通り過ぎていったメンヘラたち②(中編)
エロの権化、中編。不二子とのめくるめく日々に疲れはじめた筆者がとった行動とは?
苦渋の決断
可能な限り不二子の求めに応じてきたが、筆者は絶倫でもなんでもないごくごくフツーの一般人である。終わりなき性獣とのまぐわいは立方晶窒化炭素級の硬度を誇るメンタルにもヒビを入れた。いよいよ不二子とのチョメチョメに負担を感じるようになってきたのである。
べつに別れたいわけじゃない。ちょっと、いやかなり、むしろ鬼のようにアレの回数が多いだけだ。それ以外は何の問題もない。可愛いくて、ボンキュッボンで、世話好きで、非の打ちどころのない子じゃないか。そう、ちょびっとアレを減らせばいい。ちょびっと…
終わりの始まり
そうして少しずつナニの頻度を減らしたところ、不二子の飽くなき欲求は途端に満たされない状態となり、みるみる情緒が不安定になっていった。や、前ほどやないけど普通にはシてるんやで?これでもだいぶ多い方かと…
しかし、不二子にそんな理屈が通じるはずもなく、スるシないで押し問答になったり、無理やり押し倒されたり、泣いて暴れたり、どんどん手に負えなくなった。また、筆者の方も数をこなさないといけないプレッシャーと勤続疲労で、ムスコが以前のように反応しなくなっていた。
泥沼化
本音を言うと、この後の記憶はそっ閉じしておきたいのだが…乗りかかった舟だ。不二子の求愛、もとい求性行動はエスカレートし、深夜であろうが早朝であろうが今から会いたいと何度も電話をかけてくる、大学やバイト先にたびたび凸してくるなど、生活に支障をきたすレベルに達していた。
ムスコの方も発射に至らなかったり、中折れしたりと酷使につぐ酷使の影響が表面化し、不二子の不満は大気圏を突破して宇宙空間にまで飛び出していた。ついには極度の疑心暗鬼になり、以下の主張を繰り返すようになった。
わたしに飽きた
ほかに女ができた
ひとりでシている
ちゃうねんて!単にシすぎなだけやねんて!ブランドルバエ♀かチミは!?しかし、不二子に心の叫びは届かない。携帯の着信履歴、ショートメールを常時チェックされ、ありとあらゆる行動にほうれんそうを課され、親族以外の女性との接触をかたく禁じられた。安西先生…普通の恋愛がしたいです…
嫉妬深い女性のエピソードをちらほら聞くことはあったが、まさかその当事者になるとは夢にも思わなかった。不二子と出会う前は自分も割とあっちが好きな方だと思っていたが、完全に勘違いだった。世の中には及びもつかない人外がいるのだ。井の中の蛙、大海を知る。
窮余一策
不二子との付き合いで、筆者のメンタルはアルミ合金なみに弱化していた。十分硬いって?何とかしてこの現状を打破しないと、最終的にはぷるっぷるの牛乳プリンになり、ちゅるんと飲みこまれてしまう。錆びついた脳を数年ぶりにフル回転させ、必死で対応策を考えた。
実際、不二子の問題点はただひとつ、交際相手への依存である。それが極端に性的な方面へ向いているだけで、本質は変わらないと思った。よって、彼女の意識をどうにかして分散できないか。そこに楽しみを見いだすことができれば、あるいは…
そう言えば、不二子はもともとオタサーで騎士をはべらす姫だった。そこで以前のようにチヤホヤされたら、多少は彼女の承認欲求も満たされるのでは?ということで、しばし没交渉となっていたローカル掲示板でのカキコやオフ会への参加を再開することにした。
さらに、ちょうど大学の研究室でちょこちょこ活動しはじめた時期だったこともあり、それを口実に会う回数を減らすなどした。不二子は高卒のフリーターだったので、「単位」だとか「ゼミ」だとかいうワードに弱く、無意識的にここは引かなきゃ、と思ってしまう心理を利用したのだ。
あー、ずるい。こすい。何と卑劣なやり口だろうか。自分が嫌になる。もう自己嫌悪しかない。しかし、もはや今の状況から逃げ出したい気持ちの方が勝っており、どうすれば不二子を傷つけず、穏便に離れられるかということばかり考えていた。
後編へ続く。