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【こころ #91】氷河期を経たミドル世代の発達障害当事者会


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山瀬健治さん


 山瀬さんは、40〜50代の発達障害当事者が集まる『みどる中高年発達障害当事者会』を2015年から主催・運営している。



 山瀬さん自身は、小さい頃から忘れ物が多かったり、学校の机の中には何でも詰め込んでしまい、夏休みが終わると腐ったミカンが出てくるようなこともある少年だった。
 社会に出ると、物事を計画通りに実行することが苦手だったり、他のタスクに割り込まれると関心が移ってしまったりする(一般的に『実行機能障害』と呼ばれる)。「仕事がオーバーフローしてしまい、しんどくなって、適応障害になって、退職する。そんな繰り返し」だった。


 「中高年のひきこもりって、不登校からずーっとみたいなイメージがあるかもしれないけれど、自分の場合は2~3年働いてはひきこもることの繰り返し。そういった方は他にも多いですよ」


 山瀬さんや当事者会に集まる方々は主に、『就職氷河期世代』や『ロストジェネレーション世代』と呼ばれ、バブル崩壊後の特に雇用状況のひどい時期に就職活動をした年齢にあたる(2024年現在で40~54歳程度)。
 それまでの高度成長期は、会社も「いわゆる”日本の働き方に合わせられない社内ニート”でも抱えることができていた」。しかし、景気が悪化するとそんな余裕はなくなった。
 就職することが厳しいだけではなく、キャリアの途中でドロップアウトせざるを得ないケースも増えた。見方を変えれば、大人の発達障害が会社からはじかれることで、「氷河期で(社会から)隠されちゃった」とも言えるかもしれない。


 実は、山瀬さんが発達障害の診断を受けたのも、40歳を過ぎてから。『みどる中高年発達障害当事者会』には、他にも「40歳を過ぎていきなり診断されても、これからどうしていいか」と訪ねてくる人も多い。
 近年、「大人の発達障害」という言葉が聞かれるようになってきたが、こうした当事者は第一に、小さい頃に診断されて療育を受けて社会に出てから行き場を失ったケースとは違って、大人になってから診断を受けた「成人期診断者」である。
 さらに、そんな「成人期診断者」が集まる当事者会も増えてきた一方で、20〜30代が中心の会も多い。当事者会は本来、同じような特性や共通項をもつ人同士が支え合う「ピアサポート」のためにあるが、例え診断名が同じでも、世代の差は大きい。


 「40~50代が入ると、聞き役になって自分のことを話せずに逆に孤独感を感じたり、親の介護の話をしても相手がピンとこないなど、ピア性が成り立たない」
 山瀬さんは、既存の当事者会ではしばしばピア性が成り立たない中高年のために、『みどる中高年発達障害当事者会』を運営し続けている。


 こうした当事者会の意味合いは大きい。
 山瀬さんは、「せっかく就労できても、また体調を崩して退職してしまうケース」を「補助輪があって自転車をこげる人に補助輪が外れてしまった状態」と表現した。現状の福祉政策はどうしても、こげるようになったら補助輪を外してしまい、転びそうになっても転ぶまで補助輪を差し出さない形になってしまう。
 そんな伴走や予防の側面まで担う当事者会やセルフヘルプグループについて、「子ども食堂への行政支援のように、一般の当事者がちょっと集まる際に場を用意するような行政支援があってもいい」と山瀬さんは話す。


 もちろん、当事者会にも課題はある。例えば、主催者と参加者のミスマッチ。「居場所や仲間や話せる場が欲しい人と、情報や制度の知識が欲しい人の2種類がいる」。例えば、地域格差。「関西圏はものすごく多くて、首都圏もそれなりにあるけれど、地方に行くと存在しない」
 同じ診断でも世代の差は大きいと前述した一方で、「ピア性を重視して、セグメントを切り過ぎれば、人も集まらない」というジレンマもある。


 一方で、多様な当事者会ごとの独自活動を前提としつつも、「権利擁護といった大きな目標に向かっては、意見を集約する必要もある」と山瀬さんは考え、全国を連絡する活動にも積極的に時間を割いているところだ。


 同じ障害でも、その人が置かれた時代や環境によって本人が受ける影響は大きく異なる。だからこそ、網の目を細かく拾う当事者会という小さいセーフティーネットが重要だ。それと同時に、網同士がつながって大きいインフラを訴えていくことも欠かせない。
 これは、発達障害に限った話ではないだろう。だからこそ、山瀬さんの経験に学び、取り組みを応援したい。




ここまで読んでくださった皆さまに‥


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