戦記①

お笑い芸人っていうのは、ネタをやったりおもしろトークをしたりしてお客さんとか視聴者を笑わせて、皆さんの生活に少しだけ彩りを添えるお仕事だと思っています!
それが出来れば、仕事を全うした、やった甲斐があった、と僕はなるわけですけど、時として芸人は芸人同士で、しかも純粋なネタの面白さで戦わなくちゃいけなかったりします。
2009年とか2010年くらいでしょうか、その戦いに勝たなければ、よりたくさんの人に笑ってもらえる機会を得ることができなくなってきました。と、僕は記憶しています。レッドカーペットが終わった頃じゃないかなぁ。
この戦いのおかげで芸人のネタは急速に進化をし始めて、今やひとつの成熟したカルチャーとして確立してきた感もあったりしています。僕の体感ですが。

僕が芸人になったのは2012年頃なので、戦わなくちゃ生きていけないという血みどろの渦の中で産声を上げ、お笑い芸人というよりはお笑い戦士なんじゃないかと思ってしまうくらい戦いの場に身を捧げてきました。
前のコンビでは戦いに負けたり勝ったり勝ちきれなかったり、色んな経験を経て、僕はいまトワイライト渚というコンビを組んでいます。


このコンビを組んだのは2023年の5月で、ひとつの大きな目標はツギクル芸人グランプリ2024の決勝に行くというものでした。
松竹芸能という事務所のなかで頭角を現せば、そのチャンスは巡ってくるんじゃないかと(ツギクルは事務所から何組か絞られて予選に挑戦する権利を得られるらしい)、他所から来た芸人だからその信頼を勝ち得るようにここから半年とにかく面白いネタを作ってマネージャーにアピールをし続けようというのがふたりの決め事でした。


それが実り!!
なんの結果と出していない僕たちは、ツギクル芸人グランプリ2024の予選に挑戦できる権利を得ることができました!すごい!嬉しい!亀の歩みのような我々を選んでくださったマネージャーさんたち本当にありがとうございます!
松竹から予選に参加した芸人は、M-1の3回戦とか準々決勝まで行ってたり、おもしろ荘に出たり、たけし杯の決勝行ってたり、大小ながら結果を残している芸人だったので、僕らが選ばれたのはかなり異例というか(キングオブコント1回戦落ちだったので)、もっと他にチャンスを与えてもいい芸人はいるのに僕たちを選んでくれたのは、何かしらの期待を込めてくれていたんじゃないかなと物凄く気合が入る事案でした。
僕たちがこの戦いに賭けているというのも込みで。


これが決まってから、僕たちはひとつのネタをより面白くするために、戦いに勝つために、色んなライブでネタを試しました。
反応がよくなかったところを省みて、こんなボケにするのはどうかなとか、こういう風にツッコんでみようかとか、もうほんとアスリートの領域です。
僕は野球が好きなので野球の例えになりますが、リリースポイントでこうしたらより球速が上がりそうとかこうやってタイミング取ればファストボールにも対応できるんじゃないかとか、すごく細かいところまで見直して微修正して、そんな繰り返しでした。


で、満を持した本番が今日だったわけですが、自分たちのやれることはやれた!
というのがふたつめにあるのですが、ひとつめにあったのは、「「「悔しい!!!」」」でした。

やれることはやれた、んですけど、やれることがやれても"勝てなかった"芸人がいたということです。

これはねー、すごく悔しいですよ!
戦いにも負けて(と僕は思ってますが)、お客さんを笑わせるということでも劣って(これは事実)、こんな清々しく負けたなぁと思ったのは久しぶりでした。

でも、こんな面白い人たちがいるのがなんだか嬉しくて、こんな気持ちになるのは数年前の自分からしたら考えられないんですけど、やっぱりお笑い芸人のネタって人々にとってかけがえのない財産なんだなぁと思いました。たくさん笑えたという事実を切り取れば。
舞台袖で観ていて、2011年以前のただのお笑いファンだった、芸人の面白いネタに救われていた上野修平くんに戻った感覚がありました。

でも今日は戦いの場ですから、気持ちを切り替えて板についたわけですけど、まぁ結果は前述の通りで。
でもまた、前述の通りで、清々しく負けられたというか、今の気分としては本当にスッキリしています。

まだね?まだ結果は分からないですけど、次はキングオブコントだー!と気持ちにすぐ切り替えられました。
この大会で決勝行ってもその芸人にはどのネタ持っていっても勝てないだろうから優勝はできないし!


ただ、負けたことで気付けたこともあるので、それをどうするかなんだと思います。
勝つためにも笑わせるためにも。
僕の人生はずっとそうですし。
負けから学んで亀の歩みでここまで来たんです!
とても良い経験になったと思います。


総じて良い日だったんだと思います。
色んなことに気付かされた日でした。

まだまだ未熟で面白くないネタも作ってしまう僕らですが、世間の多くの人がトワイライト渚を面白いと思ってくれる日がくるまでたくさんあがいてみます!

とかなんとか、新宿の路上で思う2024年5月17日でした。


イヤーーー!!!でも!!!
悔しい!!!!!

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