tari textile BOOK 後編 #3「I ♡ T」作品NO.12
作品NO.12
→経糸:オニグルミ(木酢酸鉄)、オニグルミ(みょうばん)、オニグルミ(石灰)
緯糸:オニグルミ(木酢酸鉄)、オニグルミ(石灰)
整経本数308本、半反
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続いての作品はこちらです。みなさんはこの作品にどのような印象を抱くでしょうか?
小さい、細かい格子だなと感じる方が多いのではないでしょうか。そしてこのような小さい格子は織るときにも作業が細かくて大変そうだ、と。
たしかにこのような小さくて細かい格子縞は、機織りの際、緯糸の色を変える(杼を持ち変える)回数が多く、横で見ていると「複雑で忙しそうだ」と感じるかもしれません。しかし実は、あながちそうとも限りません。緯糸の色を変える回数が多くても、同じ動作を繰り返すような縞(この作品のような縞)の時は、機織りは一定のリズムとスピードで淡々と進んでいきます。
逆に大きくて大胆な縞だとしても、緯糸の色が不規則に変わる縞などは、杼を入れる方向や踏み木を踏む足の順番を間違えないようにと、慎重に、ゆっくり確認しながら織り進みます。
1つの布の中に、リズミカルにスピーディーに織り進む箇所と、慎重にスロースピードになる箇所が混在して出てくることも多々あります。また、そこに杼を片方の手から逆の手へ受け渡すときの、何とも言えない音が小刻みに加わります。布の中にはこのような様々な音やリズム・テンポ・ビートが含まれているのです。
作者は、このような機織り特有の音楽を味わいながら作業することも、楽しみの1つでした。
ぜひみなさんも作品からそんな隠れた音やリズムを想像し、感じ取ってみてください。
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