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#2を語る。with モナレコーズ佐々木さん part.2 〜全曲解説・前編〜

前回でアルバム全体について話でしたが、ここからはいよいよ全曲解説です!アルバムに収められたそれぞれの曲について一つ一つ語っていきました。

なお会話中に出てきた、その曲に影響を与えたバンドや曲もすぐ聴けるようにリンクを貼り付けました。そちらもぜひどうぞ。

話はまず、1曲目の"朝が来る(Opening)"から。


1. 朝が来る(Opening)

S:私もちょろちょろっとメモを書いてきたんですけど。

N:おっ!ありがとうございます。

S:この曲は、さっき言ったみたいに聴いた人それぞれの朝焼け前みたいな。夜中から朝に向かってっていう風景がリアルに立ち上がってくるなと。

N:おお~。

S:音の使い方もそういう雰囲気が出てるし。

N:そうですね。聴いたある友達が「まだまどろんでる感じがする」って言ってて。コーラス重ねてるのもあるのかな。

S:うんうんうん。そうですね。確かにこのコーラスで、夜から朝に変わる風景がすごく出てます。

N:この曲自体を作ったのは、ほんと最近なんですけどね。アイデアが浮かんだのは11月の22日とかなんですよ。

S:めちゃ最近ですね笑。

N:確かこのちょっと前に(西松)亜香音ちゃんのワンマンがあったんですよ。それがすごいよくて。その帰りの電車でメロディーを思いついて、「これをオープニングにしよう!」って決めて。その時期、"めざめ"をオープニングにするのか、また別のものを作るのかで悩んでいたんですけど。

S:へぇー。

N:帰りの電車に乗りながら頭の中で大体の形を作って。その次の日にレコーディングとアレンジを同時並行で進めて。そのあと大体3日くらいで、今の完成系ができたんですよね。まあ1分くらいの短い曲なので。

S:うんうん。

N:なんかこう…アルバムの中のいろんな曲の伏線になればいいなと思って。まあオープニングっていうのもありますけど。このアルバム自体が、いろんな曲がこう…。もちろん曲順通りにはつながっているんですけど。曲順でつながっていない曲たちも、有機的にバラバラにつながってるような感じがあるなって。

S:ありますね。

N:例えば"朝が来る"は"夜明け前のエンドロール"につながっていたり、"yakekuso youths"は"なぜ"のアフターストーリーだったり。そういう風にも取れるかなって。だから曲順もすごい悩んだんですけど。"夜明け前"と"yakekuso"が逆だったり。けど結局今の形に落ち着いて。

S:うん。確かにまどろんでる感じと、夜中ずっと起きていて寝られなくて、若干のこう…罪悪感が笑。

N:あー!はいはいわかります!

S:ありつつ。でも夜が明けてきたな、みたいな。そういう感じがしますね。

N:それこそそのあと、"yakekuso"があるので。マイナスからのじゃないですけど。そういうスタートにしようと思ったのかもしれないですね。悶々としているような感じっていうか。

S:うんうん。それこそほんとに次の"yakekuso youths"の伏線に、ちゃんとなってる感じがしますね。

N:嬉しいです。楽器的にも、しらっちとのレコーディングが終わってからやっているので、キックとかはコピペなんですけど。"誰かのホワイトデー"のしらっちのキックからコピペしてて笑。実は"めざめ"もそうなんですけど。

S:そうだったんだ笑。

N:("誰かのホワイトデー"は)4つ打ちなので。あとギターもラインで録っていて、音の被りがほとんどなかったから、素材として使えるなと笑。この曲はベースも自分で弾いているんですけど。

S:ふーん。

N:ほんと直前に作ったので、できたてホヤホヤ感はありますね。

S:この曲コーラスは結構入ってたんでしたっけ……あ、野口さんだけか。

N:そうですね、全部自分で重ねて。これ家で録ったんですよ。

S:ふーん!

N:SM58っていう自分のマイクがあるんですけど、それを使って何重にも重ねて。あとこの曲、自分でスティック叩いたりしてて笑。

S:あ!そうだったんだ笑。

N:あの3拍子の「タッ、タタタタッ、タタタタッ」っていうリズムを自分でやってて。部屋に転がっていたジャンプ(雑誌)を叩いて出した音なんですけど笑。

S:そうだったんだ笑、はははは笑。

N:それをアンプシュミレーターに通してハイを強調すると、スネアっぽい音になったので。

S:めっちゃスネアかと思いました笑。

N:あ、まじすか笑。っしゃ~!。

S:はははは笑!

N:やったー笑!そういう宅録っぽいチャレンジもある曲ですね。唯一ボーカルとギターを一緒に録ったりとか。そういう部屋感を出したくて。

S:ですね…。でもほんとに「イントロ」って感じ。

N:そうですね。アルバム全体のイントロダクションみたいな感じですね。


2. yakekuso youths

N:で、こっからが本番みたいな笑。

S:こっからが本番笑。これは割と古い曲ですか?

N:そうですねー、去年からやっていたので。

S:私は、これがライブで見ていたアンコールズに一番近いっていうか。こういうイメージだなって思いました。

N:そうですね、はい。多分この曲自体がすごいJ-ROCKっぽいので。そういうのやるのは避けてきたんですけど。あえてやってみて。だからかもしれないです。

S:うんうん。

N:どうでした?歌詞とかテーマ性みたいなものは…

S:そうですね…熱量もしっかりあるし、しっかり勢いが…だからここで一気にパンっていった感じ?

N:あーオープニングからの流れが。

S:歌詞っていうより、曲が結構ガーンって前に出てきたのが印象で。

N:割と歌詞自体は後ろ向きっていうか。過去のことを振り返ってる感じではあるんですけど。

S:まだ多分、野口さんがマインドの中でモヤモヤを抱えつつ、でもそれが音によって昇華されてる感じの曲なのかなって。

N:そうっすねぇ…。まあ自分の10代が全然楽しくなかったんで笑。

S:笑。

N:高校の時とかほんと最悪だったので。それを卒業しようじゃないけど。このCメロの部分は新しく書き直したんですよ、ここだけ。「おめでとう」とか…その時の自分に対して言いたくて。「花が散る」っていうのも卒業式のイメージなんですけど。うまくできなかったけど、肯定したいっていうか。言いたかったんですよね。そういう感じかなぁ。

S:だからこれはほんと内面に内面に入ってく感じがして。だから最初の"朝が来る"との対比が生きるというか。"朝が来る"でパッと外の風景を想像させて、"yakekuso youths"でこの(歌詞カードの)イメージっていうか、一気に内側に行ってて。

N:はいはいはい。

S:「グー!」っとこう内側に。

N:なるほど!外の風景は変わるけど、テーマ的なものは内側に入っていくっていう。

S:うん…。

N:だってこの歌詞カードの写真とか、俺の部屋っすもん。汚かったときの。今はもうちょっとキレイですけど笑。

S:笑。

N:ほんと「きったねー」ていう感じの。(歌詞カードを指して)ここにナウシカの全巻セットが写ってたりとか笑。

S:ははははは笑。そっか写真ですもんね。

N:そうっす。…クッソ汚ねー、ほんと笑。自分で言うことじゃないけど、誰の部屋だよみたいな笑。

S:笑。

N:これサウンド的にはどうでした?この曲とかはギターでかなり冒険したというか。そういうイメージが自分的にはあるんですけど。

S:いや、やってることは割とシンプルですかね…?どうなんだろう。

N:あ、多分やっていることは相当複雑なんですけど、聴こえ方はシンプルなのかもしれないです。聴いた時に難しくしないようにしようと思っていたので。

S:うんうん、うん。

N:2番のAメロでいきなりノイズっぽいギターが入るじゃないですか。あれとか自分的には挑戦で。左側で鳴ってるカッティングとか。不快な感じをあえて出してて。ここは歌詞に合わせてそうしたんですけど。

S:うん。…ちょっと聴きながらやりたいですね笑。

N:あ、聴きます?今俺のiPhoneの中に入ってますよ。

S:いや、パソコンちょっと持ってきます。
(パソコンを準備を持ってくる)

N:すみません、なんか。

S:いえいえ。
(イヤホンを片耳ずつ付けて聴く)

N:(聴きながら)ベースの堤くんにアレンジの方向性を伝える時、NICO Touches the Wallsの"Broken Youth"を例に挙げたんですけど。J-ROCKってだけじゃなくてアニソんでもあったじゃないですか。そのポップさとか。あとメロコアの影響も少しあるかな。

S:うんうん。


N:(2番Aメロあとの間奏を聴きながら)ここのディレイっぽいギターあるじゃないですか。これもハイポジションで同じコードをそのまま弾いたやつと、アルペジオで弾いてるものを2本ずつ重ねてて。

S:へー。

N:実は手の込んだことをやってる、みたいな笑。

S:うんうん。

N:(アウトロを聴きながら)こことかもノイズギターが鳴ってて。

S:うん。

(聴き終わり)
S:…確かに、やってることはよくよく聴くと手が込んでますね。

N:よくよく聴くと、なんですけど笑。それこそまあ、米津玄師とか大好きで。それとかRADWIMPSとかも、ギターをノイズとして使って表現するのにすごい長けてる人たちっていうか。その影響もありますね。自分はその2組ほどはできてないですけど。

S:うん。


N:でもなんだろ。アルバムの中では一番…普通っていうと変ですけど。J-ROCKっぽいていうか、バンドっぽい。

S:結構シンプルなギターロック感みたいなのはありますね。印象としては。

N:でも実は、みたいな笑。気づく人が気づいてくれたら嬉しいですけどね。

S:そうですね。


3. 夜明け前のエンドロール

(パソコンから曲を聴き始める)
N:(イントロを聴いて)ここですね。このコードリフを高2の頃に考えたんですよ。

S:ここが最初聴いたとき、すごくしっかり耳に入ってきて。珍しいなって。

N:(バンドイン後のイントロに入り)ここのリフは最近なんですけど。

S:ああ、そっかそっか。それぞれで違うんだ。

N:なんかオリエンタルっぽいて言われたりしましたね。アジアっぽいっていうか。

S:うんうん。

N:(歌が入り)これは最初佐々木さんに送ったやつから歌を録り直してて。家で歌った時に緊張感があんまり出なくて、もう一回スタジオに入ったんですけど。

S:ふーん。

(聴き終わる)
N:でも佐々木さんが最初に言った「曲の方が立ってる」っていうのは、なんとなくわかりますね。

S:"yakekuso"の方は言葉が先に入ってくるけど、こっちはやっぱりイントロのリフがこう「ガツーン」と来る感じがします。

N:そうっすねぇ。歌詞も…この曲ギターのリズムの刻みも結構ジャキジャキとあるので。そのノリに合わせていったっていうか。

S:うんうん。

N:この曲の歌詞悩んでいる時に、RHYMESTERにすごいハマって。今もハマってるんですけど。なんだろう…硬いメッセージでも韻を踏んでいくことでグルーブが生まれて、気持ち良く耳に入ってくるっていうか。それがヒントになって、韻踏んだりとかは意識しましたね。(歌詞カードの1番Bメロを指差しながら)ここの後半とかは韻を全部踏んでるんじゃないかなっていう。

S:うん。


N:語尾の"たい"で踏んでるし、その後も語尾の"ない"でその前の"たい"とも韻踏んでるっていう。

S:…なるほど。

N:でもこの曲だけ…他の曲は結構、言いたいことがわかりやすいっちゃわかりやすいんですけど。この曲は言いたいことっていうよりは、曲に寄せてった印象はありますよね。

S:そうですね。曲ありきな感じは確かに。

N:はい。最初のとっかかりはサビの歌詞なんですけど。ここだけ出てきて。だからなんか…逃避行じゃないですけど、ある2人が電車に乗って逃げていくイメージで書いて。でもそこからも変わって。

S:ほんとに、リフに言葉をポンポン乗せてった感じがします。

N:確かにそうかも。この曲だけアルバムの中でも立ち位置が、自分でもよくわかっていないっていう笑。曲調としてはちゃんと流れに沿っているんですけど。佐々木さんはこの曲聴いたときどんなイメージを持ちました?

S:その…さっき言ったフジファブリックとか、ちょっと変わったメロディーとかコードの使い方を感じて。…でも確かに椿屋四重奏とかもそうですね、そこの音も近いものがあるなと思います。でもとにかくメロディーがすごい良いっていうのが、第一印象ですね。




N:ありがとうございます。
 さっきも少し話したんですけど、自分的にはハードロックじゃないですけど、いわゆるロックっぽさっていうのを出そうと思った曲ではありますね。サビでカノン進行になるのは(今までの)アンコールズっぽいなとは思いつつ。割とベタなロックぽさに寄せた曲ではあったんですけど。

S:うんうん。

N:でも面白いです。フジファブリックとかのイメージは自分にはなかったものなので。ギターで「ジャジャ、ジャジャジャ」って刻むのも(1A前、アウトロの最後のブレイクなど)、ベタなロックぽさがあって笑。若干ケレン味が…

S:ははは笑。

N:ケレン味っていうか「ドヤ感」があるっていう笑。イエローモンキーとかが好きなのは、そのドヤ感があるっていうか笑。それが好きで。

S:笑。ロックンロールのマナーみたいなものですよね。

N:でもイメージとかは湧きにくかったですか?この曲は。

S:はい、湧きにくかったですね。なぜか。

N:それはやっぱり歌詞を曲に寄せてるからかもしれないですね。

S:それとあと、メロディーの方が言葉より強いっていうか。

N:なるほどなるほど。でも最後のサビの歌詞とかは、"夢みたいだ"の予告的な意味合いもあって。"夢みたいだ"でもう一度出てくるニュアンスではあるんですけど。

S:あーそうかそうか。

N:一応ここで滲ませておく、みたいな笑。まあ"夢みたいだ"書いたあとにこの曲の歌詞は書いたので。それがでちゃったかなていうのもあるんですけど。
テーマがあるとしたら、子供の頃の自分との対話みたいな。「いつかの君に歌う」とかもそうですし。

S:「不意に襲う記憶」とか。

N:そうですね。これはちょっと、トラウマ的なアレですけど笑。

S:ははは。

N:「あ~っ!」みたいな。なんか過去に自分がやっちゃったこととかが、不意にフラッシュバックしたりとか。あります?

S:ありますあります笑。枕に顔をうずめたくなるような。

N:そうそうです笑。あれですね。

S:そうかそうか。

N:まあこの曲だけちょっとわかりにくいかもしれないですけど。テーマがあるとすればそんなところです。


4. 誰かのホワイトデー

N:これが1番語ることあるかもしれないですね。変な話。

S:そうですね。

N:でも俺、この曲に対してさっき佐々木さんが言ってくれたような「シティポップ」ってワードだったりとか、あとネオアコっぽいって言われたりするのが、すごい自分的には面白くて。

S:でもこれ、ほんとにそうですよね。

(曲を聴き始める)

N:(イントロを聴きながら)この賑やかな感じっていうか。

S:うん。

(曲を聴き終わる)

S:でもこれは、ほんとにすごい新しいっていうか。

N:おぉー!嬉しいなぁ!嬉しいっすね笑。
  でもこれ実は「シティポップ」だとか「ネオアコ」っぽさっていうのは全然意識してなくて、自分では。

S:それは面白いですね。

N:それこそ俺がこの曲で意識していたのは、BUMP OF CHICKENとか。

S:全然思わなかったです笑。

N:ケルト音楽…というかそれに影響受けた音楽が好きで。「ゼルダの伝説」の曲とか、バンプもそうですけど。あとはRADWIMPSの"やどかり"って曲とかの賑やかな感じをイメージしていて。あとアコギでジャカジャカ鳴らしてる感じはThe Beatlesの"I've Just Seen A Face"って曲を意識していたりとか。最後しらっちにイメージを伝えるとき「寒い冬の夜に仲間4人が暖炉を囲んでセッションしている感じで」って言ってたりしたので。そういうイメージですね。
ただ、例えばサビのギターのカッティングとかが若干ファンクっぽいんで。それがネオアコっぽいのかもしれないですけど。



S:そうですね、そうかもしれないです。

N:あとこの曲はアコギをたくさん重ねたりとか、あとはイントロで打楽器を重ねたりして賑やかなさを出したりしています。

S:これはラブソング…?

N:うーん…ラブソング、というよりは"ギャグソング"ですかね笑。

S:はははは笑。

N:例えば"Indiana Indiana"も自分ではギャグソングだったんですよ。サビの"Yeah! Yeah! Yeah!"とかも、ちょっとダサいっていうか笑。あとは"kさんのうた"もそのつもりだったので。そのひとつですね。

S:うんうん。

N:短い曲を作るのにハマってた時期があって、この曲を書こうと思った日がたまたまホワイトデーだったので。それをネタにして作りました。

S:アルバム全体の流れの中でこの曲がここにあるとすごいバランスがいいと言うか。

N:ちょっと一息つけますよね。アルバムの中では、いい意味で"軽い曲"というか。他の曲が結構真面目なので笑。

S:そうですね。…私はこの曲が1番好きかもしれないです。

N:やった!

S:笑。でも本人が意図しないところで、シティポップ感とかネオアコ感が出てるっていうのが…

N:すごい意外でしたけどね。

S:ね?私はこの曲を聴いたとき、ここで新しいトライアルをしたくてこういうポップなアレンジにしたのかなって思ったんですけど。野口さん自身はそこまで意識してなかったという。

N:そうですね。アルバムを作る最初の段階で「楽器を制限しない」っていうのは考えていましたけど。そのあと楽しく「イェーイ!」ってアレンジしてたらこうなっていたので笑。だからこの曲アレンジ1番早いんじゃないですかね。

S:あ、そうだったんだ笑。

N:ほとんど最後まで変えなかったので。これと"yakekuso~"は。"夜明け前"とかは最後まで悩んでいたんですけど。

S:そうかそうか。

N:でもネオアコっぽいっていうのは、なんでだろうなー?うーん、まあスピッツが大好きなので。子どもの頃からカーステで流れてて。それがネオアコ感につながってるのかな?と思ったりはしますけど。

S:うん。

N:あとは…歌詞が割と文句言ってるというか、ただの妬み嫉みというか笑。

S:笑。

N:最初ライブでやったとき失笑起きてましたからね笑。だからかもしれないけど覚えてくれる人が多くて。そういう歌詞だから、曲は思いっきりポップできたのかもしれないです。それで上手くまとめたと笑。

S:これも前からある曲ではあるんですか?

N:そうですね、たぶん2年前くらいから。けどこれも「音楽的な部分を出したい」っていうアルバムのテーマがあったから、こうなったんだと思います。最後コーラスがうわ~って入ったり。

S:うんうん。これは私はすごく好きな曲ですね。


5. 見上げれば星はいつもそこに

N:ここで一気にアコースティックな感じになるんですけど。

S:これも意外な曲でしたね。これって前からある曲なんですか?

N:ちょうど1年前くらいに書いた曲ですね。ソロ名義のSoundCloudには上げていたんですけど。その時期RO69のコンテスト(RO69JACK 14/15)があって、それに応募していたんですけど。初めて1次審査を通過して、「やったー!」って思って。でも2次では落ちちゃって、それが悔しくて。当時その結果を学校で知ったんですけど。それで帰るとき普段なら電車使うんですけど、途中駅の池袋まで40分くらいかけて歩いて。で途中でラーメン食べながら「くそ〜」みたいな。そのときにできた曲ですね笑。

S:笑。でも割としっかりアコースティックなアレンジがしてある曲ですよね。(アコースティックなのは)アルバムの中ではこれだけ?

N:そうですね。この曲だけベースとドラムもないですし。

S:ここで(アルバム全体の)起承転結でいうところの「承」と「転」の間みたいな。転換する前のタイミングなのかなっていう。

N:そうですね。アルバムの中では一番、「底」になっている曲というか。それこそこの曲は、しらっちとレコーディングした後で追加した曲なんですけど。しらっちと最初にベーシックトラックの録音をした時は"朝が来る~"と"めざめ~"、あと"なぜ"とこの曲はアルバムに収録される予定じゃなくて。それ以外の6曲だけだったんです。あとアルバムからは外した"kさんのうた"も録ってて。ただそのあと昔録ったけど発表していなかった"なぜ"を入れることを決めて。それで曲順と流れを考えた時に、("なぜ"の前に)この曲があったほうがいいなと思って。入れたんですけど。

S:なるほど。これは歌詞がすごいいい曲で。歌詞先行なのかなと思ったんですけど。

N:そうですね。どちらかというとタイトル先行かもしれないですね。

S:ああ、そうですね!はい。

N:タイトルが先に出た曲で。あのー恥ずかしい話ではあるんですけど笑、andymoriの"それでも夜は星を連れて"って曲がその時、YouTubeかなんかに上がって。それが好きインスパイアされて、このタイトルになったんですけど。


S:そうかそうか。野口さんは基本的に邦楽とかJ-ROCKが割と好きなんですか?

N:(洋楽と)比べるとそうかもしれないんですね。でも区別して聴いているつもりはなくて。洋楽も全然聴くし好きだし。ただなんだろなー…直接影響されたりとかは邦楽の方が多いかもしれないですね。それだけっていうのは嫌なんですけど。どうしてもその影響が強く出ちゃうし。

S:そうかー…。野口さんの曲って、たぶん英詞みたいなのがひとつもないですよね。

N:ないっすね。まあ聴いた人がわからないのが嫌なので。最初に聴いたときに、言葉の意味が伝わらないのは嫌だっていう。それだけなんですけど。

S:何気に、珍しいなと思って。歌詞に英語がひとつも入ってないのは。

N:そうか、そうなのか。

S:それはこの曲だけじゃなくて。…言葉で伝えたいっていうのが、割と強いのかなと思うんですけど。

N:そうかもしれないですね…。俺二階堂和美さんが大好きなんですけど。彼女の曲もやっぱり言葉がすごいスッと入ってくるというか。メロディーが言葉の邪魔をしていない…それでいてメロディーももちろんいいので。あとはTHE BLUE HEARTSが好きなのもあるかな。

 あとは、単純に自分が歌ったときに気持ち良くないとっていうか、違和感があると嫌なので。そうすると、日本語のイントネーションってあるじゃないですか?それに合わないようなメロディーは(その歌詞に)乗せたくないっていうか。だから歌詞によってメロディーが変わったりもするんですよ。そういう癖はあるかもしれないですね。

S:なるほどね。

N:あと、この曲はコーラスが個人的には「推しポイント」っすね笑。それとかイントロの「シャンシャンシャン」って鳴っているのとか。これもまた邦楽で恥ずかしいんですけど…BUMP OF CHICKENの"Merry Christmas"って曲があって。


S:ああ!この曲もクリスマスソングっぽいですよね。

N:そうですね笑。その影響とかはありますね。最初はその部分がなくて、いきなりアコギから始まっていたんですけど。あとは、アコギの鳴りを聴かせたいなっていうのがあって。自分の部屋でマイク一本で録って結構いい音が録れたので、よかったかなと。あとピアノ自分で弾いていたりとか。

S:へぇー!ピアノって、弾けたんですか?

N:ちょっとだけ笑。小学生の時に習ってたので。一応弾けはするんですけど、ちゃんとはできないので。曲によりけりなんですけど。だからこれと"なぜ"と"めざめ"は自分で弾いてるんですけど、"夢みたいだ"と"おやすみ"は太田くん(the phenomenons)に弾いてもらってます。

(全曲解説・後編に続く)

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