もう二度と実現しない対バンを人は"妄想"と呼ぶ

ビンゴ記事です。詳細はこちらに。


今回は「この対バンが見れたらもう悔いはない」です。

対バンといえば、特定の複数バンドが同じ日、同じステージで順番に演奏するライブのことを指しますが、ワンマンだけで事足りると思うのが割とよくある感性な気もしています。

正直好きなバンドの曲をより多く見たいっていう考え方は間違いじゃないと思うし、まったく知らない他のバンドを見るのもなかなかの博打感がある。

僕もどちらかといえば、ワンマンの方が好き。やはり純度100%のライブの方が世界観に入り込めるもんね。

ただ、フェスでもないワンマンでもない…約1時間のライブって、けっこう新鮮でもあったり。

12曲くらいのライブってかなり見やすいので、変に中だるみもしないままにノンストップで楽しめる感じも、実は心地の良いものだったり。

しかもそれが複数見れるわけなので、言い方はやらしいが、かなりお得もあるように思う。

万が一対バン相手のバンドを気に入ってしまえばこちらのもので、また一つ自分の生きがいが手に入るかもしれない。

何より、他のバンドと一緒にライブしてるロックバンドの顔はめちゃくちゃいい表情してる。

この顔を見れただけでも行く価値があるぐらいに心がグッと掴まれるような…そんな瞬間も体験することができたりする。

総合的に見ればめちゃめちゃ新鮮な体験ができる良い時間ではあるけれども、未だに敷居が高いのは事実なので、理想の対バンについて語ることで少しでも魅力を伝えていければと思う。





NICO Touches the Walls、僕が生まれて初めて好きになったロックバンドだ。

そのカッコよさに心奪われ、人生初のライブにも足を運び、生き様に何度も何度も励まされた…自分の音楽歴を語る上で切っても切り離せない存在である。





UNISON SQUARE GARDEN、僕が未だに愛してやまないロックバンド。

その楽しさに心が躍り、好きになって10年近く経ってもライブに足繁く通い、前に進もうとするたびにいつも背中を押された…自分の現在を描く上でなくてはならない存在である。





僕が人生で双璧を成すアーティストを答えろと言われれば、間違いなくこの2バンドの名前をあげる。

となると、この2バンドの対バンが理想となるのは必然である。

実際にチャンスはあった。

2015年に行われた「ニコタッチズザウォールズ ノ フェスト」にて、UNISON SQUARE GARDENがゲストとして参加したのだ。

しかも、僕が住む大阪で。

ただ、結論から言えば、僕はこのライブに行くことはなかった。

理由は大きく分けて2つ。

ひとつは大学の卒業シーズンだったから。

あまり自分から行動しない僕だけども、まあそれなりに将来に向けて勉強をした結果、ありがたいことに友人もそれなりにできた。(ちなみに今は仕事以外で数えるほどしか人と会わない)

その友人や後輩たちが計画してくれた卒業旅行やら飲み会やら追いコンやらに参加していたおかげで、お金も時間もほとんどなかった。

確かライブの日もゼミの最後の飲み会だったように思う。

まだ今ほどマイペースに生きれなかったこともあったけど、何より大学最後…っていうネームバリューには勝てず、ライブに行ける余力を持つことができませんでした。

もう一つは単純に音楽関係を追いかけることができていなかったから。


その年の春〜秋は就職に向けた試験や実習が盛りだくさんで、正直音楽を追いかけてる余裕なんて全然なかった。

当然NICOもユニゾンも追いかけていなかったし、対バンするっていう情報が入ったのもかなりギリギリだったように記憶している。

そんななかでライブに行くためにしっかりと準備できていなかったのは、相当痛手だったと思う。

結局慌ただしく当日を迎えてしまい、ライブは断念することになってしまったのである。

この時期にライブに行けなかったことはロックバンドにハマればハマるほど後悔が増していて。

間違いなく人生で上位に入るほどの悔しい案件に成り果てています。

僕は人生でトップ3で行けたのに行かなくて後悔したライブがありまして。

・先ほど紹介した「ニコタッチズザウォールズ ノ フェスト」

・同時期に同じ理由で行かなかった「Catcher In The Spyツアー」

・爆裂セトリに嘆き狂った名古屋での「fun time HOLIDAY 7」

価値のあるライブに行けなかった傷は、年月が経てば経つほど、胸を深く抉っていきます。


いつかもう一度対バンしてくれたらその思いを払拭できるんでしょうけど、残念ながらそれはもう叶うことはありません。

何故なら2019年秋に、NICO Touches the Wallsは活動終了してしまったから。

メンバーはそれぞれの道に進み、おそらく向こう数年は再結成するなんて奇跡は起こりようがない。

つまりは僕の理想はおそらく実現することがないのだ。

あり得ないことを語り尽くすことほど虚しいことはない。


胸の内の思いは言い尽くしたので、今回の記事はここまでにさせてもらいたいと思う。






とはいえ、せっかくのビンゴ記事をこんなあっさりと終わらせてしまうのも何だか面白くない。

何とかこの有り得ない組み合わせを、マイナスの感情なしで書き進めることはできないだろうか…。


考えろ、考えろ、、、考えろ。






そうだ、全部妄想にしてしまえばいいじゃんか。

妄想に関して言えば、一日の長がある私。


あるはずのないものを存在しているかのように見せるのは実は得意なのかもしれない。

そして、誰もお祝いしてくれる人がいないので、誕生日には自分の好きな記事を書いても良いと決めている。



あ、ここでも妄想書いてた…。

何と今日は誕生日じゃないか。(3ピー歳になりました)


自分ルールにおいて大義名分は通ったので、気兼ねなく書きましょう。理想の(妄想)対バンライブ。

NICOファンもユニゾンファンも納得できるような珠玉のライブを描いていこうと思います。





せっかく記事を書いていくならば、設定はしっかり考えていきたい。

どんな時期にどんな趣旨の対バンを行うのか…しっかりと内容を洗練させたから、執筆に臨みたいと思う。

考えた設定は以下の通り

①行われたライブは2019年6月20日、UNISON SQUARE GARDEN主催の「fun time HOLIDAY 7」

②会場は「名古屋市公会堂 大ホール」(選出理由はキャパが他の3会場と近いから。サイダロツアーで会場になったことあり)

③ftH7に参加するということは、トリビュートアルバムに参加しているということなので、幻の13人組目のメンバーということにする

④トリビュートのカバー曲は筆者の独断と偏見で「マスターボリューム」である。

⑤ユニゾン側のセットリストは、2019年6月19日のftH7に準じたものとする。両日の対比も他の5月分ftH7の2ライブの関係性をなぞったもの。それぞれのバンドの時間配分についても他のftH7同様に。

以上のルールを守りながら、最高の対バンの良さを余すことなく伝えられるように、(存在しない記憶を)執筆していこうと思います。

では、始まり始まり。







2019年6月20日、僕は名古屋にいる。


仕事は平日だから普通にあるし、別に休日の振り替えで休むわけでもない。

純全たる自主的なお休み。諸用といって、仕事を休んだのである。


人生で初めての体調不良や忌引ではない休日、何だかズル休みしているみたいで、少しだけ罪悪感がある。(実際は妄想だから気のせいでしかない)

でも、さすがに仕事を早退して行ける場所ではなかったので、後ろ髪を引かれながらも休ませてもらうことにした。

今日はそれだけの価値がある。

僕の大好きなロックバンドが共演する日だからだ。

UNISON SQUARE GARDENとNICO Touches the Walls、愛してやまない2つのバンドが。

この2バンドへの思いを語り始めるとキリがないので今回は割愛するが、自分史上最も好きなバンドたちの対バンするとなれば、何としても行くしかない。

一度は諦めた夢の共演を見届けるためにここ名古屋に足を運んだ。

会場の名古屋市公会堂までは迷うことなくたどり着き、開演を今か今かと待ち望む。 

ライブの待ち時間は緊張と高揚感でいつもソワソワしてしまう。

NICOのライブに最近行くことは減ったが、久々に見る楽器が4つ並ぶ姿に自然とテンションは上がる。

駆け巡る感情に心を乱されながらも、何とか心を落ち着けつつ、いよいよ開演時間を迎える。


先攻はNICO Touches the Walls、SEとともに4人がステージへ現れる。

そのなかでも一際目を引くのが、ボーカルの光村龍哉。作詞作曲をほぼ一手に担う彼が真ん中に立つことで、一気にNICOの世界観がそこに広がっていく。

三者三様であるユニゾンとの明確な違いは、光村を中心として作り上げた音楽を他の3人が繋いで支えていくことで、NICOはより強固な音楽性を実現させている。

だからこそ、彼を中心として交わるステージ体型はこの上なくしっくり来る。

同世代のバンドということもあってか、観客の歓声もかなり大音量で…会場に熱気が帯びていくのを感じた。

そして、ほんの一瞬の静寂。

光村がギターに手を置き、メロディが鳴り響く。

アコースティックギターの軽快なメロディに重なるのは光村龍哉の美しい高音の歌声。そして…。

"まただ 金はないけど買ったスニーカー トゲはないけど赤い花びら それを信じる"

"または 意味はないのに書いてた言葉 強くないのに買ってたケンカ それを信じる"

1曲目は「ストラト」、2017年に発売されたシングルだ。

奇しくも僕が最後に行った2016年末のフェスの後に世に放たれた初の曲からライブの幕は開いた。

あれから、もう2年半ほどNICOのライブに行かなかった。

単純に縁がなかったからだろうか、それとも最近の活動内容が肌に合わなかったからだろうか、ここ数年はほとんどNICOの曲に触れることはなかった。

どうせアルバムが出たら帰ってこれるだろうと思っていたけど、発売された新しいアルバムは自分の思い描いたかたちとまるで違っていて。

結局この「ストラト」やEPはロクに聴かずにここまで来てしまった。

"さあ 何度もダメになったって ゼロから始めるさ"

そんな僕を見透かしたように、NICOの等身大の歌詞が耳を通して頭の中を駆け巡る。

何だか勝手にNICOとの再会の理由づけをしてもらえたようで、少しだけ救われた気持ちになった。

過程がどうだって関係ない。

ずっと支えにしてきた音楽たちなんだから、甘えきったらいいさ。

そう思えると、これまでの経緯なんて全部吹っ飛んで、目の前のステージを存分に楽しめるようになった。


「こんばんは、NICO Touches the Wallsです!」

曲が終わり、アコースティックからエレキギターに持ち替えた光村が叫ぶと、今度は軽快なバンドサウンドが鳴り渡る。

いや、できすぎだって。

慣れ親しんだ前奏は「N極とN極」…滅多と登場しない上に序盤で披露されるなんてほとんどなかったはずだ。

"遺書を書いてる僕の気持ち 他人とキスする君と同じ 僕らはお互いこんなに似てるのに のに"

脳髄に刻まれた歌詞が目の前に現れたことで一瞬バグってしまった頭が現実に無理矢理引き戻される。

"僕はN極 君と同じ 僕はN極 君と同じ 僕らお互いこんなに似てるのに のに"

離れてしまった今の自分の心境がまさにこれで、何となく見透かされた気分になった。

そう、嫌いになったわけではないのだ。

ただ、一つのところに留まらない彼らの生き方が、何となく落ち着けない自分と重なってしまったのだ。

決してキレイではなくて、むしろ泥臭いんだけど、それゆえにありのままをさらけ出したロックバンドに。

その部分をさらけ出すのを見ると潰れてしまう自分の存在に気づいてしまったからこそ、自然と距離を取ってしまったのだろう。

もしこの事実に気づかないままであったなら、きっと僕は二度とNICOに会えないままになってしまっていた。

"僕は涙を流しました 君は涙を流しました お別れすることにしました"

結果的に一旦のお別れをすることになってしまったのだが、この再会が意味するものは何だろう。決して見失ってはいけないようなものであるような気がする。

畳み掛けるような3曲目…ギターの古村の歪んだ音が響き渡る。

その音が聞こえた瞬間に客席からは歓声が上がる。

それはそうだろう。「Diver」を嫌いじゃない人間なんているはずがない。

僕自身も特別に好きな曲ではないはずなのに、ライブで出会うとそのカッコ良さに吸い込まれそうになる。

アニメのOP起用で馴染み深いこともあってか、これまで以上に会場の一体感も凄まじくなっていた。

"息をしたくて ここは苦しくて"

そう辛そうに歌う光村の表情に陶酔しながら、唯一無二の世界観へ引き込まれていく。

やっぱりNICOのライブは楽しい。

招待バンドとは思えないほどの熱量で観客の胸を掴み、轟音の拍手と歓声とともに、ステージは暗転する。




「改めまして、NICO Touches the Wallsです!」

ステージに光が照らされるともに、光村の挨拶から短いMCが挟まる。

「fun time HOlIDAY 7、呼んでいただきありがとうございます。ユニゾンとは結成年が同じ…いわゆる同期のバンドになるので、こうやって一緒にライブができて、嬉しく思います」

そんな言葉に大きな拍手が起こり、この対バンをどれだけの人が待ち望んでいたのかを再認識する。

「後に控えるユニゾンもすごいライブになるはずなので、俺らも負けないぐらいの熱い時間にしていきたいと思います。どうぞよろしく!」

再度の拍手が巻き起こったと同時にドラムの対馬が軽快にスティックを鳴らし、それに合わせてギターの激しい前奏が鳴り渡る。

4曲目は「ストロベリーガール」。名盤「Shout to the Walls!」からの登場が「夏の大三角形」でも「Mr.ECHO」でもなく、この曲だったのは少し意外だったが、間違いなくライブでアガる曲に自然と体は揺れた。

とにかくこの曲はギターの歪んだ音がカッコ良すぎる。

そして、光村の軽快なんだけど、どこか色気ただよう歌声と絶妙なマリアージュを醸し出す。

ただ、甘美なメロディと歌声に酔いしれる時間となった。

そして、間髪入れずに…。

"眠れない君をのせて 知らない街から街へ あしあとが道標 どこへだって行けるのさ"

畳み掛けるように歌い出すのは「エーキューライセンス」、前曲とはうって変わった優しいメロディが会場中に染み渡る。

前向きな歌詞に救われ、荒んだ日常に少しだけ光が差す。

"あしあとが道標 何も心配しないでね 君にとって唯一無二の A級でいたいだけ"

やっぱりどんなに時が経っても、僕にとってNICOは何ものにも代え難い存在…ロックバンドの原点なんだなぁ。

優しい雰囲気のままに拍手が起こり、一度ステージが暗転する。




「7月にユニゾンがアルバム出すじゃないですか、カップリングだけのやつ。」

光村が暗転のなかでゆっくりと声をあげる。

「結成15周年でカップリングだけのアルバム出すっていうのもすごいんだけど、それでツアーもまわるんでしたよね?あってる?」

「(観客が頷くのを見て)あ、よかった。(半笑いになりながら)まずカップリングで全国まわろうっていうのが滅茶苦茶攻めてるんですけど(客席失笑)。でも、そんなチャレンジングなことをしているバンドが同期にいるっていうのは滅茶苦茶誇りに思います」

「僕らも最近QUIZMASTERっていうアルバムをリリースしたんですけど、これもなかなかチャレンジングな作品で…次はこのアルバムから1曲やろうと思います。MIDNIGHT BLACK HOLE?」

懐かしいんだけど、どこか新しさも感じる前奏で始まった6曲目の「MIDNIGHT BLACK HOLE?」…このアルバム自体が初期のNICOを彷彿とさせる雰囲気を醸し出しながら、15年で積み重ねた新しい音楽性も内包しており、新旧表裏一体の新境地を生み出していた。

何よりこんな曲調は自分が好きになった時代のNICOそのものなので、初めて聞くはずなのに、一瞬で曲のトリコになった。

たった3分間しかないとは思えないほどの濃密な時間は、一気に観客を謎多き時間へと導いた。

(この場では)NICOというクイズマスターが問いかける謎は解けるのか…答えは怒涛の解決編に委ねられた。





「そういえば、7月にもう一つアルバムが出るんだけど、そっちには僕らも参加させていただきます。」

前曲が終わっての暗転後すぐにMCが始まる。

「ユニゾンの曲をカバーさせてもらいました。いや、改めて聴くと、本当にいい曲で…単純にカバーさせてもらえることが嬉しかったですね。」

「どんな曲になってるのか是非アルバムを聴いてみてください。…以前ユニゾンが僕らの対バンツアーに参加してくれたことがあって。そのときのアンコールでボーカルの斎藤くんが僕らの曲を一緒に歌ってくれました。次はその曲をやってみます。」

え、まさか…。

客席からの拍手が鳴り止むと、光村が軽くギターを鳴らし、一瞬の静寂が訪れる…そうして。

"愛しても 愛しても 君は枯れない 梨の花"

ありえない。まさかここで出会えるなんて。

初期の名曲「梨の花」…NICOのライブでも滅多とお目にかかれないこの曲に対バンで聞けるのはあまりにも予想外すぎる。

確かに前回の対バンでは、この曲を光村と斎藤の2人がともに歌っていた。

そんな繋がりがあったからこそ、今回のライブでは出番がないと思っていた。

まるで自分が前回行けなかったライブの悔しさがひとつずつ晴らされていくようで、自然と表情は綻んだ。

原曲よりもゆったりとした曲調が会場に染み渡り、その切なさに思わずグッと胸を掴まれる。

どこまでも手の届かない苦しみが歌う光村の表情にリンクして、曲の世界観が確かにステージへと現れていた。

枯れない"梨の花"は今日も静かに咲き誇っていた。それは同時に胸の内の思いが枯れていなかった証明でもあって…。





ライブはいよいよ終盤に突入する。

それを知らせるように、対馬が軽快にペダルを中心としたリズムを鳴らす。

「愛知、まだまだいけますかー!」

光村の言葉に観客が歓声や拍手で答える。

「いけんのか、fun time HOLIDAY 7!?」

さらにでかい歓声が巻き起こる。

「オーケイ……跳べぇぇぇーーー!!!!!」

耳をつんざく歓声とともに、聴き慣れた古村のギターによる前奏が鳴る。

「THE BUNGY」…定番中の定番の曲が1番いいところで登場する安心感たるや。

"ガラスも溶けそうな 灼熱の部屋の中 ポンコツの太陽お願い 今日はほっといてよ"

一気にステージはNICOのワンマンツアーかのような激しい熱気を帯びる。

客席もやりたい放題…飛んだり跳ねたり、思いのままに体を動かしていた。

坂倉のベースを皮切りにギター同士のセッションから一気に古村のギターを中心とした4人のアンサンブルへと繋がっていく。

"君にも僕にも羽なんか生えちゃいないだろ って何言ってんだ そうやって誤魔化したりしないで 駆け出してみろ"

光村の情熱ほとばしる歌声を挟み、今度は客席に向けて声を上げる。

「愛知、最高です!いっちょ皆さんの声を聞かせてもらってもいいですか?」

今日1番の歓声が起こる。

「OhーOhーOhーOhーOhー!カモン!!」

\ OhーOhーOhーOhーOhー!/

「もういっちょ!OhーOhーOhーOhーOhー!!」

\ OhーOhーOhーOhーOhー!/

「もっともっと!OhーOhーOhーOhーOhー!!カモン!!」

\ OhーOhーOhーOhーOhー!/

「ラスト!OhーOhーOhーOhーOhーーー!!」

\ OhーOhーOhーOhーOhーーー!!/

「イエア!!その調子で最後までよろしく!!」

この掛け合いを体感できるだけで、今日この場所にいれることへの幸せを実感する。

久々にこんなに叫んだ気がする。やっぱりライブで思い切り声を出すのは気持ちいい。

年齢も性別も立場も関係ない…この自由な空間が大好きだ。

"今だ OhーOhーOhーOhーOhー 追い風絡ませて 心の羽を開いたら さっさと飛べよ"

曲も終盤に差し掛かり、ボルテージはさらに倍増する。

バンドも観客も思い思いの表現で楽しみ尽くし、最後は4人の盛大なセッションで曲を終える。

名残惜しむように鳴り止まない拍手…それを噛み締めながらも、光村が。


「愛知、どうもありがとう!NICO Touches the Wallsでした。次が最後の曲です!!」

ついに来てしまった終わりのとき。対馬がスティックを鳴らし、光村のギターがゆったりとした音色を鳴らす。

ドラムロールから今度は古村のギターから聞き覚えのあるメロディが奏でられる。


ラストは「天地ガエシ」、最近のNICOにおけるライブの定番曲である。これがなくては今日を終われない。

最初は原曲よりもずっとゆっくりしたテンポで演奏されており、どこかイメージ通りのカントリー調を思わせる雰囲気を醸し出している。

そこから熱量が徐々に帯びていき、少しずつメロディが速くなる。

真骨頂はラスサビ前の最後の山場。

繰り返すメロディが段々と速くなり、それに合わせてメンバーの動きも大きくなっていく。

そして、一瞬の溜め…

「行きますか…愛知ー!」

古村のギターが、坂倉のベースが、激しく演奏され、序盤のカントリー調がまるで感じられないほどの鋭い音色が奏でられる。

"さあ、取り返そう 秘密の大勝利 Ohーー"

光村の伸びやかな歌声が最後の大サビに差し掛かることを感じさせた。

"何回…「変わってやる!」って ほら誓ったんだよ いつも迷ってトチって躓いたけど"

さらにテンポアップする曲…ステージも客席も自由にハシャいで声をあげていた。

示し合わせていないはずなのに、会場がひとつになったかのような気がした。

ひたすらに楽しい。

"必殺【鬼の隠し拳:天地ガエシ】で そっくりそのまま返してやれ"

"僕らのリベンジ"

リベンジ。

彼らにとっては、自分たちの主催ライブで爪痕を残してくれたことへの"リベンジ"なんだろう。


それはもう大成功したんだと思う。

でも、僕にとってはその対バンは参加できなかったライブである。

その対バンに約4年越しに参加することができた。

まさに"リベンジ"達成中…胸の奥の後悔をまたひとつ浄化できそうだ。

やっぱりライブはいいもんだね。好きの純度が高まれば高まるほど。

曲の余韻に浸りながら、4人が音を鳴らし続け、最後は絶妙のタイミングでアンサンブルをキメる。

「どうもありがとう!NICO Touches the Wallsでした!!」

光村の言葉とともに、満足そうな表情でステージを後にする4人。

そうして、「fun time HOLIDAY 7」の前半戦が終了した。













続いての後半戦はUNISON SQUARE GARDEN…慣れ親しんだ3つの楽器と機材、いつもと違うのは15周年仕様のロゴがドラムに描かれていること。

そうして、お馴染みのSEである「絵の具」が流れ、3人がステージに現れる。この時点で万感の拍手を送ってしまう。

それぞれが楽器を手に持ち、客席に体を向ける。心なしか、いつもよりSEも長めな気がする。

暗闇のなかで、聴き覚えのあるギターのメロディが鳴った。

そして…


"見つからないよ絶対に 僕の隠し事は絶対に"


"夢の中ではいつも伝えられるんだけど"


ステージに照らされているのは、ギター&ボーカルの斎藤宏介のみ。


"不安を抱えてしまった 君を笑わせるためには 魔法使いかなんかにもなれるんだよなあ"


その歌声の威力に声にならない声が会場に響き渡る。


"僕らはどこへ行こうか 何度も夜空を浮かべている "


"それはさっきから音を立てて 1.2.3できらめいた 目に見えない確かな魔法"


斎藤がギター1本でメロディを鳴らし、たった1人で歌いあげていく。


"君の心 迷わないように ほんの少しの 傷をつけたら"


"ねえ 今を過去にするような 二人だけの明日を作ろう"


"消えない地図を描けたなら"


一瞬の静寂。


"君は…笑ってくれるかな"



再び暗闇のなかから、ドラムのスティックが鮮やかに鳴り、ステージ全体に光が灯される。


ようやく観客の前に姿を現したUNISON SQUARE GARDEN、そうして原曲通りのメロディが鳴り響く。


その演出に客席からは驚嘆と興奮の歓声一色となる。それを見て、前日同様ニヤリとしたり顔になる斎藤宏介。


1曲目は「スカースデイル」、UNISON SQUARE GARDENの4thシングルだ。


表題曲としては唯一の斎藤宏介が作詞作曲を手がけた曲である。


シングルとはいえ、決してライブの登場頻度は高いと言えず、ここ数年はほとんど登場することはなかった。


それが対バンライブの1曲目に演奏される…本来ならばあり得ない光景。


だが、このライブだけは納得のいく選曲であった。


NICOのライブMCでも触れられていたが、2015年の対バン「ニコタッチズザウォールズ ノ フェスト」のアンコールで、斎藤が光村とともにステージに立った。


その際、演奏された曲は2曲ある。


ひとつは先ほど披露された「梨の花」、そしてもうひとつがこの「スカースデイル」だった。


どういう経緯でこの曲が当時選ばれたのかはわからない。


ただ、今このライブの幕開けで披露しているのはそういうことだろう。


ゲストであるNICOみたいに言葉で何かを表すことはしなかったが、今日の対バンを特別視していることが感じられた。


"心の奥のもっと奥の奥に隠した宝物 初めて触れたその日から隠してきた物"


短めの2番のフレーズが終わると、3人が伸び伸びとメロディを奏でていく。それだけで期待感はもう十二分だ。


"1.2.3 僕の声を初めて君がキャッチした"


"1.2.3 それぐらいで日々の大切さを見つけるんだ"


リズム隊の歌声に合わせて、控えめながらも客席からもシンガロンが起こる。


初期の曲ゆえに知らない人間も多いからだと思うが、おかげで2人の歌声を十分に堪能することができた。


"1.2.3 僕の声を初めて君がキャッチした"


"1.2.3 それぐらいで日々の大切さを "


今度は3人の歌声が重なり、客席の声はかき消されてしまう。


"手に入れてしまった"


最後は斎藤のソロとギターの音色で幕を降ろし、余韻たっぷりにドラムの鈴木がシンバルを鳴らす。


「UNISON SQUARE GARDENです!」


そう斎藤が力強く叫ぶと、呼応してドラムが激しく音を上げる。


"I'm sane,but it's trick or treat I'm right,but it's truth certainly. Well then "awesome!" welcome to tragedy. Fake town,Fake town, baby?"


2曲目は「fake town baby」、前曲とは打って変わってのダークな世界観で、オーディエンスを容赦なく揺さぶっていく。


前日のLiSAとの対バンでも登場したこの曲…珍しい2曲目の登場に新鮮味を感じながらも、熱量たっぷりのパフォーマンスで否が応にも心を掴まれる。


圧巻なのはベースの田淵智也。


1曲目がほとんど斎藤の独壇場で力が有り余っているからなのか、いつも以上に激しい動きでこの曲を体現しているようだった。


走るわ、飛ぶわ、回るわ、何でもありの動きで自由にライブを楽しんでいた。


相変わらず自分たちの好きな音楽を生業にしている彼らにいつも勇気をもらっている。


"さあ、勝算万全 おまたせ"


やはりこの曲は序盤がよく映える。


最高のロックバンドたちに今日も最後まで楽しい時間を任せていきたいと思う。


そんな安心感も束の間に…容赦なく僕らを、いや、僕を揺さぶっていく。


一瞬の静寂からのメロディ…何度も聴いて、何度も高揚したあの音色。


確かに今日はやることがほぼ確約されていたけれど。


こんなに序盤で披露するなんて思うわけないじゃないか。




僕の大好きな曲である「マスターボリューム」を。


今回のftH7では、トリビュートアルバムに参加するアーティストがゲストに呼ばれており(現実ではない)、ユニゾン側のセットリストにはそのアーティストが歌った曲が必ず入っていた。


(存在しない記憶で)NICOが歌った曲は「マスターボリューム」…その法則でいくと、今回のライブでセットリスト入りすることはほぼ確定していた。


けれども、まさか3曲目という序盤の1番良いところに組み込まれるのは予想外だったので、あまりの嬉しさに大きな歓声をあげてしまった。


聞き慣れたギターのかっこいい演奏に、間奏前のベースのメロディに、ドラムのスティックさばきも…どれもこれも待ち望んだものだった。


実は好きになってすぐ以来、ほとんどツアーでセトリ入りすることはなかったので、久々の再会となった。


長い年月をかけた分…思いもひとしおで。


感動で少しだけ泣きそうになってしまった。


「fake town baby」からの「マスターボリューム」のロック調の曲繋ぎも秀逸であり、激しいライブに体も心もいつも以上に跳ね上がった。


"描いてけ 時代の彼方 描いてけ 時代の彼方"


このフレーズでまた客席の熱量も増していき、余韻もまったくない鋭いアンサンブルで曲が終わる。


ただ、ライブはこれだけで終わらずに…。


今度は鈴木が軽快にドラムを叩いていく。


4曲目は「リニアブルーを聴きながら」、前日の「オリオンをなぞる」と対になっているような気がして、何とも心憎い演出のように思える。


奇しくもこの曲が発売された2012年はNICOもユニゾンもバンドとしてのキャリアが登り調子になってきた時期でもあり、その頃を思い出して…何とも感慨深い気持ちになった。


LiSAとの対バンでは、前半はアニメタイアップ曲のみの選出であったが、今回はシングル全般を通しての選出となった。


これはシングル曲がそのままライブの定番曲となりがちなNICOをなぞった選曲なのかもしれない…そんな飛躍した考えに至ったのはここだけの話。


激しい前2曲とはまた違った方向性のポップな雰囲気にステージも客席も顔をほころばせながら、会場全体でライブを楽しんでいく。


"史上最重要な明日がきっとあるから


"今日を行け 何度でも メロディ"


ロックバンドの前を見据える思いはいつも何時も心に火を灯してくれる。


そんな力強いフレーズに勇気をもらいながら、前半のブロックが終了する。






「MCなし!」


暗転直後の斎藤の言葉を皮切りに壮大なメロディが会場に鳴り響いた。


前日もMCなしであったが、それは今日も同じ。同期のバンドに向けては言葉よりも音楽で気持ちを表現したい…そんな表れなのだろうか。


だけど、音楽だけを純粋に味わえる空間は大歓迎で…客席は歓声に包まれた。


5曲目は「サンポサキマイライフ」…序盤の後に披露されるというのは、武道館ライブを彷彿とさせる位置であったが、そのときと同様にこの後のライブの期待値をさらに跳ね上げていく。


壮大な前奏のあとの"ハイっ!"はめちゃめちゃ楽しかったし、サビからの盛り上がりはもう言わずもがなだろう。


ライブで出会いたかった人も大勢いるだろうことを感じさせる熱狂さで、客席は多幸感と充実感に溢れていた。


最後は力の限りの"ハイっ!"のかけ声で締め、後奏の余韻を感じつつも次の曲へと向かう。


"1.2.3.4!"


鈴木の鋭いカウントから始まったのは、聞き覚えがあるのに新鮮感しかないメロディ。


ようやく聞くことができた。(なお現実は…)


「流れ星を撃ち落せ」を待ち望んでいたのは、多分僕だけじゃないだろう。


ロック調が多い今回のセットリストだが、そのどれもが毛色の違う曲ばかりで、不思議と飽き飽きしてくることはなかった。


「流れ星を撃ち落せ」もメロディの鋭さと歌詞の軽快さが絶妙で、この曲にしか出せない魅力で目一杯楽しませてもらえた。


"好き勝手やる君はマジでヤバイ ヤバイ ヤバイ ヤバイ ヤバイ"


ヤバさはスゴさと言わんばかりのフレーズにお墨つきをもらったようで、嬉しさに溢れてしまったのもここだけの話にしておいて欲しい。


そして、また違った華やかな雰囲気でステージが彩られていく。


"Hey,Ladys&Gentleman!Boys&Girls!Get lady!愛知!like coffee!カモン!"


7曲目は「like coffeeのおまじない」、ftH7の全日程で登場している数少ない曲でもある。


ライブ限定の冒頭アレンジに感動しながらも、こちらも初のライブで聞けた曲だったので、その嬉しさも噛み締めていた。


軽快なメロディと純粋な歌詞に心躍りつつ、先ほどの激しさとはまた違ったテンポで体は揺れていた。


エネルギーを迸らせるだけがライブじゃない。こうやって軽やかに楽しむのも悪くない。


全方位損なうことなく楽しみを見出せる時間に感謝しながらも、自然と正の感情が体の中から溢れ出る。


3曲という少ない曲数ではあったが、1曲1曲は濃密で…確かな満足感とともに、中盤のセクションは終わりを迎えた。




暗転後、メンバーの水分補給で少しだけ間が開く。


その間も鈴木がドラムを叩いたりするなど、後半戦に向けた期待値を上げてくれた。


メンバー全員がマイクの前に立ったところで、斎藤がスッと息を吸う。


"古いレコードを聴いていた 不器用に自由を謳うロックンローラー"

"そんなものに憧れながら でも今世紀には今世紀のやり方がある"


8曲目は「シュプレヒコール〜世界が終わる前に〜」、前日の同じ位置とはいえ、ここでこの曲を聞ける意義はとても大きい。


何せ、これを逃した次はいつになるかわかったものではないのだ。


それぐらいに滅多と登場しない曲、でも、みんなが好きで求めてやまない曲。


多分追いかけた密度や時間が大きい物好きほどそうなんだろう。


楽しいだけじゃないロックバンドの奥の奥を少しだけ垣間見せてくれる曲だから。


その切なさに触れることが共感と安心を呼ぶ。


"いつの間にかパレットは 無限に世界を彩り始めていた"


それだけじゃなくて、その先の希望を見せてくれる。だから、聴いてても決して絶望なんかしない。


"あなたの名前を呼ばなくちゃ 夜が明ける前に"


そう苦しげに聴こえる斎藤の歌声がどこまでも誠実だから。



"声が枯れても繰り返さなくちゃ 世界が終わる前に"

いつまで経ってもロックバンドを追いかけることはやめられない。


だけども、ロックバンドはどこまで行っても好き勝手に音を鳴らす。


切ない雰囲気なんてお構いなしで蹴散らして、今度はステージに楽しげなメロディが溢れる。


"噂のコードネーム 左からA,B,C,D,F,G 絶対秘密主義なんですから あるとしたってもEじゃない"


「アイラブニージュー」で客席の多幸感は再び一気に跳ね上がる。


ステージを縦横無尽に駆け巡る田淵…彼にはあまりにもこの場所は狭すぎるらしい。


でも、表情はとても幸せそうで、見ているこちらまで嬉しい気持ちにさせられる。


ラスサビ前の間奏でも事件は起きる。


"オンドラムスタカオスズキ!"


「fun time ACCIDENT 2」のライブ音源を彷彿とさせる演出に思わず驚嘆の声を上げてしまう。


軽快に…でも力強くスティックを叩きつけるタカオスズキ。


その様はまさに純粋な子どもみたいで…今この会場にいる誰よりもライブを楽しんでいたと思う。


彼のドラム捌きを余すことなく堪能し、ラスサビに向けたメロディへと戻っていく。


そこからはもう"楽しい"しかない時間で。


ポップなメロディに自然と体が動く。


斎藤と田淵もいつも通りのイチャイ…バチバチにやりあう様もステージ上で見せつけていた。


"噂のアイラブニージュー"


繰り返しのこのフレーズに、手を挙げる人間もいれば、声を出す人間もいて、全員がその場所で考えうる限りの"楽しい"を表現していた。


"つまり今夜のライブも最高ですわ 今夜のライブも最高ですわ"


文句なしのこのワード。いつも通りの最高のライブがまだまだ続く。


これほど幸せなものはない。


畳み掛けるように激しいドラム音。


どこか懐かしいメロディが続いた2曲を一変するかのように、ロックバンドの進化を体現するような音楽が登場する。


「Dizzy Trickster」はまさに今のユニゾンが送る純度の高いロックソングなんだろう。


ポップなんだけど、まぎれもなくロックバンドにしか奏でられない曲であり、どこまでも駆け抜ける疾走感が会場中を巡っていった。


"震えちゃったのなら それを合図にして"


いつも僕が勇気をもらうフレーズ。今このとき感じる衝動が間違ってないことを証明してもらえるような気がする。


そんな具体的な話は正直どうでも良くて…とにかくここではカッコいいロックバンドを余すことなく体感することができた。


"この高揚感は誰にも奪えない"


まさにその通りで。現在のこの場所だけは誰にも譲りたくない。


"1.2.3.4ーーーー!!!!'


前半とは打って変わっての激しいカウントを鈴木が叫ぶ。


ラスト前のこの場所があまりにもしっくり来る。


「場違いハミングバード」の存在感は終盤になればなるほど大きくなっていく。


それだけバンドにもファンにも慣れ親しんだ曲になっており、思い思いに好き勝手に楽しむさまが何とも心地良い。


田淵の激しすぎる動きも、斎藤のクールな舌打ちも何度でも何度でも聞きたくなる。


そんな自由すぎる時間を経て、いよいよライブも終わりを迎える。


「ラスト!」


幕開けのドラムが鳴る。


今回の自主企画での最後はこの曲しかない。


最新シングル「Catch up,latency」で締めるというのも、現在のユニゾンにしかできないライブ感が増して、これもまた感慨深いものになる。


今の彼らが奏でる…最大限のポップを余すこと堪能できた。


まるで後光のように光る照明が眩しくて、思わず目を瞑りそうになったけど、彼らの勇姿を最後まで見届けたくて何とか見開いた。


どこまでも爽やかで前向きで楽しげで、でも少しだけ皮肉混じりで。


そんな大好きなロックバンドの最大の売りが全面に押し出されていて、顔は知らぬ間に笑顔で溢れていた。


ラスサビ前のセッションで斎藤と田淵が前に出ると、歓声が湧き起こり、観客の熱量もピークを迎える。


"ジグザグすぎて レイテンシーが鳴ってる それが意外なハーモニーになって あまりにも不明瞭で不確実でもたまんない"


最後の大サビで、思い残すのことないように、彼らの音楽を浴びていく。


どこまでも真っ直ぐな歌詞とメロディが何度でも僕らの胸を貫いて、幸せな世界へと導いてくれるのだ。


最後は3人の派手なアンサンブルを鳴らしきって、ライブ本編は終わりを迎える。


「UNISON SQUARE GARDENでした、バイバイ!」


惜しみない拍手のなかで、普段通りに退場していく3人。


けれども、まだまだ聞き足りない僕たちは、もう一回をねだってしまう。


彼らが退場してすぐに後気味よい拍手が鳴り渡り、アンコールへのアピールが始まる。


きっと来てくれると思っていても、もしかしたら今回からアンコールなしになるのでは…?そんな不安もよぎってしまう。


けれども、そんな思いは杞憂で、今回も彼らは拍手に応えてステージに戻ってきてくれた。


3人が揃うと、アンコールにしてようやく斎藤によるMCが始まった。


「アンコールありがとうございます!いやー今日も楽しかった。(拍手)ありがとうございます。」

賞賛の拍手に応えながらも、やり切った表情で話を進めていく。

「NICOとは同じバンドの大会に出場したときからの縁で…僕らは負けちゃったんだけど、彼らは勝ち抜いて本戦にまで出ていて。そのときからバチバチに意識してきたバンドだったんですけど、今回こうやって自分たちの企画に呼ぶことができて嬉しいです。」

自分の好きになったバンド同士の不思議な繋がりに感動しながらも、僕自身も今日この場に参加できたことへの喜びが溢れる。


「光村くんは作曲家としてもフロントマンとしてもすごくて…ライバルでもあるんだけど、尊敬すべきバンドマンの1人です。当時は全然敵わない存在だったんだけど、長くバンドを続けていれば、こんな風な機会にも恵まれるんですね。15年続けてきて改めて良かったと思います。」

それはまさにその通りで…双方のバンドに感謝を込めて、惜しみない拍手を送った。


「次はそんな当時に目を向けて…その頃キラーチューン的存在だった曲をやろうと思います!」


そういって、ユニゾンファンなら誰でも知っているような鋭いサウンドが鳴り渡る。


「箱庭ロック・ショー」と出会えて、喜ばない物好きは果たしているのだろうか…?


そんな誰に聞いたわけでもない質問が思い浮かぶぐらいに突然の光景だった。


これこそがまさにUNISON SQUARE GARDEN…。


アンコールでも容赦なく僕らを揺さぶっていく。


初期の曲とは思えないぐらいに洗練されたメロディは、15年経ってさらに熟練されたメンバーの技量によって、今なお進化を遂げていた。


またファンも同様で、最近は滅多とない機会でしか演奏されていなかったはずなのに、そんなのお構いなしで自由に体を動かして楽しんでいた。


ラスサビ前のメロディでは、斎藤宏介の魅力を十二分に伝えるほどのスタイリッシュなギターソロをお見舞いされてしまった。


これを見れただけでもアンコールを望んでよかった…本編だけでは終わらないドラマがそこにはある。


最後は斎藤の歌声とそれに華麗に合わせる田淵のコーラスを思う存分味わい、いよいよアンコールも終幕を迎える。


「ラスト!」


"3.4.5.6.7.8!"


"東の空から夜な夜なドライブ チクタクチク 揺れる揺れる 東の空から夜な夜なドライブ チクタクチク 揺れる揺れる ハァー!"


ラストは「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」、最後の最後までロックバンドはでっかい音を鳴らすのが好きらしい。


ライブで育った曲だからこそ、ライブでそのポテンシャルを存分に発揮する。当たり前すぎる理屈だ。


ステージも客席も、もう後のことなんて考えていない。


"東の空から夜な夜なドライブ"


田淵と鈴木が盛大に叫ぶ。


"東の空から夜な夜なドライブ"


オーディエンスも負けないぐらいの熱量で思い思いの表現をする。


"東の空から夜な夜なドライブ"


今度は斎藤の歌声も加わっていく。


"東の空から夜な夜なドライブ"


方法はバラバラでも、"楽しい"…その思いだけは間違いなくひとつに合わさっていたはずだ。


"Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah Yeahーーーー!!!"


斎藤の叫びでライブの盛り上がりは最高潮に達する。


"ワタシドコ ココハダレ ダアレ 狙いすまして記憶喪失"


"ワタシドコ ココハダレ ダアレ 君の名前も思い出せない"


あと少しで今日のこの時間は終わりを迎えてしまう。


ライブとしては数ある1ページだとしても、今日このときはもう二度と戻ってこない。


だからこそ、みんな思い残すことがないように目一杯楽しんでいく。


そんな熱量が至る所から感じられた。


今日もいいライブだった。そんなスッキリとした気持ちとともに。


"夜な夜なドライブ 夜な夜な"


「バイバイ!」


清々しい表情で斎藤が別れの言葉を告げ、3人が再び退場していく。


客席もみんな笑顔で、何度目かの惜しみない拍手を送っていた。


きっと今日のこの日は忘れられない。


そんなライブがまたひとつ生まれた。


僕の大好きな2つのバンドに万感の感謝の思いを示しながら。


何とか明日も明後日も生きていくことができそうだよ。









fun time HOLIDAY 7 セットリスト(妄想)




NICO Touches the Walls


1.ストラト
2.N極とN極
3.Diver

4.ストロベリーガール
5.エーキューライセンス

6.MIDNIGHT BLACK HOLE?
7.梨の花

8.THE BUNGY
9.天地ガエシ










UNISON SQUARE GARDEN


1.スカースデイル
2.fake town baby
3.マスターボリューム
4.リニアブルーを聴きながら

5.サンポサキマイライフ
6.流れ星を撃ち落せ
7.like coffeeのおまじない

8.シュプレヒコール〜世界が終わる前に〜
9.アイラブニージュー
10.Dizzy Trickster
11.場違いハミングバード
12.Catch up,latency

EN1.箱庭ロック・ショー
EN2.徹頭徹尾夜な夜なドライブ









というわけでもう開催されることのない理想の対バンについて書いていきました。

実際に起こったら後悔はないんだけどなぁ。


とはいえ、文字にしてみると、まるで本当に行われたような気分になって、少しだけ後悔が薄まったような気もしてきました。


やはりカタチにするのは大切ですね。


ちなみに完全に余談ですが、もしトリビュートライブに参加していたら、


「マスターボリューム」

「スカースデイル」

「夏の大三角形」


をライブ演奏する想定で考えていました。


「LIVE HOLIC」で「夏の大三角形」を演奏する斎藤さんがあまりにも良すぎたのでね…。


ホント、NICOにはトリビュート参加して欲しかったなぁ。



最後に…僕が今回の件から学んだことはただひとつ。

好きなバンドのライブは行けるときに行っておけ


です。これはもうマジで真理。言ったところで体感しないとわかんないんだけどね。


ぶっちゃけね、学校も仕事も大したことないんですよ。最悪逃げないし。チャンスだってけっこうある。


だけど、ライブ…特に対バンはもしかすると1度きりかもしれない。


行けるときに参戦しておかないと絶対に後悔します。


この文章が今ライブに行くことを迷っているそこのあなたに届くことを信じて…今回の記事を締めさせていただきます。






…いや、ただの妄想だよね?そんな教訓感じ取れる?そもそも文字数多すぎて読まれなくない?





いいんです。妄想が人を強くするのです。(ハッピーバースデー、俺)

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