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TVアニメ「サクラクエスト」を観終わって

「サクラクエスト」は「間野山市」を舞台としたアニメです。
絵に描いたような何も無い田舎である間野山市、何も無い田舎故に若者達は「何か」を探して上京してしまう、今や何処にでも有り余る田舎です。そんな間野山を救う為、5人の勇者達がこく普通の民衆として社会と戦うお話。
言わば社会問題を取り入れたアニメでした。

そうですね。私はP.A.WORKSをとてもいい作品を出す制作会社だと思っています。後々働く女の子シリーズと呼ばれる「花咲くいろは」からP.A.WORKSの名前を知って、それからずっと好きでした。もちろんその期待に裏切られた事も沢山ありましたけど、2015年あたりからちょっとアニメから離れた時期があったので、それまではほぼ観てました。今でもP.A.WORKSの作品で一番好きなアニメは「花咲くいろは」です。

P.A.WORKSの2011年作「花咲くいろは」

私の中で「花咲くいろは」は最高のドラマです。最高のアニメではありません。それはスタァライトなので。あくまでドラマとしてです。そもそも普通のTVドラマとか全然見てないのですが、それでもドラマとしての「花咲くいろは」は見事なものだと思います。24話ずっと話の激流に飲み込まれてましたし。正直に言って今見直したら評価は下がるでしょう。2011年に観たアニメだから許せたのも沢山あると思います。その時の私はまだ堅苦しい大人じゃなかったから「これはこうだからダメ、あれはああだからダメ」とか言わなかたんですよ。

その点を考慮すると2017年作ながらも最近見たサクラクエストは運が悪かったとも言えるでしょ。でもP.A.WORKSに向ける私の期待には見事に応えてくれました。
そうでした。以前私から「見てるけど面白く無いからおすすめは出来ないよ」みたいな話を聞いた方からすれば、「こいつ話が違うぞ」って考えるかも知れません。でも言い訳をさせて頂くと、お話が面白くなってきたのは2クール目に入ってからで、8話あたりまでは本当に「はっきりと面白くない」が本音でした。

王冠とスーツ、似合わないからこそドラマが生まれる……はずでしたが?

1話は面白かった。私はそういう突然な入りが好きです。だけどその後の話がちょっと……だったんですよね。まぁ面白くなかっただけで別に「ダメ」のレベルではなかったんですが。
それで私はその理由を考えてみました。2話から13話まで何が面白くなかったのか?良い所こんなにあるのに?

  • 主人公達はみんな可愛い女の子(年齢設定上は大人だし女の子じゃないけど)

  • 流石のP.A.WORKSの作画は安定して良い。

  • キャラクター達が抱えてる悩みも理解出来る。

それなのに何故?
答えはドラマとして弱くなったからです。キャラ同士の絡み方が良くなったと言いますか、見処が弱いと言うか……。
説明すると最初の入りである、主人公の「木春由乃」が何らかの間違いで間野山にやってきて、最初は間違いだったけど国王(観光協会)の仕事である「間野山の町おこし」をすると決めてから、ドラマが急激に弱くなったんです。

「で、町おこしとは?」

由乃は最初から何をすれば良いのかの問題にぶつかります。同時に、私もぶつかりました。このアニメは、由乃に何をさせたいんだ?何をさせて、視聴者の私に何が伝えたいんだ?それが掴みづらかった。普通だったら私がそのメッセージを掴むまで興味を保ってくれるのが、由乃を含め5人が集まる切っ掛けと意気投合に纏わるまでのドラマになるはずです。個人の悩みとこのアニメが示すメッセージとの繋がり、ちょっとは刺激的な面白さも必要。でもそれが弱かった。これが私の感想です。

だけどなんと、1クール目の危機イベントを乗り越えた後からは面白くなったのです。5人体制が整った後から、町おこしに本気で挑み始めてからの話は十分笑えたし面白かった。弱い伏線とか、アニメだからの現実ではありえない解決とか、引っ掛かるのはあったけど、それくらい別にいいにできるアニメでした。
そしてクライマックスには最初の質問だった「町おこしとは?」にも、見事に応えてくれましたから、大満足です。

「でも社会問題は解決出来ない」

サクラクエストが触れた地方問題は良く知っています。私は都会生まれですけど母の故郷は本当にど田舎です。母は山奥の何も無い田舎で畑と一緒に育ち、高校を卒業して都会に出たと聞いてます。父は始めて母の実家に行った時驚いたらしいんです。本当にこんな田舎が実在するんだと。
作中の間野山は、多分私の母の故郷よりずっとマシです。ネタバレですが(別に重要ではないけど)間野山は隣の市との合併が検討されます。だけど母の故郷は本当に合併されて、もう名前もなくなった、ど田舎中のど田舎ですから。
そんな訳でちょっとだけならそう言う問題は昔から耳にしていました。だからこの話の結末も見えています。辛い現実だけど町おこしは大抵失敗して遠からず無くなるでしょう。それでも足掻くのが人間だと思うだけです。消えて終わるまで抵抗する。

私は今住んでる場所に対して愛着は持ってません。ここから10kmくらい離れた生まれ故郷も別に名残惜しいなんて思った事ないし興味もありません。学生時代の友達も今はそこに行ったって誰も住んでいませんから。故郷は土地でもあるけど結局は人間です。知らない人しかない場所は故郷と呼べないんです。だから他人の帰りたい故郷が無くなるのを見ながら一緒に苦しい気持ちになってるんだと思います。そんな帰りたい故郷なんて持ってないからこそ大切にして欲しいだけです。勿論これは偽善です。別に私から手伝う気なんてありません。

同じくサクラクエストもこの地方問題に正しい答えなんて出せません。
「誰もいないなら私がやる」「大人の私たちが頑張るしかない」
これがサクラクエストが出した精一杯の答えです。

アニメだけでなく社会問題に触れてる作品は山ほどあります。メッセージに埋もれて話が潰れる作品なんてほぼでしょ。問題視するだけで何も残らない。でも娯楽の為の作品なら、解決出来なくても面白ければ良いんです。

サクラクエストは面白かった。
良い人間讃歌は聞いてるだけで燃えてきます。焚き火みたいなアニメだったけど、それで良い。

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