Nature of Air|セルフライナーノーツ
2023年の夏に作った曲。
2023年の5月末、とある名馬が旅立った。ナイスネイチャ、35歳没。馬の中では相当な長生きである。彼の母親のウラカワミユキも36歳まで生きたようであるので長寿の血筋なのかもしれない。ナイスネイチャの詳細な紹介は省略させて頂くが、彼のレースを知らない私はいつの間にか引退馬協会の支援活動も含め好きになっていった。寄付活動にも微々たるものだが細やかな援助をさせていただき、それも相まってか、最期を迎える前の数日、弱りつつある彼の状態を伝えるSNSの投稿には回復を祈るとともに、心を痛めたものである。最期は柔らかな風そよぐ青空のもと、僚馬に看取られながら旅立ったそうである。
動物の死というのはなんとも文字で表現し難い。彼らが人に向けて純粋で素直な感情で向き合ってくれるからこそ、私も人間的な感情を脱ぎ捨ててただただ親愛の情として悲しむ。言葉は不要なのであろう。だから音楽にした。音楽にせざるを得なかったのである。私自身のどうしようもない感情を落ち着かせるためのエゴである。消化しきれない気持ちを表現したそんな曲。レクイエムといえば聞こえがいいのかもしれないが、そんな高尚なものでもない。親愛を浄化させる曲になればと思う。
私と同じ生まれ年の、多くのレースを走り抜いた名馬から勇気と癒やしをもらった。ナイスネイチャは静かな風に乗り、北海道の地から旅立って行った。そんな曲だけれども、解釈はそれぞれで自由に届けばと思う。風なのだから。