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「きらさく」のあと話。その4。

◆一人芝居「きらめく花の咲く話」

1・裏話の裏話。

今回のイベントのメインである、一人芝居「きらめく花の咲く話」のお話をさせていただきます。

そもそも、「きらさく」の構想を練る際に、一番最初の企画として持ち上がったのはこの一人芝居でした。

中野 「芝居やる?」
あきら「え・・・いいですよ」

というようなやり取りがあったのをぼんやりと覚えています(笑)

しかし、単純に芝居を行うと言ってもそこまでにいろいろな障壁がありました。

演劇界隈には、
「演劇人は根本的に演劇が好き」
という通説があります。
中野自身、東京での活動自体、演劇を生活の中心に据え置いて、収入は時間の融通の利くアルバイトでしたし、そういった生活が苦ではありませんでした。
「演劇が好き」でしたから。

今でも、「演劇が好き」という気持ちは変わりませんし、演劇で世の中の役に立ちたいという思いからHanairoを立ち上げたわけですが、フリーターではなく会社員となった今では、限られた時間の中で日程を他のメンバーとすり合わせて芝居の稽古に打ち込むことはなかなかに大変な作業だなと痛感させられました。

特に主役であるあきらは、忙しい仕事の合間を縫うようにして稽古に参加し、少ない稽古日程と時間を芝居作りに尽力してくれました。

私達はプロの演劇団体ではありません。
しかし、人前に立って何かを表現する以上、プロだろうがアマチュアだろうが、それ相応の作品を提供したいと思うのは演劇人として当たり前のものだと思います。

絵を描くにしろ、音楽をするにしろ、何れかの表現活動をすることは生活の一部を激しく費やす必要があって、大切な生活の一部を使うからこそ、それは費やしただけの価値があってほしいと思うのです。

そういう意味でもあきらは自分の価値を高めるためにいつでも稽古に前向きに参加してくれたし、とてつもなく努力をしてくれたと感じています。

・・・なんだか裏話というより親心が出てしまいました💦
演出家として指導者として、彼女が迷わず演技が出来る環境と指導をするために頭を巡らしましたから、どうしても、ね(笑)


シアワセの街の聖女
マリー

2・本当の裏話。

親心を書き記したところで、お芝居の話に戻りましょう。

実は、今回の芝居制作、中野もあきらも、
中野は「人に演出するのが久しぶり」
あきらは「お芝居をするのが久しぶり」
という状況からのスタートでした。

中野は東京での自身の団体で最後に演出をしたのがおよそ10年前。
あきらも名古屋で芝居に立ってから数年が経過していましたから、稽古の最初はお互いの空気感を伺いながらのスタートでした。
最初の稽古は4月に開始し2時間程度の稽古を大体月に3日から4日のペースで行い、6月は5回ほど行いました。

ここまでのHanairoの講座で8ヶ月程度の付き合いがあったとはいえ、お芝居を作るというのは講座で行う作業とは当然違ったものとなります。

講座では基本的に参加者さんはもちろん、アシスタントにもダメ出しはしません(進行の調整などはしますが)。しかし、芝居作りはそうもいきません。
良いものは良いと伝え、誤った方向のものは正していく。
こういった作業の繰り返しです。

お芝居を作る作業としては大抵は下記の段取りを踏みます。

1・本読み
台本を読み通し、身振りなどつけず全体の流れや役の心情などを理解する。

2・立ち稽古
実際に演技をしてみて、演出家が役者の演技を修正したり、効果的な演出プランを組み立てていく。

3・通し稽古
台本の最初から最後までを演じ、全体のバランスを調整していく。


さて、今回の企画での目下の課題は
・劇場ではない場所でどう演技をするか。
・はじめての一人芝居
この2つでした。

◯劇場ではない場所で演劇をすることの難しさ
当たり前のことではあるのですが、演劇は劇場で行われることが多いです。    
 ※あまり認知されていないのですが、名古屋にも1000人収容の大劇場から 30人程度で満席になってしまう小劇場まで、様々な劇場が点在しています。

劇場には照明機材や音響機器といった設備が備わっており、舞台面(役者が演技をするために舞台セットなどが組まれているエリア)が存在しています。
しかし、今回のお芝居の会場は古民家カフェということでそういった設備の力を一切借りることができず、役者の演技一つで場面を切り替えたり、空間や時間を飛び越えていく必要があります。
 ※ちなみに多くの場合、こういった場面転換(場所や時間が変わる演出)に関しては暗転(照明をすべて落として完全な闇を作り出すこと)や照明の変化などで行います。

おまけに今回の舞台面はお客様が役者を囲み、しかも花道(客席の間を通る舞台面)まである完全な変形舞台で、はけ口(役者が出入りする場所)もなく、一息つく間もありません。
(いやあ、こうやって書き記していても難易度の高さがすごい💦)

役者一人の力で場面を切り替え、お客さんに今どういう状況なのかを演技で説明していかなければならない。

なにが言いたいのかって?
あきらは頑張ってくれたという話です(笑)


根無し草の泥棒
アイリス

〇はじめての一人芝居
そんな舞台状況の中で、はじめての一人芝居をするんですから。
レベル10ぐらいで後半のダンジョンに挑むようなものです。

前述したように、設備の力を借りることが出来ない以上、役者の演技力が問われます。

実は、一人芝居のやり方はいくつかパターンがあるのですが、主なものは二つでしょう。
・役柄を一つに絞る「独白型」
・複数役を演じる「会話型」

どちらも難易度は高いかと思います。
「独白型」は役の心情や気持ちの深いところまで表現していかないと面白みに欠けてしまいます。
「会話型」は単純に複数役を一人で演じなければならないため、役の演じ分けが重要になってきます。

台本の構想を練る上で、あきらの魅力を引き出すことができるのはどちらのパターンがいいのか悩みましたが、あきらの色々な顔をお客様に見せたいという気持ちが強くなり、今回は「会話型」のパターンを選択することにしました。

演技を行いやすくするためにプロットはなるべく演じやすい、
ハチャメチャな性格の泥棒「アイリス」と、
自らの運命を憂う聖女「マリー」という極端なキャラクターを中心に描いていくことにしました。

余談ではありますが、中野は過去に一人芝居を何度か行っています。
ですが、他人に演出するのは初めてでしたので、最初の内はどう演出をしていけばいいのか模索しながらのスタートでした。

演出が云々悩むのと同様、役者も同じかそれ以上悩むものです。
はじめての一人芝居に挑んだあきらはド根性で必死に演じ切り、私の描いた二人のキャラクターをとても魅力的な形に仕上げてくれたと思います。



中野のお気に入りの一枚です(笑)

さて、まだまだ語り始めたら語りつくせないのですが、苦労話をあまり書き綴っても仕方ありませんので、このあたりで。

ご覧になった方々、あきらに労いの言葉とお褒めの言葉を掛けてくれると幸いです。
彼女はとても素敵で良い役者ですから。

次回は「きらめく花の咲く話」そのもののお話を。

Theater Hanairo
中野浩作

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