10月14日から行われた東部戦区による大規模軍事演習に関して
Joint Sword 2024-B(聯合利剣 2024-B)
10月14日から中国人民解放軍東部戦区の陸・海・空・ロケット軍及び中国海警局が台湾・澎湖、金門、烏坵、馬祖、東引を包囲する陣形で大規模な軍事演習を行った。
これに対して台湾当局は艦船や航空機の派遣、対空ミサイルなどを配備して対応した。
大規模軍事演習がもたらすもの
Joint Sword 2024-"B"とあるように、5月23日~24日まで行われた Joint Sword 2024-"A"の2段階目ととらえることができるだろう。
Joint Sword 2024-Aの重点として
としている。
それに対して、今回行われた Joint Sword 2024-Bでは
としている。
引用した記事でも指摘されている通り、「重要港湾の封鎖管制」という文言が追加されており、前回の軍事演習よりも一段階引き上げた、台湾封鎖という将来的な軍事的手段の1つをシミュレートしたと考えるのが妥当だろう。 また、重要港湾の封鎖管制という演習目標を達成できたかは不明であるが、演習内容のエスカレーションレベルが一段階上がったと考えることが可能である。 また、前回の大規模軍事演習とは違い、今回の大規模軍事演習では、バシー海峡から西太平洋にかけて空母遼寧らを展開した。 台湾空軍のF-16が撮影した映像にJ-15艦上戦闘機が映し出されていることから、空母遼寧から発艦したものであると考えられる。 J-15を撮影したF-16戦闘機は、花蓮空軍基地に所属する「第五戦術混合聯隊」と思われる。
産経新聞によると、台湾当局者の話として弾道ミサイル2発を内陸部に発射していたこともわかっている。産経新聞
Cプランに関して
前回と今回行われた Joint Sword 2024-A 及び B ではあるが、今年中に Joint Sword 2024-Cが行われるのではないかと考えている。 予想される実行名目のプランとして、2点あげることができる。 1つはアメリカ大統領選挙に合わせた、軍事演習の実施だ。 共和党の候補者であるトランプ氏と民主党の候補者であるハリス氏のどちらが当選しても、歴代の政権が続けてきた台湾への支援を緩めないだろう。 それに対する、意思表示として軍事演習を行う可能性がある。 しかし、こちらは可能性が低いと考えている。
重要なのは2点目である蔡英文前総統の訪米だ。 10月の中旬からヨーロッパ各地を訪問しており、11月のアメリカ大統領選挙前後に訪米に踏み切るのではないかと言われている。 現職であった、昨年の4月に中南米のベリーズとグアテマラをを訪問する際の経由地として、米国でマッカーシー下院議長(当時)と会談を行った。 当初の予定としては、マッカーシー下院議長が2022年のペロシ下院議長(当時)の訪台の際と同様に、訪台するのではないかと噂されていたが、中国政府の大きな反発が予想されたため、マッカーシー下院議長が訪台するのではなく、蔡英文総統が米国へ”経由地”として訪問することで中国の反発を抑えようという考えから蔡英文総統が仕方なく訪米したといわれている。 しかし、今回は総統職を降りてからの訪米なので、現職ではない人物が訪米するというのはさほどおかしな話ではない。 だが、中国からする前職者が訪米するということは気分のいいものではないだろう。
それを名目に、Joint Sword 2024-C(Cプラン)を実施する可能性はある。
実際、ペロシ下院議長訪台の際には、台湾本島上空を通過させる形で、弾道ミサイル発射の訓練を行った。(中国軍が発射したうち5発は日本のEEZ内に落下)
防衛省による分析https://www.mod.go.jp/j/surround/pdf/ch_exchange_202305.pdf
Cプランとして、弾道ミサイルを台湾海峡や太平洋へ向けて発射するなどのA、Bよりも過激な行為、特に武力による脅迫という手段に出る可能性はあるだろう。
もちろんAやBの際のような演習を行う可能性はあるが、段階的に軍事演習のレベルを引き上げているように感じられる。
台湾の弱点と課題
台湾の国防上の最大の弱点は島しょ部が多く、国共内戦の延長戦を現在まで続けているため、現在の台湾の領土を1mmたりとも引き下げることが出きないということだ。 先日、台湾の某政党のメンバーに話を聞いた際、台湾有事として一番可能性が高いのは、今回のように台湾の海域を封鎖した上で、太平島や東沙島の離島に侵攻してくるのを一番危惧していると話していた。
海域及び空域を封鎖されてしまうと、台湾は途端に対処能力が低下する。 封鎖された場合の対処が難しいというのは台湾の大きな課題となるだろう。