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宇宙船地球号 と SDGs | 戦争をなくすために
1960年代、アメリカの建築家・思想家であるバックミンスター・フラー氏は「宇宙船地球号」という言葉を提唱し、いち早く人類と地球との調和を説いた。彼は、地球上の資源が有限であることを指摘し、これらの資源を適切に管理・利用する必要性を訴えた。
1966年、経済学者ケネス・E・ボールディングは「来たるべき宇宙船地球号の経済学」という論文を発表し、従来の経済活動の在り方を批判的に捉え、新たな経済モデルの必要性を提唱した。彼は、当時の経済活動を「カウボーイ経済」と称し、資源の無限利用を前提とした消費最大化を目指す経済と定義した。これに対し、地球を有限の資源と環境容量を持つ「宇宙船」と見立て、持続可能な資源利用と環境保全を重視する「宇宙飛行士経済」への転換を主張した。
バックミンスター・フラー氏の指摘から半世紀以上が経過したが、現在でも多くの国々は経済成長を最優先課題としている。しかし、地球環境のさまざまな指標は、経済活動が地球の限界に近づいていることを示している。
このような背景から、1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」(通称ブルントラント委員会)は、「持続可能な発展(Sustainable Development)」という概念を提唱した。これは、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なわないような形で、現在の世代のニーズを満たす発展」と定義され、世代間の公平性を重視したものである。
言うまでもなく、国連総会で2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」では、バックミンスター・フラー氏が提唱した「宇宙船地球号」とブルントラント報告の考え方に強く影響を受けている。
地球の有限性を認識し、持続可能な経済モデルへの転換を促す彼の提言は、現代の持続可能な開発の議論においても重要な指針となっている。経済成長と環境保全のバランスをどのように取るか、そしていかにして持続可能な社会を実現するかという課題に対し、彼の考え方は今なお有効であり、政策立案や企業の戦略策定、個人のライフスタイルの選択においても、示唆に富むものである。
SDGsについてもっと知識を深めたいのであれば、バックミンスター・フラー氏の『宇宙船地球号 操縦マニュアル』は必読書とも言える一冊である。