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人生初の恋愛模様を1枚のアルバムに。 野口純史に聞く『Sweet Berry Story』インタビュー(前編)

2021年2月14日にリリースされる、ミュージシャン野口純史(のぐち・あつし)のファーストソロアルバム『Sweet Berry Story(スウィート ベリー ストーリー)』。2018年から2019年にかけての自身の経験を元に、恋愛の移り変わりをドラマチックかつ生々しく描いた意欲作だ。ポップソングからロックなアレンジの曲、バラードまで12曲を収録する。
背景には、どんな実体験や感情があったのだろうか。記事の前編である今回は、野口純史本人からコンセプトとなった恋愛の顛末や、アルバム制作に至るまでを聞いた。

後編はこちら:悩みや苦しみから創造する新たな価値とは? 野口純史に聞く「Sweet Berry Story」インタビュー(後編)

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■描きたかったのは 名曲「Sweet Berry」の“その後”

━━アルバム制作がステイホーム期間と重なっていましたね。期間中はどんな生活をしていましたか?

会社員で接客業なので、普通に仕事をしていました。ただ休日は人に会えなかったし、一人で過ごす時間は増えましたね。職場の都合で横浜から埼玉に引っ越しもして。結果的に、制作にはそれがプラスになったかもしれません。

━━アルバムの制作を決めたのはいつ頃?

思いついたのは2018年の10月くらいで、今の形に定まったのが、2019年の4月ごろ。何曲かは完成していて、アイデアや断片だけだった残りの曲をアルバム用に完成させていった感じです。

━━実体験を元に、様々な気持ちや出来事を含めながら一つの恋愛の始まりと終わりを描くという、1本の映画のようなアルバムに仕上がっています。
片想いの曲あり、明るいデートの曲あり、ショックな出来事の曲ありですが、制作やコンセプトを決めたきっかけは?

アルバム2曲目の『Sweet Berry』が「ヤンサン」のオープニング曲に採用されて(※)、イベントでも披露したことで、本当にたくさんの人が聴いてくれて。すごくいろんな感想等もいただけてありがたかったので、次は何をしようかなと考えた時に、『Sweet Berry』の続きを描くことで、自分の恋愛関係のことを一枚のアルバムにまとめようと思いました。
“続きもの”なら興味を持ってもらえるかなと思ったし、2019年の3月にはがっつり振られて別れたんで、これは恋愛の始まりから終わりまで描けるなあと(笑)。

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━━まるごとアルバムのコンセプトに持って来たのが面白いですね。交際スタートから失恋までの恋バナを聞いてもいいですか?

いいですよ。なんでも話しますんで、どんどん突っ込んでください(笑)。

━━ありがとうございます。遠慮なく質問します(笑)。

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■25歳で人生初の交際スタート。その先に待っていたものは……

━━付き合い始めてから別れるまでは半年間くらいだったそうですね。交際のきっかけなど教えてください。

2018年の夏ごろからデートして、秋に付き合い始めて、翌年の春に別れたので実質半年くらいですね。相手は2コ下の職場の後輩で、彼女が同じ職場の中で自分と同じ業務を担当することになって、以前より話すようになり。慣れない仕事に四苦八苦している様子を見て、なんとかサポートしてあげたいなと思う気持ちがだんだん恋愛感情に変わっていった感じ。

━━野口くんから見てどんな女性でしたか?

小動物みたいで、人と話すのはあまり得意ではないタイプで、箱入り娘という感じ。恋愛経験も全くなかった。そこは自分と一緒でしたし、自分も人間関係はうまいほうではないので。

━━というと、自身にとっても人生初の交際?

そう。もちろん、それまでにも好きな人がいたことはあったけど、付き合うことになったのはお互い初めてで。彼女のほうは同じ職場内での恋愛に抵抗があったみたいけど、ちょうど僕のほうが異動することになって、「それなら」という感じでOK。

━━おお。はっきりした“告白”みたいのはあったの?

『Sweet Berry』が「ヤンサン」の主題歌選手権で放送された時点では、まだ片想い状態だったんですけど、山田玲司先生や番組ゲストの手塚るみ子さんに「これ聴かせて告っちゃえば?」と背中を押してもらって。
で、彼女にSoundCloudのリンクを送ったら、翌日に「あれって私のことですか?」と言われて「はい、そうです」と(笑)。そして必死に口説き落としたという。

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━━それから、アルバム2曲目の『恋人繋ぎ』みたいな感じのデートをしたりしたと。

そう。『恋人繋ぎ』は、年上の女性の友人(※)に、彼女とディズニーランドに行くことを話したら「じゃあそれも歌にして!」と言われて作りました。

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━━ディティールの伝わる素敵な歌です。多くの人が楽しかったデートを思い出すんじゃないでしょうか。恋の始まりのいいところが詰まっていますね。

だったら嬉しいですねー。とにかく、彼女が言ったことに俺が突っ込んで、彼女がケタケタ笑い転げたりした時の笑顔が本当に好きで。歌詞の通り、桜の花びらが舞うみたいに、幸せな空気が弾けて飛ぶような気がしていました。

━━ところが、「もっと君のこと教えて」「俺は君のこと見てるよ」という歌詞の『きかせて。』という曲を経て、ちょっとずつこの恋愛に不穏な空気が流れはじめます。あまり順調とは言えない時期もあった……?

そうですね。結構「今、それ言うか⁉」ってこと言われたりもしましたし。
『イケメンになりたい』という曲に「振り向いて君がこう言った うーん、顔はやっぱりタイプじゃない」という詩がありますが、あれも実際にあったことで。

今思うと、そもそも彼女と自分にはあまり共有できるものがなかったと思います。彼女は「アイドリッシュ・セブン」というアニメが大好きで、俺もがんばって見たりしたけど、彼女ほどはハマれなかった。反対に、「野口さんの音楽活動にあまり興味が持てないんですよね……」とはっきり言われたこともあったし。

━━曲の中でも、「僕を見てくれよ」「君は何を見てるの?」「こっち向いて」といった歌詞が出てきます。付き合っていても、自分を受け止めてもらえていない気持ちが大きかったんでしょうか。

これは自分の闇の部分に手を突っ込む作業になるのですが……、そもそもありのままを受け止めてもらえる自信がないんだと思います。自分の中に、強すぎる愛情と、それと同じくらいの嫉妬心や執着心があって、それをそのまま受け入れてもらうなんて(できないのでは)……と。

どうしても、そこまで人と近づけない、自分の姿を知られた上で拒否されたら本当に立ち直れなくなるかも、という恐怖心が根っこにあるのだと思います。
学生時代の音楽活動でも近いことを感じた経験があって、彼女の前でもそれは同じだったんじゃないかな。

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■振られてしまった自分を“主人公”として見る

━━そして、アルバムの後半の9曲目『それは悪い夢のように』のような、決定的なことが起きました。ネタバレを控えたいので詳細は語りませんが、曲調も歌詞も非常にショックな歌です。ぜひ聴いてほしいですね。

……まあ、水面下で、どっちが先に(別れ話の)口火を切るかみたいな状況はあったと思います。青天の霹靂だったけど、心のどこかでこうなってもおかしくないとも思っていた。
その前もなかなか会えなくて、「これから先、彼女と何を楽しみにしていけばいいんだろう」と悩んでましたし。彼女の側もそう思ってくれていたらなんとかなっていたのかもしれないけど。

━━泣いて引き留めようといった気持ちはなかった?

うーん、いや、「ここで終わるのか」「これまでの事が全部無駄になるのか」とか。最後に二人で駅へ向かう道を歩いてる間も、まだ「なんとかなんねえかな」と思ってたけど、まあ、ある程度それまでの不満も言い合ったりして。

━━その後が苦しかった?

言葉にして話してるから今は整理ができてますけど、控えめに言って地獄でしたね。俺のほうはまだ好きだったし、安心して話せる相手がいるっていう状況を捨てたくなかった。本当はあまり成立していない恋愛だったとしても、そう思えてた時期は幸せだったという感じじゃないですかね。

でも、さっきも言った通り「逆に、これで恋愛の終わりまで描けるな」と。どこかに、客観的にこれをどう料理しようかと考える、ある種残酷な自分が表れて。
アルバム10曲目の『loveless』とかも、曲は2016年くらいからあって、歌詞が一部書けていない状態だったんですが、皮肉なことに失恋によってピースが埋まって完成した。
『イケメンになりたい』も、「ああ 一度でいいから イケメンになりたい」というフレーズだけが先に出来てて、失恋してすぐは(続きを)書けなかったけど、しばらく経ってアウトラインとか、テーマ性みたいのがはっきりしてきた。

━━転んでもただでは起きない。

子どもの頃、小説家になりたかったこともあって、自分の人生自体を物語だと考えてるんだと思います。常に「自分が主人公」みたいな。そういう意味では、ナルシストなんじゃないかなと思いますけど。

それで、結果的に今回のようなアルバムがまとまった。『Sweet Berry Story』は恋愛に関する考察記録でもあり、ドキュメンタリーでもあるんです。

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Written by :しま(Twitter @shimashima90pun
撮影協力 :BAR蜜柑(神奈川県茅ケ崎市)
      Twitter:https://twitter.com/no3_lucky
      Instagram:https://www.instagram.com/barmikan/

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「野田洋次郎や志磨遼平など、影響を受けたアーティストが自身の恋愛経験をテーマとして作った楽曲やアルバムから、学生時代、リスナーとして多いに刺激を受けた。だから、自分も今回のコンセプトにチャレンジすることにためらいはなかった」と野口純史は言う。
アルバム制作を経て、失恋は供養されたのだろうか。インタビュー後編では、経験や感じたことから野口が歌を作ることの意味や価値について聞く。

後編はこちら:悩みや苦しみから創造する新たな価値とは? 野口純史に聞く「Sweet Berry Story」インタビュー(後編)


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