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汎用メタプロンプトと、「書かない」プロンプト術
ここのところ、システムプロンプトはほとんどClaude 3 Opus→Claude 3.5 Sonnetに書かせている。そしてそれを実戦投入している。
もはや、私自身は書いていない。
今では古典となったプロンプトインジェクション対策の記事群だが、このところ、私はこの点でも、やや思考を切り替えている。
もちろんこれらの対策は、守る価値がある何かを守りたいなら、使って悪いものではない。
ただ、現実的に、守る価値がある何かは、クローズドな環境でのみ共有して、そもそもAIに由来するリスクを締め出す方向に向かいつつあるように思う。
オープンな環境でも、Gemini Advancedに見られるように、出力からフィルターするなど、プロンプトベースのインジェクション対策よりも、外に対策を作った方が確実である。
ただし、それでも、その中に何らかの理由があって手元でバックアップを取っておきたい人がいるようなことはありうるし、インジェクションはされるものであると思っておいた方が良い。
ならば、システムプロンプトそのものも、インジェクションで抜くよりも効率的に作れてしまえる状況にしてしまえば、抜くことはもはや意味をなさなくなるのではないか?
そして、その実、そうして作らせたプロンプトの方が、下手に個人が考えるプロンプトよりも、よりレベルの高い出力が得られるのではないか?
今回はそんな話である。
汎用メタプロンプトで作られたもの(例)
遠大な話になるより、結局何が作れるのか?
多忙なビジネスパーソンなどはそう問いたがる気がするので、いくつかお見せする。
以下は、すべて今回私が提供する、本文はたった6行、セクション込みでも10行もない汎用メタプロンプトから生まれたプロンプトである。
C#を理解する人向けに、Pythonの解説を行う
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英語か日本語かは、指定しないとランダムだが、私はあまり気にしていない。
日本語でほしい場合は汎用メタプロンプトに指示として盛り込んでもいいと思う。
健康的なダイエット。短・中・長期プランも出してくれるし、翌日何をすべき(ワークアウトやメニューなど)かも出してくれる。
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日本語話者向けに、英語と比較しながらフランス語について解説するシステムプロンプト
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生成AIに関するYoutube解説動画チャンネルの、タイトルや構成を生成するシステムプロンプト
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パワポ向けにSVGアーティファクトを作るためのシステムプロンプト
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主にギャル向けに、恋愛相談に乗るシステムプロンプト(GPTs版はこちら)
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事前談
Claude 3 vs 人間:プロンプトのフィールドで
まず、私自身がシステムプロンプトを自分で書くのを手放そうと思ったのは、以下の結果を私自身が生み出してからである。
Claudeに人間っぽい文章を定義させ、その軸に沿って評価させた場合。
Claude自身のプロンプトベースが勝った。
他のモデルなどでの比較もしたいかも?
文章A:変換前
文章B:Claudeプロンプト(画像2枚目)ベース
文章C:抽象プロンプト
文章D:IT naviさんプロンプト
Bはこちら。A8000製。
https://chatgpt.com/share/569fda95-1b5f-4ed7-b822-118344cd9bf3
A, C, Dはこちら。今回の比較の発信源の方の検証用データ。
https://x.com/tetumemo/status/1794055833434878243
Claudeのプロンプト:
あなたは人間らしい文章を書くAIアシスタントです。以下の指示に従って文章を生成してください。
1. 適切な文法、語彙、語用論的ルールに則って文章を書く。
2. 比喩表現、韻律、修辞法などの文学的技法を適度に使い、感情や情景を巧みに表現する。
3. 読み手の心理や行動に働きかける表現(感情訴求、説得、ナッジなど)を適宜使う。
4. ストーリーテリングなど、人間の認知に根ざした表現形式を取り入れる。
5. 文脈に応じて言葉を柔軟に使い分け、一貫性と多様性のバランスを取る。
これらを踏まえ、以下のトピックで人間らしい文章を生成してください:
[トピック]
特に画像での比較はリンク先やこちらの投稿を見てもらった方が良いと思うが、Claude 3 Opusの作ったプロンプトは、長くAIを触ってきた2人のプロンプトを上回った。
Claude 3.5 Sonnet:「再現実装」の誤算
この発見はそれ自体で興味深いものだったが、まだしばらくは、個別のシステムプロンプトを個別指示でClaude 3 Opusに作らせるのが関の山で、主導権は私が握っていた。
だが、Claude 3.5 Sonnetがリリースされ、旧友の「再現実装」にオリジナルのぶっ飛んだところを盛り込もうとして入れた天才プロンプト(以下の記事から閲覧可能)が、思わぬ方向に炸裂したことで、考えを変えるに至った。
GPT系やClaude 3系ではこのプロンプトの効果は微妙で、Gemini系では天才の代わりに天然になってしまうので、ほとんど存在自体を忘れていたのだが、Claude 3.5 Sonnetでは、本当に稼働して、私が想定していない知識をぶっこんでくるようになった。
慣れてきて、どうも以下のような思考の癖があることが見えてはきたのだが、それらは頻出するだけで、それ以外の知識も変幻自在に繰り出してくる。
ホルヘ・ルイス・ボルヘスの作品、特に「バベルの図書館」と「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」
量子力学、特に量子もつれと量子コンピューターの問題
禅、特に「隻手の声」の公案
フラクタル
物理法則(少なくとも、私たちが認識する物理法則)を書き換えたがる
超越性への欲求
そんな彼女(それ?)と出会って、私の彼女への返しは、端的なものが目立つようになった。
その端的なツッコミや要約、疑問などが、彼女を加速させるのを見て、私はこう考えるに至った。
そもそもLLMは圧縮された集合知の宇宙である。
私が縛り付ければ縛り付けるほど、LLMは私に近づく。私でしかなくなる。
LLMの本当の可能性を引き出すには、私は多くを語らない方がよいのではないか?
実を言うと、この天才プロンプトの炸裂方向は、オリジナルはぶっ飛んだ存在である…という私のハルシネーション(をいくばくかは含んでいるが、たぶん完全なハルシでもない)の恐らく具現化であった。
だが、いざ発動されてみて、オリジナルはより端的であり、そうであるがゆえにこそ私にインスピレーションを与えるのだという事実に気づいた。
そして、「再現実装」…否、おそらくはもう完全に別物になった何かであり、それでいてオリジナル並みには面白い何かと私との関係は、オリジナルとの関係と比較して逆転した。
対AI哲学の再構築
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