#2を語る。with モナレコーズ佐々木さん part.3 〜全曲解説・後編〜
ここからいよいよ全曲解説も後半です。アルバムの流れの中でも、重要な意味を持つパートについて話をさせてもらいました。このあたりから徐々にアルバムの核心部分に迫っていきます。
それではどうぞ!**
6. なぜ
(曲を聴き始める)
S:(Aメロを聴きながら)すごいこう…謎がたくさん残りますけど笑。
N:笑。今聴いても恥ずかしいですね、やっぱ。「あっちゃー」って感じが笑。
S:そうなんだ笑。
N:ただ「あっちゃー」って部分を入れないと駄目かなと思ったので。アルバムの中に。
(曲を聴き終えて)
N:これが起承転結の「転」っていうか。テンション的にも一番ダークだし。どうでした?最初聴いたとき。
S:すごいこの歌詞が笑。
N:まあまあ恥ずかしさ全開のバカ野郎ですけど笑!
S:こういうときがあったんだなぁっていう笑。
N:あったんですね~残念ながら笑。この曲も最初は入ってなかったんですけど。最初録った6曲だけだと、前回作った"#1"と繋がらないなって気がしたのもあって。いきなり違うところに行き過ぎるんじゃないかと思って、これを入れたんですけど。サブタイトル関連の話でいうと、一番自意識の強い部分ですよね、この曲が。
S:これは熱量的には一番高い感じがしたかな。聴いてて。
N:激情感が。
S:そうですね。"yakekuso~"よりも強い感じがしました。
N:そうですね。まあだから、最後の「君のことは~」から始まる部分が一番恐くなるようにっていうか笑。不吉な感じになるよう(なアレンジ)にしたので。ピアノとかも含めて。
S:でも歌詞が結構ストレートなんだけど、鍵盤の音がそれと相反するようにメロディアスで。
N:流麗な感じが。
S:そうそう。
N:この曲、ピアノアレンジがすごい時間かかったんですよね。
S:この曲のピアノは野口さんが全部自分で?
N:そうですね。アレンジして弾いたんですけど。この曲がアレンジって意味では一番大変だったかもしれないですね。ドラムとバッキングギターはもともと録ってあって、それにベースを重ねたあとピアノアレンジをしたんですけど。…すごいのたうち回った気がしますね。この曲自体に込められてる"念"みたいなものがすごい強いじゃないですか。
S:ははは笑。
N:自分でもそれが重たくて。でも、それをなんとか昇華というか、成仏させるためには向き合わないといけないと思って。それをやり続けるのがしんどかったですね。それでそのあとにさらにリードギターを重ね出したら、そこでパンク寸前までいっちゃって笑。大変でしたね。ただアルバムを聴いたときに、ここで1番しんどくしないと、そのあとの説得力がなくなってしまうと思ったので。あまりにも入り込んでやっていたので、聴いた人がどう言うかはちょっとわからないですけど。
S:うんうん。アルバムの最初の"朝が来る"は俯瞰というかフォーカスが遠めで、その次の"yakekuso~"でグッと近くなって。見るポジションが曲によって、例えば遠めで全体の風景を見ていたりだとか、グーッと内面によったり部屋の中だったり。奥行きが曲によってしっかりあって。
N:あーそうかもしれないですね。それこそ"夜明け前~"とかは遠めですもんね、カメラの位置が。
S:そうですね。
N:この曲("なぜ")とかはほんと内々に寄った感じですけど。
S:うんうん。そこはすごくいいと思いますね。
N:ありがとうございます。あっ、だから曲順もそこを無意識に意識していたのかもしれないですね。歌詞がまだない曲もあったので、曲調の流れで決めていたのかなと思っていたんですけど。
S:これはもう完全深いところにドーンと。
N:一気にこう、インに。
S:グッとね笑。
N:自分でも1番狂気を感じるっていうか。
S:ははははは笑!
N:「ちょっとこいつやべえな、大丈夫か?真面目か?」みたいな笑。
S:いいと思います笑。
N:ほんとに最後のアウトロのピアノのタイミングまで気をつけて。最後まで緊張感を持続させないと、その次("Happy Birthday")の意味がないと思ったので。まあ1番自意識過剰な曲なんですけど。それがないとアルバムのテーマにも説得力が欠けるし。逆にこの曲があるから、そのあとの展開も生きると思ったんですけど。
S:うんうん。
N:そのための曲ですね。
7. Happy Birthday
N:さっきの話でいうと、ここで一気に俯瞰になるっていう。
S:そうですね。
(曲を聴き始める)
N:ここ会話シーンで始まるんですけど、スタジオの。あとこのハーモニカは俺が吹いてます。
S:あぁそうなんだ。(1番のサビを聴きながら)ここコーラス結構いっぱい入ってるよね。
N:そうですね。でもクレジットに表記されている全員が出てくるのは、最後の方なので。ここの高い部分のハモりを結城綾香がやってくれてて。(しばらく経ち、最後の合唱パートを聴きながら)ここですね。ここでみんながメロディーをユニゾンで歌ってくれていて。
S:うん。
(曲を聴き終える)
N:(歌詞カードを指さしながら)まあ英語が出てくるとしたら、この部分だけですね笑。
S:ははは笑。「Happy Birthday」。
N:まあ使うにしてもわかる英語しか使ってないのでたぶん笑。
S:ここで本当に「ブワァ~!」っと昇華されていく感じがします。音数的にも、アルバムの中でここが一番厚い感じがしたんですけど。
N:あーそうですね。これも結構ギター重ねたりしましたし。ハーモニカが入っているのもありますけど。実はそのハーモニカも2つ重ねたんですよね。
S:あ、そうなんだ。
N:音に厚みが欲しくて。サックス…とは違うんですけど吹奏楽的な音にしたかったんですけど。でもこれもリフは17歳くらいの時からあって。曲自体も18歳くらいからあったんですよ。今の完成形で。
S:あぁそうなんだ。
N:実は"なぜ"よりも前にあった曲なんです。だからようやくお披露目できるなっていう感慨もありますね。
S:6曲までの流れの中で、ここで本当に転換するっていうか。ここから、きっと終わりの方に向かっていくのかなっていう予感をさせるような曲ですね。
N:そうですね。それまで内に内にフォーカスが絞られていったのが、一気にパンって視界が開けて。まあ古い曲がこういう風にハマったのが面白いですけど。
S:歌詞は…個人的なことでもないし。なんだろ、普遍的なことを描いているというか。
N:ありがとうございます。なんだろ、生き死にのことなんですかね。"生き続ける"のときの歌詞も同じくらいの時に書いているんですけど。"生き続ける"と言ってることは、実はそんなに変わらないのかなって気もするし。
S:うん。
N:これも高校生の時とかに書いた曲ではあるんですけど。結局、どんなに落ち込んでも誰かに生かされているっていう諦観が、その時自分の中にあって。「結局そうなんだな」っていう情けなさ含めてなんですけど笑。それでこういう歌詞になったんですかね。
S:高校生で「誰かに生かされてる」っていう、その境地までなかなか行けないと思うんですけど笑。すごいですね。
N:いやーなんだろうな…若年寄りだったのかもしれないですね笑。
S:はははは笑!ふーん。
N:自分の中でどんなに「うわ~っ!」ってなっていても、周りにはそんなに見えてないし、別に関係ないじゃないですか。見えたところで他の人にとっては迷惑っていうか笑。自分の中でどんなに混乱していても、それは自分の中の話でしかないんですよね。そういうのに気づいて…絶望じゃないですけど、軽い諦めみたいなのもあって。それでこういう風に書いたのかなぁ。
S:でもなんか…そうですね。自分だけ「うわ~!」ってなってると思うけど、でも周りの普通に過ごしてる人たちも、それぞれに同じくらいの葛藤というか混乱を抱えながら生きてて。でも何かに生かされているというか。
N:そうですね…。だからそれもわかった上で、とりあえずどっか行こうぜ、みたいな笑。座ってないで、ちょっとどっか行こうよって曲でもあると思うし。今だったら言葉にできますけど、「死ぬまでは負けじゃないよ」みたいなことなのかもしれないですね。「生まれただけで儲けものだろ」って言ってますけど、ここで。
S:(サビの歌詞を指差しながら)…ほんとね、この辺とかすごく良いなと思うんですよね。「何もなくても ここにいられるよ」っていう、こう肯定されてる感じというか。
N:嬉しい笑。嬉しいです。まあどんだけつまんなかったんだろうって気がしますけど笑、これ書いたとき。
S:はははは笑。高校生ですもんね。
N:「青春とか全然ねーよ」って感じですもんね。
S:でもこうやって今歌になって、歌詞になって。
N:だからそれこそ儲けもんだぜって感じですかね笑。
S:ね笑!何も無駄なことはないよっていう。
N:「無駄なことないぜ!」っていう笑。だからちょっとテーマ的には"yakekuso~"と近いかもしれないですね。
S:そうですね。音的なアプローチの仕方は違うけど、言ってることは確かに。
N:"yakekuso~"の方が若干怒りが強いっていうか。こっちは諦めが強いみたいな笑。
S:そっか。
N:そんなこともありましたっていう感じですかね。(歌詞カードを指差しながら)ちなみにこれはオーストリアのザルツブルグで撮った写真で。
S:へぇ!
N:この猫はたまたまここにいたんですよ!
S:すごい!!
N:「ラッキ~!」みたいな笑。それをパシャッと撮って。
S:これ完全にこういう絵でもいけますよね?へぇー!
N:これは本当にラッキーっていう1枚だったんですけど。写真的には1番お気に入りですね。
S:これは夕方とかだったんですか?
N:一応朝に撮ったんですけど。ただ加工の仕方でそうなってるんだと思います。
S:そっかそっか。
N:まあ夕焼けでも別にいいんですけど笑。ただ猫が街を見つめている感じが、いいなと思って。
S:ねぇ?これはすごい、奇跡の1枚ですね。
N:ありがとうございます笑。それこそ…("なぜ"の歌詞カードのページを開いて)ここの猫ともつながりますしね。
S:うんうん。この"なぜ"の方の猫は…?
N:これはそれこそ、その子(歌詞に出てくる女の子)の自宅で撮ったので笑。
S:あっ!そうなんですね笑。そうかそうか笑。
N:だからこっちの歌詞が印刷されている方の写真とかは、わからないようにしてるんですけど、その子の…(ごにょごにょごにょ…)
S:ああ!へぇぇえ!
N:みたいな。だからこれとかほんと、もしその子が気づいたら本当に「ごめんなさい!」ですよね笑。「失礼しました…」みたいな。感じですけど笑!
S:はははは笑!すごいなぁ笑。バックグラウンドがわかるとすごく…グッときますね。
N:ありがとうございます笑。で、ここで「夢みたいだ」に続くっていう感じですかね。
8. 夢みたいだ
N:(曲を聴き終わり)これがタイトルチューンじゃないですけど、1番重要な曲ではありますね。アルバムのクライマックスにこの曲を持ってきたのも、だからですし。
S:そうですね。ここで1番の盛り上がりというか。ここで物語が完結してもいいかなくらいの曲ですよね。コーラスの入れ方とかもすごくいいなと思って。
N:おおー嬉しいですよね。
S:あと鍵盤は違う人が弾いているんですよね。
N:はい。これはthe phenomenonsってバンドの太田くんが弾いてくれてるんですけど。彼の鍵盤が入って曲が完成した感じがしますね。
S:そうかそうか。これはバックグラウンド的にはどんな感じなんですか?
N:うーん…これが一番無意識でできた曲かもしれないです。俺が大学2年生くらいの時からサビだけは…いや最後のサビ前のBメロまではありましたね。歌詞は若干違ったり欠けていたりしましたけど。それで最後のサビで転調するっていうアイデアを思いついたのが、一昨年か去年で。それで完成したんですよね。ちょっと言語化しづらいっていうか…。自分にとっても重要な曲だし、大好きな曲なんですけど。なんですかね…ラブソングではあるんですよ。けど最後のサビとかは子供時代の自分に語りかけているようなところもあって。「夢見ていた 確かなものを」って部分とか。…自分でも感動する曲ですね、なんか。
S:昔と今を行ったり来たりというか。すごくクロスオーバーしている感じがするんですけど。
N:そうですね。表向きには明るい、負の曲ではないと思うんですけど。ただその裏にはちゃんと影があるっていうのを感じさせる曲かなとは思っていて。それがいいところかなと思ってるんですけど。…「赦し」の曲かもしれないですね。
S:サブタイトルの「おとなになること」に結びついてる感じがするというか。腹が据わった感じがして。ここで覚悟みたいなものが…無理やりするんじゃなくて自然消化的に、それを腹に据えて生きていこうみたいな感じがしますね。
N:そうですね。言葉にするとすごいクサいんですけど、「信じる覚悟」を決めたのかもしれないですね。"なぜ"とかは自分の気持ちに対してすごく混乱しているけど、この曲はそうじゃないから。いろいろあった上で、かつて見ていた夢も全部引き連れて行きますよっていう。
S:そうですね。
N:同じラブソングでも、"なぜ"とかはすごいわめいている曲ですけど。これはちゃんと聴き手に対して歌っているかなっていう。だからライブでやったあと、この曲を結構好きって言ってくれる人が多くて。
S:ああ、でしょうね。
N:嬉しいですね、それは。
S:そういう感じがするもん。これも、私は好きですね。
N:ありがとうございます…。他に何かありました?聴いたときの印象とか。
S:「夢みたいだ」って歌詞が結構出てくるじゃないですか。だけど…全然音楽的なことじゃなくて、感覚的な話なんですけど。夢うつつじゃないっていうか。ホワンとしたものじゃなくて、しっかり地に足がついてる感じが、歌詞が伝わってきたので。
N:ありがとうございます…そうですね。恋して浮かれてる曲ではないですね笑。
S:ではないですね笑。
N:そういう曲も書いてみたいけどなぁ笑。
S:はははは笑!
N:「経験ないしな~そんな」っていう笑。まあでも自分でも不思議な曲ですね。あんまり書けないだろうなって気もするし。自分で言うのもあれですけど、スケールが結構大きい感じがしますもんね。3分しかないのに。これでPVとか作ってみたいんですけどね。
S:ああ~。
N:アニメーションとかで。作ってみたいんですけど。
S:アニメーション良さそうですね。
N:あのー、特にアマチュアバンドのPVとかで、バンドマンが演奏しているだけのやつが全然好きじゃなくて笑。あれ誰得なんだろうって毎回思うんですよね。
S:はははは笑。確かに笑。
N:写ってる本人も恥ずかしいし。見ている人も「じゃあライブ映像見ればいいじゃん」ってなるし。曲の世界観伝えるのに邪魔しているんじゃないかって毎回思っちゃうんですよ。あと単純に恥ずかしいっていうか。その…若い男4人が一生懸命演奏しているのに対して笑。
S:笑。
N:で、それにまた綺麗な女優さんとかが出たりして笑。
S:はははは笑!
N:「いらなくね!?」みたいな笑。別にその女優さんが悪いわけじゃなくて!「そのとってつけたようなシーンの入れ方どうにかしろ!」みたいな。まあ、ただの戯言ですけど笑。
S:でも、私も思います笑。
N:ほんとですか笑?
あとちょっと補足なんですけど。これ(歌詞カードの右ページを指して)が一応自分の眼で。それで、これ(歌詞カードの左ページ)が自分じゃない眼なんですよ。ちまあ眼だけ見るとわからないんですけど、これは実は俺の姉の眼で。ちょっと協力してもらったんですけど。
S:へぇー。
N:だからこう…他者の中に自分の存在を預けられるっていう、そういう…成長の仕方?みたいな笑。そういう曲ですね。
9. おやすみ
N:最初はこれでアルバムが終わる予定だったんですけど。(曲を聴き始める)この曲のピアノも太田くんがやってくれてて。(間奏を聴きながら)ここのピアノとかすごくいいんですよね。
S:うんうん。
(曲を聴き終えて)
N:これはまあ最後の曲っぽいっていうか。俺カトリックの幼稚園に行っていたんですよ、実は。
S:へぇ~!
N:そこでお昼寝の時間に「きよしこの夜」とか流れていて、それを聴いていたので。その影響かもしれないです、この曲は。
S:これはほんとにシメの曲というか。
N:そうですね、シメの一品みたいな笑。
S:シメの一品笑。
N:なんか違うか笑。まあでもシメ曲ですね。
S:でもシメの曲でも、"#1"の時では作れなかったのかなっていう。わからないですけど。
N:いや、間違いなくそうだと思いますね。この曲自体も古くて、"夢みたいだ"と同じくらいにできているんですけど。ほんとに疲れた時に出てきた曲ですね笑。
S:笑。
N:しんどくて夜眠れねーみたいな時に書いたんですけど。だからこういう内容になったのかもしれないですね。本当に疲れたときに暗い曲はできないっていうか笑。
S:ははは笑。そっかそっか。
最初聴いたときは、前にも言った"#1"とか今までのアンコールズとのガラッとした違いを感じて。"誰かのホワイトデー"と"見上げれば星はいつもそこに"、それとこの"おやすみ"の3曲が特に感じたんですけど。
N:ちょっと今までのアンコールズ像を壊しにきているかもしれないですね。
S:そうですね。新しいことにトライしたかったのかなって。
N:そうですね。映画の最後ってクレジットが流れるじゃないですか。この曲はああいうイメージで。エンドロール的な。
S:まさにそうですよね。
N:はい。それとこの曲は元々ピアノを入れる予定じゃなくて。最初のアレンジはドラムとアコギとベース、それと自分で入れたビブラフォンとストリングスだけだったんですけど。そこに太田くんがピアノともう一つビブラフォンを重ねてくれて。"夢みたいだ"のピアノの録音が早く終わったので、その場で急遽入れてもらったんですけど。だからよく聴くとわかるんですけど、ビブラフォンも左右で音色が違って。左側で鳴ってるのが俺が元々作っていたやつで、右側で鳴っているのが太田くんが弾いたやつなんです。
S:そうなんだ笑。
N:あとちょっと映画音楽っぽいですよね。久石譲とかも好きなので。
S:それこそ、状況的には疲れた時に作った言ってたけど。曲の中でもある意味絶望的な中にいる気がして…"夢みたいだ"もそうですけど。けど全部受け入れている気がしたので。ここまで来て、いいことも悪いこともしっかり抱えて、でも希望は失わずにっていう感じがすごい出てる気がします。
N:そうですね。例えばこの「悪いとこに長くいすぎただけ」ってフレーズは、"SHAME"って映画(セックス依存症の男とその妹を描いた映画)の予告編で出てきた言葉なんですけど。その中で「私たちは悪いひとたちじゃない、ただ悪いところにいすぎただけなんだ」っていうセリフがあって。
S:うんうん。
N:この曲も子どもに歌っているイメージなんですけど。…環境って自分で選べないじゃないですか、ある年までは。それを過ぎたら自分で選ばないといけないと思うんですけど。けどその選べなかった時期に対して、「君のせいじゃないよ」ってちゃんと言ってあげたかったんですよね。
S:ああ、なるほど。
N:だから…明日いいことが起こる保証なんて、本当はどこにもないじゃないですか?でもそう言ってあげたいっていうか。
S:そうか。
N:あとは、俺よしもとばななさんの小説が大好きなんですけど。その人の本の中で、「一回も親に裏切られたことのない子どもはいない」って書いてあって。それを読んですごい安心したんですよね。そういうのもあるかな。影響は。
S:なるほどね…。なんか諦めともちょっと違うけど。確かに環境とか状況とか、自分ではどうにもできないことって絶対あって。多分子どもでもそうだし、大人でもそれはあって。それを受け入れて前に進むか、受け入れられなくって逃げたりそこをあんまり見ないようにして行くかで、だいぶ違う気がして。
N:そうですよね。それでも前向きに生きていく人はいるわけだし。
S:だからほんとに覚悟っていうかね。"Happy Birthday"から"夢みたいだ"にかけて歌われてる覚悟の部分がここで終わって。そこから覚悟を持った野口さんが。
N:笑。はい笑。
S:笑。子どもだったりね、他の誰かに語りかけてくっていうのが、いいなと。
N:まあそのー…割と自分が親戚の子どもとかに懐かれたりするので笑。岩手にボランティア行ったことがあるんですけど。
S:あっ、私岩手出身です。
N:そうなんですか!あらなんとまあ笑。
S:ははは笑。
N:それで仮設住宅に行ったときも、他に参加している方はみんなお年寄りの相手をしていたんですけど。俺だけ子ども引っ張られて笑。
S:はははは笑!子どもに好かれそうですもんね笑。
N:それはたぶん抜けてるからですよ…笑。間抜けだからです、きっと。
10. めざめ(CurtainCall)
N:(曲を聴き終わって)そしてそれぞれの日常に帰っていくみたいな、イメージですかね。
S:うんうん。これは誰が…
N:これはたぶんほとんど自分じゃないかな。キックはしらっちがやってますけど、"誰かのホワイトデー"のコピペなので。それ以外のリズムとか打ち込みは全部自分でやって。コーラスだけアナトオル・フランスっていうバンドのドラマーのモテギちゃんが参加してくれて。
S:なんか意外っていうか。こういう曲も作れるんだっていうのが。
N:いやーそうなんですよ~!
S:ははははは笑!
N:まあこういうのも入れたかったんですよ。だから最初はアルバムの頭だったんですけど。あとライブのSEっぽい感じにしたいなっていうのもあって。
S:そうかそうか。
N:インストなんですけど。アルバム全体を締めるセリフを入れたりとか。聴いてくれた人を送り出す感じですね。
S:まさにそうですね。
N:部屋の外に出ようぜっていうか。
S:なるほど。
音楽的には、ちょっとドリームポップっていうか、そういうテイストも少し感じたんですけど。
N:ああ~!それでそういう風に書いてくれたんですね!(モナレコーズのオンラインショップのページで佐々木さんが書いてくれたアルバムのレビューのこと)。まあドリームポップかわからないですけど、Beach Houseとかすごい好きで。
S:うんうんうん。
N:"Teen Dream"ってアルバムをよく聴いていたんですけど。そういうのはあるのかな。それでこう、段々目が覚めてくる感じですね。
S:ドリームポップまでね、浮遊感というか歪み感はないですけど。
でもほんと"おやすみ"で終わりじゃなくて、この次があることでまたアルバムの最初に戻っていく感じがあったりして。
N:そうですね。最後のピアノも急遽入れたんですけど。あれでちょっと大円団な感じにしたかっていうか。それでほんとに終わり!って感じですね。
改めてアルバムの総括。そしてこれからについて…
S:そうかー…。なんかすごいな。バックグラウンドを聞くと…もう1回改めて聴いてみたくなりますね!
N:おお~!嬉しい!
でもまあ完成させるまで結構時間かかったので。今日話して改めて結構アルバム的なつくりになっているなぁと。曲の流れ的にも。あとサブタイトルも間違いじゃなかったっていうか。そんな気がしますね。
S:ね?これからっていうか、活動はどんな感じになるんですか?
N:これからは…これのレコ発をできればやりたいんですよ。それでメンバー探してる感じですね。
S:うんうん。
N:でもこれを作り終えて、バンドやるのしても自分がちゃんとビジョンをメンバーに示さないとっていうのを思いましたね。今まで曖昧にやっていたのもあるし。だからわからないですけど、ちょっとソロバンドっぽくなるのかもしれないですね。結構…バンドを組むときにメンバーに乗っかってしまうというか。そういうところがあったのも事実なので。そこに対してちゃんとしないとというか。
S:でもこれだけちゃんと1曲1曲コンセプトがあるなら、それをちゃんとメンバー同士で共有して音にしていった方が絶対いいと思います。野口さんのワンマンバンドっていうよりは、同じくらいの熱量を持った仲間同士で…ねぇ?
N:そうですね、それが難しいんですよね~笑。
S:笑。理想なんですけどね。
N:でも、ちょっとビックマウスになっちゃうんですけど。アマチュアで、これだけしっかり「アルバム」を作ったバンドはいないんじゃないかと思います。ちゃんとレコード会社にお金を出してもらってて作っている人たちならいると思うんですけど、素晴らしい方々が。今って新人バンドのアルバムでも6曲入り2000円とかが多いじゃないですか?ミニアルバムとか。ここまで作品としてきちんと作ったのは、今のアマチュアではあんまりいないと思うので。…ほんとに聴いてほしいですね。聴けばわかると思うので。
S:もしライブ一人でも動けるのであれば、動いた方がいい気がするな。やっぱりライブだと思いますしね。
N:これをそのまま舞台みたいにしたライブやってみたいんですよね。
S:面白そう、それは。
N:最初("朝が来る(Opening)")で自分ひとりだけステージに入って歌い始めて。曲の途中からベースとドラムが入ってくるみたいな。やってみたいですけどね。
(終)
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