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ドラゴンランス 女王竜の暗き翼 プレイレポート 01
D&Dのシナリオ・「ドラゴンランス 女王竜の暗き翼」をプレイしたので、その備忘録的記録です。
このエントリにはシナリオ「赤い手は滅びのしるし」のネタバレが含まれます。
ノークレーム・ノーリターンでお願いします。
あと、記憶で書いてるので割と適当です。
セリフとか。
◆00:冒険者たち
彼らは、冒険グループ「イスピンの団」で少年期を過ごした仲間同士で、イスピンがヴォグラー村を終の棲家と定めて引退した時、「三年後のカワセミ祭りでまた会おう」と誓って、武者修行の度に出た若き冒険者たちである。
ソラムニアの騎士ユリウス(人間:男性:パラディン ソラムニアの騎士)
ソラムニアの貴族。代々ソラムニア騎士の家系で、本人も将来を嘱望される優秀な少年だった。
ヴォグラー村の砦の太守であるベクリン卿の伝手で、彼の友人であるイスピンに預けられて、見聞を広め剣の腕を磨いた。
イスピンの団では厳格なソラムニアと異なり、温かい家族のような繋がりを得ることができた。
また、後に彼の運命に深く関わる少女とも出会い、これは彼の人生に大きな財産になったことだろう。
イスピン引退に伴い、ソラムニア本国に帰って従騎士位につく予定。
ハーフエルフのソフィ・ブーケ(ハーフエルフ:女性:ウォーロック 犯罪者)
イスピンの団で女房役を努めていたハーフエルフ。
親の顔も知らず、捨てられていた捨て子。エルフの血を悪用し、犯罪者に身をやつしていたところ、若きイスピンと出会い、以後彼と行動をともにする。
世慣れた犯罪者としての顔を持ち、愛想良く振る舞いながらもなかなか人を信用しない警戒心がある。
イスピンが次々拾ってくる子どもたちの母親役としての顔も持つ。
イスピン引退に伴って、稼いだ金を元手にソラムニアの片田舎に酒場を開いた。
蛮族戦士ゴラン(ヒューマン:男性:ファイター 浮浪児)
アンサロン大陸各地を旅していたころのイスピンの団に拾われた浮浪児の少年。
9歳のころに大人とトラブルを起こし殺されそうになったところを、イスピンらに救われ、その向こう見ずさを気に入ったイスピンが剣の稽古などをつけていた。
向こう見ずさは大人になっても変わらず、イスピンが引退した今、己の腕っぷしを頼りに世界に出ていこうとしている。
幼い頃から面倒を見てくれていたソフィには頭が上がらない。
エルフのイセル(エルフ:女性:ウィザード 上位魔法の塔の魔道士)
シルヴァネスティ・エルフ。シルヴァネスティの慎重で硬直した魔法の学習よりも、人間の魔法使いのペースで魔法を学んだほうがより大きな力を得られるのではと考え、シルヴァネスティを出奔したエルフの魔法使い。
しかし、あまりにもエルフ社会の常識が通用しない人間の世界に戸惑っていたところ、イスピンと知り合う。
ひどい人見知りで、また、エルフと人間の体感時間の違いから、うまくコミュニケーションを取ることができないが、なぜかイスピンとは屈託なく話すことができ、彼との親交を大切にしている。
いつもイスピンの団にいたわけではなく、たまに(彼女の感覚ではしょっちゅう)顔を出していた。
イスピンの若いながらの引退を驚きつつ、三年後にまた会う約束をしている。
◆00-2:冒険者を取り巻く人物
主にイスピンの団にいて、冒険者たちと関わる人物。
イェレナ・カンサルディ(人間:女性)
イスピンの団に拾われた孤児の少女。
剣の腕はそれほどでもないが、頭がよく、薬草や物語についてよく記憶していて、ほら話の好きなイスピンや団のみんなにお話をすることを好んでいた。
気の優しい少女で、そばかすと緑の瞳の笑顔を持っている。彼女を悪く言う人物はいない。
自分が剣の腕で劣っていることを自覚していて、また、戦乱のアンサロン大陸を生き抜くだけの力に欠けていることもわかっていたためか、イスピンの引退に伴って、一度分かれて修行の度に出ることを提案した。
緑の盾のイスピン(人間:男性)
冒険集団イスピンの団を率いていた戦士。
気風の良い人好きのする男で、ほら話をするのも聞くのも大好き。
屈託のない笑顔で、どんな相手とも友だちになれる一方で、悪を許さない正義感も持ち合わせていた。
若い頃の放蕩と無茶がたたったか病を得てうまく体が動かなくなり、親友であるソラムニア騎士ベクリン卿が太守を務めるところのヴォグラー村に家を購入し、終の棲家としてめでたく冒険生活を引退した。
ソラムニア騎士ベクリン卿(人間:男性)
ヴォグラー村のソーンウォール城塞の太守を務めるソラムニアの騎士。
若い頃にはイスピンとともに冒険生活を送っていたこともある親友。
イスピンと出会った頃は厳格で高潔な性格がよくイスピンとも衝突したが、彼との付き合いを経て、高潔な性格はそのままに、ユーモアを解し他人の考えが必ずしもソラムニアの典範に合致するものではないことを理解する柔軟性を獲得した。
その経験をもって、少年ユリウスにイスピンの団で修行することを勧め、紹介する。
病を得たイスピンに、自分の目の届くところであるヴォグラー村に引退することを勧めた。
棍棒カジェル(ドワーフ:男性)
イスピンの冒険仲間であるドワーフ。勇猛果敢な典型的ドワーフ戦士で、大きな棍棒をトレードマークにしている。
引退するイスピンを「お前がドワーフだったらもっと一緒に戦えたのに」と残念がっている。
イスピンの団の一部を傭兵団として自分の「鉄壁連隊」に迎え入れることにしている。
貴族バカリス卿(人間:男性)
ヴォグラー村の名士。
わがままで高圧的なソラムニア貴族で、本国の屋敷を侵略者に焼き払われたため、財産とともにこのヴォグラー村に引っ越してきた、と言っている。
息子である小バカリスとともに村でも悪評さくさくではあるが、彼の財産はヴォグラー村にせよソーンウォール城塞にせよ欠かせぬものではある。
小バカリス(人間:男性)
バカリス卿の息子。
貴公子然とした風貌だが、性格は高慢で暴力的。ソラムニア本国で貴族の子弟同士の決闘騒ぎを起こし、そこで刃物を持ち出して相手を殺してしまったため、親ともどもヴォグラー村に落ち延びてきた。
直情で傲慢だが、剣の腕や知恵などは見るべきものがある。
ストーリーは、三年前、彼らが別れる前夜から始まる……。
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◆01:カワセミ祭りにて
ヴォグラー村は、伝統のカワセミ祭りの真っ最中。
カワセミ祭りとは、かつてこの村の高丘を舞台に繰り広げられたソラムニアとイスタルの戦いを記念したもので、そのクライマックスは、その高丘の戦いを再現し、村人がイスタル軍とソラムニア軍に分かれて、刃引きした武器や木剣で模擬戦を行うというもの。
大規模なこのお祭りを見るために、東の川下のカラマンからも観光客が来るほどの大イベントである。
冒険者たちももちろんこのお祭りに参加している。
DM「君たちはこのカワセミ祭りの高丘の戦い再現に、選手として参加しているんだ。高丘の頂上には大きな木が一本そびえていて、そこを中心に両軍がぶつかる形だね」
ユリウス「チームは? ぼくはイェレナと一緒がいいなぁ」
DM「いいよ。イェレナは「どうして?」みたいな顔をしているけど……。ユリウスとイェレナ、それからイセルがイスタル軍。ソフィとゴラン、あと小バカリスという12歳の少年がソラムニア軍だ」
ソフィ「魔法は?」
DM「だめ。君はセレスチャルの契約で、クリンにはまだ神は帰還していない。これは竜槍戦争の三年前の出来事だからね」
ソフィ「じゃあ、ダガーを持っていよう。刃引きしたやつだよね?」
DM「そう。データはそのままでいいよ」
イセル「私の魔法は?」
DM「初級呪文だけ。君はまだ上位魔法の塔の試練をパスしていない……これらのイベントはこのあとの個別導入でやるからね」
周囲では村人たちが木剣や刃引きした剣で撃ち合いを始めている。
中にはベクリン卿の訓練を受けた村人もいるが、その戦いぶりはいかんせん素人。
その中で、イスピンやベクリン卿から訓練を受け実戦経験もある冒険者たちは注目の的だ。
観客席では車椅子のイスピンが、今日だけは、と、医者に許しをもらってジョッキを掲げて観戦している。
その傍らには車椅子を押すベクリン卿、そしてカジェル。
バカリス卿は息子の活躍を見るべく最前列で一番いいワインを傾けながら、近くの村人に口角泡を飛ばしている。村人は迷惑そう。
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DM「君たちは明日、このカワセミ祭りのあと、ついにそれぞれ一人になって旅立つ予定になっている」
ユリウス「なら、ここでいいところを見せておきたいな。イスピンにも」
ソフィ「イェレナにも?」
ユリウス「まぁそう、部分的にそう」
ゴラン「何いってんだ? まぁいいや。俺の斧の冴えを見せてやるぜ」
DM「ではイニシアチブ……。だけど、一旦知覚の判定をして」
ソフィ・ゴラン「成功」
ユリウス「失敗。なんもわかんない」
DM「小バカリスの抜いたショートソード。これは真剣だね」
ソフィ「はぁ?」
小バカリスは本身のショートソードを抜き、ユリウスを睨んでいる。
ソフィは彼を問いただすが……。
DM「小バカリスは、「僕は強いんだ。誰にも負けない。勝てばいいんだろう。殺せば勝てる」と言って、ユリウスを睨んでいる」
ユリウス「僕は知覚に失敗したから気づいてない。やるぞー。カッコいいとこを見ててくれよな!」
ソフィ「……あのアホ面が気に入らないのは分からないでもないけど、これは刃物よ。人を殺せるのよ」
DM「小バカリスは気にしない。うるさそうに「当たり前だろう。僕が殺せば僕の勝ちだ。勝てば何でも手に入るはずだ」とか言う」
ソフィ「彼から剣をひったくれるかな」
DM「敏捷度の勝負にしようか」
ソフィ「勝った。勝ったら何でも手に入るね。剣を奪って、それで自分の腕を少し切って血を見せる。真剣を確認して、それを小バカリスに突きつける」
ゴラン「じゃあ大声で「こいつ真剣持ってきてるぞ!」と言う」
戦場中央で起きた騒ぎに、周囲の村人も手を止め注目が集まってしまう。
ユリウス「なんだなんだ。どうしたんだ?」
DM「じゃあ、状況を察したイェレナがさっと走って小バカリスに駆け寄る。それで「間違えちゃったみたいね」と場をとりなそうとする」
ゴラン「いや、間違えるかぁ? こいつユリウスを殺そうとしてたぞ!」
ソフィ「こら! 一旦黙ってなさい!」
ゴラン「いてっ。でもよぉ!」
場は騒然となり、バカリス卿が大騒ぎを始める。
曰く、「あの狂った半エルフを叩き出せ」「エルフだのなんだのがソラムニアを我が物顔でのさばっているのがそもそもおかしいんだ」「ウチの息子が殺される、いや、決闘をさせろ」……。
ベクリン卿は、さっと柵を乗り越えて、戦場中央にやってくると、ソフィから小バカリスのショートソードを受け取って一瞥する。
その間もバカリス卿はわめき続け、憤然とうつむく小バカリスはイェレナに肩を抱かれながら何かぶつぶつを言っていた。
ゴラン「おいこいつほっとくのかよ!」
DM「ベクリン卿は小バカリスとソフィ、ゴランを退場させる。イェレナも付き添ってくれる」
ソフィ「その優しさは少年のためにならんと思うなぁ」
DM「バカリス卿はわめきながら一緒に退場するね。ベクリン卿はため息を付きながら君たちから事情を聞くというテイでお祭りから隔離する」
ソフィ「あんたも大変ね」
DM「君ならもう少しうまくまとめることができたろうに、と、ベクリン卿。「君たちに非はないし、あるのはあの少年だが……彼は重要な納税者だ」と」
冷えてしまった祭りの場に、緑の盾イスピンが、足を引きずり木剣を杖にして現れると、よく通る大声で名乗りを上げる。
「われこそは高貴なるソラムニアの騎士ヴォグラー卿! さぁ、イスタル神官王の手先どもよ、この首が欲しくばかかってくるがよい!」
もう剣を握らないと言われていたイスピンの登場に、冷えていた祭りが一気に盛り上がる。
「さぁさぁ! とおからんものは音に聞け! ちかくばよって目にも見よ!」
DM「イスピンはやっとこ立っている状態で、しかし満面の笑顔で木剣をユリウスに向けて挑発する。周囲が大盛りあがりになる。往年の名選手がバッターボックスに立ったみたいな感じ」
ユリウス「でも、まともに立てないし……と気遣いながら剣を振るうけど……」
DM「イスピンは腕と手首だけでユリウスの打ち込みを全部いなしてしまう。それで「おいおいどうした? そんなもんでソラムニアに帰って騎士になるつもりか? もう一年くらい修行つけてやろうか?」と笑って挑発するね」
ユリウス「なにを!」
打ち込むユリウスの剣に力がこもり、しばらくの打ち合いの末ついにイスピンは剣を落とした。
「参った! イスタル王の手先とはいえ見事な腕前! そなたこそがソラムニア騎士ヴォグラーの名を受け継ぐにふさわしい!」
イスピンは叫んで、その年の高丘の戦いは、「イスタルの将軍が勝利するものの、高貴なソラムニアの騎士の心に打たれた彼は以後ヴォグラーと名を変え、イスタルを裏切って正道に戻った」という筋書きで、大盛況ののち幕を閉じたのだった……。
◆02:旅立ち
カワセミ祭りの終わった翌朝。
予定より少し早く、冒険者たちは朝もやの中、ヴォグラー村を旅立った。
予定が早まったのは、高丘の戦いでの騒ぎのためである。
バカリス卿が、ソフィとゴランにバツを与えろと息巻いたため、さっさとたつことにしたのだ。
ベクリン卿は「最後に面倒事を残してくれた」と笑う。
ソフィ「それがあんたの仕事でしょう、と笑うね」
ゴラン「俺はなんもわるいことしてないしなんもわからん。しらんけど。そんなことより、俺は戦の多いところに行って一旗揚げたいんだけど、どこがいいかな?」
ソフィ「一人で腕試しをするんだから、そうやってなんでも聞いちゃダメよ。自分で考えて自分で行くの」
ゴラン「なんもわからん……」
DM「イスピンは車椅子から立ち上がる。ちょっと昨日無理したせいかよろめくけど、ベクリン卿とカジェルが支えるね」
「三年後のカワセミ祭りでまた会おう。楽しみだなぁ。とっておきの冒険話を持って帰ってくれよ。楽しみにしている」
イスピンはうっすらと目に涙をにじませて、見慣れた屈託のない笑顔を向けた。
イェレナもみどりの目に涙をたたえてイスピンを抱きしめ、また見送りに来たみんなの手を握った。
見送りに来た中には、なんとくだんの小バカリスも混じっていた。彼はずっと不平不満をもらしていて、イェレナは彼の額にキスをした。
「きっと三年後にね。わたしは世界を見て回ってくるつもり。吟遊詩人にでもなろうかしら」
「それはいい。楽しみにしている……。お前たちは?」
と、イスピンは名残惜しむように言う。
ソフィ「私は、稼いだ金で酒場を開くつもり。もう物件も選んである。ソラムニアの田舎なんだから、娯楽産業は大盛況のはずよ」
イセル「わたし、は……上位魔法の塔をさがして……入門する」
ゴラン「俺はもちろん傭兵になって名を上げてやる」
ユリウス「僕はソラムニア本国に帰って、従騎士の叙勲を受けるんだ。ところで……イェレナ。お願いがあるんだけど……その……三年後、ここに戻ってくるまで……ええと、誰か特定の恋人とか……そういうの作らないでおいてほしいんだけど……」
ソフィ「まわりくど」
朝もやの中、彼らはそれぞれの目的地に旅立っていき、イスピンは支えを断って自分の足で立ったまま、彼らの背中が見えなくなるまで、ずっとその場を動かなかった……。
◆03:それぞれの三年間
そして三年の月日が過ぎた。
◆03-1:ソフィ・ブーケ
三年の時が流れ、ソフィは再びヴォグラー村に向かおうとしていた。
ソフィ「三年の間に、私はスターモントあたりの田舎村で酒場を開いていて、そこそこ繁盛してるんだ。それで、いつも頼んでいる従業員のおばさんに「ちょっとでかけてくるからあとをよろしく。帰りがいつになるかわからないから、もし帰ってこなかったら、お店は自分のものにして」といって出かけるね。これまでも危険なところを歩くから、そういう始末はしていたはず」
DM「じゃあおばさんは「またですかぁ? そういって前も登記簿変えようと思ったらひょっこり帰ってきたじゃないですか」と口を尖らせる」
ソフィ「案外たくましかった! ま、まぁ、何があるかわからないし……」
DM「ハハ。急に謎の軍団が現れて大戦争にでもならなければ、あんたが死ぬことなんてないでしょう、と、笑う」
ソフィ「ハハハ。先がわかってるゆえの伏線」
ハーフエルフのソフィは、ヴォグラー村に向けて一人、旅の空にあった。
途中の夜、野営して寝袋にくるまって眠っていたところ……。
ふと気がつくと、ソフィは森の中の開けた場所に立っている。
鋼と鋼の打合される音が響き、見回せば周囲は死体の山が大地を埋め尽くしているではないか。
空は暗く、なにか巨大なものが飛び回っているように感じる。
倒れた死体のうちの一つが、何かを大事に抱えていることに気づく。
DM「あなたは何か胸にこみ上げるものがあって、それに手を伸ばす……」
ソフィ「えー。確定なんだ」
DM「もちろん伸ばさなくてもいい。その場合は、ウォーロックではなくてなにかファイターかローグあたりでキャラクターを作り直してくれ。神様来てくれないから」
ソフィ「すっと手を伸ばした」
しかし、ソフィの手がそれに触れる瞬間、それは輝き始め……やがて凄まじい爆発が起きて、彼女はそこに打ち倒されてしまった。
ソフィ「なんでだよ!」
次に気がつくと、ソフィは全く違う場所にいる。
そこは生い茂る下生えの中に建つ、崩れかけた石造りの建物で、彼女はなにかに導かれるように、その建物に入っていく。
ソフィ「入っていく」
DM「素直で結構」
建物はどうやら神殿の遺跡のようで、いくつものアルコーヴに、古い神の像が並んでいる……。
いくつもの神の像のうち、甲冑を身に着けた戦士の彫像が、ぼんやりと光っている。
ソフィはその像の足元に、先程手を伸ばした護符のようなものが輝いているのを見つける。
DM「ドラゴンランスでパラダインってどういう彫像なんだろう」
ソフィ「フィズバン状態ではないでしょ。そうならランスのキャラたちが気付くだろうし」
DM「確か、雄々しき戦士座だったから、戦士の姿ということにしとこうか。とにかく、その像はあちこちが欠けているんだけど、欠けている部分には何かぼんやりとした光が集まって、その部分を補完するように建っている。あなたの前に、完全な姿の像が見えるね。その足元には、先程の護符……まぁ、聖印の円盤だけど……がある。あなたはこれがいわゆる神のものだと直感的に気付くし、それは疑う必要もなく真実であるとわかる」
ソフィの脳裏に朗々とした声が響いた。
「われはパラダイン」
その声は疑うべくもなく、かつてクリンにあった善なる神パラダインのものだ。
「世界に闇の翼が舞い戻ろうとしている。闇とともに光も戻らねばならない。そなたはその先触れとなるのだ」
ソフィ「先触れって……何をすれば?」
DM「神は答えない。指示もしない」
ソフィ「自分で考えろってことか……。でも私は神のためどうこうって女じゃない」
DM「神は答えない。それでも神は君を選んだんだ」
ソフィ「聖印に手を伸ばす」
目を覚ますと、くすぶる焚き火の煙の匂いが鼻についた。
朝日が昇りつつある。
ソフィはすべて夢だったと思ったが、それがただの夢ではないことは明白だった。
なぜなら、その手にはしっかりとパラダインの聖印が握られていたのだから。
DM「これで、ウォーロックのセレスチャルの契約が使えるようになる。この聖印を聖天供として使うことができるよ」
ソフィ「なるほどね。でもこれ、喋っても信用してもらえるかな。イスピンなら聞いてくれるかも」
DM「そう考えて、あなたはヴォグラー村への道を急ぐのでした……」
◆03-2:イセル
三年の時の間に、エルフの魔道士イセルは、ついに上位魔法の塔を発見する。
それは、クリンの三つの月が一直線に並ぶ「闇の目」と呼ばれる夜のこと。
イセルが見出したのか、あるいは見出されたのか。
バーブの塔という尖塔を訪れたイセルは、赤いローブの魔道士に迎えられた。
彼の名はデメリン。
上位魔法の塔の高名で強力な魔道士だ。
建物のアーチ門から光が漏れ出していて、デメリンは低いかすれ声で言う。
「ようこそ。若き魔道士よ」
イセル「若き。エルフの私が?」
DM「デメリンから見たら、そうかもね。彼の顔はよくわからない。しかしその声からは、ものすごい年月を感じる……。彼はあなたに、門をくぐって試練を受けるよう告げる」
イセル「もちろん受ける。そのためにシルヴァネスティを出たんだから」
DM「シルヴァネスティの王も、かつて上位魔法の塔の大審問を受けたという話もある。もちろん、あなたにもその道は開かれている……」
デメリンは、イセルに告げる。
「中に入り、巻物を一つ取ってくるように。それが試験だ」
イセルがバーブの塔に入ると、後ろで扉が消え失せる。
塔の中は大きな一つの部屋になっており、部屋の中央の祭壇に、巻物が一本、浮いているのが見えた。
「肉の目に頼るな。魔法こそがその姿を明らかにする」
イセル「あれを取るだけ? 歩くけど?」
DM「見えない壁にぶつかった」
イセル「なんだろ。正面にファイアボルトを撃ってみる」
DM「ぱっとはじけた。なにか障害物に当たったみたい」
イセル「うーん……」
イセルは記憶の中から呪文を引き出す。
完成した呪文は、色彩を生み出すカラースプレーの呪文。
きらきらと輝く色彩は、部屋に施された不可視の迷路の壁を明らかにした……。
DM「OK。カラースプレーで色を付ければ、迷路は単純なものだ。あなたは部屋の中央で巻物を手にすることができる」
イセル「これで試練は終わり?」
DM「そうだね。消えてきたドアが再び現れて、あなたはデメリン師のもとに戻ることができる。
赤いローブのデメリン師は、戻ってきたイセルを迎え、そして一冊の呪文書を手渡した。
「そなたは上位魔法の塔へと入門した。これはその証だ。この呪文書に、そなたの見つけた呪文を書き込むが良い」
それから彼は、イセルが持ち帰った巻物を指差す。
「その巻物を、カラマンの街にいる黒ローブの魔道士ワイアンに渡せ。ただし、決して中を見てはならない」
イセルは頷いて、それを大切に背負い袋にしまった。
袋を閉じたイセルは、ふと違和感を覚えて空を見上げた。
DM「イセルは夜空に異変を感じる。星座だ。星座が欠けている。暗黒の女王座と、雄々しき戦士座が、天空からぽっかりと消え失せている……」
イセル「なんだろう。デメリン師に言う」
DM「デメリン師もまた空を見上げて、そしてゆっくりと首をひねる。彼にとっても不可解なことらしいね」
イセル「凶兆かな。しかし……イスピンに話せばなにか……わからないかもしれないけど、でも安心させてくれるかな」
DM「デメリン師は、これについて調べてみる。また会おう、と言って、魔法で光る門を出して、姿を消すね。あなたは星座の欠けた星空を見上げて、そしてヴォグラー村に向かうのでした……。
◆03-3:ユリウス
三年の間に、ユリウスはソラムニア本国での厳しい試験をパスし、無事従騎士として叙勲を受けることができた。
そこには、ベクリン卿からの内申書、そして父の友人でもあるダルスタン・リアル卿からの口添えもあった。
ユリウス「やった。イスピンの団での修行は無駄じゃなかったんだ」
DM「そうだね。口添えしてくれたダルスタン卿は君を祝福する。「おめでとう。知っての通り、我がソラムニア騎士団は、大変動以後、その名誉を失い続けている。君のような若い騎士が活躍してくれることを願っているよ。ところで、ソラムニアの騎士の掟を聞いておこうかな」と」
ユリウス「お……きて……?」
DM「しっかりしてくれ」
わが名誉はわが命。
それがソラムニア騎士団の名誉ある掟。
ソラムニア騎士団の鎧をみにつけたユリウスは、誇らしい気持ちでヴォグラー村に向かうのだった。
三年後に会うという誓いを果たし、その後は、本国で騎士団と、そして民のために働く名誉ある日々が待っている。
ユリウス「東大出て官僚になる直前の気分。いやぁー。これからは公僕としてさぁー。働くから、それまでに最後のハメはずし? みたいな?」
DM「ダルスタン卿は、「御婦人を連れてきても構わないよ」と笑う。「騎士ベクリン卿からの内申書にもあった。イェレナ・カンサルディ嬢だったか」
ユリウス「な、なんのことでしょうかねぇ」
ヴォグラー村に向かうための旅の途中、ふと気がつくと、ユリウスは森の中の開けた場所に立っている。
鋼と鋼の打合される音が響き、見回せば周囲は死体の山が大地を埋め尽くしているではないか。
空は暗く、なにか巨大なものが飛び回っているように感じる。
倒れた死体のうちの一つが、何かを大事に抱えていることに気づく。
ソフィ「あ、同じだ」
DM「同じパラダインだし……まぁここはいいかな、と」
ユリウス「もちろん聖印に手を伸ばすよ」
これはパラダインからの召命である。
ユリウスはそれを直感的に、そして宿命的に理解する。
彼の脳裏に、低く朗々とした声が響く。
「我はパラダイン。闇の翼が世界を覆おうとしている。我が先触れ、剣として、献身を示せ」
ユリウスは神の威光に打たれ、静かに目を閉じ、跪いた……。
そして目を開けた時、ユリウスは周囲の様子に恐怖した。
周囲は炎に包まれ、ごうごうと渦巻く音が耳を聾する。
炎は夢などではない。
その熱気、異様な匂いに、ユリウスはたじろいだ。
耳をつんざく轟音の中でなお、その声はしっかりと響いて聞こえる。
「命を捨て、献身を示せ。光を救うのだ」
炎の中、うずくまり、息も絶え絶えに怯えている人影を、ユリウスは見つけた。
DM「炎の中に人影が見える。その姿は、イェレナだ」
ユリウス「え!」
DM「イェレナは君に気付くと、必死の顔で叫ぶ。その緑の瞳は涙に濡れ、赤い髪は暴風の中でばさばさとはためいている。彼女は叫ぶ「来ちゃだめ!」と」
ユリウス「どういうこと?!」
DM「君が目を向けると、この炎の正体に気づく。見上げると巨大なドラゴン……おとぎ話に登場する恐るべき邪悪な怪物……が見える。赤いドラゴンがその口を開け、炎を吐いている。この炎はドラゴンのブレスなんだ。その炎は今、イェレナを包み込んでいる。何かが彼女を守っているけど、それはもう保ちそうにない。ドラゴンが君を見つけた様子で、恐ろしい視線を向ける……。そして、脳裏にパラダインの声が響くね「命を捨て、献身を示せ」。イェレナは必死で叫んでいる。「来ちゃダメ! あなたは生きて!」」
ユリウス「ええ! その、僕、このキャンペーンでは堕ちたパラディンをやってみたいんだけど……もし助けに行ったらどうなる?」
DM「堕ちないパラディンになる」
ユリウス「行かなかったら?」
DM「堕ちる」
ユリウス「うええ。どうしよう……」
ユリウスはその場を動くことができない。
踏み出せば、間違いなく死ぬ。
その恐怖が彼の足を止めた。
今の自分では助けられない。それは分かっている。
それでも伸ばしたその手を、ドラゴンの炎が焼いた。鋭い痛みが左腕に走る。
イスピンやベクリン卿に指導を受け、ソラムニアの従騎士となり……しかし、彼は助けを求めて後ずさった。
「誰か! 誰か来て! イェレナが! 僕には助けられない!」
次の瞬間、ユリウスは目を覚ます。
「夢……?」
夢だったと思いたかった。
しかし、彼の左腕には、深い火傷の痕が刻まれていて、これがパラダインの召命であったことは間違いなかった。
そして、ユリウスはそれに失敗したのだ。
一度は授かった神のちからは、もはやその手を滑り落ちてしまっていた……。
ユリウス「正夢とかじゃないといいけど……急いでヴォグラー村に向かおう。イェレナが心配だ」
DM「さっきまで誇らしい気持ちでいっぱいだった心が、喪失感と挫折感でいっぱいになって、きみはヴォグラー村に急ぐ……」
◆03-4:ゴラン
三年の間、ゴランは各地を転戦し、戦士としての腕前と、そして勇名を上げていた。
一回りも二回りも大きくなって、彼は意気揚々とヴォグラー村に向かっている。
あと半日もゆけばヴォグラー村、というあたりで、街道の向こうから、半狂乱の商人が、こけつまろびつ走ってくるではないか。
「助けてくれぇ!」
ゴラン「なんか俺の毛色が違わない? とにかくなんだなんだと助けに行くよ」
DM「彼は「怪物が、怪物が! 助けてくれ!」と喚いている」
ゴランは斧を抜いて走る。
クリンで怪物は珍しくない。まして戦場に身をおいてきた彼にとっては。
荷馬車がひっくり返っていて、荷物が散らばっている。逃げてきた商人のものだろう。
その周囲には、ソラムニアの鎧を身に着けた死体が転がっている。
そしてその死体を、奇妙な人影が漁っていた。
黒いマントのようなものからは鱗のある翼と爬虫類のようなトゲや背びれが突き出している……。
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ゴラン「ドラコニアンだ!」
DM「いや、君はこんな怪物を見たことも聞いたこともない。なにせこの世界にドラコニアンが現れたのは、ほぼ初めてだからね」
ゴラン「なんだこいつ!」
DM「切り替え早いな」
その怪物は、ゴランを見つけると手にした剣で彼を引き裂こうと翼を広げた……。
DM「じゃあイニシアチブ」
ゴラン「戦闘あるの?! 一人なんだけど!」
DM「まぁ、彼らもソラムニアの騎士との戦いで傷ついているようだね」
ゴラン「くそっ。やるしかないか!」
ゴランは危うい手傷を負いながらも、この怪物を撃退する。
ゴラン「どうだ! これで死んだろ」
DM「そいつが倒されると、傷口からしゅうしゅうとガスのようなものが吹き出す。みるみるうちに、その怪物が石になっていく」
ゴラン「石に?!」
DM「ガスを浴びてるので、耐久力セーヴをして」
ゴラン「成功。失敗するとどうなる?」
DM「敵と一緒に石化しちゃう」
ゴラン「げー!」
奇妙な怪物を撃退したゴランに、命からがら助かった商人は大いに感謝する。
彼の名はリース。
ヴォグラー村のカワセミ祭りに合わせて酒やごちそうを商うために向かっていた最中で、ちょうど出会ったソラムニアの騎士たちの一団とともに村に向かっていたところを、この怪物に襲われたという。
敵は多勢で、騎士たちは奮戦したが多勢に無勢、倒されてしまった。
ゴラン「ソラムニアの騎士か。ベクリン卿に渡したほうがよさそうだなぁ。馬車に積んで村に向かうことはできるかな」
DM「できる。割れた酒瓶とかをどかせば、彼らの遺体のスペースができるだろう。ただ馬が死んでしまっているから、リヤカーみたいに引っ張る必要があるけど」
ゴラン「力仕事なら任せとけ」
この奇妙な怪物との出会い。
これがこの恐るべき戦乱の先触れであることを知るのは、もう少し先の話となる……。
◆04:戦争への序曲
ヴォグラー村に向かう道で、彼らは再会を果たす。
ソフィ「じゃあ、でかい馬車を引っ張ってるゴランを見つけて声をかける。「久しぶり、あんたすっかりでかくなって! 馬のかわりができるようになったんだねぇ!」とあたまをかいぐりかいぐりする」
ゴラン「うるっさいなぁ、たいへんだったんだよ、頭撫でるなよぉ」
ソフィ「大変?」
ゴラン「見たこともない怪物が出て、まぁもちろん勝ったけど、この死体をベクリンさんに運んでるんだ」
ソフィ「ソラムニアの騎士だ。何があったの?」
話す途中、前をとぼとぼと肩を落として歩くユリウスを見つける。
ソフィ「ユリウス! あんたも立派になって!」
ユリウス「あ、あぁ……ソフィか……。と言うけど、なんか沈んだ顔をしてる」
ゴラン「どうしたどうした」
ソフィ「元気ないけど、まぁイェレナの顔を見ればすぐ元気になるだろうさ」
ユリウス「イェレナ! 急がなきゃ!」
ゴラン「なんで」
ユリウス「心配なんだ!」
ソフィ「あの子はあんたよりしっかりしてるよ……」
村に到着した時、彼らを、懐かしいベクリン卿が迎える。
ベクリン卿は微笑んで、彼ら一人ひとりに声をかけた。
「ゴラン、立派になったな。もう剣では敵わないかもしれない。ソフィもイセルも、変わらないな。私は老けて見えるだろう? ユリウス、いや、ユリウス卿と呼ぶべきかな? 頼もしい仲間になったこと、推薦した一人として誇らしく思う。イスピンもきっと喜んでいることだろう」
「イスピンは? イスピンは一緒じゃないの?」
ソフィはきょろきょろと見回すが、出迎えに来てくれたのはベクリン卿だけのようだった。
ベクリン卿は小さく首を振ると、悔しさをにじませて、告げた。
「イスピンは……つい先日、息を引き取った」
「えっ」
「最期まで、君たちの帰りを楽しみにしていたよ。医者が言うには、本当ならもっと早く亡くなっていただろうという話だった。君たちの土産話を楽しみに頑張っていたが、先日、ついに、な」
だが安らかだったよ、と、ベクリン卿は付け加えた。
「これも神の思し召しだろう。もしこのクリンをまだ見守っていてくださっているなら」
「見守っているよ、きっとね」と、ソフィ。
ベクリン卿が言うには、葬儀は明日、カワセミ祭りに合わせて行うことになっているとのことだった。
「にぎやかなのが好きな男だったからな。祭りで盛大におくりだしてやろうじゃないか。とっておきの話を考えておいてくれ」
ユリウス「イスピンの話にもショックを受けるけど、それはそれとして、イェレナは? イェレナは来てる?」
DM「ベクリン卿は「それなら」と、手紙を一通出してくるね。開封はされていない。差出人はイェレナ・カンサルディ」
ユリウス「なんて? 僕は字がうまく読めない」
ソフィ「しっかりしなさいよ……中身は?」
手紙には、ごく簡素にこうあった。
約束を破ってごめんなさい。今大きな仕事にかかってしまっていて、そこに行くことができない。でも元気だから心配しないで。
一同は顔を見合わせ、そしてベクリン卿は眉間にしわを寄せて首を振った。
「誓いは破られた……。凶兆だ」
一同「そんな深刻な話かなぁ?!」
……つづく。