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【あし #13】バリアがない空間を実践するクラス分け委員


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今井 礼子さん


 今井さんは現在、地元で水泳教室を運営する傍ら、パラカヌーの「国内クラス分け委員(テクニカル)」という肩書も持つ。かつては、全国優勝レベルの強豪高校で競技カヌーに励み、学年別で全国優勝したこともあるバックグラウンドをお持ちだ。


 知っている人には当たり前だが、パラスポーツは選手の障害が多様であるが故に、同じ競技を行う上での公平さを担保するのが極めて難しい。公平に競技を行うためには、同程度の障害がある選手を同一のグループに分類する「クラス分け」が重要になる。

 例えば、陸上や競泳では、身体、視覚、知的障害に分けた後、障害の部位や程度によって細分化される。車いすラグビーなど球技では障害の重さで各選手に点数をつけ、チームの合計点数を一定とすることで、公平さが担保されている。

 それ故、各パラスポーツには専門の資格をもつ「クラス分け委員」が存在し、その中でも「メディカル」と「テクニカル」の2種類がある。前者は、医師、理学療法士、作業療法士が務め、例えば、「選手の可動域やパワーなどをベッドの上でテストしていく」。後者は、該当競技の指導経験や競技経験のある者が務め、例えば、「実際の競技を行った際にどこまで力を発揮できるかを確認する」。パラカヌーであれば、事前に自身のレベルを隠してレースに出場する競技者が出ないよう、「本番のレースの様子を動画撮影して審議する」ところまで行うのだ。



 そんな重要な仕事を担う今井さんは、先の東京パラリンピックではコーチとして、「選手村」に入る機会に恵まれた。それまでもパラカヌーの国際大会で障害のある選手に囲まれる経験はあったが、東京パラリンピックには、当たり前だが、より幅広い「すべての競技の、すべての障害のある選手とサポートの方々がいた」

 今井さんは、「すごく心地の良い空間」だったと振り返る。バリアフリーという言葉は、バリアの存在を前提としている。そして、バリアという言葉は、障害者にとっての不自由を前提としている。しかし、選手村の食堂では、手が使えなくても足でバイキングを取り、目が見えなくても丁寧に食事をしている。アスリートであるせいか、誰かに依存するわけでもない。

 「選手達本人が工夫して、どうとでも過ごしている。そこにはバリアがなかった」ことに、今井さんは心地の良さを感じたのだ。「あれこそが、ノーマル」と表現した。今井さん自身が今年開催されるパリ・パラリンピックに行けるかどうかはわからないが、「あの選手村に、もう一度行きたい」と思うぐらい、忘れられないシーンだった。


 それを単に思い返すだけではない。実は、今井さん自身が普段から、“バリアのない心地の良い空間”を実践してきた。

 ご自身で運営する水泳教室では、「通常学級、支援学級、支援学校の子供たちが一緒にレッスンを受ける」。当然、誰がどの学級などと説明することもしない。他の教室で断られた子供など誰でも受け入れ、「一緒の空間で一緒にやる」「その子その子で対応していく」ことを大切にしている。

 支援学級や支援学校へ通う子供の親御さんの中には「将来社会へ出た時の為に我慢することを学ばせたい」と言われることもあるが、一方ではなく、「双方でどう折り合いをつけるかが大事」と強調する。なぜなら、ある子供が特殊な言動をとったとしたら、それに対して「大人がどういう風に対応するんだろうと、子供は見ている」から。

 その言動に、大人が嫌そうな顔をすれば、子供は嫌なこととして解釈する。逆に、大人が共感する態度をとれば、子供は(その子が)何か辛かったのかななどと想像が生まれる。そこに「折り合い」を学ぶかどうかが、大きな差になる。もちろん、子供たちにとって想定外の出来事が起これば驚いたり、すぐに反応できないこともあるだろう。でも、「そこをつなぐのは大人の役目。どうしたって、子供は成長過程で大人を見て動いちゃうから」



 今井さんは、パラスポーツ選手に携わって気づいたことがある。

 特に人生の途中で障害を負った選手は「これからどうしていいかわからない」という感情を乗り越えて、「これからの人生をどう充実させるか」という観点からスポーツに挑戦する。その時に大事なことは、「勝ったか負けたか、できたかできないか」という結果ばかりではなく、「目標や目的に向けて行動していくこと」なのだ。

 同じことは子供の成長にも当てはまる。今井さんはわかりやすく「通知表の右側の部分」と表現してくれた。左側の数字という“明確な評価”ではなく、右側の「どう行動できたか、“明確な評価にならない”部分を伸ばしていきたい」、そしてそれを水泳教室にお子さんを通わせる親御さんにも伝えていきたい。


 実は、第8話でご紹介した今井航一さんは、今回ご紹介した今井礼子さんの旦那さんだ。航一さんは礼子さんとの出会いから、パラカヌーを始めた。そして、共に香川県パラカヌー協会を立ち上げ、年齢や障害の有無を問わず「一緒にカヌーを楽しもう」と普及活動を続けている。

 それは、あの時のパラリンピック選手村と同じ。そして、日常の水泳教室と同じ。大切にしているのは、「その環境に身を置く経験」だ。「環境をつくれば、育つ人は育つ」と今井さんが話すように、障害の有無を感じない環境をつくれば、バリアのない人が育つ。

 そんな今井さんのような実践が社会の色々なところで起きることを願う。




ここまで読んでくださった皆さまに‥


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