【旗揚げ公演】うそつき!@志月ゆかり

 おはようございます。またはお疲れ様です。志月です。
 これまでのタイトルで「○○について」を多用していたのはこだわりでも縛りプレイでも何でもありません。まあ、今回だって別に「うそつきについて」ってタイトルにしても良かったんですけどね。実際「うそつきについて」話すんですから。
 そして次回共演者の錫玲夜矜ちゃんに書いてもらうかのような匂わせをしておいてまた私です。期待されていた方はごめんなさい。
 今日は、最近毎日しているポスト(ツイート)の代わりに、こちらの方で、タイトル通り「うそつき」の話をさせていただきます。

 誰がうそつきなんだと問われれば、私の書く脚本の登場人物たちです。バレバレの嘘を吐くときもあれば、最後まで誰にもバレないように吐き通すこともあります。だって、人間だもの。現実にいきる人間であれば、誰しも嘘を吐いたり見栄を張ったり建前を言ったりするものでしょう。だから、たとえ私の脚本で描かれる世界が現実世界でなかったとしても、描かれているのが人間であれば、その人々は同じように嘘を吐いたり見栄を張ったり建前を言ったりするのです。「物語を進める駒」ではなく「人間」を書きたいと志す私であれば当然のことなのです。

 難しいのは、その嘘の扱い方です。バレバレの嘘や建前は良いのです。きっと何もしなくても周りの人が嘘を暴いたり、観ている方だってそれが嘘や建前だとすぐに解かったりするように書けるでしょう。バラすことが前提である嘘は、もはや嘘とは言えないのかもしれません。
 脚本家であるこの志月ゆかりはずいぶんと面倒な性格をしています。息をするようにキャラクターに嘘を吐かせます。それも、私もキャラクターも結構な悪意を込めた嘘を。問題は、その嘘は基本的にバレないように仕込まれているのに、裏の設定を知っていないと暴けるはずがないのに、バレてしまった方が面白い、という点です。バレないように書いてるくせに、バレてくれないかなと思っているわけです。なんて天邪鬼なんでしょうね。

 例えばの話を二つしましょう。
 ここに、これまでの人生を性善説で生きてきて、それを裏切られたこともないといったような、清廉潔白なことしか言わない人間がいます。その人が発する言葉は全て本物らしくて、疑う余地なんかひとつもない。その人が物語に登場する人々全員をまとめあげて、至って平和に、平穏に物語が終わる。……面白いです? これ。いや、私じゃなければ面白く書けるのかもしれませんが、私には無理です。でも、これが、この人が言うことの9割が嘘で、全てこの人の都合の良い展開に進むように、思ってもいない優しい言葉を使っていただけだってわかったら、私はその方が面白いんじゃないかと思うんです。
 まあ、こんな話は私はまだ書いたことないです。悪意を見せない、利己的な部分を見せない人間を描くのがあまり好みでないというのもありますが、めちゃくちゃ難しそうじゃないですかこれ。極端すぎますし。それに、こういう話を書くなら、私なら最後にネタバラシをします。絶対その方が面白いから。「バレてしまった方が面白い」というのはそういうことです。この例でわかっていただけるか、あまり自信はありませんが。

 では、例えばの話をもうひとつ。
 言っていることが支離滅裂な人間がいます。何も考えずに話を聞いていれば、おかしなところは見つけられないかもしれません。それでも注意して聞いていれば、同じ人が話しているはずなのに矛盾がいくつもあって、明らかに何かが間違っている。それが、この人が意図して吐いている嘘なのか、幻覚か妄想によって本気でそう思っている間違いなのか、わからない。確かに、その人の嘘が暴かれなくても物語は進むし終わる。けれど、その人が点いている嘘がわかれば、事件の裏の真相がわかるかもしれない。……モヤモヤしません? 何が真実で何が嘘なのか、わかった方が絶対面白いじゃないですか。それを、つまり私は明確に「これが嘘だよ!」と最後まで教えることなく忍ばせてしまう悪癖があるのです。
 それほど支離滅裂でない場合すらあります。そうなれば、たった一度上演される舞台を観るだけの観客の方々にとっては、嘘の存在があることすら認識は相当困難でしょう。

 ですから、私の脚本を上演しなければならない演出は頭を抱えるわけです。いや、頭を抱えるなら良い方で、大抵はそういう嘘には気づかないかもしれません。気づいたとて、どれが嘘で、嘘だった場合どうやって演出すれば良いんだかわからなくなるかもしれません。まあつまり私のことなんですけどね。どうして自分の書いた脚本にここまで頭を悩ませなければならないのでしょう。何はともあれ、脚本がそういう性質なら、演技でどうにかするしかないわけです。そうなると今度は演技指導が大変になってくるし……。
 気づいた方が面白い、でも気づかなくても成立する。そういう嘘を含ませた脚本を書くのが、脚本家志月ゆかりは好きなんです。
 私の書いた芝居を最大限楽しもうと思ったら、実は相当集中力が要るのかもしれません。でも、そんなことはお客様の自由ですから、こういう脚本でもあまり考えなくてもちゃんと見られるものを、演出家志月ゆかりとしては目指したいものですね。

 え? どうして旗揚げ公演上演の一週間前のこのタイミングでこんな話をしたのかって? まあまあまあ……お気になさらず。
 それではまた次回、お会いしましょう。志月でした。

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