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良いインタビューの形は、居酒屋のカウンターにある|THE ANSWER編集長のメディア論③

 THE ANSWER編集部のnote担当のヨコタです。

 編集長インタビューの最終回は「取材/インタビュー」です。新聞社時代との取材方法の違い、人の魅力を引き出すインタビュー術、そもそも良い取材とは何か。そしてWebメディアの将来性まで、気になるあれこれを語っていただきました。

■編集長Kさんプロフィール
 1985年、東京都生まれ。プロ野球では荻野貴司、宮西尚生ら、いぶし銀の役者が揃う世代。大学時代は東京六大学野球をはじめ、駅伝、ラグビー、アメフトなど学生スポーツ観戦に明け暮れる。出版社で女性ファッション誌の編集者、スポーツ新聞社で野球の番記者を経て、2017年からTHE ANSWERを運営するCreative2にジョイン。お笑いコンビ・ナイツの漫才、さらば青春の光のYouTubeをこよなく愛している。30代にして痛風持ち。


note担当ヨコタ:
「Webメディアとして取材する際の心得はありますか?」

編集長K:
「発信しようと思えば、本数も際限なく記事を発信できるので、面白いものに対してセンサーをいかに研ぎ澄ませておくかですね。スポーツの競技取材なら、そのために一つの会場で起こりうることをあらゆる観点から想定しておくこと。そして実際に起きたら、食いついて取材することが重要です」

note担当ヨコタ:
「新聞時代と変わったところは他にありますか?」

編集長K:
「Webニュースらしいところで言うと、見出しになるかどうかの感性は大事ですね。新聞社時代も『見出しを意識して取材しろ』と言われましたが、実際に見出しを立てるのは整理部。でも、Webは本当に原稿から見出しまで自分で完結することが多い。そうなると、より直接的に見出し映えする情報やフレーズを盛り込めるかが勝負になってくる。取材の事象に触れた瞬間、見出しが見えるかどうか。その思考回路はWebニュースの記者としてすごく大切ですね」

note担当ヨコタ:
「インタビューのシチュエーションでは、相手の話をうまく引き出す方法はありますか?」

編集長K:
「まずベースになるのは、取材対象者をリスペクトすること。もっと言えば、好きになること。そして、リスペクトしていることがしっかり相手に伝わること。そのためにできることは事前の準備や会話の精度など、さまざま。その集合体が『この人だったら喋っていいんじゃないかな』と思ってもらえるポイントになりますね」

note担当ヨコタ:
「相手によってはなかなか会話が弾まないこともあると思いますが、何かコツはありますか?」

編集長K:
「インタビューは物理的には対面で向かい合うことが多いですが、精神的には向かい合わないことですね」

note担当ヨコタ:
「どういうことですか?」

編集長K:
「意識としては、2人で公園のブランコをこぎながら会話をしている感じ。あるいは2人で居酒屋のカウンターで会話をしている感じでも構いません。目は合うことは少ないけど、一緒に同じ方向を見て会話は共通の目的地に向かっていく。『これを聞きたいから喋ってくれ』ではないし、相手も『言いたいことを記事にしろ』ではない。

 お互いに目指していくところが同じで、対等に言葉のパス交換をしながら、1つのゴールに向かって行く意識が大事だと思います。どうしても、インタビューに慣れなかったり、良い言葉を引き出したいと思いすぎたりすると、向かい合った相手にボールをぶつけていくような意識になってしまう。それでは良い取材にはなりにくい」

note担当ヨコタ:
「なるほど。編集長が思う“良い取材”とは何ですか?」

編集長K:
「たくさん要素はありますが、ひとつは、事前に想定していた内容を基準にして、想定を下回ったら“悪い取材”、想定の通りなら“普通の取材”、想定を上回ったら“良い取材”と考えています。経験を重ねれば“普通の取材”はこなせるようになりますが、“良い取材”は今でも難しいですね」

note担当ヨコタ:
「良い取材の“想定を上回る”というのは、具体的にどういうことですか?」

編集長K:
「人対人の会話によって、聞き手も話し手も想像し得なかったゴールに結びつくことです。一人で発信するだけでは至らなかった考えが、聞き手の感性によって引き出され、想定していなかった答えにたどり着くこと。そこに『会話』の意味が生まれる。それができた瞬間はインタビューの最中に『あ、これは来た』と鳥肌が立つ感覚です。取材後に『初めてこんなことを話しました』『自分でもこんな考えがあったんだ』などと言われると、本当にうれしいですね」

note担当ヨコタ:
「これからのWebメディアについてもお聞きします。どんどん拡大するWebニュースの世界ですが、編集長が思うメリットは何ですか?」

編集長K:
「伝えたいことをストレートに出しやすいのは素晴らしいことですね。規模が小さい分、一人一人に任せられている権限やチャレンジできる領域がすごく広い。例えば、今でこそ『生理』のワードを口に出すことも珍しくない時代ですが、私たちは『女性アスリートと生理』の課題を先駆けて2017年から継続的に報じています。

 当時は『生理』のワードが見出しにつくとPV数が跳ね上がってしまうくらい、良くも悪くも“隠しておくべきこと”の存在でした。それが大手メディアも取り上げ始め、世の中の空気を変えるひとつになりました。実際に取材した関係者から、後に『THE ANSWERの記事を見て、新たに取材依頼を受けました』という声も頂きます」

note担当ヨコタ:
「逆にWebメディアの難しさはどんなところですか?」

編集長K:
「メリットの逆で規模が小さい分、一人一人にかかってくる責任がありますね。またコタツ記事なども氾濫している。だからこそ、どんな記事でも人を傷つけないこと、世の中のためになること、誰かに喜んでもらえること……メディアの公共性を自覚し、自分自身の倫理観はより高く求めていかないといけないと思っています」

note担当ヨコタ:
「競合他社もたくさん出てきていますが、生き残るためにはどうすればいいでしょうか?」

編集長K:
「会社としてはサブスク事業を展開し、THE ANSWERとしてはタイアップコンテンツなどPVに依存しない収益の柱を作っています。ただ、メディアとして本質的にやるべきことは変わらない。まだ誰も見たことがなくて、誰かが面白いと思うものを作ることです。オリジナルをどれだけクリエイティブしていくかが全て。Webニュースなど関係なく、メディア企業で生きていく以上そこを避けては通れません。そんな中でWebだからこそできることはたくさんあると思っています」

note担当ヨコタ:
「誰も見たことがないものってワクワクします。これからもそういったコンテンツを発信できるように、私も精進します……!ありがとうございました」


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