鹿児島、九州における 『 THE GREATEST SATUMANINA HESTIVAL 』 の存在と影響とは?
昨年に続く 2 回目の開催にして、早くも九州に定着した感のある巨大音楽フェス『 THE GREATEST SATUMANINA HESTIVAL 』。ロックのみならず、ポップス、ジャズ、アコースティック、アイドルなど、ジャンルの枠を超えたライブ最強アーティストが集う、豪華ラインナップは九州イチ!と言えるほどだ。
強い想いを持って桜島のステージに臨む、地元・鹿児島出身のミュージシャン、そして九州出身のミュージシャンが多いのもヘスの特徴。
古くは 70 年代前半のフォークブーム、70 年代後半の “めんたいロック” の時代から、福岡を中心に日本の音楽ムーブメントを作り続け、多くのミュージシャンを生み出してきた九州。
九州最南端の県である鹿児島の地、しかも鹿児島県民の象徴と言える桜島に九州出身のトップミュージシャンが集うのは、九州人じゃなくてもワクワクするが。鹿児島や九州出身のミュージシャンにとっては、並々ならぬ想いがあるだろう。
もともと桜島には “僕らの街は、僕らで作る” を合言葉に、今年で 6 度目の開催となった、鹿児島の若者たちが作り上げた『 WALK INN FES! 』という音楽フェスが存在。このフェスの出演者の 7 割が鹿児島出身のアーティストということからも、鹿児島が音楽に溢れた街であること、地元愛に溢れた街であることが分かる。
『 WALK INN FES! 』の公式サイトの主催者の言葉によると現在の鹿児島は「 10 年前ではあり得ないくらい音楽の街になってる 」のだそう。
今年のヘスでは、初日と 2 日目の< WELCOME ACT >に “WALK IN FES!推薦 鹿児島アーティスト” として、鹿児島を拠点に活動する若きロック志士、Art Billding、BACKSKiD の両バンドが出演。
9 時 20 分からという、ロックバンドには不利な時間帯ながら、地元ファンを中心としたたくさんのオーディエンスを集め、両組ともバンドの個性を十分に発揮した熱いライブを展開。音楽愛と地元愛に満ちた若者たちが、鹿児島の地で数年かけて撒いた種がしっかり芽吹き、花を咲かせようとしていることを証明していた。
初日前半、地元ファンの熱狂的な歓迎ムードの中、薩摩ステージに登場したのは、鹿児島出身のスリーピースバンド、雨のパレード。
「 ただいま!」と明るく挨拶すると、クールでダンサブルなサウンドでフィールドを揺らす。MCで出身校の話や学生時代のバイト先の話など地元トークで沸かせると、「 兄のように慕ってます!」と語るタブゾンビを迎え、夏みたいな陽気にぴったりな「 Summer Time Magic 」で魔法をかけて、会場を多幸感に包む。
彼らの地元だからこそのリラックスした雰囲気と、地元だからこその誇り高き歌と演奏に、そのどちらもを兼ね備えたステージはヘスならではだろうと思った。
ヘス発起人であるタブゾンビの同級生であり、鹿児島出身の星グランマニエ(Gt)と白鳥松竹梅(Ba)が在籍する氣志團は、昨年に続く 2 度目の出演。
GIG中盤で「 One Night Carnival 」を披露すると、「 古い!」と訴えるメンバーと口論になる小芝居を挟み、DA PUMP「 U.S.A. 」や星野源「 恋 」をミックスした「 One Night Carnival 」の最新版を披露し、大いに盛り上げた。
氣志團は昨年もそうだったが、やはりメンバーの故郷である鹿児島に強い想いがあるようで。綾小路 翔(Vo)、早乙女 光(Dance&Scream)の出身地である千葉県で開催している『 氣志團万博 』のステージを経て行う、ランマと松の出身地で行うヘスのGIGは、まるで『 氣志團万博 』のGIGや熱気をそのまま鹿児島で再現しているような気合いと強い想いを感じる。
ラストに演奏した「 スタンディング房総 」では千葉の台風被害を語った綾小路。彼らの地元への愛やリスペクトはどのバンドよりも強いのかも知れない。ヤンキーだし。ちなみにダンサーである、微熱DANJIの錦織純平、二階堂腱ヂも鹿児島出身。彼らもいつも以上の熱演だったように見えたのは、気のせいじゃないはず。
「 原宿いやほい -Extended intoro ver- 」、「 CANDY CANDY -Remix- 」、「 ファッションモンスター 」と国民的ソングを連発。
初めて観る人も多いであろう会場を爆発的に盛り上げ、ワンマンさながらの空気にしたきゃりーぱみゅぱみゅは、「 実はおばあちゃんが鹿児島県薩摩川内市に住んでて、子供の頃からよくお父さんの車で来ていたんです 」と語り始め、鹿児島人が歓喜。
「 昨日も黒豚とんかつとかき氷を食べて、鹿児島を満喫しました! 」と鹿児島への愛をしっかり伝えて、< 想像以上に近いの キミとの距離は 同じ景色見てる >と歌う「 キズナミ 」を披露すると観客との距離がグッと縮まり、会場に強い一体感が生まれた。
そして初日、大隅ステージのトリとして登場した、ヘス発起人であるタブゾンビが所属するSOIL & "PIMP" SESSIONS。
暗くなった会場に閃光が刺すような「 閃く刃 」で会場中を自身の音楽世界へ導くと、自信と誇りに満ちたデスジャズ・サウンドでオーディエンスの心と体を躍らせる。
心地よいグルーヴに体を揺らしたり、夜空に響くホーンの音色に浸ったり、掛け声を合わせたりと、彼らの音楽を自由に楽しむオーディエンスの姿を見て、僕はジャンルや決まりごとなど関係なく、極上の音楽をそれぞれのスタイルで楽しむ、この光景こそ、タブゾンビがヘスで作りたかったものだったのではないか? と想像した。
タブゾンビは自身のステージ以外にも昨年、ソイルの客演として出演してくれた椎名林檎や、翌日の与論ステージに出演した、星グランマニエ(from 氣志團)のステージなど、様々なステージにゲスト出演。
観客が音楽やヘスをより楽しめるように、様々なステージに率先して出演し、トランペットを鳴らすその姿は実に勇ましかった。
その他、鹿児島出身の宇徳敬子、城南海。メンバーに鹿児島出身者を擁するC&K、FLOWER FLOWER などに加え、長崎出身のSHANK、福岡出身の家入レオ、大分出身のSIX LOUNGEと、鹿児島や九州出身のアーティストはそれぞれが鹿児島や九州への想い、ヘスに出演する意味や意義をMCで語り、たっぷり気持ちを込めた歌と演奏を見せてくれた。
中でも印象的だったのは、2 日間に渡る薩摩・大隅ステージのアクトが全て終わった後、“CLOSING ACT” として与論ステージに登場した、奄美大島出身の城南海。
楽しすぎたヘスに終わりが近づき、余韻と寂しさを胸に帰路につく観客を温かく見送るように奄美のシマ歌を届け、最高の思い出をプレゼント。県外から訪れた人にはミュージシャンやライブアクトを通じて、改めて鹿児島という土地に興味を持ったり、九州の魅力を改めて感じた人も多いはず。
『 WALK INN FES! 』を始めとする、地元と音楽を愛する若者たちが音楽の街の基礎を作り、そこから音楽に目覚めたたくさん鹿児島人が『 THE GREATEST SATUMANINA HESTIVAL 』を訪れ、音楽への興味と見識を広げてより音楽が好きになり、鹿児島が音楽の街としてさらに活性化していく。
ヘスに出演したアーティストだって、あの盛り上がりや雰囲気を味わえば、きっと再び鹿児島を訪れたいと思うはずで、鹿児島人は良いライブを観る機会も増える。
自分でバンドや音楽をやってる人なら、本物たちのライブに大きな刺激を受けて、「 俺たちも絶対にあのステージに立ちたい 」と奮起することだろう。
大げさに言うと、僕はヘスに九州から生まれる新たな音楽ムーブメントの息吹を感じている。『 WALK IN FES! 』の主催者は「 10年前ではあり得ないくらい音楽の街になってる 」と言っていたが、10年後はもっとあり得ない音楽の街になり、多くのミュージシャンを生み出してることだろう。
文:フジジュン
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