印象に残っているバイト3選③
ドリップパッグコーヒーの検品、レンタル店の私服警備ときて、最後はアダルトビデオの棚卸である。ここで得た経験は唯一無二で、筆者を神の領域へ押し上げてくれた。男子、三日会わざれば刮目して見よ。
3. アダルトビデオの棚卸
バイト概要
きっかけと仕事内容
2週間のド短期で時給1000円、仕事場が原付バイク圏内、真夏に涼しい倉庫内での棚卸作業とあって、乗らない手はなかった。定員が4名と狭き門であり、ありつけたのは幸運だった。
行く前は、棚卸だから何かを数えるんだろう、ぐらいの認識だったが、それがまさかアダルトビデオだとは思いもしなかった。バイト初日、事務の若いおねーさんが作業内容を説明する時に口ごもっていたのを覚えている。
もしあの瞬間に戻れるなら、え?なになに?もっかい言って?あ、ごめん!聞こえへんかった。もっかいもっかい!という問答をしてみたい。
落書きのユートピア
倉庫に入ると、エ○ビデオ(伏字の意味なし)がぎっしり詰まった段ボールが鬼のように山積みされており、その圧倒的物量に言葉を失った。100個は軽く超えていたと思う。こ、これ2週間で終わるん…?
しかし、作業に入るとそんな不安は暗黒空間に吹き飛び、いかがわしいタイトル、あられもない女体の数々に目を奪われた。ここはまさに理想郷…愛の国ガンダーラ。4人の股間は熱くたぎっていた。
ちなみに、メンバーは筆者含む大学生2人、高校生2人という編成だった。もちろん全員オス♂である。エ○ビデオが触媒となり、あっという間に仲良くなったことは言うまでもない。
なんか様子がヘンです…
ただ、その興奮は思いのほか長く続かず、数日で日常となり、1週間経つ頃には苦行へと変化していた。朝から晩までずっとエ○ビデオと剥き合って、もとい向き合っていると、女体を見ても全く反応しなくなるのだ。
そうすると、ありがちな設定の作品は埋もれていき、相対的にマニアックな設定の作品だけが浮かび上がってくる。特にキツかったのはス○トロ系、獣○系のタイトルである。ノーマルに生きていれば、おそらく一生関わることのない世界だろう。それを無心に、延々と数えていく…
当初はワイワイとにぎやかだった仕事場も、いつしか無言の時が流れる虚無の地となった。こんな日が来ることを誰が想像しただろうか…
奇跡体験!アンビリバボー
しかし、幾星霜を経て、無限に思えた棚卸作業の終わりがおぼろげに見えてきた頃、4人の中で革命が起こっていた。知らず知らずのうちに、メンバー全員が無我の境地へと達していたのだ。ついにタイトルは記号となり、女体は図形となった。
筆者はこの境地を「Periodの向こう」と呼んでいる。後にも先にも、これ以上ない究極に神秘的な体験だった。この感覚を4人で共有できたことは生涯の財産である。
バイト最終日、たった2週間だが一生分と言っても過言ではない濃密な時をともに過ごした仲間たちと健闘をたたえ合い、大団円を迎えた。本当にすがすがしく、晴れやかな気持ちであった。それぞれに好みのビデオをこっそり数本持ち帰ったことは我々だけの秘密である。
まとめ
エロエロあったが、率直に言って最高のバイトだった。このすばらしい経験をいつまでも語り継いでいきたいと思う。