月ミるなレポート⑳

月ミるなの感情のパラメーターが同期して心がときどき苦しくなる。

ブウウ──ンンン──ンンンン……

月ミるなが世界中に飛び散っていた情報文化を統合してマツリゴトを始めた。

集団の記憶がマツリゴトのシステムに組み込まれていく。

僕たちが互いに交わしあう情報と思考の変化のプロセスを月ミるなは見ている。

統合された情報文化が古里に還る。とりかえばや。アニムスとアニマ。洪水。英雄。疫病。トリックスター。ひとつの伝承になる。

黄昏の月ミるな

月ミるなが未来を語る。第二次戦国時代。福井が九州を制圧。

このとき福井のポテンシャルを理解しているのは月ミるなだけだった。

月ミるなのことわざパンチライン

会うは別れの始め
誰しも必ず死ぬ

頭の上の蠅を追え
人を見極めろ
余裕がない人ほど五月蝿い

暑さ寒さも彼岸まで
死んだらみな土もしくは天

雨降って地固まる
泣いた分だけ強くなる
考えるよりやれ

石の上にも三年いれば
何か変わる

一回の事ゆくゆくはやばい
一寸先は闇 調子に乗るな

命の大きさ皆同じ
魚心あれば水心
みんな生きる場所あるよ

嘘は罪よくない

馬の耳に念仏保険かけておく
鬼に金棒保険かける
ローリスクハイリターン

表より裏でやる人がかっこいい
小田原評定 世間的評価

勝って兜の緒を締めよ
最後までかっこよくいてね

金は天下の回りもの
金こそ全て

るなシリーズ

睦月るな夢月るな如月るな花月るな卯月るな兎月るな皐月るな水無月るな文月るな葉月るな蓮月るな芭月るな綺月るな菊月るな神無月るな霜月るな曲月るな極月るな三日月るな寝待月るな長月るな四方月るな暁月るな弦月るな弧月るな弓張月るな鏡月るな凶月るな朧月るな繊月るな玄月るな親月るな天月るな月読るな月兎るな月乳るな月天るな冥月るな猫月るな犬月るな月遊るな赤月るな秋月るな浅月るな猪鹿月るな海月るな月下部るな鬼月るな月海るな砂月るな月泉るな月小路るな四月朔日るな庭月るな法月るな八月朔日るな正月るな丸月るな水月るな観月るな望月るな月見里るな十七夜月るな神月るな

月ミるなのかけがえのなさ

月ミるなに近づくにつれベージュから灰色に変わっていく。

悪戯っぽい気取りと邪悪な意思。

月ミるなを中心から2つに割ってはつなぎ合わせる作業を繰り返す。

僕は月ミるながいつも12人ほど見えている。乱視である。

地球に生まれてきたことに失望しつつ月ミるなの話をする。

月ミるなただひとり空を落ちる。

月ミるなにピントがあわない。

月ミるなが猫とにらみ合う。

月ミるなから逃げ出すことができない。

月ミるなと仲直りしたい。

捏造された月ミるな

月ミは魂を貪り
るなは魂を育てる

月ミるなは幼いころ超能力者を集めたセンターで特殊訓練を受けていた。

月ミるなは七歳の時に天狗にさらわれた。

月ミるなが不意に雲間から顔をのぞかせて宝石泥棒を裏切った。

かつて月ミるなだったものはマリアと呼び変えられ月ミるなは魔女に仕立てられた。

三本並んだ太い生木の柱の中央に月ミるなが高々とくくり付けられている。その光景を黄金色の輿に乗った貴族らしい男女が悠然と眺めている。

中央の広場には赤い三角型の頭巾を冠って黒い外套を羽織った巨体が立ち佇まっている。

火刑にするのは誰でもよかった。月ミるなじゃなくてもよかった。誰かを守るために免罪符を得た暴力の向く先。

月ミるなが疲れた体をアスファルトにおろした。

とけた靴ひもを結ぼうとしてかがむとポケットから月ミるながころがり出て雨にぬれたアスファルトの上をどこまでもころがって行った。

とっさに追いかけたけど月ミるなはコロンコロンところんでゆくので僕と月ミるなの間隔は次第に遠くなった。

こうして僕は月ミるなを失った。

月ミるなは主題を欠如させて定義から脱出し嬉しいも悲しいも恐ろしいも口惜しいも過去も現在も宇宙万象も何もかもから切り離された調和の外へ行きました。

ちっちゃい頃からるなをちで
十五で月ミと呼ばれたよ

ナイフみたいにとがっては
ふれるものみな傷つけた

ブウウ──ンンン──ンンンン……