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【みみ #11】ベンチャー企業で活躍する言語聴覚士

川田 夏希さん


 川田さんは、お母さんが特別支援学級の先生で、障害に触れ合うことが多かったこともあり、「学校の先生になろう」と思っていた。教員免許と併せて国家資格も取得できる大学があると知り、教育学部の特別支援教育の教員養成課程に進学する。もともとコミュニケーションに関心があったため聴覚障害・言語障害系のコースを選択し、言語聴覚士の資格を取得した。


 そのまま教育現場に入ることも考えたが、「もともと好奇心が強く、外の世界も見てみたくて」外資系の補聴器メーカーに就職。実は、日本の補聴器利用者は、自身の耳が遠くなったことに気付いても、補聴器の印象故か実際に身につけるまで7年ほどかかることもあるとも言われている。外資故に製品や品質面から日本側でできることは少ないが、「どうエンドユーザーに製品の良さをダイレクトに届けるか、どう製品を利用する行動を起こしてもらうか」、日々のコミュニケーションの不便さはもちろん将来の認知症のひとつの要因にもなり得ることを、絵や写真で視覚化して伝えたり、難聴体験ができるVRなども活用して「聞こえづらさとその影響をわかりやすく伝える」マーケティングに腐心した。


 その延長で出会ったのが、現在勤めておられる『ピクシーダストテクノロジーズ』であり、同社の製品である『VUEVO(ビューボ)』だった。言い換えれば、最先端のテクノロジーを扱う会社が、“聴覚障害者と聴者の間には、職場でも聞こえの違いによって会議など複数人の会話の場でコミュケーションが難しいという課題”の解決に取り組んだ「みんなの会話をリアルタイムに視覚化するサービス」だった。「ベンチャーで難聴者向けのソリューションをやってる面白い会社があるんだと思ったら、どんどんモチベーションが高まっていった」。


 製品の提案先は企業の人事部。これまで導入を決めてくれた会社は、障害者雇用や情報保障の“意識が高い”会社が多い。でも、時間がかかっても大事にしていることがある。「障害当事者と企業の担当者と一緒にいる場でVUEVOを体験してもらって初めて、その場で普段から感じている課題を吐き出してもらって、社内で共有することができる」ことだ。それには理由がある。「これまで諦めちゃっていたけれど、VUEVOによって働き方が変わりそうな予感がする」と当事者から言われ、「心の部分を刺激したことに感動した」からだ。

 現在、ご自身のキャリアでの経験も活かして、聴覚障害者への情報保障に関するウェビナーなども展開されている。「自分が当たり前だったと思っていたことに、知らなかった、気づいていなかったという声が寄せられて」、製品紹介以前にもっともっと前提情報の提供が大事だと気付かされた。だから、今後「当事者の座談会もやってみたい。職場であきらめちゃってる、孤立しちゃってる。こうすれば変わるはずなのに」を浮き彫りにさせたい。


 最後に念のため、補足させて頂く。川田さんの素敵なキャリアをご紹介したかっただけではない。彼女のように、小さい頃から障害に触れたことで、進路にその観点が芽生え、必ずしも福祉分野ではなく支援機器のメーカーにも視界が広がり、さらに新しいものを生み出すベンチャーにまで広がった、そんな複線的なキャリアが増えればいいと感じたことを伝えたかったのである。

 そのためにも、『VUEVO(ビューボ)』と川田さんの挑戦と成功を応援し続けたい。



▷ ピクシーダストテクノロジーズ



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