狸寝入りのプリンセス
23歳になった今の私は、アクセサリーの中だと圧倒的に(耳の)ピアスが好きだ。
小さいストーンで耳がキラっと光るのも可愛いし、バンドマンがバチバチに開けているのもカッコイイ、ゆらゆらと揺れる大きいピアスは「おねえさん」的なエレガントさがある。私も30歳くらいになったら、ショートカットにして大きなピアスが似合う女性になりたい。
色々なアクセサリーがあるけれど、私が最初に憧れたアクセサリーはネックレスだった。初めての出会いはそう、たしか幼稚園の時だ。私は近所のダイエーで「セボンスター」に出会った。
セボンスターとは、カバヤ食品から販売されているペンダントアクセサリーである。値段は1個150円。商品としては、チョコレート菓子のおまけとしてペンダントが付いているという設計だが、チョコ目当てで買う人なんてこの世に1人もいないだろう。
プラスチックながら、キラキラとした宝石の輝き。ハート、スター、フラワーといった女児なら心くすぐられるモチーフ。大人っぽい金や銀のチェーン。セボンスターは、女の子が誰でもお姫さまになれる憧れのアイテムなのだ。
初めて目にした時から全くもう心を奪われてしまい、親におねだりしたことを覚えている。お菓子やおもちゃなどをあまりねだらない子どもだったので、親も珍しがってすんなり買ってくれたはずだ。他に持っているアクセサリーもなかったので、自分が持っている物の中で最も輝きを放つそれは本物の宝物のように見えた。レジを通したらすぐに箱から開け、意気揚々と首からぶら下げるのがお決まりだった。
ここで幼いながら賢かったのは、チョコの使い方である。チョコレートがそもそも食べられなかった私は、父の口に「あーん」していたのだ。小さな娘がたった150円で喜び、自分に甘えてきてくれるということで、私はまんまと毎週セボンスターを買ってもらえることになった。
ところが、父は娘に甘くても次々とペンダントが増えている状況に母は黙っていない。しかも私の悪い所は、開けてから家に帰るまでしか大切にしていなくて、帰ってくると放置していた所だ。「大事にしないなら買っちゃダメ!」と怒られ、それ以降はなかなか買ってもらえなくなってしまった。
そこで考えたのが、狸寝入り作戦だった。
①ショッピングカートでセボンスターを通る時にこっそり箱を手に取る
②そのままお腹に抱えて寝たふりをする
③店から車まで運ばれるのを待つ
今考えると、レジを通さずに持ち出そうとしているので立派な犯罪である。しかし、作戦は成功した。してしまった。車まで運ばれて、親が降ろそうとした時に、手にセボンスターを持っているのを見つけ、一緒にレジまで戻って買ってもらった。お店の人も小さい子がしたことだからとお咎めもなく、親からも「気を付けなさいね」くらいのことしか言われなかったはずだ。
内心はドキドキでヒヤヒヤ。それなのに、悪いことをしたと反省するよりも、作戦が成功したことに喜んだ幼い自分が恐ろしい。果たしてあの時、親が気づいていたのか気づいていなかったのか、直接聞いてみても私しかあの日のことを覚えていなかったので、真相は謎のままだ。
親を騙してまでセボンスターを手に入れたかったあの時の私へ。あなたは立派に大人になって、自分のお金でセボンスターを買えるようになりましたよ。あの時より頭が大きくなって、チェーンを通すのが少し難しくなってしまいました。ショックです。でもやっぱり、セボンスターって最強にかわいいよね。ぴーす。