落語『柳田格之進』
☁️…ナレーション
🏪…よろず屋げんべい
⚔️…柳田格之進
👩…お絹
👨🏻…よろず屋番頭とくべい
『柳田格之進』
江州、彦根の城主、
井伊家のご家来で柳田格之進、という人は
文武両道にすぐれた立派な、お侍
清廉潔白、曲がった事が大嫌いな人でごさいます。
ところが、
水清ければ魚棲まずなんてー申しまして
正直過ぎて人に疎まれ、上役の讒言によって浪人をしてしまった。
妻には何年も前に先立たれておりまして
今年18になる娘、絹と2人で
浅草、安倍川町の裏長屋住まいの貧乏暮らし
昨日まで、ふすまの風をいとっていたお嬢さんが
今では長屋の掃除、洗濯、針仕事、
父親に苦労はさせまいと言うので一生懸命に
働いている、大変に親孝行なお嬢さん
👩あの、毎日うちにばかり、
おりましては、お体にさわります
たまには、お出かけになっては、
いかがでございましょう
⚔️いやぁ、どこへ参っても面白い事はない、よい
👩あのぉ、この先の材木町という所に
碁会所がございました。
あすこに参りますれば、
お相手も見つかる事だと思います。
たまには碁でもお打つにまりましては👐
⚔️…おぉ、碁か、しばらく囲っていないな〜
よし、出かけてみるか
☁️っでー、何日か通っている内に、
柳田が見つけました、かっこうの碁がたきは、
馬道一丁目で質両替渡世をいとなんでおります
よろず屋げんべい、で
年恰好は柳田と同じくらい
その界隈きっての物持ちでごさいますけど
少しもぶった所がない折り目正しい誠に温厚な人柄
柳田格之進の方も浪人にありがちな
品性下劣な所は少しもごさいません。
「浪人しても私は武士だ」と言う、
凛とした所がありますんでお互いに気が合いまして
もー、それからは毎日時刻をたがえず
示し合わした様にして碁会所へ来て
2人でパチリパチリと碁を打っています。
🏪え〜柳田様
⚔️なんでござるな
🏪アタクシと柳田様でいつもここへ来てぇ
相手を変えずに、打っております、で〜
相手を変えないのでしたらここへ来る事はございまけん えぇ
手前どもへ、おいでになりませんか?
いえ、もうこっからすぐでございます
えぇ版石もありますし、ここよりは落ち着いて碁が打てると思いますが、いかがでこざいますぅ
⚔️ん〜構わんのか、
🏪いえいえそらーもー、
是非是非おいでにいただきたい
⚔️あぁ〜じゃ1つお邪魔するか
☁️なんてんで、
誘われるまんま、馬道一丁目のよろず屋宅へ
大勢の奉公人に迎えられて、
通されましたのが、ずーっと行った所にある
六畳間の離れ、縁側もございまして
あっちこっちに庭師の道楽が見られるという
結構な庭があります。
そこでお茶にお茶菓子、
けっこうな版石でもってパチリパチリと碁を打つ
何番か買ったら負けたりがあって
じゃあこの辺でそろそろ、てんで腰を上げよう
🏪うお〜、柳田様ぁ、なななんです
まだよろしいじゃ、ございませんか、
せっかく手前共へおいで頂いたんでございますから
お近づきの印と言ってわ何ですが
一口差し上げてたいとイヤ
そんなに固く考える事はございません
いえ本当の事、申しますとねぇ
アタクシが飲みたいんでございます えぇ
是非とも1つお相手していただきたいと思いまして
まーまあいーじゃありませんか
☁️断れない、しょうがないんで
腰をまた落ち着けるってーと
盤が片付けられて、代わりにお膳が運ばれてくる
🏪さーさーま、ひと口
☁️何と言うんでやったり取ったりが始まる
色んな話をしている
大変楽しい時を過ごして柳田が帰って来た
さぁーその日をきっかけに毎日の様に
よろず屋の方から迎えが来る
っと嫌いなもんじゃありませんから
出かけて行って
碁を打ってお酒を頂いて帰ってくる
っで 8月十五夜の晩でございます🌕
このお月見をよろず屋の方では年中行事にしてまして旦那から番頭、奉公人、小僧までが
揃って、お月見を楽しむ
「今夜、月見でごさいますのでお嬢様もご一緒に」
ってんで、誘われたですけども
お絹さんは出かけられない、っと言うのは、
なりがございません。
ましてや年頃でございますから
男は構いませんけど女はそうはいかない
つぎはぎだらけの着物では、
他所へはうかがえません。
👩「お父上、お一人でどうぞ」というんで
いつもの通り柳田が1人で出かけて行く、
10畳の座敷にバァーッとご馳走がならんでおります。
好きな物をとって縁側ですとか庭のあちこちに
縁台に腰を下ろして、皆んなでもって月見をする。
🏪はぁ〜、一点くまなく冴え渡りまして
誠に、美しいもんでございますなぁ⤴︎
⚔️うん、さよう あ〜見事でござるなぁ
🏪えぇ綺麗でございますが柳田様
月もよろしゅうございますが
こう眺めておりますと、やはり飽きて参ります。
いかがでございます、
今日はまだお相手をしていただいておりません
⚔️おぉさよーか
☁️なんてんで、2人でもって離れへ行って
パチリパチリと碁を打ち出した
1番買って1番負けて、
「今日はここらで切り上げておきましょう」
と言うんで元へ戻って、
また皆んなと一緒に食べたり呑んだり話したりで、
いつもより遅くまでよろず屋で遊んで
柳田は帰ってった。
👨🏻え〜、旦那、お呼びでございますか⤴︎?
🏪おぉトクベイか、こっちへ入ってくれ
どうしたい、もうすっかり片付きましたか?
👨🏻へぇ
今日は本当にありがとうございました へぇ
もう毎年この月見、奉公人一同
もー大変に楽しみにおりまして、
皆んなも喜んでおりまして
🏪そうかい⤴︎
いやー、毎年毎年の決まり事がなぁ
出来ると言うのは大変幸せな事ですよ〜 ねぇ
それと言うのが普段からお前さん方が
一生懸命店の為に働いてくれるんで
うちがそう言う事が出来ると言う訳でな
私の方から礼を言いますよ
👨🏻いやこれ恐れ入ります
何か、ご用でございましょーか⤴︎
🏪いや〜早速、商売の話で申し訳ないんだけど
ほら、なんかあの、
本所のお屋敷の方からお下げ金が
なんか50両あると言う様な話していたが
あれは、どーなったい
👨🏻へぇ?どう どーなったって…ぁのー😮
旦那にワタクシ、渡しましたよ
🏪へ〜え🤔いつ?
👨🏻いつって今日ですよ
🏪…今日のいつだい??
👨🏻ですから〜旦那、碁は困るんでございますよ
いやワタクシが帰って来ましたらね
旦那の姿が見えないんですから、えぇ
「どうしたんだ」って聞いたら
離れで碁を打ってらっしゃるって
それから急いでワタクシ行ったんでございます えぇ
で〜、受け取って参りましたが、
どういたしましょう?ってそう言ったんですけども
もう碁に夢中で上の空でごさいます えぇ
何も返事をして下さいませんので
しょうがないから、
じゃあとりあえずココに置きますよ‼️って
旦那の膝の上に置いたんでございます
そしたら「あぁ分かったもういいから向こう行ってなさい」ってんで
それから私さがって来たんですよ
そん時に私、見てましたらね
ちゃーんと膝の上でしっかりと手で
押さえてらっしゃいました。
えぇ財布ごと置いたんでございます。
🏪あぁ〜〜あ! そーか、そーか
いやいやいや思い出した、うーん
そう言えばな、うん、金包をこう
オモチャにしながら、私は碁を打ってた
あ〜今思い出した
確かに受け取った受け取った
そうだった、そうだった、うーん
いやもーうすまない、
いやいや、いつもそーなんだよ
夢中になるとなー、うん んあ〜…
えーついつい、このぉ…その… ん⤴︎?
おかしいな〜… どうしたろーな?
👨🏻へ?あ、あの、ないんでございますか?
🏪ん、どこに置いたか
👨🏻やですよ、私は間違いなく旦那に渡しましたよ
🏪そそら〜そら〜分かったんだ
間違いなく私は受け取った覚えてます
そら覚えてるんだけど、
離れに、置いたな?ちょっと見て来ておくれ
どうしたい?
👨🏻ございません、🏪ない⤴︎?
👨🏻えぇ、今ミネキチとシゲゾウを連れて
一緒に探させましたが えぇ
何処にもございません。 🏪よく見た?っ
👨🏻えぇよく見ました、
🏪ん〜こらおかしいーなー
あぁ、あのなー、ひょっとすると
月見をしていた方にありゃしなかい?
よく見ておくれ
👨🏻行って参りましたが何処にもございません
いや、もう、えんの下まで見たんでございます
ございません
🏪ん〜🤔こらおかしーなどーしたんだろーな
👨🏻旦那、ことによるとっ、
柳田様がお待ち帰りになったのかもしれませんな〜
🏪おいおいおい
滅多な事言うんじゃありませんよ😠
何を証拠にお前そんな事言うんだい⤴︎
👨🏻いえっ、証拠がある訳じゃないんでございますが
だってそーでしょ、2人で碁を打っている所に
ワタクシがお金を持ってって
旦那に渡したんでござーます えぇ
その旦那が持ってない、知らないと言うんですから
あとは柳田様という事になるじゃぁありませんか
🏪ぃ〜や、んなこたない、んなーこたーないよ
ねっ うん、お前のさー、そりゃあね
お前の思い過ごしという奴だよ うん
あの方はそんな事をなさる方じゃない
大変に!立派な方なんだ あぁ
そんな事はない!
👨🏻立派な方って、おっしゃいますけども
あの方は浪人なすってらっしゃるんでしょ??
本当に立派な方だったら
浪人なんぞする訳がないんです
何かしくじりがあったんで、
その〜ご浪人をなさってらっしゃる
それに、あのー、
ワタクシ思いますのには、
どんなに偉い方、立派な方でも、ついつい出来心と、いう事にがありゃ〜しないかと思います えぇ
前に何度かお宅に伺った事がございます
安倍川町のあの裏長屋住えぇ
これはもうぉ、ヒドイお暮らしでございますよ😩
そういうさなか目の前にその、
金包があれば思わず、知らずという
🏪いや、んなこたーないったんだよ😠
何を言ってんだ!
だいちお前、間には盤がありますよ⤴︎ えぇ!
私の膝の上に乗ってる金包をどうやって柳田様が
おとりになるんだい?
👨🏻そら何でございます〜えー
旦那が碁に夢中になって、
その金包から手をはなしましてね
そん時につるっと膝から滑り落ちて転がって
盤の下をぬけて向こうへ出ます
柳田様がひょっと見ると金包、
相手は碁に夢中で考えてる
思わず知らずこれを、たもとにしまう、
懐に入れるという事がありゃ〜しないかと思い
🏪いや〜ないよ、お前、え!😡
そんな事はない、うんあー、それはねーあの
どっかから必ず出てくるよ
👨🏻いええ、
アタシはどーも気になって仕方がありませんから
ちょっとあのー、これから、
柳田様の所に行って聞いて参りましょ😤
🏪いーよ、いーよ、いんですよお前😡
余計な事をするんじゃない、私の金なんだから
もうもういい忘れないさい
あ、必ず何処かから出てくるから
☁️これは、もー、
番頭としては面白くも何ともない
小さい時分からこのウチヘ来て
一生懸命忠義を尽くしてきた
それを昨日今日知り合った得体の知れない浪人者を
大変ひいきにしている。
これだけでも面白くない.そこへ持ってきて
「ひょっとするとあの方じゃないですか」と
言っただけで旦那が血相変えて怒っている
もー面白くない
このままほっとく訳にはいかない、てんで
旦那に内緒で、あくる日なると
👨🏻ごめん下さいまし、ごめん下さいまし
⚔️おぉこれはこれは、よろず屋のご支配か
さぁさぁお入りなさい
まぁどうぞお上がりなさい うん
昨夜遅くまで、すまなかった
👨🏻いえっどういたしまして🙇♂️
手前共の主人、大変喜んでおりました
えぇ〜今日は…ちょっと…
柳田様にお伺いしたい事があって伺ったんで
ございますがな ⚔️おぉなんだ?🙄
👨🏻えぇ実は…昨日ぉ手前共へおいでになって
あのー、月見の途中で、離れで旦那様と柳田様、
2人で碁をお打ちになりました
⚔️おぉいかにも打った
👨🏻で〜あん時アタクシがね
あるお屋敷から頂いて参りました50両の金を
旦那様に届けに行ったんでございます
⚔️ん、ん、ん、そういえば何か
その様な話をしていたな…それがどうした?
👨🏻所が…その50両の金が
無くなっちゃってんでございますよ😏 ⚔️うん🙄
👨🏻いくら探してもどこにもないんでござーます
えぇ
旦那もってないで知らないってんでね
事によると😏
柳田様が…ご存知じゃ、ないか、と
こう思って、アタクシが伺ったんでございますが
いかがでございますしょう? ご存知ありませんか
⚔️…しからば、その金を… ワシが盗んだとでも
👨🏻いいえいえそっ、
盗んだとはアタクシ申してありません えぇ
思い違いと言う事もございます
昨晩は柳田様も
たいそうお酔になってらっしゃいましたから
その包をタバコ入れか何かと間違がわれて、
しまわれたっと言う事がありゃ〜しないかと思い😏
⚔️😡黙れっ!
いかに窮していると言えど、酔っ払って
金包とタバコ入れを間違える
ましてや、人様の物を持ち帰るような!
そこまで落ちぶれた柳田ではないっ‼️
👨🏻いやいやですからアタクシは
盗んだなん言うことは一言も申しておりません。
もし万が一何かでお間違いになって、
そう、そういう事は?な、ない?と
あ〜そうですか えぇ分かりました
え〜…柳田様にそういう事はない、知らん
と言われれば、もうそれまででございます えぇ
大変失礼をいたしました。🙇
ただ、ワタクシもよろず屋の番頭でございますんで
50両と言えば大金でございます
それが無くなって、
そのまんま放っておくと言う訳には参りません
これからまた、家中をよく探します
探しまして、出てくればよろしゅうございますが
もし出て来ない時には…えぇ…御上に届けます
その時には柳田様もその場にいらしたですから
きっとお調べを受ける事になると思いますが、
どうかその、おつもり様で、えぇいて頂いて😏
⚔️待て何っ….奉行に届けると申しか? 👨🏻えぇ
⚔️それは…それは迷惑な話であるな
👨🏻いたし方ございません
⚔️いや〜それは困る、
何とか思いとどまってくれると言う様にはならんか
👨🏻いえそう参りません
えぇやっぱり上沙汰にしないと
具合がわるぅーございますから、
⚔️ん〜…それは困ったな
誠に迷惑な話である、何としてでも届けるか?
………小)よしっ
50両、拙者が出そう
👨🏻ぉ、さいでございますか😏
ありがとう存じあげます
⚔️断っておくがワシは…盗みはしておらんぞ
👨🏻いえ〜ま〜よく間違い事と言う物はありますから
⚔️そうではない、
天地神明にかけて、その金は知らん
ただ奉行の調べは受けとーわない
今はないが、
明日の昼過ぎに来なさい、それまでに整いておこう
👨🏻あ、そーですか、はい分かりました
よろしくお願い致します🙇
☁️番頭が帰って行く、1人になって柳田、
しばらくじーっと考えておりましたが
スズリを引き寄せまして
スラスラっと1通の手紙をしたためました
⚔️絹や、絹🗣️
👩お呼びでございますか?
⚔️すまん、ちょっとココヘ来てくれ
実はこの手紙をすまぬが、
番町のおば様の所へ届けて来てくれ
でな〜、しばらく会っていなかろー
今夜は、向こうに泊めてもらいなさい
で明日、
1日ゆっくり遊んで夕暮れに帰ってくれば良いから
分かったな、よろしく伝えてくれ
👩かしこまりました🙇♀️
あの…よろず屋の番頭と
お約束なされました50両のお金どの様にして
おこしらいに、なるおつもりでございますか🙇♀️
⚔️ん、おぉ、聞いておったか🫣
あれはな〜、心配する事はない、ぅ〝〜〜
ある物持ちを知っておってな
うん、
何か困った事があったらばすぐ
訪ねる様に言われておる、
そこ行って話をすれば、すぐに何とかなるであろ〜
いや、心配はないのだ、
と、とにかくこの手紙を届けて来ておくれ
👩はい、お手紙は確かに預かりました…
あの…絹からお願いがございます ⚔️ん?何だ?
👩お腹をお召しになる事だけは、
おととまり下さいまし
⚔️何?拙者が腹を切ると申すか?😲
👩はい…あらぬ疑いを掛けられたのが悔しくに
父上はお腹をめして、武士の赤き心をお見せになる
おつもりでございましょうが、
何と申しましても相手は町人でございます
父上の気持ちが通じません
柳田は金を盗んだのが露見したから
腹を切ったと言われては何にもなりません
どうぞ、おとどまり下さいます様に🙇♀️
⚔️…そうか…
お前には隠し事は出来んな…ん⤴︎ 絹
ワシは今まで曲がった事をした覚えがない
それなのに浪人をした
また今、盗みもせんのに盗んだとうたぐられて
誠に無念である、
それは確かにこの界隈きっての物持ちと
おはうちからした浪人と
2人きりの所で金が紛失をした
ワシがうたぐられるのも無理からの話ではあるが
何とも情けない、
奉行に調べを受ければ、
しまいには身の潔白が明かされるが
一旦受けた汚名は中々ぬぐえんもんだ
柳田は盗みの角で調べを
受けたと言う事が広まってみろ
ご主君もまた、我が家の家名にも傷がつく
それ言えワシは腹を切って
👩是非ともおとどまり下さいまし
腹をおめしになっても無駄でございますから
おやめくださいまし
それより絹に考えがございます
どうか親子の縁を切っていただきとーございます
⚔️何ぃ!?親子の縁を切れとはっ
👩そう致しますれば柳田の家名に傷がつきません
アタクシが廓とやらに身を沈めて
50両のお金をこしらえます。
どうかそれを
よろず屋の番頭に渡してくださいまし、
盗まぬ物なら後日必ず頼り出るはずでございます
その時はゲンベイ、トクベイを2人を斬って
立派に武士道をお立てくださいまし🙇♀️
⚔️何を申す、ん?💦
お、お前にその様なこと
👩いいえ、絹は武士の娘でございます…
☁️この一言で柳田は何にも言えない
「そうか、すまんな許せよ」と言うんで
同長屋のゼゲンの何がしに話をする
「へい、よろしゅうございますよ」と言うんで
すぐにお絹さんを連れて吉原に、話は決まって、
あくる日の昼前に柳田の所に50両の金が届いた
👨🏻ごめんくださいまし、
⚔️誰だっ! ん…トクベイか…こっちへ上がれ😠
さっ、50両の金が出来た
よく改めて持って行きなさい
👨🏻へっ、あさよ〜で、ありがとう>
⚔️…間違いなくあるか!?
👨🏻へい、ありがとうございました
どーも、本当に助かりましてたでごいます
ほっほっほ😆
思い違いと言う事はあるもんでございますな⤴︎😏
⚔️そうではない!
無くなった金はワシは知らんぞ!😡
…ま、何でもよい、それを持って行きないさい
所で、後日、頼り50両の金が出た
その様な時には何とする?
👨🏻へ?何ですか??
あ〜あとで他から50両の金がww😂
へへへ、そんなーこたーありませんw
もしそんなよーな事になりましたら
お詫びの印に、
こんな首でよろしければ柳田様に差し上げます
1つじゃ寂しいですから、
あるじ、ゲンベイの首と2つ一緒に揃えて差し上げますからw
⚔️そうか…その言葉を決して忘れるではないぞ
👨🏻へい、ありがとうございました
旦那ぁ⤴︎無くなった50両の金が出ましたよ😆
🏪ほれ見ろ、
ななたび訪ねて人を疑えてー事がある ん
よく探したんだな、どっから出て来た⤴︎?
👨🏻えぇ、やっぱり柳田様がお持ち帰りになってた
🏪何ぃ〜?
👨🏻実はあんまり気になりましたんでねぇ
昨日行ったんでございますよ柳田様の所へ
「ご存知ありませんか?」って聞いたら
始めは「知らない知らない」言ってたんですが
奉行に届けます、と言ったら
それは困るってんで
拙者が出そうと、こう、おっしゃって
明日の昼過ぎに来てくれ、てんで
今さっき行ってもらって来ました。
間違いなく50両ございます。どうぞお納めを
🏪馬鹿野郎っ‼️
なんて〜事をするんだお前はっ‼️ え〝⤴︎‼️
私がいいと言ったじゃないか‼️
なんて余計な事をするんだ馬鹿‼️
本当にぃしょーがないヤツだなー
よしんば、
柳田様がお持ち帰りになったとしたって え⤴︎
あの方がそうするんだ、よくせき、の事なんだ
余計な事をしやがって本当に
早く行って返して来なさい‼️
あぁ〜ちょっと待ちなっ、私も一緒に行くよ!
☁️主従でもって急いで安倍川町の裏長屋へ
柳田の所へ行って見ると、
表はも〜釘付けになっていて入れません。
家主立ち会いの元で戸をこじ開けて
中へ入ってみると、
もう柳田親子の姿はございません、
壁に紙が貼ってありまして、
ぶっつけがきで家主に当てまして
『長らく世話になったが家あって対、
引き移る者なり、道具ばんたん)万端は
宿ちんとどこおりの方にお売り下され
江州(ごうしゅう)浪人、柳田格之進』としてある🖌️
あ〜〜大事な友を無くしたしまったと
もうガッカリして、よろず屋はウチに帰って来た
🏪あぁ、何としてでも、もういっぺんお会いして
何とかお詫びをしなきゃ私の気が済まない、
いいかい、みんなどっかで教えておくれ
☁️っと言うんで出入りの者や何かにまで
み〜んなに頼んだ
も〜毎日毎日、柳田の事ばかり考えている
…
所が
去る者は日々に疎し(うとし)何て事を言いまして、
だんだんだんだん日が経ってくると柳田の事も
忘れがちになっていく、
年の暮れになりまして、
よろず屋は店を休んで大掃除
小僧のサダキチが離れで煤吐きをしている
額を動かすと裏から何やら包が出て来た
👦旦那様、旦那様
🏪ん?何だ?ん?どれ
…これだ、十五夜の晩に無くなった50両の金だ
そうか、思い出したよ
碁の途中で私がはばかりに立ったんだ〜
不浄な場所へ天下の通用を持って行くのは
なんか気になったんで、
あの額の裏へ、ヒョイと挟んだ
用を足してあと
そのまんま忘れて柳田様と碁の打った
してみると、
柳田様はあの50両を一体どうなさったんだろう
言わんこっちゃね〜やトクベイのヤツは、
おい、番頭さんを呼んで来なさい!
👨🏻旦那お呼びでございますか?🏃
🏪うん、
十五夜の晩に無くなった50両が出ましたよ⤴︎
👨🏻えぇ出ましたよ?
柳田様が持ち帰りになった物を返してもらって
あの時、旦那に渡しましたよ、受け取りに
🏪そーではない😠
柳田様がお持ち帰りになったんじゃないんだよ!
えぇ⤴︎
今、サダキチが離れの掃除をしていて
額の裏から出て来たんだ
👨🏻あんな所から??🤔
そこは探しませんでした、
どうしてあんな所にっ??
🏪いや〜私が悪いんだよ⤵︎
碁の途中で、はばかりに立って
あそこに挟んどいて忘れてしまったんだ🤦♂️
はぁ〜😔
マズい事をしたな〜
これから手分けをして、
すぐに柳田様を探さなくちゃ駄目だ
👨🏻ぃえ、それ…それは…おやめんなった方が…😶
🏪どうしてだい??え?
👨🏻実は…あの、柳田様から50両を受け取った時に
もし、後日、他から出た時にはどーする?
っと言われましたんで
そんな事はないと思ったんでお詫び印に
こんな首でよかったら差し上げます」
とそう言っちゃたん
🏪差し上げなさい、差し上げなさい
そんな首がついてるから間違い事が起きんだから
無い方がサッパリしていんだ
👨🏻それ1つじゃ寂しいと思ったんで
旦那の首も一緒に差し上げますっと
🏪ない〜😱まー仕方あるまい
あれだけのお方に汚名を着せたんだ
何としても探しだしてな、
お詫びをしなくちゃいけない
👨🏻いえ〜ですけども、このまま放っておけば
🏪何を言ってるんだいお前は!え〝⤴︎‼️
お前だって知ってるじゃないか、
あの苦しいさなか、
50両の金をおこしらいになったんだ
よっぽど、よっぽど、ご苦労なすったに違いない
何をなすったか分からないが、
黙っておく何て事は出来ない私の気がすまない
あのみんなで手分けして、お〜いみんなこっちに
あんなー、掃除はしなくていい、
以前、ウチに来ていたご浪人の柳田様
柳田様を探し出すんだ、いいかい、
探さした者には、褒美の3両やるよ〜
早く探し来ておくれ、頼むよ〜🗣️
👥👥👥へ〜い
☁️っと奉公人は喜んだ
掃除はしなくていい
何しろ3両と言えば大変なお金
柳田が見つかれば番頭のトクベイが切られちゃう
そうすると2番番頭が1番番頭に3番番頭は2番番頭に
なれるんですから、ほうぼうに探しに行く
そう簡単には見つからず
年が明けます
元旦、2日、3日、4日、4日の日でございます
毎年決まっておりまして、
主人ゲンベイの代わりに番頭のトクベイが
山手の方のお得意様を年始回り致します。
かたぎぬ、袴、裃を着まして、
お共に頭を連れ、ほうぼう回って歩く
昼過ぎから白い物がチラリ、チラリと降り始める
その帰り道、
湯島の切り通しの坂の上へかかった時には、
辺りは真っ白でございます
夕景で少し暗くなって、
足元、気をつけながらゆっくりと下へ降りて行く
下から上へ上がってくる一丁のあんぽつの駕籠
かたわらに侍が1人歩いてあります。
長十郎頭巾に、すす竹ラシャのながガッパ、
つか袋をいたしまして、大小刀をさして、
あし駄を履いて、しぶじゃの目傘を差して、
カゴの脇をシュルシュルと歩いてくる。
坂の下までカゴに乗って来てやつを
一旦降りて歩いて上まで登ると言うのは
カゴ屋へ対しての思いやりでございましょう。
👨🏻はぁ〜見てごらんよ頭、
立派な装いだが、できたお侍だ
☁️スッとすれ違う途端に
⚔️そこへお通りになるのは、
よろず屋のご支配、トクベイ殿ではないか?⤴︎
👨🏻へ?へっ、いかにもワタクシはよろず屋番頭
トクベイでごさいますが、
どちら様でございましょう
⚔️柳田格之進だ
👨🏻はっ🙇♂️お、お久しぶりでございます
⚔️しばらくであったな、みなさんおかわりないか?
👨🏻へっ、お陰様で皆、達者に暮らしております
柳田様も、たいそう、ご出世の様子
お言葉をかけていただかなければ分かりません
⚔️ん😊おかげで、故主に帰参がかなって
今では江戸留守居役で300国頂戴しておる
よろず屋かたへ挨拶に
伺わなければと思っておるが、
心にほっせぬ事があって未だに、
無沙汰をしておる
ゲンベイ殿に、よろしく伝えてもらいたい
👨🏻へ、しょ、承知致しました。
⚔️いや、お忙しいところを 呼び止めて
失礼いたした では、御免
👨🏻お待ちください! ⚔️何でござろう
👨🏻あのッ…柳田様ッ…!
もッ…申し訳ございません!
⚔️これこれ、
そんな 雪の上に 手をつくものではない
いかが なされた? さ、お立ちなされ
👨🏻いえッ! 頭を 上げる訳わけには まいりません!
わたくし、柳田様に、
申し上げねば ならない事が ございますッ!
⚔️……何でござるかな
👨🏻十五夜、月見の晩に紛失しました50両、
て…手前どもの方より出ましてございますッ!
手前どもの主あるじが、
離れの額の裏に置いて、それを忘れ…
去年、くれの煤払いのおりに、
見つかったのでございます。
それをワタクシは柳田様がお持ち帰り、いやっ
お盗りになったとばかり…申し訳…ございません
⚔️なん、あの金が出たか😲!
そうか…なんたる今日は吉日なるぞ! うん
あのおり、約束した事があった
よもや、忘れてはいまいな? 👨🏻…へい
⚔️今日は早く帰りなさい、明日があるから
今夜は湯に浸かり、体をよく洗って
とりわけ首筋の垢を落としておくように 👨🏻😱
☁️フラフラになって奴さん帰って来た
👨🏻旦那…
🏪聞いたよ!うん柳田様に、な、で、どーなった?
何、明日昼、来ると?そーか
あのな、こんな時に商売の話でスマンが、
お前明日の朝、
早くに品川の辻様の所に行ってもらいたいんだ
その後、目黒の山田様の所に回って、うん
手紙を書いておく、
返事もちゃんと受け取って来ておくれ、
いいかい、分かったな!
明日早いから、もう今夜寝なさい
☁️あくる日になる、てーと昼過ぎに
しん物を脇に抱ええました柳田格之進!
よろず屋の前に立った
⚔️許せよ
🏪はっ、おいでなさいまし、
さっさどうぞこちらに
ご無沙汰を致しております
⚔️いやいや、こちらこそすっかり無沙汰致した
つまらぬ物であるが、お納めくだされ
🏪これはこれは、ありがとうございます
遠慮なく頂戴を致します。
⚔️懐かしいの〜
そなたと、ここで碁を打っておった日々が
👨🏻ワタクシもでございます…
あの日、以来、もう、碁は打っておりません…
柳田様、
その節は大変に申し訳ない事を致しました
あのおりに、柳田様の所へ参れ申しましたのは
ワタクシでございまして、
番頭のトクベイは何にも知らずに
柳田様の所へ参りました。
あれには罪がございません、
まだ先のある若者でございます
年老いた母親もおります、
どうか、あれは何事も知らずにやった事ですから
どうぞワタクシをお打ち下さいまし
👨🏻何言ってるんです旦那!
🏪おい馬鹿使いに行かなかったのか
👨🏻冗談言っちゃいけません
そんなこっちゃないかと思ったんで
私はウチにいたんでございますよ
柳田様、それは違います、旦那じゃございません
私が勝手に行ったんでございます
どうぞワタクシを切って下さい
年老いた母親なんて居ないんでございますから、ね
どうぞ1つワタクシを切って下さいまし
🏪何を言ってるんだい、いえ、
悪いのはワタクシです、
これは助けてやってくださいまし
👨🏻い〜えワタクシをお切りください
⚔️黙れ黙れ黙れ😡
今更になって、その様な事を申して何になる
両名とも切り捨てねば…
娘、絹に対しての申し訳がたたん
そこへ直れ!
🏪へ〜仕方がない…
☁️主従でもって手を合わして、
一生懸命に念仏を唱えている
柳田はスッと立ち上がると
羽織を脱ぎまして鞘から刀を抜いた
ゆっくりとした動作で刀を上段に構え
ふんッ‼️っと
気合一閃格之進は 刀を振り下ろす
血しぶきとともに、ゲンベイ、トクベイ
両名の首が 畳の上に ごろごろッと転がる
かに思われた。
しかし 2つの首は未だ
その、あるじたちの胴の上にあり
刀を鞘に納め、
「ふうー」と息をひとつ、ついた
柳田の足元を見れば
床の間にあった碁盤が真っ二つになっております。
🏪はっ!柳田様、お切りになりませんので
⚔️主従の情をまの当たりに見て
柳田の心のきっさきが鈍った
無念であるが両名とも助けて使わす
🏪👨🏻ありがとうございます、
ありがとうございます、
所で先程、娘、絹に対しての申し訳が立たぬっと
おっしゃっておりましたが
お嬢はいかがなされました?
⚔️あのおり渡した50金…娘絹が、
吉原へ身を沈めて、こしらえてくれた物だ
🏪えぇ‼️😱
それはどんでもない
おいトクベイ何をしているんだ、
早くお店へうかがってお嬢を迎えに行って来なさい
☁️急いでこれから、みんなでもって
吉原へ行ってお嬢さんを身請けしてきた
⚔️絹、すまん、
何としても、この両名切る事が出来なかった…
不甲斐ない父である…勘弁してくれ…
👩お父上の気が済みますれば
それで結構でございますんで
☁️と、まーこう言う事で話は終わったです
しかし、人の縁てーのは不思議なもんでして
その事があってから前より一層、
柳田とよろず屋とは、ちかしくなりまして
しばらくたつと、
お絹さんと番頭のトクベイとが一緒になりまして
夫婦養子でよろず屋へ入った
しばらくたちまして、生まれたのが男の子
その子を柳田が引き取りまして
柳田の家名を継がせ、
次に生まれました男の子、
次男をよろず屋の店を継がせると言う
堪忍のなる、堪忍はたれもする、
ならぬ堪忍するが堪忍
柳田の堪忍袋、碁盤切り、
と言う一席でございました。
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