空き家に再び人が通い始め、空き家が限られたクローズド&プライベートな場所ではなく、オープン&パブリックな場所になっていくことで、大隅半島で農福連携(農業×福祉の連携で社会課題を解決する取り組み)を推進される方々が、門松制作用の竹を取りに来られたり。台風で倒れた倒木を切りに来てくれる人がいたり。再び人が通い始め、掃除や片付けや改修などの活動をすることで、たったこの数年で「空き家の関係人口」が増えていき、空き家の風景が変わっていきました。
自分たちの暮らしを自分たちの手で
そんな軌跡とともに、開催されたセルフビルダーズスクール。
開催に向けて、メンバーやアドバイザーの皆様とたくさんの議論を重ねてきました。スッドのアドバイザーは、こんな方々です。
①山村テラス 岩下大悟さん(長野県佐久穂町)
②鹿児島県 建築学科 小山雄資先生(鹿児島県鹿児島市)*写真右
ーセルフビルドだからこそ生まれる価値とは?
ースッドが提供できる場のあり方とは?
そんなことをたくさん議論してきました。
私たちもまだまだ模索中ですが、たくさんの議論を経て、スクールを実施して見えたきたセルフビルドの価値とは、主に以下のようなものだと考えています。
もちろんその結果として、空き家課題を解決しうるきっかけとなることは言うまでもありません。
セルフビルドを学ぶ3日間のスクール
フィールドワーク&座学
スクールの3日間では、まず初日にフィールドワークと座学を通じて、活動を行う空き家に関する歴史や周辺環境、また今後の改修方針と3日間のセルフビルド内容について、情報のインプットを行いました。
まず向かったのは、空き家周辺の「吾平山陵」。
吾平山陵は、初代・神武天皇の両親が眠る国内でも珍しい洞窟型の御陵で、宮内庁が管轄しています。この周辺には、こちらだけではなく、多くの「神話の遺跡」が存在しており、古くは海人族が海の向こうからやってきて、薩摩半島・大隅半島を巡り、東征していく流れを見ることのできる特色ある地域です。
空き家と向き合う際には、空き家単体だけではなく、周辺地域の歴史や風土と合わせて学び、手を入れていくことが不可欠と考えており、参加者の皆さんと一緒に3日間のスクール成功祈願も合わせて、フィールドワークを行いました。
その後、今後改修に取り組む空き家に移動しての座学では、空き家の老朽化と家主不在(県外)によって、今後の用途や改修計画をはっきりと決められないなか、従来のように家族だけが暮らす場所ではなく、より広く用途を想定しながら多様な人たちが通うような場所、そしてここから地域の空き家課題を解決するような場所を想定したうえで、以下のような方針で改修することなどをお伝えしていきます。
これは夏に実施した空き家フィールドワークで訪れてくださった東北工業大学 建築学部の不破先生や、長野県のセルフビルド専門家の岩下大悟さん(山村テラス)など、県外から来てくださった専門家の方々のご意見を参考に、この地域特有の農家の家の造りを加味した改修方針で、私たちは今回勝手に「大隅半島モデル」と呼んでいます(笑)
従来の「大家族・土間・百姓の家」という横に長い動線を、現代のライフスタイルや今後想定しうる「少人数・多様な用途」に合わせた改修方針で、北面に水回りを集約し、南面に滞在拠点を持ってくるというものです。今後、大隅半島の空き家を進めるに際して、参考モデルになりうるものと考えています。
また座学では、今後セルフビルドを進める空き家の歴史や、なぜ空き家課題にセルフビルドが必要なのか、そしてこれからの空き家課題にはソフトの力・デザインの力・パーマカルチャー的視点が必要であるというお話もさせていただきました。
また今回、埼玉県から参加してくださったツリーハウスルビルダー/パーマカルチャーデザイナー/アーティストの中里修一さんから共有いただいた「パーマカルチャー」という概念が、広く空き家改修と保全にも通ずるのではないかということで、参加者の方々ともさまざまな意見交換の場となりました。
炊き出し
さて、座学も無事終えたところで非常に重要なのが、火を囲み、みんなで食事をとることです。なぜかというと、セルフビルドはともすると危険が伴ったり、集中力や結束力を必要とする作業となるため、事前にアイスブレイクとして、初めましての参加者みなさんがそれぞれの自己紹介やコミュニケーションをとることで、ひとつのゴールにともに向かうための時間が必要だからです。そのため、3日間の作業には2時間おきに昼食とお茶&お菓子の時間を確保しています。
工具の説明
身も心も温まったところで、3日間の作業で使う工具の説明をしていきます。初めて参加される方々には、初めて見る工具ばかりですが、作業を進める中で少しずつ名前も覚えていきます。
作業の説明
そしていよいよ、各作業の説明をしていきます。この3日間で行うのは、主に以下のものです。さて、どこまで行けるか!
DAY1
まずはフローリング張り班、外壁張り班の2つに分かれて作業していきます。みなさん、初めて触る工具に恐る恐る。
しかし1時間ほど経つと、作業のコツや要領を掴み、どんどんスピードアップしていきます。そこからはもう、みなさん黙々と無言で作業。
あっという間に、初日終了時には外壁の1/3面と、フローリングの1/10面ほどの作業が完了しました、皆さん、すごい!!DAY1、おつかれさまでした。
DAY2
2日目は、さらに初日の作業内容を加速度的に進めていきます。
本日新たにご参加いただく方もいらっしゃるため、その方々へは工具と作業内容の説明をまた最初から行っていきます。DAY2には、スッドのアドバイザーでもある鹿児島大学 建築学科の小山先生の参加してくださいました。ありがとうございます!
初日に参加してくださった皆さんは、作業開始からとてもスムーズに進めていくことができました。
そしてあっという間に昼食休憩ですが、2日目はみんな大好きカレー。
初めてご参加の皆さんも、作業と焚き火を通じてあっという間にひとつのチームになっていきます。
英気を養ったところで、午後の作業を開始。
今日はひたすら外壁とフローリング、できれば終わらせたい!という気持ちで進めていきます。みなさんのスピードがどんどん加速する。
3日間のスクールの折り返し地点にきており、運営も参加者皆さんも慣れてきたぶん、少しずつ疲れも出てきているので、焚き火カフェでこまめに休憩をとります。焚き火を囲むと、黙っていても、話していても、良い時間になりますね。
この日は午後も引き続き作業を続けて、外壁とフローリングがおおむね7〜8割完了したかなという感じでした。外壁2面目もほぼほぼ仕上がり、こうなってくるといよいよ風景が変わってきますね。
皆さま、おつかれさまでした!!
DAY3
いよいよ泣いても笑ってもこれが最後、の最終日。
この日はご参加を予定していたけれど体調不良や予定変更で参加できなくなった方々が多く、運営メンバーが頑張らなければならない局面です。
まずは1日を通して私たちの活動を守ってくれる焚き火のための、薪集めから。空き家周辺には大きな森にたくさんの木や竹が自生しているので、薪に困ることはありません。
フローリングも最終局面。途中、柱などがある場所は細かい調整をしながら進んでいきます。
最終日は、同時にフローリングに埃や塵が落ちないように、天井や欄間の掃除も進めていきます。欄間障子も破けて汚れているため、より強度と断熱性の高いポリカーボネートに張り替えます。
外壁は完成し、あっという間に最後の昼食休憩。
美しく完成した新しい風景を眺めながら、昼食をとります。
昼食後、フローリングの微調整が思いのほか時間がかかったことで、一同に少し焦りが見えながらも、急ピッチで床板張りを進めていきます。
そして午後からは漆喰塗り。
初めての漆喰の触感や香りに、一同ワクワク。岩下さんから、漆喰塗りの説明を丁寧に受けていきます。
初めてでうまく塗れない人、初めてなのにとてもうまく塗れる人、その立ち姿がすでに左官職人のような人。それぞれに特徴があり、その特徴の違いが美しい調和となって現れてくる漆喰に、無我夢中で塗り進めていきます。
そして実はこの日、電気工事の方や建具会社の方もお越しくださり、一緒に場を仕上げてくださっていましたが・・・
なんとも美しい扉が出現しました!
そして小1時間ほど集中して漆喰塗りを進めていましたが、気がつくと、あれ?完成した。。。
完成は突如としてやってきました。
スクールを終えて
いろんな仮説とたくさんの課題を抱えて開催したスクール。
当初は、果たして参加してくれる方がいるのだろうか、と不安も感じていた運営メンバーでしたが、蓋を開けてみると、
鹿児島へ移住してきたご家族、アーティスト、自治体職員の方、起業支援を行う方、地元メディアの方、農家の方、子育てを終えたパワフルな主婦の方、パーマカルチャーデザイナー、、、
本当に多様な方々が、今後空き家に関わりたい、空き家改修をして住んでみたい、春に筍を採りに来たい、竹細工をやってみたい。など、まさに「空き家の関係人口」としてこのスクールに携わり、廃屋になるしかなかったはずの、空き家の新しい歴史と記憶を一緒に更新してくれたことに、運営メンバーは言葉にならない思いでした。皆さま、本当にありがとうございました。そしてまたぜひ、遊びに来てくださいね。
後日、参加いただいた皆さまから熱いメッセージをいただきました。
スッドのメンバーは、皆さまのメッセージを拝見して学ばせていただく視点も多く、目頭が熱くなるばかりでした。
最後に、アドバイザーの皆さんとスッドメンバーの振り返りを記載して、終わりにしたいと思います。
スッドの活動やスクールに関わってくださった皆さま、ありがとうございました!
*3日間のスクールの模様を動画にまとめています。ぜひご覧ください!
(編集・執筆 THEDDO./スッド 福留)