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京都 一乗寺フェス2019 レポート前編

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 朝、一乗寺に向かう道中にある美容室の中にいるパグと目があった、公園ではおばさまがブルーシートを敷き弁当を食べていた。フェスに向かっているというのに心持ちはすごく穏やかで、ゆったりとしていた。左京区という場所は、京都市の中心である中京区や下京区に比べて穏やかで静かな街だ。ゆったりと時間が流れる感覚は、大学の課題やバイトで忙しない自分の生活にゆとりを与えてくれる。
 そんな左京区の街でやるとは言え、フェスというからにはもっと忙しなく賑やかしいものだと思っていた。しかし、この日もいつもと変わらない街で、だからこそワクワクしている自分がいた。


 午前11時、今年から始まったイチジョウジ大学のステージの一つ、サワルタテルStageに向かった。会場となっているin-ex DESIGNは建築設計事務所で、サワルタテルStageの内容も角材を細かく切ったチップを使い、それぞれ思い思いの箱を作るというものだった。

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 集まった子どもたちは皆知り合いらしく、和気あいあいと作り上げていく。まるで友達の家に集まり、みんなで工作の宿題をしているようだった。作り上げた箱を並べ、建築模型に使うための人型の模型やミニカーが並べられると、子どもたちからは歓声が上がった。最後に記念撮影を行ってワークショップ終了。いつもの風景にフェスが加わることで特別な1日になる、日常と非日常が織り混ざった空間が広がっていた。

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 少し昼休憩を挟んだ後に向かったのは、CuBerryがライブを行うCafeNorwegianwood(現在は店名が変わりCAFE&BAR OBBLiとして営業中)。入り口のドアの窓から温かい陽の光が差し込んで、優しく店内を照らしている。普段は夜しか営業しないCafeNorwegianwoodでは、なかなか見られない光景だ。

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レコードやCDでギッシリ詰まった棚や、壁に飾られた絵画などの店の装飾品一つ一つや店内の雰囲気は、おもちゃ箱のようにワクワクする音楽を奏でるCuBerryと驚くほど相性がよく、まるで彼女たちのために用意されたかのようだった。そんな、環境での彼女たちのライブは普段、映像と音楽をクロスオーバーさせている彼女たちらしい、視覚と聴覚の両方に刺激するものであった。現在は留学中の映像担当の雪花が加わった際に、この場所とどんな化学反応を起こるのか。思わずそんな妄想と期待が膨らんだ。



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「ライブハウスだと毎日のように音楽イベントがあるけれど、一乗寺には一年でこの日しかない。だからこそ毎年、この日を楽しみにしています。」とMCで語ったのは、旧こいけ。木の床と、刷毛で塗られたような味のある白い壁が特徴の、あおいろ珈琲の店内で、腰を下ろし弾き語る彼女は、まるで一枚の西洋絵画のようだった。小さな会場に響く、繊細なギターの音と歌声が織りなす音楽は、人々の生活に寄り添うような優しい音楽、まさに街の音楽と言える音楽だった。一乗寺をよく知り愛しているからこそ奏でられる音楽なのだろう。

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 アットホームで温かい雰囲気の居酒屋、いとう家での1日目最後のアクトはJabBee。
JabBee( Vo. & Ag )のリズミカルなアコーステックギターと、ladyeria( Sax. & Cl. & Cho. )の抜けのいいサックスの音色が、夜を迎え、ますます活気付いた居酒屋を盛り上げていく。JabBeeの歌声は、「また明日から頑張ろう」と思える力強くも優しい歌声だ。

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 フェスは、楽しかったという感想だけでなく、特別な1日から日常に戻る時に背筋を正して気合を入れ直せるような、非日常でありながら日常と改めて向き合うきっかけになるものだと、改めて実感させられるようなライブであった。

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 いよいよ1日目のトリの時間を迎え、CafeNorwegianwoodにはたくさんの人が集まった。佐藤タイジが現れると歓声と拍手が巻き起こった。

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今年リリースされたばかりのアルバム『My Hero』の曲を中心にプレイしていく。ライブが進むにつれ、コールアンドレスボンスや手拍子の音と共に会場のボルテージが上がっていく。シアターブルックのフロントマンとして数十年間、常に最前線で走り続けてきた男のパフォーマンスは圧巻であった。約1時間のライブが終わった頃には半日歩き続けた疲労感はなく、圧倒的な幸福感だけが残っていた。

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 ここに来る前、いつもはカフェや居酒屋として営業している場所がステージになることを想像できない自分がいた。この日1日を過ごしてわかったことは、一つ一つの会場の規模は小さくてもその会場でしか見せられない景色があることだ。いつもは開いていない時間帯に店が開くことでいつもは見られない姿を見ることができたり、場所によってはアーティストのライブにその店が持つ世界観が加わりライブがより一層特別なものになる。普段生活している場所にフェスという要素が加わることで新たな価値が生まれていくことを、このフェスに関わる全ての人々は知っている。そして、そのことを知る人たちがいる限り、街で音楽は響き続ける。

文章:岡本海平(京都精華大学ポピュラーカルチャー学部/京都アンテナ ライター)

写真:大谷大学写真部、ムラカミアオイ、タニシゲコウト、高橋良平

                                  



 

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京都 一乗寺フェス・イチジョウジ大学 公式
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