「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #4 「tari denim」期
「tari denim」期
その後、生地好きが高じて、自分の手で糸を紡ぎ草木で染めて織る、という織物を学ぶために会社を辞め西宮から丹波へ移住したタリ。(布づくりの詳細はnote『tari textile BOOK 前・後編』https://note.com/the_taris/m/mb346830a1f03参照)
布づくりを中心とした生活ではあったが、服作りも細々と続けていた。移住したため洋裁教室に通うことが難しくなり、先生の手助けがない状況で、なんとか自分一人で作ることを続けていった。
そんなある日、デニム好きの知り合いに「denimba展」というデニムの色落ちを楽しむ展示会のことを教えてもらった。デニムというとその道に詳しいコレクターの世界、といった印象があり、それまでなんとなく距離を置いていた。しかしその知人はとても気さくで、デニム初心者も歓迎、という感じ。それならぜひ、と大阪で行われていたその展示に足を運んだ。
そこには壁一面に履きこまれたジーンズが敷き詰められ、とても迫力があった。同時にこんな愛されていると感じる大量のジーンズは見たことがなく、タリはなぜかとても嬉しくなった。
主催者やその仲間の方に話を伺ううちに、タリは自分もこんな素敵なジーンズを作りたい、という気持ちがむくむくと湧いてきた。その場にいた、実際にオーダーでジーンズを作っている方から生地を買わせてもらうことになり、そこからタリはデニムにはまっていった。
今までに見たことのあるデニムとその展示で見たデニムは何が違うのか。生地にじわじわしたシボ感があり、しっかり目が詰まっている。糸のムラ具合も絶妙で生地にふくらみがありのっぺりしていない。そして何より履けば履くほど風合いも色も変化していき、深い味わいが出てくる。そう、それは岡山のデニムであった。
リーバイス501など完成された永遠の定番や、各社が作る様々なかっこいいジーンズがあるが、自分用に、自分なりに作って着てみよう、とはじめたtari denim。直線縫いミシンのみで仕上げたジーンズは、出来上がりはプロのジーンズに比べるともちろんいろいろと未熟だが、それでも自分で作ったジーンズを履き、しかも履き続けることで体になじみその表情が変化していくことが何とも嬉しい。
服と共に日々の生活や仕事をし、自分も服も経年変化していく。しわも汚れも色落ちも歴史となって現れる。タリは、tari denimを通してそのような服の魅力を再確認していた。
これまであまり意識することなくその時その時で好きなように衣服と付き合ってきたタリ。しかしここに来て、幼いころからの衣服に対するこだわりや好みや傾向が、なんとなく一つの方向を指しているような気がしていた。