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台湾リスク

はじめに

この記事は個人的な推論を一部含んでいること、そして、中台関係ではなく台中関係を前提とした記事であることを、事前にご理解いただきたい。
また、頼清徳総統のこれからの4年間は、蔡英文前総統よりも、より前途多難な道になるであろうということも、事前に記載しておく。
そして、何よりも私が望むのは、中国や台湾関連でのフェイクニュースを、1人でも多くの人に、自分で気づくことのできるという過信から解放されて欲しいと思い、執筆に至った。 Xなどでのインフルエンサーや、一部の煽りたてるメディア、そして専門家の記事を、一度冷静になって考えるきっかけになることを、私は心から願う。

総統就任時の中国の軍事演習に関して

2024年5月20日に頼清徳総統が就任した。 前任の蔡英文元総統と比べると、かなりの対中強硬派であったと言えるだろうが、選挙期間中は対中への発言を抑えつつ、平和的解決を求める姿勢を鮮明にした。 しかし、総統就任演説の際にかなりの台湾アイデンティティーを示し、北京の怒りを多少なりと買ってしまっただろう。 だが、北京の報復措置として取った軍事演習では、ペロシ下院議長(当時)が訪台した時や、蔡英文元総統が中南米を歴訪した際に、トランジットの名目で米国を訪問した際の報復演習ほどの規模はなかった。 これは、立法院(日本での国会)が捻じれ状態に陥っていることが原因と思われる。

立法院の現状

現在、立法院では定員113人のうち、与党となる民進党が51名、野党となる国民党が52名、台湾民衆党(以下民衆党)が8名、無所属2名となっている。(図1参考)

図1:筆者作成

捻じれ状態に陥っている現状は、頼政権にとって内政上での最大の課題となるだろう。 頼政権の一番の外交課題として両岸関係が挙げられる。比較的親中派とされる国民党が国内の情勢を握っているとなると、中国にとって4年間は、頼政権の足を引っ張ってくれる存在になるだろう。

今後の対応

北京は蔡前総統同様、航空機や艦船によるTADIZ(台湾防空識別圏)への侵入などを続けるだろうが、特段の挑発行為は必要ない。 今回の演習も、規模が前回、前々回同様の演習を行う必要がなくなる。
就任式の際に行われた演習でも、2日間のみしか行わず、弾道ミサイルの発射など、航空機や艦船の接近を除いた挑発行為を行うことはなかった。
緊張レベルでは、先日起きた金門島での中国民間船舶転覆事故以降の、金門島周辺での中国海警局の活動や南シナ海周辺での、フィリピンと海警局の対立に比べると、断然おとなしい行動である。

備えるべき台湾リスク

2028年までに頼政権が抱えるリスクとして備えるべきなのは、台湾本島への長期的海上封鎖や、大規模なサイバー攻撃による都市部への攻撃である。 北京としても、人的損失を出す可能性がある武力攻撃よりも、人的損失が出ない海上封鎖や大規模なサイバー攻撃が優先されるだろう。 

武力行使の可否

ミサイルなどの武力行使を行った場合、これまでの台湾海峡危機のように、海峡に米軍が空母打撃群を派遣する可能性が高い。 しかし、空母打撃群が派遣されるかどうかは、今秋の米国大統領選で選ばれた大統領が、台湾海峡への空母打撃群を派遣することを、決断できるかどうかにかかっている。 (ただし、派遣の可否の前に、米中のホットラインが使われるだろう) 

さいごに

2028年まで続く頼政権の船出は好調ではなかったといえよう、国内外に大きな課題を抱え、非常に難しい立場に置かれているのは事実である。 しかし、世界に対し台湾の民主主義的立場をアピールし続けることで、世界からの支持をもっと得ることはできよう。 蔡前総統2期目の問題点として、多数の国からの国交断絶が指摘されることがある。 しかし、この指摘は半分正解であり半分間違いである。 たしかに、国交を結んでいる国の数は大きく減少した。 しかし、国交は結ばなくても、台湾に対しての支持を表明する、民主主義を共有する国は増えた。 国交はたしかに大事だが、それ以上に、台湾の保護を支持する国、民主主義を共有する国のほうが断然重要である。 コロナ以降、欧州の議員団が続々と台湾を訪問した。 欧州とは国交を一切結んでいない。 しかし、欧州の議員たちは続々と台湾を訪問し、民主主義という重要な価値観を共有し、台湾を支持している。(これは日米間でも共通である)
理想論ではなく、台湾はたくさんの国の保護を受けている。 独立などを宣言することさえなければ、中国は大きな行動に出ることはないだろう。
台湾は決して孤独ではない。

T.H.S

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