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「モデレーターを目指すなら興味力を上げるべき」一般社団法人at Will Work代表理事・藤本あゆみから学ぶ、イベント進行の“コツ”

モデレーター&ファシリテーターの技術を学べる講座「THE MODERATORS & FACILITATORS」の公開イベント企画がオンラインで開催されました。

今回は、一般社団法人at Will Work 代表理事の藤本あゆみさんをゲストにお招きし、オンラインとオフラインでの違いや、イベント進行で気をつけている点などをお伺いしました。

藤本あゆみさん
2002年キャリアデザインセンター入社、2007年4月グーグルに転職し、人材業界担当統括部長を歴任。「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。その後、株式会社お金のデザインを経てPlug and Play Japan株式会社にてマーケティング・PRを統括。

「何か言いたそうだな」という素振りは見落とさない

河原あず(以下、河原):今回は、MODERATORS & FACILITATORSのスピンアウト企画、第2回目の勉強会です。西村創一朗さんと一緒に、実際にモデレーターとして活躍している方にお話を伺いたいと思います。

本日のゲストは藤本あゆみさんです。よろしくお願いします。

藤本あゆみ(以下、藤本):藤本あゆみです。よろしくお願いします。

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軽く自己紹介をすると、現在は主に3つの仕事に取り組んでいて、メインはPlug and PlayというシリコンバレーにあるVCで、日本法人のマーケティングとPRの統括をしています。その他にも、一般社団法人at Will Workの代表や、一般社団法人マーケターキャリア協会の理事を務めています。

どの仕事もイベントが多くて、モデレーターとして参加するだけではなく、モデレーターのアサインやサポートなども行なっています。

河原:今回の勉強会に打って付けのゲストですね。モデレーターとしては、どれくらいの頻度で登壇しているんですか?

藤本:結構ばらつきはありますが、自粛になってオンラインイベントが増えてからは、週1,2回のペースで登壇していました。

ただ、直近は主催者側に回ることが多かったですね。とくにPlug and PlayのDemo Dayは、6日間連続で開催をしていました。登壇スタートアップが世界中にいるので、朝はアメリカでやって、昼は日本とAPACでやって、夕方はヨーロッパでやって…みたいな感じです。

河原:すごいですね…。

オフラインのイベントからオンラインになって、何か戸惑いは感じませんでしたか?

藤本:最初は、空気感がわからなかったですね。

とくに初めて会う人の場合は、どんな間合いをとるのかわからず困りました。通信の乱れとかもあると、言葉が被ったりするじゃないですか。

オフラインで同じ空間にいると「ちょっと話したそうだな」とか、なんとなくわかるんですけど、オンラインだとそれが見えないんですよね。映像が固まっているのか、本人が止まっているのか、違いがわかりづらかったです。

おふたりは何か戸惑いを感じましたか?

西村創一朗(以下、西村):オンラインの方が、ググれるし、Twitterの反応も見れるのでやりやすいと感じました。

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とくに知らない言葉が出てきたときに、オフラインだと対応できないじゃないですか。もちろん本人に聞いたりしますけど、本論には関係ないことだと脱線してしまうので、聞くよりもググったほうが良いと思っています。

河原:僕は、それなりに戸惑いましたね。

ただ、オンラインでダブルファシリテーションをすると、片方が主旋律を引いて片方がチャットを拾ったりできるので、分業制の良さを実感できました。あと、登壇者の記事を手元に並べて参照できるのは便利だと感じましたね。

藤本:それ、私はあんまりやらないんですよね。どちらかと言うと、相手の表情を見ながら「次は何を聞こうか」と考えています。オンラインだと真正面から相手を見れるので、少しの表情の変化も見落とさないようにしています。

西村:どのようにして表情を見極めて、質問に活かしているんですか?

藤本:相手のキャラクターによって、話の振り方は変えていますね。例えば「今、気を抜いていましたよね」と振られると、なかには戸惑ってしまう人もいるので、そういった振り方をするのはごく一部の人に限定しています。

どんな話し方をするのか、どんなテンポで返してくるのかを事前に把握しておいて、登壇者の「ちょっと何か言いたそうだな」という素振りを逃さないようにしています。

河原:マイクの持ち方が変わったり、前のめりになったり、人によってスイッチを入れるタイミングは違いますよね。

藤本:人によっては、会話に入ってこないけど何か言いたそうにする人もいます。実際、そういうときのコメントが良かったりするんですよね。

積極的に会話に入ってくる人のコメントもテンポ感としては大事なんですけど、核心をつくようなコメントもほしいので、それは逃さないようにしています。

河原:しっかりと見極めているんですね。

藤本:そうですね。モデレーターとしては、特定の人が話し続けてしまうのを止めたいじゃないいですか。なので、登壇者が「話したいけど、テンポ的に話せなかった」とならないように気をつけています。

楽屋トークで盛り上がりすぎないように気をつける

河原:あゆみさんは、事前に聞くことは考えずにアドリブで臨むことが多いんですか?

藤本:私はそうですね。どうしても聞かなくてはいけないことや、聞いてほしくないことは確認するようにしています。

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ただ、事前に「これとこれとこれを聞きます」とだけ伝えてしまうと、それしか聞かなくなってしまうので「聞かれてほしくないこと以外は、遠慮なく質問させていただきます」と伝えて、相手と質問の期待値調整をするようにしています。

河原:西村さんは、下調べをしたうえでアドリブをする派ですよね?

西村:そうですね。質問などを事前に伝えると「しっかりと準備をしてくれている」と安心感を与えられるので、信頼関係が構築できます。

ただ、事前に伝えた質問の8割くらいは捨てて、容赦なくアドリブを振るようにしています。

河原:僕も調べた情報は楽屋で話すことが多いですね。でも、事前に打ち合わせをせずに臨んだほうが、本番でグルーヴが出るじゃないですか。そこの塩梅って本当に難しいですよね。

藤本:私も楽屋で盛り上げ過ぎないようにしているんですけど、打ち解けないと人によっては本番で緊張してしまう人もいるので、さじ加減は難しいですよね。

とくにオンラインだと、登壇者のなかには「観客の反応がないから、話していてよくわからなくなった」と言う人もいるので、気をつけるようにしています。

河原:MODERATORS & FACILITATORSで、お互いにインタビューをするという宿題を出しているんですけど、インタビュー後のアフタートークのほうが盛り上がっているんですよ。

この盛り上がりをインタビュー本番で出せばいいのにって毎回思っています(笑)。

藤本:じつは以前、at Will Workで一般の人がアフタートークを見れるようにしたんです。そうしたら結構盛り上がったんですよね。オンラインのイベントでも、そういった取り組みがあったら面白いのでは?と思いました。

西村:この前、副業カンファレンスでやりましたよ。at Will Workの日比谷さんが「終わったあともそのまま流しちゃおう」と言ったので、そのまま配信してみたら、視聴者の満足度が上がりました。アフタートークは、ゆるくてカジュアルだからこそ面白いですよね。

「今日はこういうことを聞きたいと思います」と冒頭で言っておく

河原:あゆみさんはモデレーターのアサインやサポートをする際に、どのような視点で行なっているんですか?

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藤本:Plug and Playの場合は、基本的に全員がモデレーターを務めます。ただ、全員がモデレーターのプロになりたいと考えているわけではないので、ノウハウを教えるよりも、彼ら彼女らがやったものに対して、その都度フィードバックをするようにしています。

1セッションが15〜20分と短いので、なかには焦って矢継ぎ早に質問をしてしまう人もいるんですよ。そういう場合は「ちょっとだけ待つと良いよ」とか「回答に対して深堀りしてみると良いよ」とか、質問数を少なくしたり、質問のやり方を変えたりして、1問1答にならないようにアドバイスをしています。

英語のイベントになった途端、全然違うモデレーターになる人もいるので、色んなスタイルが見れて面白いですよ。

西村:海外カンファレンスのモデレーターを見るなかで、参考になる要素はありますか?

藤本:セッションが短くてトピックを結構絞っているので「このセッションは何なのか」が非常に明確です。聞くべきことはしっかりと掘り下げつつも、必ず余韻を残した状態で終わらせています。イベント後のコミュニケーションが活発なので、それの良い仕掛けづくりとなっているんです。

あとは、ニュースキャスターがモデレーターを担当することが多いので、良い質問が多いですね。

西村:良い質問ってモデレーターとして必須の力だと思うんですけど、あゆみさんなりの質問の仕方ってあるんですか?

藤本:聞かなくてはいけないことを冒頭に聞くようにしています。「このイベントはこのテーマなので、こういうことを聞きたいと思います」と、冒頭で言ってしまいますね。

西村:いきなり本題って欧米ぽいですね。

藤本:イベントの時間が長いときは、戻ることもあります。冒頭で「今日はこういうこと話したい」と言った後に、脱線をして場を温め直してから、もう1回本題に戻すみたいな。

河原:きれいなモデレーションする人って、伏線回収が上手いですよね。後半にキーワードを拾うだけで、聞いてる側が「おっ」となります。簡単にプロぽく見えるので、おすすめです。登壇している人も「私の話、覚えていたんだ」となるし、前のテーマに戻ることは良いことづくしですよね。

西村:伏線回収ができそうなキーワードが出てきたら、メモをしていますか?

藤本:本当はメモをしたいんですけど、手元にメモがないときは一生懸命覚えています。話している人が何回も発している言葉は、無意識に大事だと思って発している可能性があるので、それは注意深く聞くようにしていますね。

イベント後に、しっかりと振り返ることが大切

河原:あゆみさんの話を聞いていると、しっかりと積み上げてきたものがあるんだなと感じます。現場で鍛えたんですか?

藤本:そうですね。でも、失敗もしています。

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「今日は盛り上がったな」とか「今日はだめだったな」とか、感覚的に残るじゃないですか。なので、イベント後にはリフレクション(振り返り)をして、次にどう活かすかを考えるようにしています。

西村:ちなみに、今までで一番の失敗は何ですか?

藤本:一番は思い出せないですけど、オフラインのときに会場の雰囲気が固い瞬間があって、それは結構辛かったですね。あと、登壇者が退屈そうにしているのも落ち込みますね。やっぱり観客と登壇者が楽しんでる方が良いじゃないですか。

河原:オフラインのときは、楽屋で振り返れたから良いんですけどね。オンラインだとそれが難しいので、アーカイブを見るようになりました。盛り上がった場面を見て、その決め手は何だったのかを振り返るようにしています。

自分の映像を見るのは辛いですけど、見返したほうが良いですよね。

藤本:ビデオでの振り返りは、メディアインタビューのトレーニングでも使われるんですよ。無意識に手が動いたりとか、目が泳いだりするのは、自分ではなかなか気づけないので、癖を治すきっかけになります。

西村:少し話が変わるんですけど、モデレーターをキャスティングする際には、どのような観点で選んでいるんですか?

藤本:良い質問ができるかどうか、ちゃんと質問ができるかどうか。話を回すだけではなくて、しっかりとつっこめるかを見ています。

西村:2020年のat Will Workのカンファレンスで「この人、すごかったな」と思うモデレーターの名前を教えてください。

藤本:2020年は、Forbes の谷本有香さんですね。相手が話しやすい質問の仕方をするんですよ。登壇者の所属している企業の広報チェックを守りつつ、その人らしく答えられるようにしていました。

あと、Business Insider の浜田敬子さんは聞きづらい質問もしっかりと聞いてくれます。そのときは電通の役員の方と働き方をテーマに話していたんですけど、事実に対してつっこみをいれてくれました。

河原:そうなんですね。そういえば、あゆみさんって放送部出身だったと思うんですけど、声の出し方のコツを知りたいです。

藤本:質問が相手に通じないと回答してもらえないので、はっきりと発音しながらゆっくりと話すのが良いと思います。

とくに慣れていないときは「この質問していいのかな?」という戸惑いが声に出てしまいます。登壇者が「え?」と聞き返すと、会場が「今の質問、大丈夫かな」という空気になってしまうので、150%自信を持って話すのが大事ですね。

オーディエンスの知りたいことを優先して聞く

河原:ここからは、視聴者からの質問に答えていただきたいと思います。

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Q.オンライン×オフラインのハイブリットイベントのときに気をつけていることを教えてください

藤本:登壇者が会場で配信する場合は、どうしても会場の反応が見れない状態になります。なので、スタッフの人が反応をしたり、反応が登壇者のもとに入るようしたりなど、できるだけ登壇者が話しやすくなるような工夫をしています。

Q.自分が聞きたい話・登壇者が話したい話・オーディエンスが聞きたい話の割合はどのように意識していますか?

藤本:オーディエンスが聞きたい話=イベントのテーマだと思うので、それはカバーするようにしています。一方で、登壇者が話したいことは、事前に確認して聞くようにしていますね。自分が聞きたいことは、その合間にエッセンスとして入れるようにしています。

なので、オーディエンス・登壇者・自分の順番で割合を調整しています。

河原:モデレーターは登壇者に一番近い聞き手なので、そこを意識したうえで進めるのはすごい大事ですよね。

Q.声のトーンが高いと向いていないですか?

藤本:頑張ってトーンを低くすると、かえって不自然になるので、自然に発声したほうが良いと思います。ただ、口調が速いと聞き手が理解に苦しんでしまうので、ゆっくりと話すのがおすすめです。

河原:僕は合唱をやっていたので、鼻に息を通して声を調整しています。それだけでも声が柔らかくなるので、おすすめです。あと、自分の声を録画して確認するのも良いですよね。

藤本:マイクを調整するのも大事だと思います。オンラインだと、全然聞こえなかったり、逆に響き過ぎたりしている人も結構多いので。

河原:マイクは外付けのコンデンサーマイクを使うのがおすすめです。少し位置を調整するだけで、本当に声の印象が変わってきます。

質問力を上げるには、興味力を上げるべき

河原:最後に、モデレーターを目指している方に向けてエールの言葉をください。

藤本:質問力を高めるためには、興味力を増やす必要があります。イベントに対してや、相手に対しての興味を今の1.2倍くらいにすると「もう少しこれ聞いてみたいな」と思うようになるので、ぜひ心がけてほしいと思います。

質問をするのは怖くないですし、徐々に楽しくなってくるので、良い質問をたくさん見つけてみてください。

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河原:良い質問かどうかは、質問の数をこなさないとわからないですよね。ロジカルではなく、エモーショナルな質問もたくさんあります。それができるようになると、楽しくなりますよね。

みなさんも、たくさん質問をする機会を作ってみてください。藤本さん、本日はありがとうございました。

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