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ガーナ観光の落とし穴:ケープコーストで出会ったぼったくりのお話

僕は、2020年の3月西アフリカの一国ガーナに滞在していました。ロッテのチョコレートでしか聞いたことのない国、ガーナ。その第一印象通り、この国の一大産業はカカオの輸出です。ちなみにカカオの輸出で最高額を誇るのはお隣のコートジボワール。もしかしたらクイズ大会とかで出題されるかもしれませんね。

そんなカカオの国で僕は一か月半にわたってNGOで開発支援のインターンをしていたのですが、今回はそのプロジェクトを終えて帰国直前に敢行したガーナの世界遺産巡りで遭遇した、とあるトラブルのお話。

カカオ

↑そこらへんに生えてたカカオの木。生でも食べれるけど、おいしくはない。

ガーナには世界遺産が2つあります。一つは第2の都市クマシから少し離れたところにあるアシャンティ時代の伝統家屋。もう一つは今回紹介するケープコースト沿岸の城塞群です。


朝5時半。首都アクラにあるゲストハウスを出て、トロトロ(ガーナの乗り合いバス)を3つ乗り継ぎ、4時間ほどかけてケープコーストへ。本来なら危険なので知り合いのガーナ人と行くべきなのですが、みんな都合がつかず致し方なく一人旅。この決断がいらぬトラブルを引き起こすことになります。

トロトロ

↑トロトロってこんな感じ。これは長距離トロトロだからかなり快適に作られてるけど、隣の人とはゼロ距離。ソーシャルディスタンスなんて概念はないね。


ケープコースト駅に着きました。時刻はたぶん10時くらい。ケープコーストの観光スポットは大きく2つあります。一つはケープコースト城。もう一つは隣町にあるエルミナ城。私はまず近くにあるケープコースト城に行こうとタクシーを拾うことにしました。

「ケープコースト城までいくら?」
「15シディー。」
「高い。ほかの人を探す。」
「10シディー。」
「ありがとう。」

ガーナに限らず外国でタクシーに乗る際は料金交渉が必須です。事前に友人に相場を確認してその金額通りに運んでくれるドライバーを探さないといけません。車はべっこべこで、スピードメーターも動かないありさまでしたが、運転手はいい人そう。車を走らせるなり、あそこの建物はなんだ、あの建物は大学だ、といろんな説明をしてくれました。

「ところで、今日はどこに行くんだい?」
「ケープコースト城とエルミナ城を回ろうと思ってるよ。」
「それなら、エルミナ城から回った方がいい。ケープコースト城の方が豪華だから先に見ちゃうとエルミナ城にがっかりしちゃうぜ。」

そうなのか。特に順番は考えていませんでしたが、現地民が言うならその方がいいんでしょう。そう思って、ドライバーに勧められるがまま、僕は行き先をエルミナ城に変更。

はい、エルミナ城到着。ケープコースト駅からエルミナ城までは20シディー。ちゃんとそっちの相場も調べてある。抜かりはないのだ。

「じゃあ、100シディー。」
「は?」
「エルミナまでなら100シディーだ。」

抜かった。行き先を変更したとき、料金を交渉しなおすことを忘れたのだ。元々そういう魂胆だったのだろう。やられた。

とりあえず、交渉してみる。
「ここまでの相場は20シディーのはずだけど。」
「そんなことはない。結構距離があるし、時間もかかるんだから100シディーだ。」
「にしても100シディーは高すぎる。」
「いや、妥当だ。もう着いてるんだから払え。」

そう、もう着いちゃってるのだ。城の駐車場はだだっ広く、ドアを開けて逃げだしてもすぐ捕まるだろう。万事休す。どうする?

私はまず満面の笑みを顔に張り付けた。
「いやー、実に快適なドライブだった。いろんな説明もしてくれたし、回る順番も勧めてくれたし。」
「そうだろ。だから100シディー払え。」
「だから、帰りも君に運転をお願いしたい。」
「あ?」
「またここから新しいドライバーを探すのは面倒だからね。この後ケープコースト城まで連れて行ってくれたら200シディー払おう。」
「……本当か?」
「もちろん。その代わり払うのはケープコーストについてからだ。このまま帰られると困るからね。僕がエルミナ城を観光している間、ここで待っていてくれ。」

ドライバーを納得させた僕は、満面の笑みを浮かべたままタクシーを降りた。
とりあえず時間稼ぎ完了。まずは、観光を楽しもう。

さて、エルミナ城は1482年にポルトガル人によって建てられた、黒人奴隷を出荷前に集めておく拠点。この印象的な真っ白な壁の中にはたくさんの真っ赤に血塗られた歴史が封じ込められている。

お城の中2

↑中はこんな感じ。何もない。説明書きもない。ぼーっとしてたらガイドが来るときもある。無料。

砲台

↑屋上には砲台がたくさん並んでる。面白いのはこの砲台、すべて海に向いているのだ。つまり、攻撃を向けるのは奴隷に対してではなく、奴隷を奪いに来るほかのヨーロッパ諸国。どこまでもアフリカを馬鹿にしている連中だなあ。


屋上から駐車場の様子をうかがう。先ほどのぼったくりタクシーが止まっているのがよく見える。ドライバーはタクシーから出て、ドアに寄りかかりながら城のゲートから目を離さない。実はエルミナ城、入り口と出口が一緒なのだ。どうしたものか。

一階に降りると、売店があった。アフリカ柄の毒々しい色遣いをした絵。その前には店員らしきガーナ人のおばちゃんたちがやる気なさそうにたむろしている。

「やあ、いい絵だね。」
「へえ、この絵の良さがわかるのかい。私にはさっぱりだよ。」

どないやねん。でも気さくなおばちゃんだ。よしよし。

「どっから来たんだ?」
「日本から。」
「ふーん。もう長いの?」
「一か月半くらいかな。ンココの近くにいたよ。」
「いいね、お前何曜日生まれだ?」
「木曜日。だからヤオだ。」

ガーナには通り名を生まれた曜日に基づいてつける風習がある。金曜日に生まれた男ならだったらコフィ、という具合に14種類のあだ名があるのだ。僕は調べたところ木曜日生まれだったので通称はヤオ。こういう文化を知っているとガーナ人は途端に心を開いてくれる。

「いつ日本に帰るんだ?」
「明後日かな。ところで出口って他にない?」
「なんで?普通に入ったところから出ればいいじゃない。」
「いやね、実はかくかくしかじか……」

僕はぼったくりタクシーにかち合って困ってることを話した。
するとおばちゃんたちは同情。隠された店の奥の通用口を案内してくれた。
やっぱ気さくなコミュニケーションは大切だね。

こうしてエルミナ城を抜け出した僕は逃亡奴隷の気分。
駐車場の死角となる海岸沿いをダッシュ!!ダッシュ!!ダッシュ!!

足を海水に浸しながら200メートルくらい走ると、魚のにおいが立ち込めるエルミナ市場の裏側に到達。そこから店と人をかき分けて大通りまで急ぐ。
やっとの思いで通りに出た僕は別のタクシーに手早く料金交渉をして乗車した。
一息つく。やったぜ。作戦終了。

こうして僕はぼったくりタクシーに一銭も払うことなく、エルミナ城を後にした。言っちゃえば、乗り逃げ成功。

遠くから見たエルミナ

↑遠くから見たエルミナ城。タクシーの窓から入る風が気持ちいい。Base Ball Bear の「風来」を聞きながら町を後にするのは最高。


まあ、何が言いたいかっていうと、ガーナに行く人はタクシー乗る時、気を付けてね。ってお話。こういうぼったくりの被害を聞くことは本当に多い。訪問先で楽しい思い出だけを作るために対策だけはしっかりしておきましょう。

次はケープコースト城の話をしようかな。ガーナ観光を紹介するサイト少なすぎて困った記憶があるから。

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