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【けつえき #6】脳卒中になって見えてくる起業のヒント


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馬場 雄二さん


 馬場さんは現在、行政の立場から起業を支援する仕事をしているが、かつては、民放のアナウンサー、通販大手ジャパネットたかたのテレビ・ラジオショッピングMCとして活躍していた。いわば、「言葉で伝えること」を生業にしてきた。


 「脳卒中の家系であることはわかっていましたが、母親と同じ病気になったことはショックでした」
 馬場さんのお母様は、脳卒中で「左脳」から出血。利き腕のある右半身が麻痺し、「言いたい言葉がうまく出てこない」状態になり、30年近くも車椅子生活を送った。
 脳卒中には多様な後遺症があり、脳損傷の程度が同じでも、その場所が左脳か右脳かで違った症状が出ることが知られている。例えば、言語能力の低下が認められるのは、左脳を損傷したケースだ。


 2024年8月8日。馬場さんが職場でお昼のお弁当を食べ終わって午後の仕事にとりかかろうとしたとき、「左手がいきなりしびれ始めた」。そのしびれは、指先から左手へ、そして左半身全体へと、「ガーンとではなく、30分ぐらいかけて徐々に広がっていった」
 次は、突然の吐き気。職場のトイレに駆け込もうとするが、足も動かない。立つこともままらない馬場さんに、同僚が気付く。馬場さんは、脳卒中の家系を思い出し、冷静に「ここら辺に脳神経外科ってありましたっけ?」と聞くも、同僚にわかるわけもない。救急車を呼んでもらい、脳卒中専門病棟がある病院に搬送された。


 「不幸中の幸いでした」と振り返る馬場さんは、お母様と同じ脳卒中ではあったものの、出血したのはお母様とは違う「右脳」だった。そのため、言葉にはそれほど影響がなかった。病気自体はショックだったが、「自分はまだ大丈夫な方だと自分に言い聞かせた」
 出血したのは、右脳の「視床」部分。外科的手術が難しく、薬剤による血圧コントロールを施して、入院生活へ。「前の日まで犬の散歩とかをしていたのに、ある日ある時、突然入院し、車いす生活が始まった」



 血圧は下がっても、麻痺をどうリカバリーするかは、リハビリテーション次第。1日3時間かけて、作業療法で手を、理学療法で足を、言語や嚥下も含めて、代わる代わる各専門職からサポートを受けた。
 その結果、馬場さんの回復スピードは速く、1か月半で車いすから立ち上がり、2か月半で杖を使わず「フリーハンドで歩けるようになった」



 ただ、脳卒中の後遺障害は、「発症から半年以内が一番回復する期間であり、集中してリハビリに取り組んだ方がいい」とされる。
 馬場さんの場合、加入していた生命保険に入院保障があったものの、「リハビリの時間を多く取るほど入院費用がかさみ、それだけではまかないきれず、家族には負担をかけた」と振り返る。自分に限らず、働き盛りにとって「想定外の病気になったときに仕事復帰までバックアップしてくれる保障制度があれば」と感じた。
 また、馬場さんの職場には「傷病休暇」が整備されていた。「ゆっくり時間を取ってリハビリに専念しようと心の余裕が持てた」と感謝する一方で、そういった整備がなければ「リハビリに焦っちゃう部分もあるのではないか」と自分以外にも想像をはせた。



 馬場さんは現在、無事退院して職場に復帰している。
 しかし、未だに不安が残るのが「手」だ。体の他の部分に比べて回復が遅く、例えば「目をつぶって自分の鼻を触ろうとしても、すぐには触れない」。パソコンのキー操作もブラインドタッチが難しくなり、打ち直しに時間がかかる。車の運転もできなくなった。「できないことがまだまだあり、将来への不安は消えない」
 引き続き週2回の病院へのリハビリ通いを続けながら、自宅でも毎日朝夕と自主トレをこなしているところだ。


 馬場さんのような脳卒中の後遺障害のある方にとって、病院の外でも効果的なリハビリに取り組める環境が重要になる。
 しかし、退院時にソーシャルワーカーさんから紹介されたリハビリ機器は、個人で使うには「大掛かり過ぎて、値段的にも一般の人では手が出ない」ものだった。
 例えば、麻痺を回復させるための振動マシーン。リハビリには有効でも、「図体が大きすぎて、狭い日本家屋のどこに置くのか」と思わされた。一方で、「折り畳みできたりキャスターがついているとか、あとは同じ機能をエクササイズにも使えるとかあれば、買ってみようかなと考えたかもしれない」とも感じた。


 「リハビリとか介護とか、機能が専門的過ぎる商品は売りづらい、売れないと思う」
 通販大手のテレビ・ラジオショッピングでお客さんに商品を売り込んできた馬場さんの言葉には、説得力がある。
 わかりやすい例を教えてもらった。最近人気の介護用ベッド。リクライニングの機能があって、膝も持ち上がり、ずり落ちないようにもなっている。「介護でも使えるけれど、その上で生活すること自体が快適になる。ベッドは介護だけじゃなく、みんなも使うもの」と、馬場さんは言い換えた。そうなると、「ある程度高価でも、親のために買ってあげようとなる。そして、親のためではなく、家庭に届いたときに家族みんながハッピーになる世界が描ける」


 馬場さんから、さらにヒントももらった。
 リハビリのための医療機器は、フィットネス機器と近い。それらを「切り分けるのではなく、境を考えてみる」。例えば、「街に広がるコンビニフィットネスにも入るようなもの」をイメージしてはどうか。健康器具のイメージで高齢者のグループホームへの展開を想像してもいい。機能を簡略化すれば、一般家庭への普及も見えてくるかもしれない。
 まず、「そういった発想がないと、市場は広がらない」


 脳卒中の患者として病院の中から医療を見た馬場さんには、「”○○師や○○療法士はここまでしかできない”という、医療の中にある線引き」も見えた。そして、医療の線を超えて外に出れば、手軽に利用できる機器やサービスが十分にあるとは言えない。
 でも、「人間の機能に線引きはない」。トータルで整って人間ができているのに、医療の内外で線引きされ、患者にとって「トータルの支援になっていかない」。


 冒頭でご紹介した通り、馬場さんは現在、行政の立場から起業を支援する仕事をしている。「やりたいことがあれば、会社を作らないか」と呼びかけている。
 馬場さんが身をもって感じた課題を解決しようと思い立つ起業家がいれば、身をもって支援してくれるはずだ。





ここまで読んでくださった皆さまに‥


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