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「精神療法でわたしは変わった 苦しみを話さずに心が軽くなった」を読んで(読書感想文#24)
いつもは目的を持って本を選ぶことが多いのですが、この本は雰囲気が変わっているなと思って手に取りました。サイズ感も、構成も独特な本でした。
「基本的にはノンフィクション・ドキュメント」とあとがきにあったのですが、クライエントの女性側から精神療法の面談や先生のことが描かれていて、語りで進んでいく。ワークなども多く、精神療法の様子に触れることもできるし、読み物としても面白かったです。
▼精神療法でわたしは変わった 苦しみを話さずに心が軽くなった/増井武士著
精神療法ってなんだろう?
・自分自身の自覚を深める。
・自分の感覚を見つけ、自己理解が深まる。
・自己感覚が活性化、苦悩への支配感覚が強まる。
・言葉にしないでも、面接可能。
私も、それってどんな感じなんだろう?と思いました。それが「臨床でこうやって進むんだ」とストーリーで分かる本でした。
トラウマの書籍で、感覚を感じることが大切という意味がやっと分かってきたところだったので、臨床ではモノを使ったり距離感を感じてみたり・・・色んな方法があるんだなと知ることができて、よかったです。
・言葉にしない方が、内的問題として触れやすい。
・身体感覚で扱うと、問題への感じ方や主体的な問題への関わり方の吟味がしやすくなる。
・そして、自分側が支配しやすくなる。 そういうことのようです。
急激な変化は禁物である理由
とかく焦りがちな私に、とても響いたのがこのお話でした。
「以前からして少しマシなら、それでよし」という、ゆっくりとした積み重ねを大事にします。(途中略)
今まで自己を守ってきたシステムを突然、変化させて、その変化に自己がついていけなくなるからです。
ちなみに、ゆっくり進めることの大事さは、トラウマの本でも出てきていたところだったのです。やっぱり重要な点なのだと思います。「変化はゆっくりがいい」、私はこれを大切にしよう。
先生の「在り方」に、いいなと思う
先生の「在り方」は、「仮面をつけない」。自分自身が問われる出来事があると、自分が希薄だとそのぶん混乱するからです。素顔を大切にされていると。(でも仮面はその人の”しのぎ方”とも言えるので、否定するわけではないとも)
いいなぁと思いました。在り方というものが描けない私。自分自身のままで、それをそのまま表現できる。やっぱりそれがいいな。自己一致。そのためにも、まずは自己感覚を育てないといけない。
「自分らしく生きる」の端っこが分かりそうな予感
私は「自分らしく生きる」というものが、よく分からないなと思っていたのです。それが、なんとなく分かりそうなエピソードがありました。
回復に差し掛かる時、クライエントの外見が変わったり、部屋の模様替えをしたり等の変化が多い。その時感じたことなどを詳しく聴く。
・どのように置き換え、どのようなクロスにし、どんな気持ちになったか
・本や映画であれば、どんなところに感動したのか 等
どのような”自分らしい道”があるのか、先生も知っていきたいため。
なるほどと思いました。心の在りようが外に出ているので、そのプロセスや動きをしっかり見ておくのがきっと大事なのですね。それが「自分らしい」の一部なのかな。つまり、自分が心地よくなっていくときの心の動きをよく観察しておくこと。
私、いいこと日記とか書こうとして、すぐ挫折していたんです。でもこの話を読んで、同じようなことも今までと別の感覚で取り組めそうな予感がしています。
精神療法の入口から少し覗いた気分でした
精神療法とは、というお話にこんな内容がありました。
精神療法と言うのはある種の世界観ないし社会観をもっている。「人はみな”ほかの世界と調和して豊かに生きたい”という大きな願いを抑圧している」。だから”うまくやっていきたい”気持ちを取り上げ、どう実現するかに取り組む。
奥の深い言葉で、私にはまだちょっと難しいけれど、個々の課題の他に大きな視点があることは何となくわかるような気がします。
その他に、精神科医師の実際や、精神療法は伝承される類の雰囲気のことには、先生から語られると本当にそうなんだと驚きがあります。そして「気楽は気楽でいい」ということ、気持ちのキャッチボールのような大切にしたいことが散りばめられていてあたたかい気持ちにもなりました。
私は増井先生の本は初めて読んだのですが、他の本も是非読んでみたいと思いました。「こころの整理学」という本が特に気になっています。正直私にとってさらっと読める本ではないとは思いますが、読むのが楽しみです。
ここまでお読みいただきまして、どうもありがとうございました。
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