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【タイトルを当てるミステリ!?】注目作家「早坂吝」の魅力とおすすめBEST3!

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ミステリのトリックはもう出尽くしたんじゃないか?
ポーに始まり、今ではテレビをつければ毎日のように刑事ドラマが放送され、サンデーでは『名探偵コナン』が長期連載されている。
大体のトリックに何となく既視感があり、何となくトリックを察してしまう。そんなときもミステリ愛好家なら度々訪れる瞬間だろう。
しかし、その風潮に真っ向から異を唱える作家がいる。彼の名は「早坂吝」
彼は度々こういった旨を述べている。
「技術の革新がある限り、トリックは永遠に生み出される。」

今回は名前からもその異端さが垣間見える彼、「早坂吝」(はやさか やぶさか)の魅力を紹介しようと思う。

早坂吝の魅力

彼の特徴は何といってもその奇想天外なトリックだ。軽妙な語り口で読者をキャラクターに引き込みながら最後にスケールの大きなどんでん返しのトリックであっと驚かせる。今の本格ミステリ界でこれほどまでにトリックで読者を楽しませるエンターテイメント性を持つ作家はいないのではないだろうか。

また、彼の人間性にも特筆すべきものがある。とにかく自己顕示欲が高いのだ。
一般に自著を自分で解説することは少ない。というより、そういうのはダサいと感じる通奏低音が存在する。しかし、彼はそんな雰囲気何のその。自分の作品でこだわったところを余すことなく、あとがきで語りつくす。作品内でも最近珍しくなった「読者への挑戦状」を堂々と突き出す。やはりこのくらい自信にあふれていないと、ミステリ界ではやっていけなのか……。
もっとも、そんな自信にあふれていても彼の作品はその自信に引けを取らず、圧倒的に面白いので問題は一切ない。

そんな自信にあふれた彼の作品から僕が選んだおすすめの3作を紹介しよう。

3位 【極悪と狂人の対決】 「殺人犯対殺人鬼」

孤島の児童養護施設に入所している網走。島の外に出た職員たちが嵐で戻れず、施設内が子どもだけになった夜、網走は悪質ないじめを繰り返していた剛竜寺を殺すために彼の部屋に忍び込む。しかし剛竜寺はすでに何者かによって殺されていた。翌日になってもまるで人殺し自体を楽しんでいるかのような猟奇殺人が相次ぐ。「この島に恐ろしい殺人鬼がいる」――網走はその正体を推理しながら、自らも殺人計画を遂行していくが……。(光文社HPより一部改変)

キャッチ―なタイトルの本作品は、探偵役も殺人犯という一風変わったミステリ。息つく間もなく事件が勃発し、錯綜する推測に翻弄される疾走感は早坂吝ならではでしょう。彼の作品の中では少し趣向が違う物語なので、いくつか彼の作品を読んでから手に取るといいかもしれません。

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2位 【最先端技術を用いたトリック】 「ドローン探偵と世界の終わりの館」

颯爽と空から現れ犯人を捕獲する……そんな神出鬼没な存在として知られるドローン探偵こと飛鷹六騎は、日々、犯人確保に余念がない。ところがある日、両足を骨折。折しも大学探検部の面々と「廃墟探検」を計画中だった六騎はドローンを操り、カメラ越しに探検に参加するという方法を思いつく。
そうして向かった廃墟で、その場所を意気揚々と探検する部員たち。しかし、いつしかそこには不穏な気配が漂い、部員が一人、また一人と襲われ始め――。(BOOK データベースより一部改変)

まさに最先端技術を使った、これからのミステリの可能性を模索し続ける早坂吝らしさがあふれた軽快な作品。この頃は「読みやすい文章」にもこだわっていたらしく、短文で積み上げられていく驚天動地の物語は独特の世界観を作り出しています。最先端技術!といいつつも小難しい話ではないので気軽に楽しめる作品。初めて彼の作品を読む方にぴったりだと思います。

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1位 【まさかのタイトル当てミステリ!】 「○○○○○○○○殺人事件」

公務員・沖らは、ライター・成瀬のブログで知り合い、仮面の男・黒沼が所有する孤島でオフ会を行っていた。沖は今年こそ大学院生・渚と両想いになりたいと思っていたが、成瀬が若い恋人を勝手に連れてくるなど波乱の予感。孤島に着いた翌朝、参加者の二人が失踪、続いて殺人事件が! さらには意図不明の密室が連続し…。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは?(BOOK データベースより一部改変)

「面白ければ、なんでもアリ」でおなじみ、メフィスト賞を受賞した彼のデビュー作にして、話題作にして、代表作
早坂吝は物語の冒頭でこういった旨のことを宣言します。「トリックは誰にも当てることができないだろうから、読者が少しでも頭を使って本作を楽しめるようにこの作品のタイトルを当ててほしい。
前代未聞のこの試みに自分も探偵になった気で作品に没頭できる、まさにエンタメ性に富んだ作品。頭を使ってミステリを読むとはどんなに楽しいことかを改めて気づかせてくれる最高の一作です。

ちなみにトリックは本当に当てられないと思います(笑)

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早坂吝の作品はどれも突飛でいつでも読者を驚かせようとたくらんでいますが、その実、本格ミステリとしては成立した良質な物語を紡いでいます。

言うなれば彼は、「本格ミステリの異端児にして申し子」。

ミステリの守破離を地で行く彼の未来を一緒に心待ちにしませんか?

是非「早坂吝」の書籍を手に取ってみてください!


他にも様々なミステリ作家を紹介しています。興味があればぜひ。


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