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#2を語る。with モナレコーズ佐々木さん part.1 〜まずはアルバム聴いてどうでした?〜

 こんにちは。The EndcoresのVo/Gtの野口純史です。
 今回このアルバムについて、お世話になっている下北沢モナレコーズのスタッフである佐々木歩美さんとお話をしてきました(この佐々木さに協力してもらった経緯はpart.0に)。

 まず最初にアルバム全体の話をしたあと、アルバムに収録されている1曲ずつについてお話しをしていきました。全体で約26000字(!)の大ボリュームになっているため、全3回に分けてお送りしていきます。

 第1回目は、アルバム全体についてです。それでは、どうぞ!
 

[Music of #2 ]

野口(以下N):どうでした?最初聴いた時の感想は。

佐々木さん(以下S):なんだろう…今までのライブでのアンコールズとか、"#1"の時のアンコールズとは違うな、っていうのが印象的で。

N:はい、はい。

S:"yakekuso youths"とか、あと"なぜ"とかは今までっぽくて。その2曲ぐらいはまだ、前の(アンコールズの)音の感じが残っているなと思ったんですけど。

N:そうですね。割とバンド感もありますし。"なぜ"とかはそれこそ古い曲で。堀田くんがいた時からやっていた曲なんですよね。堀田くんと昔録っていた音源に俺がアレンジを加えていったので。

S:けど、それ以外の曲は結構新しい試みが多かったのかなと思って。どうしてそうなったんですか?

N:そうですねぇ…。なんか自分の声で、バンドのカラーとか曲のカラー自体が決まってしまう感じがどうしてもあって。良くも悪くもなんですけど。

S:うんうん。

N:自分ではもっとポップな音楽やっているつもりではあるんですけど。どうしてもフォークとか、そういう粗い感じに捉えれてしまいがちだったので。それに対して「こういうのもできるよ」っていう回答を示したかったんですよね。それもあってどの曲も、結構(元のアレンジから)変わったんですけど。

S:その感じはすごい出てると思います。

N:ありがとうございます。よかった。

S:新しいトライをしようとしてるんだなっていう。

N:1番強くそれを感じた曲ってどれでしたか?

S:そうですね…"誰かのホワイトデー"とか?

N:ああ、はい。

S:割とシティポップっぽい感じというか。加えてカントリーとかフォークの要素もあって、すごく全体的にポップな感じというか。

N:そうですね、はい。

S:あと"夜明け前のエンドロール"も…でも前からあった曲なんですよね?

N:はい。ギターのコード進行は高校生の頃からあって、ずっと温めていた曲ではあるんですけど。どのあたりが今までと違いましたか?

S:すごいメロディアスっていうか。

N:へぇー!

S:イントロで、メロディアスなリフがガーンと入ってくる感じとか。あんまり他の曲でないのかなって思って。

N:そうかもしれないですね。面白いです。自分の中では割とハードロックとかちょっと艶っぽいロックを意識していて。椿屋四重奏とかTHE YELLOW MONKEYも好きだったので、Aメロとかはそんな感じを目指しつつ。まあしらっち(白土宗:前ドラマー)にはそのAメロ、「中島みゆきの地上の星っぽい」って言われて。

S:(笑)。

N:面白いなぁと思ったんですけど。

S:私はなんかフジファブリックとか。

N:あー!へぇー!

S:そういう感じもすごくあって。

N:でもわかります。面白いなぁ。構成もサビで3拍子に変わったりとか複雑で。あとサビ前のギターのフレーズは実はモー娘。の"桃色の片思い"からで笑。

S:ヘぇぇ笑。

N:「も・も・い・ろ・の〜」ってところの笑。普段モー娘とか聴かないし、作った時も意識していないんですけど笑。あとで聴いてみると、小学校の時にたまたま聴いていたのがなんか出てるなぁみたいな笑。

S:うんうん。今までのアンコールズの曲は、歌詞とか野口さんの歌とかが前に出てくるイメージだったのですけど。この2つは曲の方が先行している感じで。
 あともう一つはやっぱりコンセプトアルバムというか。夜中から朝になっていく1日の流れみたいなのが、曲にも全体のジャケットのイメージにも出てて。

N:嬉しいっすねぇ。

S:そういうのが"#1"のときよりもちゃんとあると思います。

N:"#1"は、そのとき自分の中で大事な4曲をとりあえず音源として残すっていうのが目的だったので。だから今回みたいなサブタイトルもなかったんですけど。実は今回も、制作を始めた最初の段階では、頭とケツ("朝が来る(Opening)"と"めざめ(CurtainCall)")はなかったんですよ。

S:はいはい。

N:で、他の曲のベーシックを録り終えた後で"めざめ~"ができて。その時点ではこれが1曲目だったんですよ、実は笑。

S:あっ、そうだったんですか。

N:最初はそれこそ音楽的な挑戦っていうコンセプトが100%だったので。1番音楽的に挑戦している"めざめ~"で始まって、"おやすみ"で終わる予定だったんですけど。ただ"めざめ~"が割と打ち込みっていうかエレクトロなので。そうするとそのあとの"yakekuso~"がどうしても地味に聴こえてしまって。

S:うんうん。

N:あと歌入れた時に"yakekuso~"の印象がかなり変わったというか。楽器だけのときは、もう少しポップな曲だと思っていたんですけど、声が入ったときに…汗の匂いというか笑、どうしても自分の生活臭が出てしまうんですよね。それでアルバムの初めは悶々としたところから始めないと嘘になると思って。"朝が来る~"を作ったんですけど。

S:うんうん。曲順とかもすごいよかったですね。

N:おっ!嬉しい。

S:"朝が来る"から"yakekuso"の流れとかすごいよくて。つなぎとか。

N:よっしゃー!やった~笑。

S:笑。

N:("朝が来る"には)一応セリフみたいなのも入れたんですけど。

S:聞こえました。

N:"めざめ"の中のナレーションとリンクさせていて。

S:あ、そうだったんだ笑。そこ気づかなかった。

N:"朝が来る"の終わりでは、「午前6時をお知らせします」って言ってて。けど"めざめ"の最初のナレーションでは、少しセリフが変わっていたりとか。

S:そうだったんだ笑。

N:最初はどちらも同じナレーションだったんですけど。変えたほうが想像が膨らむかなと思って。

S:うんうん。

N:あとは後半の"Happy Birthday"あたりから、だんだん参加人数が増えていくような流れになってて。前半は"ホワイトデー"以外の曲は少ないんですけど。

S:ああ、本当だ。

N:さっきの「音楽的な挑戦」って部分で言えば、クレジットには参加してくれた人だけじゃなくて使った楽器も全部書いたので。そんなところも見てもらえればと思うんですけど。

S:("誰かのホワイトデー"のクレジットを見て)
  西松さん(シンガーソングライターの西松亜香音。今回コーラスとして3曲に参加している)とかも入ってますしね。

N:そうですね。サビでコーラスやってくれて。

S:うんうん。

N:それこそ"夢みたいだ"とかはコーラスだけで相当な数の人が参加してくれていて。多分同時に5つくらいコーラスが重なっていたりするんですよね、あの曲って。

S:うんうん。ありますね。

N:とか。そういう楽器とかアレンジ的な部分、どうやって今の完成系になったのかっていうところも、知ってもらいたいですね。
  他にはアルバム全体を聴いてどんな感触を持ちましたか?

S:前から思っていたんですけど、野口さんは日常の風景を切り取って想像させる曲まで持ってくのがすごく上手というか。

N:…嬉しいです。嬉しいですね。

S:どの曲も聴く人それぞれによって、いろんな風景とか場面と結びつけられるっていうか。それこそ"朝が来る"とかは…夜中午前3時とか4時ぐらいの風景で。私が勝手に想像したんですけど笑。

N:いやもう全然。はい。

S:夏8月くらいで、夜が明けるのが早い時間帯で。蒸し暑い感じになってくるけど、まだ完全に夜は明けてない、みたいな風景が想像できて。

N:嬉しいですね。まあアマチュアで(アルバム制作に)これだけ時間かけられるのはこれが最後だろう、みたいな感じもあって。それも含めてコンセプトとかもちゃんとしようと思ったんですけど。

S:はい。

N:ただ自分でもまだちゃんとわからなくて、このアルバムのことが。制作中に聴きすぎちゃったのもありますけど。聴く人の感想が全然読めないですね、正直。

S:うんうん。

N:まあだから人に聞くのが楽しみでもあり、ちょっと怖くもあるっていう。ただいろんな人に聴いてほしいのは確かですね。

S:そうですね。広めていかないとですね。

N:そうですね本当に。

[Art & Design of #2 ]

N:アートワークとかはどうでした?

S:そうですね…これ(紙ジャケットの印刷)って誰かに頼んだんですか?

N:いや、これは全部自分ですね。パッケージも全部自分で作ったので。それこそビックカメラで印刷用の紙を買ってきて。ジャケットの方は厚紙のフォト光沢紙なんですけど、歌詞カードの方は薄紙の半光沢紙になってて。それを印刷屋に持って行って印刷して、そこで裁断作業もして。最後歌詞カードのホッチキス止めるところまで自分でやったんですけど。

S:そう…だったんだ笑。これ完全にプレス業者に頼んだのかと思ってた。

N:なので裁断によってちょっとズレがあったりとか。あと今だから言えるんですけど、(クレジットのページを開く)ここのMusiciansの綴りが間違ってるんですよ…笑。

S:ほんとだ笑。

N:"c"と"i"が抜けてて(Musiansと表記されている。ごめんなさい汗)、ほんとバカだなと思うんですけど笑。

S:笑。(歌詞カードのデザインを見て)これって全部絵…じゃなくて写真?

N:これは写真を加工して作りました。iPhoneのアプリでイラスト風にして。前の"#1"は全体的に圧が強いというか、そういう曲が多かったので。なので今回はできるだけ、聴いたその人のものにしてもらいたくて。作品を。

S:うんうん。

N:その人の人生だったり、気持ちだったりをちゃんと…しまえるというか。曲の中に入れられるものにしたかったので。アートワークもフィクション性が高いものにしようかなと。

S:うん。("夜明け前"の歌詞カードを指して)…これは、オランダ?

N:これはドイツで撮った写真ですね。これとか4年前だもんなぁ。右のページの写真はインドで撮ったものなんですけど。

S:そうかー写真だったんだ。

N:はい。("誰かのホワイトデー"の歌詞カードを指して)これはそのままコンビニで撮って。右側のページの写真とかは家の前のスーパーですもんね笑。雪の日に撮ったんですけど。

S:あーそっか。ほんとだ、雪だ。

N:この1年くらい月刊ノグチ写真館っていうのをTwitterでやってて。それもこういう風に加工してて、今回もその加工の方法を使ってるんですけど。その活動の中で写真はかなり撮りまくっていたので。

S:はい。Twitterで見ました。

N:それが生きたかなっていう。(Happy Birthdayの歌詞カードを指して)これとか本当に誕生日ケーキを撮ってて。個人的にも気に入ってる1枚なんですけど笑。ちょっと怖い感じがいいなぁと思って。

S:うんうん。…いや私本当に手作りで作ったと思わなくて。

N:…やった笑!

S:はははは笑。それと写真かイラストか、どっちかな?って思ったんですけど。写真だったんですね。

N:そうですね。あと今回一応イラストも描いてて笑。ジャケットとか、"おやすみ"の歌詞カードとか。若干恥ずかしくはありますけど笑。

S:PV(クロスフェード)にもあったものですよね、このジャケットのイラスト。
  アートワーク、すごくいいと思います。最初に言っていた、誰の風景にでもフィットする感覚が、これ見るとさらに出てくると思うし。確かに"#1"は完全に野口さんの幼少期っていうか、そこだけをキュッとまとめた世界観でしたけど。

N:そうですねよ。だって"#1"ってジャケットの中に人がいないですもんね。それがこれだけ増えたっていう。その違いみたいな笑。

S:笑。(ジャケットの左側の人物を指して)これは野口くんですよね?

N:そうですね。でその右がしらっちで。その下にいるのが亜香音ちゃん(西松亜香音)で。それで反対側にいるのは俺の姉なんですよ、実は笑。"夢みたいだ"のコーラスに参加していて。

S:へぇー笑。

N:それで、(画面下の真ん中より少し右を差して)これがバンド仲間の尾崎くんですね、アナトオル・フランスの。それでその左が同じバンドのモテギちゃん(モテギスミス)で。あとは…(それぞれの人物を紹介していく)。

S:うんうん。

N:あと写真から切り取った看板だとか。あとこれは"#1"買った人ならわかる人物なんですけど笑。

S:ああ笑。本当だ。

[Subtitle & Theme of #2 〜おとなになること〜]

N:あとアルバム全体で話してないことあったかなぁ?そうだ、サブタイトルのことも話しておきたくて。

S:はい。

N:サブタイトル最初はなかったんですけど。どう思いました?

S:うーん…"#1"の続きっていうイメージでこのタイトルになったのかなと。

N:具体的に言うとどういう感じですか?ちょっとそこ聞きたいです。

S:おもて面のこのジャケットとサブタイトルでしっかり中身を想像させる感じがあるんですけど。

N:おおー!

S:ただ実際曲聴いてみると、あんまりスタルジックな感じは少なくて。

N:じゃあ逆に、ジャケットは結構ノスタルジックなイメージだったんですね。

S:そうでしたね。これだけ見ると。

N:なるほど、なるほど。写真の加工の仕方によってそうなってるのかもしれないです。結構赤みがかっているというか、オレンジっぽいというか。

S:パッとジャケットを見ると、子供時代のこととか大人になるまでの心情風景とかを綴った曲が多いのかなと思ったんですけど。でも実際曲聴いてみると、「昔こうだった」っていうよりは、本当に今のことを歌ってる歌が多いなっていう。…不思議な感じですね。

N:はい。

S:野口さん的には、このサブタイトルはどういう経緯でつけたんですか?

N:そうですね…まあ"朝が来る~"を頭において、"めざめ~"を最後にするって決めたあとにつけたんですけど。
  なんていうか今までの自分の曲が「自分の自意識との闘い」みたいな部分が強くて。自分がこうグーッと自分の自意識に引っ張られがちというか。狭いところしか見えなくなってしまうことが多々あって。その経過が出てくる分、曲もなんか押し込められている感じがするというか。なのでそれとの闘いに決着をつけたかったんですよね。

S:ふーんなるほど。

N:まあ大人にならなくちゃいけないタイミングでもあったし…。レコーディング中に就活もしていたので。もう周りの環境に甘えてられないっていうのもあったし。自意識の問題みたいなのは付いてくるけど、人と人との間で生きていかなければならないし。そういうことを思って、「一度終わらせるんだ」っていう決意も込めて、このタイトルをつけました。
 あと「おとなになること。」っていうサブタイトルをつけた時に、自分の曲のテーマ性を包括できるなとも思ったし。例えば"yakekuso youths"とかはそのものズバリですし、"なぜ"も近いところがありますけど。そういう自分自身の決着ついてない、ゴチャッとしたカオスな部分も含めて、このタイトルがしっくりくるなって思って。

S:うーん。うん。

N:だからこのタイトルには「『大人』ってなんだろう?」みたいなニュアンスもあるんですよね、同時に。「大人」って言われる年になって、今さっき言ったような状況にいるけど、全然大人になれてないし笑。

S:ふふふ笑。

N:結局大人ってなんなんだろうね?っていうのも含めて、聴き手に問いを渡したいというか。それもあってこういうタイトルにしました。

S:うんうん。だからかもしれないですけど、内より外に向けて作ってる気がして。聴き手がいて作ったものだなって印象は受けたかな。

N:そうですね。それは大きかったかもしれないです。なんか…この作品に関しては自分で責任取ろうと思ったので。"#1"の時は、ミックスとかアレンジとか、正直自分の満足いく形では100%できなかったんですよね。もちろんそのとき作品を手がけてくれたエンジニアの方には今でも感謝しているし、リアルタイムの報告として、"#1"って作品にはちゃんと意味があると思うんですけど。でも(この作品は)メンバーが抜けたっていうのもあるし、自分で責任取らないとっていう気持ちがありました。「もう逃げられない」っていうか笑。

S:ふふふふふふ笑。

N:だからこういう作品になったんだと思いますね。でも伝わって良かったです。外に向けて作っているっていうのが。

S:私も今の説明を聞いて「なるほどな」って思いました。

N:よかったです。ありがとうございます。

(全曲解説・前編に続く)

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