月ミるなレポート④

月ミるなが屋根裏部屋で新しい形而上学を考えている。うまく息ができない人を救うための形而上学。

月ミるなはアリスだった。その時はまだ、ハートの女王が将来の自分自身の姿だと気づいていなかった。

月ミるなが湖を前にしている。月の光が湖面に反射する。湖を囲む樹がゆれる。地面から空に向かって瑠璃色の道が続いていた。

瓔珞や薄物をまとった巨大な生き物が静かに、空と地上を行き来している。遠いほのかな記憶の中の花の香りがする。月ミるなは青白く立ち、頬に手をあてていた。

月ミるながダークライを引き連れて、ジムリーダーを1人ずつ確実に消していく。反則だ。反則だ。

月ミ草の花言葉は「ほのかな恋」「移り気」。夜に咲く。本当の月ミ草はほとんど姿を消してしまい、別の草がツキミソウと呼ばれるようになった。

21xx年に月ミるなの企画展がプラハのミュシャ美術館で開催された。

真っ黒に塗られた絵。ほのかな青に無限の深さを感じた。深淵の中に何かがいた。それが青の時代の月ミるなが薄闇からじっと見ているのだと気づいた瞬間。周囲の雑音が消えて空間がゆがんだ。

月ミるなの涙の意味を誰も理解できなかった。

月ミるなは歌う。眠れぬ夜の詩を。何処が悪いのかわからない。全身の寒気に泣きそうな夜の詩。からっぽの頭に響いた脅迫の声がジャイロボールのように幾重にも重なる。その重さに潰れた夜の詩。

月ミるながミミッキュとメタモンを引き連れて、ジムリーダーを1人ずつ確実に懐柔していく。陰謀だ。陰謀だ。

月ミるなは日常に潜むふわふわを食べる。

お店で売っていた鏡。覗いた自分の顔が月ミるなの顔とそっくりだった。ありったけの金をはたいて、その鏡を買ってきて、月ミるなが恋しいと思うときには鏡を見て、月ミるなを偲んだ。

少女人形月ミるな。外観と本質。様式と構造。メッセージとメタファー。独奏と合奏。フォルテとピアノ。ポリフォニーとホモフォニー。劇的性と即時性。感興による統合。

やせいの月ミるなのばけのかわがはがれた!月ミるながあなたが思っていたのと全然違ったとしてもそれは月ミるなの責任ではない。風流と月ミるな。どちらかしか愛せない理屈などない。

北アフリカ。モロッコとアルジェリアの国境付近のケムケム層で月ミるなの化石が発掘された。ケムケム層では他にも全長8メートルの大型肉食恐竜カルカロドントサウルスやデルタドロメウスなどの化石が発掘されている。

月ミるなの居住跡と見られる場所の近くで埋葬された巨大ぺんぎんアンスロポルニウスの化石が発掘されたことから月ミるなにとってアンスロポルニウスは家族のような存在だったと思われる。

月ミ白書。月ミるなの手が動く。

月ミるなの眷属達の声が聞こえる。「あいつは私たちと同じ。そこらへんにいるやつじゃないか。何でもないやつじゃないか。」月ミるなはそこでは奇跡を起こすことができなかった。ただ静かに目を閉じた。

月ミるなは誰も傷つかない次元を作ろうと思った。

親の次元、夫婦の次元、友人の次元、兄弟の次元、姉妹の次元、社会の次元、同僚の次元、上司の次元、部下の次元、共同体の次元、国家の次元、世界の次元。

様々な次元の自分が矛盾する。それは決して偽善者だからでもなければ、ごまかしてるからでもない。公の自分、近親者から見た自分、自分自身がこうだと思っている自分は互いに矛盾する。

要領よくやろうとか、他人へのふるまいを優先して作り笑いがうまくなる。何も感じなくなる。何も考えられなくなる。

月ミるなは壊れた人間が集う場所。超るなさん村を作った。超るなさん村はかつて人間が超えることのできなかった次元に到達した。

半熟トロトロの月ミるな。

自販機で月ミるなが買える時代になった。ベンダーに感謝、感謝。120円硬貨を投入口に入れて、あったか〜い月ミるなのボタンを押す。ガタンッ。排出口から月ミるなを取り出してカバンに入れる。自販機のデジタルルーレットが777を表示した。一瞬の冷や汗。排出口から大量の月ミるなが飛び出して彼方に消えていった。

lunaticには「月の」と「気違いざたの」というふたつの意味がある。ちょっとだけ気がおかしくなるその存在。月を襲った突然の豪雨に月ミるなが夢からさめた。

月ミるなが言った。「坊や、この男がおまえのお父さんを殺したんだ。だから、よくこの男を見なさい」月ミるなの眼には涙があった。

キミ ツキミルナ ツミナルキ ツキナミナ ツミナキミ

月ミるなの捕まえ方。モンスターボールを用意する。月ミるなの通り道にジャイアントカプリコ(いちご)と磁石を置く。ジャイアントカプリコ(いちご)を拾おうとした月ミるなが磁石にくっつく。月ミるながジタバタしている。かわいいのでジャイアントカプリコ(いちご)をあげて逃がした。

涙もたまにあるよね。
だけどピッと凛々しく。

大きな夢があるよね。
だからピッと凛々しく。