見出し画像

「きらさく」のあと話。その5。

〇「きらめく花の咲く話」解説

「きらめく花の咲く話」は一人芝居の短編の物語ということで、お話全体の内容をいくつか端折ってお送りしました。
今回は物語全体の設定や世界観などの解説をさせていただきます。
早いものでイベントからもう二週間も経ってしまいましたが、頭の中に残っている物語の補足にしてくださいね😀

・舞台設定

「シアワセの花の街」
色とりどりの花が咲く、美しい街。
この街に生きる人々はみんな生まれた時から幸せでそのまま死ぬまで幸せに生きることの出来る街。
この街での「シアワセ」とは幸福な気持ちの事を指す。
街中に咲き誇る花々が、人々の心に幸福な気持ちを宿してくれる。
花の恩恵があればこそ、この街はみんなポジティブな気持ちで安らかな日々を過ごすことができ、泥棒や強盗などの犯罪なども発生しない。

「街の人間全員が幸せなら、他人の幸せを踏みにじる者が現れるわけがないでしょう」(語りのセリフ)

しかし、
街にシアワセをもたらす花には秘密があった。
街中に咲き誇る花の正体は元は聖女と呼ばれる人間だったのだ。

「聖女の存在」
聖女は街によって選ばれる。
聖女に選ばれた者は街の大聖堂で街のシアワセの為に祈りを捧げ続ける。
祈りを捧げることで聖女の命は街に吸い取られ、やがて聖女は一輪の花と化し、街中に咲き誇る花の一つとなる。
代々の聖女たちの命によって花は幸福を人々に与える。
選ばれる聖女の基準は不明。
また、祈りを捧げ始めてから花に変わってしまうまでの期間も不明である。

・登場人物

「アイリス」
街に訪れた根無し草の泥棒。
これまでにたくさんの街を渡り歩き、気に入ったお宝があれば何でもかんでも盗み取ってしまう悪党。
性格は自分勝手で善悪の基準は自分自身の感覚を優先する。
盗みの腕は確かで狙った獲物は逃したことがない。捕縛されたとしても牢獄から簡単に抜け出す程度の能力は持ち合わせている。

「いやだよ、勿体ない。私が私の努力で盗み取ったもんを、なんで見ず知らずの連中にほいほいあげなきゃいけないんだ?」

シアワセの花の街の噂を聞きつけ喜び勇んで来たものの、街の人々の平和な顔にあきれ果てるが、聖女の話を耳にして聖女の秘密を暴こうと大聖堂に忍び込む。
大聖堂で街の聖女マリーと出会い、彼女の運命を知ることでアイリス自身の考える「本当の幸せ」をマリーに尋ね、マリーの願いを叶えるためにマリーを街から盗み出した。

「マリー」
シアワセの花の街の聖女。
元は何の変哲もない街の住民の一人だったが、先代の聖女が花と化したことで街に選ばれ聖女となる。
家族は健在だが、聖女となったことで街の大聖堂に移り住んでから会うことは出来ていない。
街の外に出てみたいという憧れを持つが聖女の務めを放棄することは出来ず、「街の為に祈り続けること」が自らのシアワセであると言い聞かせ聖女として生き、やがて自らも花となる運命を受け入れている。

「私の幸せは、この街の人たちの為に、シアワセの花になること」

しかし、アイリスとの出会いにより心の中に封じ込めた「自分の幸せ」を吐露し、アイリスによって街から盗み出される。

・アイリスとマリーの旅路

街を抜け出した二人は世界中の様々な街を訪れました。
それは愉快な珍道中だったことは二人のやり取りで想像できます。

アイリス「道中、いろんなことがあった」
マリー 「大抵はアイリスが要らぬことに顔を突っ込んだり、手癖の悪さが招くことがほとんどでしたが」
アイリス「でも、食うに困ったらしょうがねえだろ!」

価値観の異なる二人の旅路はそれなりに騒がしく、時にケンカもしたことでしょう。
けれど、マリーは街から連れ出してくれたアイリスに感謝をし、アイリスはマリーの笑顔を見て満たされたのではないでしょうか。

しかし、そんな二人の道中、マリーはアイリスに告げます。

「でもね、アイリス。・・・私はやはりあの街が好きなんです」

その言葉と共に花となる自分の体をアイリスに見せ、自分の更なる心の内を語るマリー。

「私はあの街に戻りたい。
私は花となって生き続ける。それに、どうせ花になるなら、私は私の故郷に根を下ろしたいの。あの街で過ごす日々はとても恐ろしかった。いつかやって来るこんな日が本当に怖くて堪らなかった。でも、皆の幸せを祈り、願っていたのは本当なの。そしてそれは今でも変わらない。
     だからお願い、アイリス。私をあの街へ連れて行って・・・」

そして花となるマリー。
どれだけ離れても、故郷のことを思うマリーの気持ちにアイリスは花となったマリーをあの街へと連れ戻すことにしたのです。

・旅人となるアイリス

アイリスはシアワセの花の街に戻ることにしました。
それはマリーの願いでした。
花のなったマリーを抱えいくつもの街を訪れ、アイリスは街で出会った人々に尋ねます。

「あんたの幸せは何だい?」

アイリスはこれまで自由気ままな泥棒として生きてきました。
自分のしたことをすることがいつだって一番の幸せ。
それがアイリスにとっての幸せでした。
しかし、マリーと出会うことで幸せの在り方を考えるようになったのかもしれません。
この世界には街の数ほど、人の数それぞれの幸せの形があること。
そしてそれはどれ一つとして同じではないということ。
アイリスはそれぞれ異なる幸せを知り、祈るのでした。
マリーが街の人々の幸せを祈ったように、
望んだ幸せが、訪れますようにと。


いかがでしたでしょうか?
これで「きらさくのあと話」はおしまいです。

今後も私達Theater Hanairoの活動を気にしていただけますと幸いです。
皆様に幸せが訪れますように。

Theater Hanairo代表
中野浩作

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?