諸君、吾輩はIT現場監督である

筆者の職業はシステム開発における多重下請け構造の末端作業者、いわゆるIT土方を指揮する現場監督である。ITと言えば聞こえはいいが、実際は企業の業務システムを極めて非合理的に費用をかけ、関連する人々の雇用を守るのが主要なミッションとなっている。端的に言って、全く生産性のないクソofクソな仕事と言える。

では、なぜそんな仕事を長年続けているのかと言うと、それはひとえにコスパがいいからだ。IT土方の多くが質の低い金太郎飴であるがゆえに差別化が容易で、少し頭を使えば簡単に抜きん出ることができる。若い頃はそんなぬるい体質に嫌気がさし、フリーランスでランボーよろしく流浪の傭兵として荒稼ぎしたこともあったが、とことん怠惰で不精でなまぐさな自分は、結局またコチラ側に舞い戻ってきた。

この業界はどんなに社会性がなくとも、どんなに能力が低くとも、何かしら食っていく術のあるとても弱者に優しい世界である。社会福祉事業と言っても過言ではない。意識低く、しょぼい作業をダラダラとこなし、人間関係でモメれば現場を変える。社会人カースト下位層にとっては天国のような環境であろう。

ただ、彼らと同じ土俵にいると、いくら個のパフォーマンスで差をつけようとも、待遇面ではすぐに頭打ちを迎える。そもそも、業務システムの開発に優秀な個など必要ない。世にある大部分の業務システムはハウルの動く城であり、その維持に多額の金が動く。そこに雇用が生まれるのだから、むしろ不完全でなければならないのだ。

では、どうやって待遇面を向上させるか。それは単純に、IT土方を監督する側に回ること、そして業務システムの開発を外注する企業と直接的に関わるポジションに就くことだ。これだけで、日本の年収上位10〜20%にランクインである。ちなみに、現在筆者は一部上場企業の情報システム部に常駐し、社内の全方位から嫌われている悪代官の手足として働いている。

コイツは協力会社を「下請け」と呼び、上司にリスペクトのないKY発言を繰り返し、無自覚な何とかハラで若手を休職に追い込んだクソ野郎なのだが、筆者は持ち前のハッタリ力と、ウルツァイト窒化ホウ素級のメンタルでうまく取り入っている。ポイントはナメられないように堂々と対応すること、ひたすら先回りしてかゆいところを押さえておくことである。

前向きで、向上心があって、意欲的な仲間たちと質の高い仕事をし、活躍に見合った収入を得る、それはひとつの理想であろう。しかし、凡俗の徒がはびこる世界で相対的に価値を高め、クソをクソたらしめる仕事によって配分される対価を人よりも多めにいただく、これも立派な戦略だと考えている。志の高いエンジニア諸君には全くおススメしないが、生き方のサンプルとしてインプットしてもらえれば幸いだ。

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